バーチャルVtuver豆猫さんの与太話

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【#MTG】青スライ/Blue Deck Wins【予算制限$1.00ブロック構築】

『時のらせんリマスター』の発売が近づいてきているね。

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公開されるプレビューカードには一見「しょぼい」ものもあるのだけど、

僕としてはそちらの「しょぼい」カードに感慨を覚えてしまったので、筆を取ろうと思う。

 

今回、紹介するのはいつも通り虚無フォーマットのデッキだ。

僕のプレイグループで「予算制限ブロック構築」が流行ったときのデッキの話をしようと思う。

 

予算制限ブロック構築のルールは以下の通り。

デッキ総額Magic the Gathering ONLINE価格で1ドル以内。(基本土地は無料)

・それぞれ自分の好きなブロック(あるいはセット)を選び、好きに組む。

 

それから暗黙のルールとして僕らのプレイグループではもう一つの隠しルールがあった。

 

「予算制限構築の時はスライ/Red Deck Winsの使用を避けること」

 

スライあるいはRed Deck Winsというのは簡単に言えば赤単の速攻デッキである。

低コストのクリーチャー火力呪文の組み合わせで相手を責め立てるのが

特徴だ。

 

低予算構築で遊ぶ虚無フォーマットでは普段使わないようなカードを見られる楽しみがある一方で、赤単速攻系デッキは大抵安くつくれて似たようなものが多くなり、

簡単に言えば「おもしろみにかける」ということで、僕らのプレイグループでは避けることが推奨されていた。

 

どうせ虚無フォーマットをやるならガチでなく楽しさを目指したいというカジュアルな欲求が、僕らのプレイグループをこの形に落ち着けた。

 

「予算制限ブロック構築」をやった時も、僕らはあくまで赤単速攻を避けるようにしていた。

 

さて、ではそんな「予算制限ブロック構築」で僕が選んだブロックはどこだろうか?

 

冒頭で話が出ていたので、もうお分かりかと思う。

「時のらせん」だ。

 

僕が「予算制限ブロック構築」で使った時のらせんのカードたちが、再録される!

僕はカードプレビューを見て少し懐かしい気持ちになった。

 

それでは僕が実際に予算制限のついた時のらせんブロック構築でどんなデッキを組んだのか紹介しよう!

 

青スライ/Blue Deck Winsだ!

【青スライ/Blue Deck Wins】

_ _ _

3 Gossamer Phantasm
4 Drifter il-Dal
4 Flying Men
4 Psionic Blast
4 Unstable Mutation
3 Spiketail Drakeling
4 Looter il-Kor
4 Cancel
4 Maelstrom Djinn
3 Infiltrator il-Kor
4 Pongify
17 Island
2 Zoetic Cavern

サイドボード

4 Dandân

2 Errant Ephemeron
4 Riptide Pilferer
1 Gossamer Phantasm
4 Shaper Parasite

_ _ _

 

時のらせんブロックでは色の役割、いわゆるカラーパイについて挑戦的なカードが多数存在した。

普段、見なれない効果を持ったカードが何枚も存在する。

スライ/Red Deck Winsに必要な、火力呪文

それらは「時のらせん」においては青のカードにも存在するのだ。

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青の小型クリーチャーと火力呪文《心霊破》で相手を責め立てる、青版のRed Deck Wins、つまりBlue Deck Winsである。

 

このデッキを支えてくれたカードの多くが新パック『時のらせんリマスター』で再録されることを僕は嬉しく思っている。

 

《ダル追われの流れ者》は1ターン目から繰り出せる2点クロックで、

シャドー能力はほとんど「ブロックされない」と同じ意味だ。

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《霊糸の幻》はデメリット能力のようなものがついているが基本的には気のせいだ。

どの道、タフネスが1では1点火力ですら死んでしまう。

 

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味方側の強化カードで選べない点はデメリットだが、軽い飛行クリーチャーとして有用だ。

 

このデッキはRed Deck Winsほどには前のめりではないので待機呪文も採用する余地がある。

《遍歴のカゲロウ獣》は相手の全体除去が流した後の盤面に出てきて圧をかける重要な役割がある。

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 《コー追われの浸透者》は比較的待機ターンが短く、クロックも3点と大きめで頼りになる。

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これらのクリーチャーは待機して出すと速攻がつくので、ソーサリー除去を受ける前に攻撃チャンスがあるのが嬉しいね。

 

Red Deck Winsとの大きな違いのひとつとして、通常の青いデッキ同様に打消しを入れられる点が挙げられる。

 《トゲ尾の仔ドレイク》は対戦相手の全体除去を遅らせつつ自身も攻撃に参加できるお気に入りのクリーチャーだった。

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青を使うことによる もうひとつの差は赤にはあまりないルーティング・サボタージュ能力の存在だ。

土地を切りつめたデッキでは「土地を引けない」ことも「切りつめたはずの土地を引きすぎる」ことも非常に致命的で、これらが原因でゲームを落とす危険を避けられるカードは非常に重要である。

 

《コー追われの物あさり》をご覧あれ!

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こいつは手札の枚数こそ増えないが、その質を改善する非常に良い能力がついている。

おまけにシャドーによってブロックを回避できるとなれば、どれほど強力か言うまでもないだろう。

 

それからこのデッキを支える重要なインスタントも『時のらせんリマスター』で再録される。

 

それは《猿術》の呪文だ。

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このカードの使い方は2通り。

まず、相手の強力なクリーチャーに対して使い「無力化」する使い方。

3/3は決して弱いクリーチャーではないが少なくとも5/5よりは大分マシだし、

飛行もシャドーも持たないため、こちらの攻撃クリーチャーの邪魔をすることはない。

 

もうひとつの使い方は自分の味方に撃つことだ。

自分のクリーチャーに対して相手が単体除去を撃ち込んだとき!

対応して《猿術》を使えば、1マナでパワー3の攻撃クリーチャーを得られる。

 

これらのカードで青らしく、あるいは青らしからぬ動きで対戦相手を混乱させるのはとても楽しい経験だった。

 

『時のらせんリマスター』で彼らとまた共に戦えることを、僕はとても嬉しく思う。

 

 

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【#10億ゲット 】『電子の泥船に金貨を積んで』を読んで【読書感想】

最近、MTGの話題に偏りすぎているけれど当ブログは総合的に趣味のものについて書いていくブログだという当初の方針に立ち返って久しぶりに読書感想記事です。

 

今回 紹介したい本はこちら…!

ハヤカワSFコンテスト(第8回)優秀賞を受賞した傑作、『電子の泥船に金貨を積んで』です!

9月9日(水)、第8回ハヤカワSFコンテストの最終選考会が東浩紀氏、小川一水氏、神林長平氏、小社編集部長・塩澤の4名により行なわれ、(略)

竹田人造(たけだ・じんぞう)氏の『電子の泥舟に金貨を積んで』が優秀賞に決定いたしました。

 

 

ドウシテ…ドウシテ…?

 

いかにも早川書房のSFっぽいタイトル」だったのに、

かなりタイトルの雰囲気が変わった本作。

発表当時は私も結構、いやかなり否定的に思っていました。

 

しかし、書影の発表・試し読み公開でこのタイトル変更を好意的にとらえられるようになりました。

その書影がこちら…!

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人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル (ハヤカワ文庫JA)

 

 いかにも怪しげなアロハのおっさん五嶋(ごとう)とスーツ姿の男、三ノ瀬(みのせ)…!

この2人が人工知能(AI)技術を使い大金をめぐって大立ち回りを演じるクライムSF!

 

バディもの! 男と男の関係性!

リアルな「嫌な奴」感が凄いライバルとの対決!

 

しっとりしたタイトルの「泥船」から連想されるようなAI最先端に乗り遅れた日本技術者の悲哀とそれでも一筋の光をその中に見る…そう言った側面も、この作品にはあります。

 

あるのですが、作者のクライムコメディ趣味による影響が全体を通しては強く出ていて、一番最初読み終えたうえでの感想は「思ったより動く」でした。

 

そんな映像作品を見た時のような感想を本に対して抱くのもおかしな話ですが、

「AI技術者の戦い」という言葉から連想されるような「カタカタカタ…ッターン!」みたいな雰囲気とか、あるいはもっとリアルで泥臭い作業のシーンなどよりも、

『アクション』のシーンが多く、脳内で小説から組み立てる映像が動くこと動くこと!

 

主人公の怪しげな相棒、五嶋(ごとう)が映画趣味であり、たびたび自分たちの犯行を映画化する話題を切り出し、主人公三ノ瀬(みのせ)もだんだんそこに思考がひきずられていく。

これにより描写のアクション・エンタメ色が強く、掛け合いの会話もおもしろく…

 

ええ、作者の竹田人造さんには少し悪いけれど

「このタイトルは改題して正解だったかもしれない」と感じました。

いや、どうなんだろう…?

正直、未だに私はこの10億ゲットのタイトルを上手く呑み込めてはいないんですけど。

それでも、編集の人が改題しようとした意図みたいなものは、本文を読んでなんとなく感じ取れました。

 

 

どんな お話?

 

感想文記事なので感想だけ書いてここで終わってもいいと言えばいいんですけど、

せっかくなので布教を兼ねて『電子の泥船に金貨を積んで』もとい人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』の物語について触れていきましょう。

 

舞台は?

未来の日本。

技術が発展しつつも、それほどガラっと世界が変わっているほどではない。

そんな少し先の未来。

イメージとしては現代日本の延長戦のまま「民間の一般人」にはそれほど大きな影響はなく、金をかけられる銀行やセキュリティ・カジノ施設などで実用化された世界。

3億円事件で「大金を輸送する人の心には魔が差す」という教訓を得て、高額の現金輸送に自動運転の特殊武装車両”ホエール”が使われるようになるなど、僕らの生きる現実よりも未来的。

でもサイボーグとかが町を闊歩しない程度には今と地続きなぐらいの「少し先」の話だ。

 

話の導入

主人公 三ノ瀬(みのせ)は連帯保証人として借金を抱え、ヤクザに内臓を売り飛ばされそうになっている哀れなAI技術者。

そんな彼を救ったのは映画好きでアロハシャツに身を包む怪しげな男 五嶋(ごとう)

彼は現金輸送車”ホエール”を狙う計画をヤクザに提案し、協力者として三ノ瀬(みのせ)を仲間に引き入れる。

こうして現金輸送車襲撃の片棒を担がされることになる三ノ瀬(みのせ)だったが、襲撃事件はこれから巻き起こるクライムアクションの口火に過ぎなかった____

 

面白かったところ

AI技術者である三ノ瀬(みのせ)のライバルとして現れるかつての仲間。

白スーツに銀縁メガネのスキンヘッド男、九頭(くず)

こいつが魅力的な敵キャラなんだ。

もう凄く嫌な奴なんだけど、その嫌な奴の解像度が高い。

指摘されたくないところや間違いをズバズバ切り込んでくる天才技術者。

嫌な奴なんだけど、技術的・科学的に正しいのは九頭(くず)の方。

うーん、これこれ。技術者はこういうのに弱いのだ。

単なるライバル・敵役としてでなく彼のAI技術への想いとか内面に踏み込んだ描写が彼を魅力的なキャラにしている。

 

また繰り返しになるが、

「AI技術者の戦い」という言葉から連想されるような地味さとは違い、

『アクション』のシーンが多く、脳内で小説から組み立てる映像が動くこともこの小説の魅力で、視点人物を切り替え、主人公たちだけでなく相手側の視点にカメラを向ける様はまさに「クライムコメディ映画」っぽい作りでハラハラドキドキする。

主人公バディの軽妙な掛け合いも映画的だ。

 

 

 

編集者さんがタイトル変更を行う理由として挙げたという

「タイトルと作風の印象を近づけるため」「ダサめのヌケ感を与えるため」

引用:https://note.com/takedajinzo3/n/n8033eaf4bbf6

という狙いは、読み終えた今となってはなるほどと頷くばかりだ。

 

ただ、ただそれでもなお。

やはり作者のつけた『電子の泥船に金貨を積んで』というタイトルが背負っているものもまたこの小説からは染み出している。

例え、日本のAI技術が最先端から取り残された沈みゆく電子の泥船だとしても……

その泥船を作る砂場が、技術に挑む誰にでも開かれたものであれば……

 

 

『電子の泥船に金貨を積んで』…改め人工知能で10億ゲットする完全犯罪マニュアル』

どん底に落ちた主人公の人生逆転クライムアクションコメディ。

面白い小説でした。

 

 

 

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【#MTG 】クリーチャー・タイプによる盤面の複雑さとリミテッドの関係

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やあ、バーチャルVtuverの豆猫さんだよ。

書こうかなー、と思っていた題材について他の人の記事に触発されて書いてみることにする。

 

今回は「最近のセットとクリーチャー部族テーマの複雑さ」の話だ。

 

書くきっかけになったのは「もち饅頭 (@AnCoveredMochi)さん」のnote記事。

 

 

こちらのnoteでは《遍歴のカゲロウ獣》という”理解上の複雑さ”を持ったカードと、

”戦略的複雑さ”について触れられている。

非常に興味深い記事なので読んでみることをオススメする。

 

さて、このnoteを読んで背中を押される形で私も書きかけの記事に手を付けてみることにする。

 

もち饅頭さんの記事で触れられている”戦略的複雑さ”、及び《遍歴のカゲロウ獣》に伴う”理解上の複雑さ”

この2つの用語はマジックの主席デザイナー、我らがマークローズウォーターが提示した3つの複雑さのうち2つである。

 

となれば、残る1つの複雑さにも注目すべきだろう。 

(この複雑さについてもち饅頭さんが書き落としているわけではないことは明記しておこう。単に用語を使っていないだけで『実際に戦場で出会ったときの複雑さ』という表現で軽く触れている。)

 

残る1つの複雑さ。それは『盤面の複雑さ』である。

 

 

『盤面の複雑さ』とクリーチャー部族

 

盤面の複雑さの例としてマローは『モーニングタイド』の社内プレリリースを挙げたことがある。

 

私が誤りに気づいたのは、『モーニングタイド』の社内プレリリースの時だった。私の正面に座っていたマジック経験のほとんどない社員にとって、網の目のように複雑な部族の相互作用はわけがわからないものだったのだ。ゴブリン戦士ゴブリン部族戦士部族の影響を受けるが、ゴブリンウィザードゴブリン部族ウィザード部族の影響を受ける。さらに人間ウィザードまでいる。

ゴブリン部族は先の2つには影響するが、3つ目には影響を及ぼさない。かと思えばウィザード部族はあとの2つに影響を与え、1つ目には影響しないのだ。これにさらに10体のクリーチャーが増えると、ほとんどのプレイヤーは盤面を把握できなくなっていた。たった1マッチしただけでプレリリースから立ち去るプレイヤーを見たのは、あれが初めてだった。  

引用:塩が失敗を美味しくするからマジック:ザ・ギャザリング 日本公式

 

モーニングタイド』は戦士ウィザード、ならず者などの職業クリーチャー・タイプを推奨するパックだった。

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そして、直前のパックである『ローウィン』では巨人エルフなどの種族クリーチャー・タイプを推奨していた。さらにすべてのクリーチャー・タイプを持つキーワード能力多相が初登場したのもこのパックである。

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さて、勘のいい読者はもう気づいているかもしれない。

戦士ウィザード、ならず者などの職業クリーチャー・タイプ巨人エルフなどの種族クリーチャータイプを推奨する多相のパックが連続して発売…

そう、頭をよぎるのは『ゼンディカーの夜明け』と『カルドハイム』である。

 

冒険者のパーティーを表現するために、『ゼンディカーの夜明け』では戦士やウィザード、ならず者などの冒険者の職業を表すタイプに光が当てられていた。

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一方で『カルドハイム』を見てみるとこちらにもクリーチャータイプを参照するテーマがあり、巨人やエルフ(またも巨人やエルフである)を扱うテーマが存在し、再録メカニズムとして多相も収録されている。

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おいおいおい。

ウィザーズは過去の失敗から何も学んでいないのか!?

そう驚くかもしれない。

 

しかし、この記事はそう言った批判的な内容のために書いているものではないのだ。

むしろ、連続するセットでのクリーチャー・タイプの扱いがこんなにも似通ったパックが非常によく改善されていることを伝えたい記事なのである。

 

MTGの部族デザインに関わる変化を見てみよう。

 

リミテッドでの部族

 

まず初めに抑えるべきは『ブロック制の廃止』だろう。

ローウィン』と『モーニングタイド』の2つは単に連続して発売するだけでなく、

同じ舞台を描き、相互に関連し…1つのブロックして扱われ

それぞれのパックを混ぜてリミテッドが行われる。

プレリリースでは基本的にリミテッド形式の試合がおこなわれていた。

 

つまり、『ローウィン』と『モーニングタイド』ではごちゃごちゃとした2系統のクリーチャー・タイプ推しが網の目のように絡み合った状態でゲームが行われていたのだ。

 

一方で、『ゼンディカーの夜明け』と『カルドハイム』はどうだろう?

これらは基本的に2つを混ぜてリミテッドを行うことはない。

 

別種のパックを混ぜてリミテッドを行っていたのはかつてマジックに存在した『ブロック』という制度に関連する理由であり、ブロック制でのパック販売を廃止した現代マジックでは、連続したパックを混ぜてリミテッドを遊ぶことは滅多にない。

 

ゆえにマローが『モーニングタイド』の社内プレリリースで見たような不幸な混乱は『カルドハイム』のプレリリース店舗で見られることはなかった。

(この文章には欺瞞があり、そもそもコロナのせいでカルドハイムのプレリリースがショップで行われることはなかったんだよな)

 

 

単体のリミテッドではどうか?

 

では、『カルドハイム』単体でのリミテッドはどうだろう?

このパックを使ったリミテッド戦ではクリーチャー・タイプによる盤面の複雑さはどう制御されているのだろう。

 

実際にいくつかのカードを見てみよう。

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《圧死》は巨人テーマを支える除去だ。

このカードでは「閾値1」が使われている。

あなたは巨人を場に出しているかどうか?の一点だけを尋ねるため、戦場に巨人が何体いるかを数えて頭を悩ませる必要はない。

 

巨人スイッチはオンかオフか? シンプルな問いだけをこのカードは聞いてくる。

 

エルフ部族のサポートカードも見てみよう。

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こちらも盤面全体の数値を計算し続けるような盤面の複雑さとは無縁である。

墓地からクリーチャーを蘇らせる。

そして、それがエルフかどうか?という単発的なチェック項目だけがあり、

プレイヤーの頭を悩ませ続けないように工夫が凝らされている。

 

 

ではカルドハイムにはローウィンにあった「エルフ全体を数値的に強化するロード」などはいないのだろうか?

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ああ、たしかにこういう恒常的なサイズ修整を行うカードはカルドハイムのドラフトブースターからは排出されにくくなっている。

 

しかし、それらを望むプレイヤーの期待にもウィザーズ社は答えてくれる!

 

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カルドハイムに棲むエルフのロードだ!

 

実はこのカード、収録方法が少し変わっている。

 

マジックの歴史の中でブースターパックの発売方法は何度か変化している。ブロック制の廃止もそうだし、ブースターの種類を増やしたのも大きな変化だ。

 

カルドハイムのブースターパックは日本語版では3種類が発売される。

 

リミテッド戦を楽しむ人たちのためのブースター。

コレクター向けに絵柄違いカードなどを多めに収録したブースター。

そして、セットブースターと呼ばれるブースターパックだ。

 

このセットブースターにはリミテッド戦のためのブースターには入っていないカードが何種類も収録されている。

 

これらのカードはカルドハイムのカードとして扱われ、カルドハイム期のスタンダードで使用可能である一方でリミテッド戦では決して見かけることがない。

 

エルフのロードはリミテッド用のパックからいわば隔離されて、カジュアルプレイヤーがスタンダードで部族テーマデッキを楽しめるように、分けて収録されているのだ。

 

ウィザーズのカードデザインは年々、ノウハウを積み上げ、過去の失敗から学んでいる。

現代マジックのカードがローウィンでクリーチャータイプを扱った時の盤面の複雑さ

から学んだデザインをカルドハイムで行い、パックの発売方式そのものを見直したことで大きく変化し適用して見せた。

 

現代マジックで我々が感じる複雑さの数々も、やがて数年後のマジックでは改良されているだろうという期待が持てる。

 

複雑さを下げる一方で緩やかなシナジーを推している点も注目したい。

カルドハイムでは「ならず者」は単にならず者でしかない。

しかし、『センディカーの夜明け』のパーティシナジーやローグデッキと組み合わせても楽しむことができる。

 

複雑さのすべてが悪いわけでなく、排除するべきものだとは思わない。

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スタンダードの赤単氷雪デッキで《不詳の安息地》がならず者シナジーに参加できるなど意外な組み合わせが輝くのは悪い事でなくむしろ良い事なのだから。

 

 

ウィザーズが興味深い相互作用を残しながらリミテッドや初心者参入時の複雑さの壁とどう戦っていくのか?

これからの発展をプレイヤーとして楽しみにしたい。

 

 

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その他カルドハイム記事

 

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【富める者の遊び】ドラゴンの迷路ドラフトの思い出を語る【#MTG 高額パック】

数年前、ドラゴンの迷路でドラフトを遊んだ。

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今日になってその時のことを思いだしたので、当時の友人たちと話しながら思い出に浸ったのでブログ記事に書いておく。

ドラゴンの迷路は現在では在庫枯れを起こして高騰しているのでもはや富める者たちしか遊べないわけだが、もし遊ぶ人がいれば参考になれば幸いだ。

 

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(メーカー希望小売価格は1パック368円)

 

まず初めに、ドラゴンの迷路ドラフトについて説明しておこう。

ドラゴンの迷路ドラフトは、参加者全員が高額パックドラゴンの迷路を3つ買って持ち寄ることで成立する。

それらのパックを開封し、中からカード1枚を取り、残りを隣の人に渡し反対側の人からパックを受け取り、中のカードがなくなるまでカードを取る。

そうして集めたカードでその場でデッキを組み上げて戦うのがドラゴンの迷路ドラフトだ。

 

なんだそんなの普通のドラフトじゃないか?

 

最近のマジックでドラフトに慣れているプレイヤーはそう思うかもしれない。

しかし、実はドラゴンの迷路はそうやって遊ぶようにはできていない。

 

他のパック2つドラゴンの迷路1つでのドラフトが公式では推奨されている。

 

実際にサンディエゴで2013年に行われたプロツアーでは、

『ラヴニカへの回帰』と『ギルド門侵犯』という2つのパックを各1つに、

ドラゴンの迷路を1パック加える形でのドラフトが行われている。

 

しかし、「するな」「おすすめはしない」と言われるとやりたくなるのがカードゲーマーのさがである。

 

数年前、僕は仲間を募って提案した。

「ドラゴンの迷路を僕が1Box買うから、それでドラゴンの迷路3パックでのドラフトをやろう」

 

身銭を切って、友達を誘い、当時ひとり暮らしをしていた僕の下宿に人を集めてそれは行われた。

 

ドラゴンの迷路と普通のパックの違い

 

収録カード数

 

まず収録カード数に注目しよう。

最新パック『カルドハイム』のカードは全285種類

一方で『ドラゴンの迷路』のカードは全156種類。

 

そう、大幅に収録されているカードの種類が少ないのだ。

しかし、少ないのは種類だけでありパックの枚数は通常パックと同じ。

いや、基本土地の枠に必ず特殊地形が収録されている点を踏まえれば1枚収録枚数が多いというのも過言ではないだろう。

 

そういう点で非常に『濃い』パックになっている。

その分、狙ったカードが出る確率も高めになっている。

例えばアンコモンのカードはカルドハイムでは約90種類

ドラゴンの迷路では約50種類

 

ドラフトでは特定のアンコモンのカードを軸にした構築などを狙うことがあるけれど、

ドラゴンの迷路ドラフトでは特定のアンコモンが出る確率はかなり高めの設定になる。

 

圧倒的な多色カード枚数

 

カルドハイムでは約40種類の多色カードが存在した。

一方でドラゴンの迷路では多色カードは約80種類

なんとおよそ2倍の多色カードが存在する。

前述のようにパック自体が濃いのがドラゴンの迷路の特徴なので、実際には2倍以上の頻度で多色カードを見かけることになるだろう。

 

 

いつまでも回る導き石

 

これは投機目的でなくドラフトをする場合にのみ問題になることなんだけれど、

上記のようなド派手さの陰に隠れて「弱いカード」も収録種類数の関係で濃くなっている。

そしてこのパックからは「導き石」というカードが出てくる。

 

 

この導き石はドラゴンの迷路の舞台となる世界ラヴニカに存在する10のギルドに対応している。

そのため、全部で10種類あり、希少度もコモンであるために大量に出てくる。

 

そしてあまり強くないカードだと認識されているため、例え自分のデッキと色があうからといって積極的に取りたいカードでもない。

 

結果的に「○○の導き石」はドラフト中にあまり区別がつかない。

大量の導き石がパック後半でゴロゴロと転がり続ける虚無の時間が訪れるのだ。

 

 

 

さて、こんな環境で僕の仲間たちがどんなデッキをプレイしたのか見ていこう。

果たしてどのようなアーキタイプを見かけるだろうか?

 

【5C導き石】

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始め、僕はこのアーキタイプを笑っていた。

「余り物」としてぐるぐる回る大量の導き石はデッキを組む時の頭数にする者ではないと思っていたのだ。

 

しかし、友人はこの導き石を大量に採用したデッキを組み上げた。

 

導き石デッキの強みはドラフト中に色に捕らわれることなく「強そうなレア」をかき集められるところにある。

 

強力なレアカードの数々を実戦的に運用することができ、

マナ加速にもなるため早い段階からレアカードをプレイできる。

 

ゲーム終盤、互いにトップデッキにかけるような消耗戦の果てには一度場に置いた導き石をドローに変換してリソースを回復できる。

 

通常の「パック2つ」+「ドラゴンの迷路」の形でのドラフトでは導き石は強くないかもしれない。

しかしドラゴンの迷路ドラフトでは、【5C導き石】デッキは十分にパワフルなアーキタイプとして成立していた。

 

既存の発想にとらわれずに、目の前のゲームを分析した彼の判断力に敬意を表し、

このデッキを最初に紹介する。

 

 

【白黒誤植】

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こちらのデッキは白黒の誤植デッキである。

何を言っているのかと疑問に思われるかもしれないが、本当に誤植カードのデッキなんだよ。

 

このデッキは白黒であるためマナ加速手段は基本的にはない。

しかし導き石はここでも活躍する。

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無色のアーティファクトゆえにこのデッキでも採用でき、マナを加速できる。

加速したマナから4ターン目の《ヴィスコーパの血男爵》を着地させ、そのカードパワーで猛威を振るうことを目指す。

 

MTG慣れしている人は気づいているかもしれないが、

本来は白と黒の2色ギルドの名前は「オゾフ」である。

しかし、導き石があなたを導くギルドは「オゾフ」なのだ。

 

ご、誤植…!

 

加えて降臨するフィニッシャーにも致命的な誤植がある。

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2つの条件のうちどちらかを満たすことで強化されるクリーチャーに見えるが、これも誤植である。

実際には「両方の条件を満たす」ことでこのクリーチャーは強化されるのだ。

 

とはいえ、誤植部分はともかくプロテクションを2つ持っている強力なクリーチャー。

この環境は多色カードが異常に多いため、白青のデッキでも赤黒のデッキでもプロテクション要素が引っかかる。

シミックのように白も黒も使わないデッキでなければなんらかの形でプロテクションに苦い思いをすることだろう。

ドラフトのダメージレースでは絆魂が非常に強力であるため、早期着地されると誤植部分とか関係なく普通にボコられる。

 

シミックカウンター】

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こちらは分かりやすい青緑のアーキタイプ

+1/+1カウンターを参照するカードと、+1/+1カウンターを乗せてサイズアップしていくカードを絡めたカウンターテーマのデッキだ。

 

注目のカードは《混成体の培養》。

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かかるマナは重たいが、自身のクリーチャーに付けはずしすることで繰り返しクリーチャーにカウンターを置くことができ、除去としても使える。

ただ流石に重すぎたのか大きな活躍はなく終わった。

 

 

【ワーム起こし】

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マリガン後4ターン目まで棒立ちし、

「勝ったな…」とこっちが思ったところで突然逆襲してくる恐ろしいデッキ。

 

大量にピックされた《反射起こし》で5/5トランプルのワームトークンを量産されて気づけば逆転されている。怖すぎる。

 

 

【青白飛行】

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はあー。こんな面白フォーマットで遊んでてこんな虚無のデッキ作るつまんない奴、誰だよ。っていう感じなのだけれど、まあ正直に言えば僕である。

当時の僕は面白フォーマットでも堅実にドラフトするつまんない奴だったのだ。

 

このデッキは特に説明することもないだろう。

ドラフトでは飛行は強力なキーワードであり、飛行クリーチャーや飛行付与クリーチャーでその方向性を押し出していくだけである。

逆に言うと大きな逆転要素もないので【ワーム起こし】のような一芸のあるデッキがぴたりとハマると逆転できずに死が待っている。

 

 

他の参加者のデッキは、昔の事なのでもう覚えていないし、記録もなかった。

ただ、僕の部屋からは未だにストレージ代わりにカードを放り込まれたドラゴンの迷路の紙箱が出てきた。

 

ドラゴンの迷路買い占め騒動がきっかけで、懐かしくなったあの日の思い出を記念にこうして書き残しておく。

 

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【#MTG】新たなるヴォリンクレックス【与太話】

アメリカの西海岸で、タミー・グリーンジェニー・レイラインという2人の少女がいて、マジック:ザ・ギャザリングを遊んでいました。

 

試合形式はスタンダード

タミーは今まさに6マナを支払い自慢のカードをテーブルに置きました。

 

f:id:omamesensei:20210212134822p:plain

 

あぁ…!

一体、このカードはなんでしょう?

見慣れない言語でテキストが書かれています。

 

「よしっ、速攻があるから攻撃だ!」

 

タミーは言いました。

ジェニー「テキストは読めないけど、なぜだか1/1の人間でチャンプブロックしたらいけない気がするから、ブロックはしないわ」と冗談を言いながらライフカウンターをカチカチと鳴らして6点のダメージを受けました。

 

そしてジェニーのターンが回ってきます。

ジェニーはそこでこんなカードを引きました。

 

f:id:omamesensei:20210212135250p:plain

 

このエンチャントはカードの名前をひとつ指定すると、そのカードがプレイヤーに与えるダメージを0に出来る強力な防御札です。

 

そしてジェニーは渋い顔をしました。

 

「カード名が読めないわね。そのクリーチャーの名前は?」

 

タミーも苦い顔をしました。

「ヴォリンクレックス。あー。何のヴォリンクレックスだったかな…二つ名が思い出せない」

 

タミーは自分で使ってるカードながらカード名をわすれてしまいました。

というか多くのプレイヤーは自分のデッキのカードのカード名を正確に覚えていないものです。

カードを見れば分かることをわざわざ覚えないプレイヤーは少なくありません。

 

しかし、今回の場合困ったことになりました。

ファイレクシア語で書かれたカードの名前を2人とも読むことができません。

 

 

そして、このヴォリンクレックスというキャラクターには1つ問題がありました。

 

実はアイコニックマスターズというパックにもヴォリンクレックスのカードがあり、そちらは名前と性能が違うのです。

 

困りましたね。

 

「あなたのカードじゃない、何で覚えてないの〜」とジェニーはこぼしました。

 

 

そこへ、たまたま2人の知人である中国系アメリカ人が通りがかりました。

彼女はミンメイ・ライデン

マジックのカードについて非常に博識な女の子です。

 

「ちょうどよかった。聞きたいことがあるんだ」

 

タミーミンメイに声をかけました。

 

「なあ、新しいファイレクシアのヴォリンクレックスのカード名が分からなくて困ってるんだ」

 

ミンメイは盤面を見ることなく、

「それなら《Vorinclex, Voice of Hunger》アルよ」

 

そう答えて去って行きました。

 

ジェニー「じゃあ、私は《Vorinclex, Voice of Hunger》を指定するよ」と宣言しました。

 

タミーも了承して、

「ダメージが通らないのは厄介だなあ…」とだけ言って次のターンは攻撃しませんでした。

 

後日のことです。

 

ジェニーはカード名を調べていて驚きました。

《Vorinclex, Voice of Hunger》はあのファイレクシア語のカードの名前でなく、アイコニックマスターズのヴォリンクレックスの名前だったのです!

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つまり、あの時ジェニーが攻撃されていれば、名前が異なるのでヴォリンクレックスのダメージが入っていた可能性があります。

 

いや、そんな「些細な」ことはどうでもいいのです。

 

それよりもあの博識なミンメイがどうしてカード名を間違えたのでしょう。

 

気になってジェニーミンメイに聞いてみることにしました。

「ねぇ、ミンメイ。アイコニックマスターズ収録のヴォリンクレックスの名前はわかる?」

 

「前にも聞かれたアルね。《Vorinclex, Voice of Hunger》アルよ」

 

あれ?

ミンメイは正しく認識しています。

ジェニーは首を傾げました。

 

「この前、あなた新しいファイレクシアのヴォリンクレックスの名前を聞いた時もそう言ったわね?」

 

「そうアルよ。新たなるファイレクシアのヴォリンクレックスの名前は《Vorinclex, Voice of Hunger》アル。」

 

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何と言うことでしょう!

そうです。

アルティメットマスターズ収録のヴォリンクレックスの初出は別のパックでした。

そしてそのパックの名前は「New Phyrexia(新しいファイレクシア)」だったのです!

 

皆さんも、これからは気をつけましょう。

もしあなたが先日発売した新しい方のヴォリンクレックスのことを新ヴォリンクレックスなどと呼んでいると、新たなるファイレクシアのヴォリンクレックスと勘違いした相手とコミュニケーションエラーを起こすかもしれません!

 

「って言う小噺を考えたんだけど。どうかな?」

 

「そもそも《ルーンの光輪》のカード名指定はどのカードかはっきり認識を共有できてるならカード名を暗唱する必要はないから、『そのファイレクシア語のやつの名前』って言えばプロテクションはちゃんと機能するよ」

 

3.6 カードの特定と解釈

 プレイヤーが(カード名やその一部などの)その一種のカードを特定しうる情報を示したとき、そのゲーム内においてカード名が示されたとみなす。

https://mtg-jp.com/gameplay/rules/docs/0006837/

 

【#MTG 】《倍増の季節》と新ヴォリンクレックスとプレインズウォーカー【#MTGKaldheim 】

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さて、前回「次のセットが出る時までさよなら」みたいなこと書いたのに、カルドハイム関連で面白いことがあったのでまたルール遊び記事を書くよ。

 

昨晩、カルドハイムの《巨怪な侵略者、ヴォリンクレックスを統率者にしたEDHデッキと戦った。

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その時、ヴォリンクレックスのデッキから《倍増の季節》やPWデッキのニッサが出てきたんだ。

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倍増の季節の後半の効果とヴォリンクレックスの前半の効果はよく似ている。

ちょっとそれぞれ抜き出して並べてみよう。

 

《倍増の季節》

効果が、あなたがコントロールしているパーマネントの上にカウンターを1個以上置くなら、代わりにその効果はそのパーマネントの上にそれらのカウンターをその2倍の数置く。

《巨怪な侵略者、ヴォリンクレックス

あなたがパーマネントやプレイヤーの上にカウンター1個以上を置くなら、代わりに、そのパーマネントやプレイヤーの上にそれぞれその2倍の個数のその各種類のカウンターを置く。

 

この2つのカウンター倍増作用がプレインズウォーカーと並んだ時に、どんなことが起こるか見ていこう!

 

それぞれの違いについて

 

まず、それぞれの置換効果の違いについて確認することから始めよう。

《倍増の季節》は何らかの効果がカウンターを置く場合に、その数を2倍にする。

一方で、《巨怪な侵略者、ヴォリンクレックスはカウンターを置くイベントが効果によるものかどうかを問わない。

 

つまり、効果ではない処理によってカウンターが置かれる場合には《倍増の季節》

は反応しない。

一方で、《巨怪な侵略者、ヴォリンクレックス》(以下、ヴォリンクレックスは効果ではない処理によってカウンターが置かれる場合にもカウンターの数を倍増させる。

 

 

プレインズウォーカーの忠誠度カウンター

 

プレインズウォーカーが持つ『ライフ』を表現するために、忠誠カウンターという種類のカウンターが用いられる。

例えば《自然の職工、ニッサを見ていこう。

 f:id:omamesensei:20210210221350j:plain

このカードは右下に5と書かれているので、5つの忠誠カウンターが置かれた状態で戦場に出る。

そして、一番上の忠誠度能力を使用すると、忠誠カウンターを3つ置きながら、あなたのライフを3点回復させる。

 

この2つのカウンターに関する処理は「効果」によるものなのか?

言い換えると《倍増の季節》の置換効果が働くのかどうか、それぞれ見ていこう。

(ヴォリンクレックスの場合はそれが効果でもそうでなくても倍増させる)

 

 

忠誠カウンターを置いた状態で出す処理

 

これはもう、効果じゃない匂いがプンプンする。

効果と言うか「そういうルール」っぽいよ、これ。

プレインズウォーカーを出すときは忠誠度に等しいカウンターを置く。

そういうルールだって、マジック教わったときに聞いたし。

 

とりあえず総合ルールを紐解いてみよう。

困ったら総合ルールだ。

 

総合ルール306.5b 

プレインズウォーカーは、「このパーマネントは、記載された忠誠数に等しい数の忠誠カウンターが乗った状態で戦場に出る」という固有の能力を持つ。この能力は置換効果を生み出す(rule 614.1c 参照)。 

 

アッハイ。

効果でした。

 

プレインズウォーカー・カードには、カードに書かれていない共通能力として、

「このパーマネントは、記載された忠誠数に等しい数の忠誠カウンターが乗った状態で戦場に出る」を持っているのだ。

そして、この能力は戦場に出る処理を置換してその上にカウンターをのせる。

 

置換効果であるため、《倍増の季節》は反応する。

《倍増の季節》を出しているときに《自然の職工、ニッサを唱えると、

それが戦場に出る時に置換効果が働き、5個ではなく10個の忠誠カウンターが置かれた状態で戦場に出る。

 

ヴォリンクレックスを出している時に《自然の職工、ニッサを唱える場合も同様に5個ではなく10個の忠誠カウンターが置かれた状態で戦場に出る。

 

 

忠誠度能力

 

では、忠誠度能力を使用した場合はどうだろうか?

カウンターを増やすのは「効果」だろうか?

 

この問題のヒントはプレインズウォーカー・カードをよ~く見ることで得られる。

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+3のマークと「あなたは3点のライフを得る。」の間にがあるのが見えるかな?

MTGにおいてはルール上の意味がある記号である。

どこかで見たことはないだろうか?

 

ちょっと《ラノワールのエルフ》を見てみよう。

 f:id:omamesensei:20210210221437j:plain

 

タップシンボル(矢印のマーク)の横にがついているね。

このは起動型能力を示す記号だ。

 

総合ルール602.1

 起動型能力は、コスト効果を持ち、「[コスト]:[効果。][(あるなら)起動指示。]/[Cost]: [Effect.] [Activation instructions (if any).]」という書式で書かれている。という書式で書かれている。 

 総合ルール602.1a

コロン(:)の前に書かれているものすべてが起動コストである。能力を起動するプレイヤーは、その起動コストを支払わなければならない。 

 

コスト効果は別であり、+3はコロンの前にある。

よって+3は効果ではない。

 

《倍増の季節》は効果ではない処理で置くカウンターは倍にしないんだったね。

コストを支払うためにカウンターを増やすというのは奇妙に聞こえるかもしれないが、

ルールでそう定義されているんだ。

 

よって《倍増の季節》プレインズウォーカーの忠誠度能力を使うために置くカウンターを倍増させない。

 

一方で、ヴォリンクレックスは効果であるかどうかを問わない。

ヴォリンクレックスの能力が生む置換効果はプレインズウォーカーの忠誠度能力を使うために置くカウンターを倍増させる。

 

では、最後に確認問題を出そう。

 

確認問題1

あなたが《倍増の季節》をコントロールしている時に、《自然の職工、ニッサを唱えた。戦場にいくつの忠誠カウンターを置いてでるだろう?

また、その後+3能力を起動した後で、カウンターはいくつになっているだろう?

 

 f:id:omamesensei:20210210221515j:plain

 

答え

10個のカウンターが置かれた状態で出て+3を使うと3個だけ増えて13個になる。

 

確認問題2

あなたがヴォリンクレックスをコントロールしている時に、《自然の職工、ニッサを唱えた。戦場にいくつの忠誠カウンターを置いてでるだろう?

また、その後+3能力を起動した後で、カウンターはいくつになっているだろう?

 

 f:id:omamesensei:20210210221530j:plain

 

答え

10個のカウンターが置かれた状態で出て+3を使うと倍の6個増えて16個になる。

 

では最終問題。

 

確認問題3

あなたが《倍増の季節》ヴォリンクレックスをコントロールしている時に、《自然の職工、ニッサを唱えた。戦場にいくつの忠誠カウンターを置いてでるだろう?

また、その後+3能力を起動した後で、カウンターは最大いくつにできるだろう?

 f:id:omamesensei:20210210221543j:plainf:id:omamesensei:20210210221550j:plain

 

さあ、考えてみよう。

 

まず、戦場に出る時。

両方とも置換効果を適用できるんだったね。

5個が2倍の10個になり、それを2倍にした20個が置かれた状態でニッサは出る。

 

なんとも豪快だね。

 

次に+3を使う。

そうするとヴォリンクレックスが3個を倍にするので6個のカウンターが置かれる。

よって、答えは26個…

 

 

ではない。

 

ここまでの話を聞いて、そうじゃないことに驚いているかもしれない。

しかし、ここまで出てきたルールをおさらいすれば「本当の答え」が見えてくる。

 

今、ヴォリンクレックスの能力が3個のカウンターを置く処理を6個に置換したね。

この置換するっていうのはなんだっけ?

 

置換効果だ。 置換「効果」だ…!

 

今、まさに今!

ヴォリンクレックスの能力が生み出した「効果が、あなたがコントロールしているパーマネントの上にカウンターを置こう」としている…!

《倍増の季節》

効果が、あなたがコントロールしているパーマネントの上にカウンターを1個以上置くなら、代わりにその効果はそのパーマネントの上にそれらのカウンターをその2倍の数置く。

 

よって、今置換効果が置こうとしている6個のカウンターの2倍の12個のカウンターが置かれる。

 

20個のカウンターを置いて出てきたニッサに12個のカウンターが置かれる。

 

というわけで、正解は32個となります。

 

 

 

本当ぉ~????

 

なんか、怪しくない?

そもそも最初の置換のタイミングでは置換できないはずの置換効果を別の置換効果の後から処理するのって因果がねじれてない?

 

総合ルール616.2 

置換・軽減効果は、イベントを修整する別の置換・軽減効果の結果として、イベントに適用できるようになることがある。 

 総合ルール614.16 

「効果によりあなたのコントロール下でトークンが1つ以上生成されるなら/if an effect would create one or more tokens」あるいは「効果によりパーマネントの上に1個以上のカウンターが置かれるなら/if an effect would put one or more counters on a permanent」適用される置換効果が存在する。呪文や能力の解決の効果がトークンを生成したりパーマネントにカウンターを置いたりする場合と、他の置換・軽減効果がそうする場合にこれらの置換効果が適用される。置換・軽減効果の影響を受けるイベントそのものが効果でなかった場合にも適用される。 

 

というわけで、総合ルールに記載されている通り。

ヴォリンクレックスの能力を通すことで、結果的に「適用されなかったはず」の《倍増の季節》が置換効果を働かせることができる。

 

まとめ

 

ヴォリンクレックスは効果でないイベントで置かれるカウンターも増やすことができる置換効果を生み出す能力を持つ。

《倍増の季節》効果によって置かれるカウンターのみを増やせる。

2つを並べると、《倍増の季節》だけでは適用できなかった「効果ではないイベント」に対して、ヴォリンクレックスの能力が生み出した置換効果を適用すると、《倍増の季節》を適用できるようになる。

結果として、あなたが置くカウンターは4倍になる。

 

 

理解してもらえただろうか?

新カード《巨怪な侵略者、ヴォリンクレックスを統率者にしてEDHを遊ぶときには、ぜひ《倍増の季節》との相互作用を楽しんでみてほしい。

すごくエキサイティングな体験になるだろう。

 

大量のカウンターが好きなティミーも、相互作用好きのジョニーや、ルールの重箱の隅をつつくのが好きなメルヴィンもきっとこの組み合わせを気に入ると思うよ。

(スパイクはヴォリンクレックスの強さに満足していると思うし、ヴォーソスはファイレクシア語ヴォリンクレックスに興奮していると思う)

 

ではまた次回、ヴォリンクレックスの話題で会おう。

 

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 カルドハイム系記事

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【#MTG】多相の戦士トークンと《ルーンの光輪》【#カルドハイム】

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ついにカルドハイムが発売し、スタンダードにたくさんのカードが追加された。

面白いカードがたくさんあるので、どんなデッキを組むか悩ましいね。

 

さて、今回はそんなカルドハイム期スタンダードで起こりうる奇妙な状況を題材に、

「カードの名前」についてのルールを深掘りして遊んでいくよ。

 

まず、こんな状況を想定してほしい。

君のライフは残り2点。

戦場に君のクリーチャーはいない。

対して対戦相手にはカルドハイムで新登場した《リトヤラの熊々》によって生成された

「多相を持つ青の2/2の多相の戦士・クリーチャー・トークン」がいる。

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このまま相手のターンが始まれば君は敗北してしまうだろう。

最後の望みをかけて、君がドローしたカードは《ルーンの光輪》だった。

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《ルーンの光輪》はカード名を1つ選び、その名前を持つオブジェクトから君を守ってくれる。

今、君は目の前にいるトークンの名前を宣言し、生き延びることができるだろうか?

 

 

問題点を整理する。

 

さて、上記のシチュエーションで問題がありそうなところを整理していこう。

疑問点は大きく2つ。

疑問1.トークンに名前ってあるの?

疑問2.仮にあるとして、指定できるの?

 

では順に見ていこう。

 

疑問1.トークンには名前があるのか?

 

クリーチャーには名前がある。

《ラノワールのエルフ》は「ラノワールのエルフ」という名前があり、

《セラの天使》は「セラの天使」という名前を持ち、

《シヴ山のドラゴン》は当然「シヴ山のドラゴン」だ。

 

だが、トークンはどうだろう?

 

トークンは名前を持つのだろうか?

いや、むしろ逆に名前のないクリーチャーっているのか?

 

MTGの総合ルールを読みこむことでクリーチャーは名前を持たなかったり、

名前を複数持ったりすることがあるのがわかるのだ。

 

じゃあ、先ほどの例で出てきたトークンがその「名前を持たないクリーチャー」であるのだろうか?

 

いや、そうではない。

総合ルール111.4を読んでほしい。

 

総合ルール111.4

トークンを生成する呪文や能力が、そのトークンの名前とサブタイプを定める。特に書かれていない限り、トークンの名前は、そのサブタイプと同じである。例えば、ゴブリン・スカウト・クリーチャー・トークンはゴブリン・スカウトという名前であり、クリーチャー・タイプはゴブリンとスカウトの二つとなる。トークンが戦場に出た後では、名前が変わってもサブタイプは変わらない。その逆も同じである。

 

どうやら、トークンにはそのサブタイプと同じ名前があるらしい。

疑問1の答えは見えた。

トークンには名前があり、その名前はサブタイプと同じである。

 

疑問2.仮にあるとして、指定できるの?

 

もう「仮にあるとして、」ではないね。

トークンにも名前がつくことがある。

後は《ルーンの光輪》でカード名を選ぶときにそれを選ぶことができるかどうかだ。

 

総合ルールはこの疑問にも答えてくれる。

総合ルール201.3を参照あれ!

 

総合ルール201.3

効果によってプレイヤーが名前1つを選ぶ場合、そのプレイヤーはオラクルに存在するカードの名前を選ばなければならない(rule 108.1 参照)。プレイヤーは、カードの名前でないトークンの名前を指定することはできない。

 

プレイヤーはトークンの名前を指定することはできない!

 

疑問2も解決したね。

プレイヤーはトークンの名前を指定することはできない。

例えば君が「ゴブリン」という名前を持つゴブリン・トークンに命を狙われていても、

《ルーンの光輪》は君を助けてはくれない。

f:id:omamesensei:20210209012327p:plain

 

さあ、対戦相手が急かしてくるよ。

君は早く、着地した《ルーンの光輪》の処理を完了させるために何かカードの名前を言わないといけない。

 

なんでもいい。君は存在するカードの名前を言わないといけない。

例えば《多相の戦士》なんかいいんじゃないかな?

 f:id:omamesensei:20210209012540j:plain

 

…は?

 

困ったことに、MTGの歴史は長く様々なカードが生まれてきた。

そして20年以上も前の大昔に、あるのだ。

《多相の戦士》という名前のクリーチャーが、いるのだ。

 

つまり君は大昔の《多相の戦士》くんのことを考えながら、

「存在するカードの名前」として《多相の戦士》を宣言することができるはずだ。

 

すると君は目の前の《多相の戦士》からルーンによって守られる。

ええ? 本当ぉ?

 

実はMTGには実際のクリーチャーの名前とトークンの持つサブタイプが合致してしまうケースが稀にある。

例えば統率者戦で《巣ごもりドラゴン》の生成するトークンを見てみよう。

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こいつはサブタイプと同じ「Dragon Egg」という名前を持つわけだ。

マジックには《Dragon Egg》が存在する。

 f:id:omamesensei:20210209012804p:plain

 

わーお。

トークンの名前を指定することはできない。

ただし、こういったレアケースの場合だけはある種のバグ的な挙動として、

トークンの名前を間接的に指定することができる。

その場合《ルーンの光輪》によるプロテクションはそのトークンにも及ぶことになる。

 

でもちょっと待って?

新しい疑問がここで1つ生まれる。

 

疑問3.存在するカード?

 

統率者戦での《Dragon Egg》「Dragon Egg」トークンの例では、

トークンを生み出すカードも、名前の被ってしまったカードも両方デッキに入れることができる。

どちらも同じフォーマットに存在するカードだった。

しかし、《多相の戦士》はどうだろう?

20年以上前の古いカードであり、当然スタンダードでは使えない。

「スタンダードに存在しないカード」をカード名指定で宣言することができるだろうか?

 

数年前まで、それはできないことだった。

カード名指定をする効果は、その環境で使用可能なカードから選ばなければならなかった。

今はそうではない。

 

実はひっそりとルールが改訂されているのだ。

 

というわけで、大昔の《多相の戦士》のカードを思い浮かべながら、ルーンの指定を行えば君は「多相の戦士」という名前のあらゆるカードに対してプロテクションの加護が発揮される。

 

うん、「多相の戦士」という名前のカードならね。

 

なんだかちょっと含みのある言い方だね。

まだ、何か問題点があるのだろうか?

 

疑問4.君の名は?

 

さあ、一番最初のケースに戻ろう。

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君の目の前にはこのトークンがいて、君は大昔の《多相の戦士》へ思いを馳せながら《ルーンの光輪》を戦場に出して、「多相の戦士」を宣言した。

 

あらゆる「多相の戦士」という名前のカードは君に手出しできない。

ところで君の前にあるそいつの名前は「多相の戦士」なんだろうか?

 

おいおい、最初に確認したことをもう忘れたのか?と、君は思うかもしれない。

そうだった、そうだった。

トークンには名前があり、その名前はクリーチャータイプと同じである。

 

その名前はクリーチャータイプと同じである。

うんうん。うん?

 f:id:omamesensei:20210209012957p:plain

 

多相(このトークンはすべてのクリーチャー・タイプである。)


このトークンはすべてのクリーチャー・タイプである??

 

トークンには名前があり、その名前はクリーチャータイプと同じである。

 

も、もしかして…トークン、お前の名は…

「Advisor Aetherborn Ally Angel Antelope Ape Archer Archon Army Artificer Assassin Assembly-Worker Atog Aurochs Avatar Azra Badger Barbarian Basilisk Bat Bear Beast Beeble Berserker Bird Blinkmoth Boar Bringer Brushwagg Camarid Camel Caribou Carrier Cat Centaur Cephalid Chimera Citizen Cleric Cockatrice Construct Coward Crab Crocodile Cyclops Dauthi Demigod Demon Deserter Devil Dinosaur Djinn Dog Dragon Drake Dreadnought Drone Druid Dryad Dwarf Efreet Egg Elder Eldrazi Elemental Elephant Elf Elk Eye Faerie Ferret Fish Flagbearer Fox Frog Fungus Gargoyle Germ Giant Gnome Goat Goblin God Golem Gorgon Graveborn Gremlin Griffin Hag Harpy Hellion Hippo Hippogriff Homarid Homunculus Horror Horse Human Hydra Hyena Illusion Imp Incarnation Insect Jackal Jellyfish Juggernaut Kavu Kirin Kithkin Knight Kobold Kor Kraken Lamia Lammasu Leech Leviathan Lhurgoyf Licid Lizard Manticore Masticore Mercenary Merfolk Metathran Minion Minotaur Mole Monger Mongoose Monk Monkey Moonfolk Mouse Mutant Myr Mystic Naga Nautilus Nephilim Nightmare Nightstalker Ninja Noble Noggle Nomad Nymph Octopus Ogre Ooze Orb Orc Orgg Otter Ouphe Ox Oyster Pangolin Peasant Pegasus Pentavite Pest Phelddagrif Phoenix Phyrexian Pilot Pincher Pirate Plant Praetor Prism Processor Rabbit Rat Rebel Reflection Rhino Rigger Rogue Sable Salamander Samurai Sand Saproling Satyr Scarecrow Scion Scorpion Scout Sculpture Serf Serpent Servo Shade Shaman Shapeshifter Shark Sheep Siren Skeleton Slith Sliver Slug Snake Soldier Soltari Spawn Specter Spellshaper Sphinx Spider Spike Spirit Splinter Sponge Squid Squirrel Starfish Surrakar Survivor Tentacle Tetravite Thalakos Thopter Thrull Treefolk Trilobite Triskelavite Troll Turtle Unicorn Vampire Vedalken Viashino Volver Wall Warlock Warrior Weird Werewolf Whale Wizard Wolf Wolverine Wombat Worm Wraith Wurm Yeti Zombie Zubera」

なのか!?

 

余談だけど書いていて一番気持ちよかったのは「E」の項目。

エルダー・エルドラージ・エレメンタルな象エルフの大鹿の目、好き。

 

さて、トークンカードの名前欄には「多相の戦士」という名前がある。

 

となると、このクリーチャー・トークンの名前については3つの可能性がある。

 

1つ目、「めちゃくちゃ長い名前」である。しかしトークンカードでは省略されている。

2つ目、書いてある通り「多相の戦士」という名前である。

 

…3つの可能性…?

 

3つ目の可能性。

それは「めちゃくちゃ長い名前」と「多相の戦士」という2つの名前を持つ可能性である。

何を言っているんだと思われるかもしれないけど、最初の方で書いたようにマジックのルール上はクリーチャーが名前を持たなかったり、逆に複数持ったりするのだ。

もしかしたらこのトークンの名前が2つあるかもしれないだろ!!

(混乱しないように先にネタばらししておくと、実際には こいつの名前は1つしかないです)

 

さーて、ややこしくなってきたぞ。

 

まあでも、素人がぶつかるような問題の答えと言うのは既に出ているものであることが多い。

少しネットで調べれば、疑問4の答えはどうやら2番。

書いてある通り「多相の戦士」という名前である。が正解らしいと分かる。

しかし、なぜそうなるかは調べてもなかなか出てこない。

「1+1=2は簡単だけど、1+1=2の証明は難しい」みたいな話だね!

君もなぜそうなるか気になるよね?

さあ、総合ルールを読み解き、深淵を一緒に探ろうじゃないか!!

 

 

トークンには名前があり、その名前はクリーチャータイプと同じである。

 

しかし、すべてのクリーチャータイプを持つ多相の戦士トークンの名前は、「クリーチャータイプを連ねた長い名前」ではなく多相の戦士である。

 

なぜだろう。

 

私はこの謎の答えは「種類別」のルールに眠っていると考えた。

種類別の話と言うか、種類別じゃあ話にならないというか。

 

多相についてルールを確認してみよう。

総合ルール702.72a 

多相は特性定義能力である「多相/Changeling」は、「このオブジェクトは全てのクリーチャー・タイプである」を意味する。この能力はゲームの外部も含むあらゆる場所で機能する。

 

特性定義能力は種類別のルールに置いて同種の効果の中では最も早く適用される。

多相はその特性定義能力である。

 

しかし、この「早さ」はあくまで種類別の中での早さ。

ルールにはもう一段階早い適用順がある。

 

総合ルール613.1

 オブジェクトの特性の値は、そのオブジェクトそのものの値から始まって決定される。カードであればそのカードに記載されている特性の値、トークや(呪文やカードの)コピーであればそれを生成した効果によって定められた特性の値を初期値とする。その後、以下の種類別の順番で適用できる継続的効果をすべて適用する。 

 

《リトヤラの熊々》が生成する「多相を持つ青の2/2の多相の戦士・クリーチャー・トークン」初期値として「多相の戦士」のクリーチャータイプを持っている。

それに同期する形で、カード名もまた「多相の戦士」を初期値にとる。

その後でやっと「最速の変更効果」である特性定義能力が反映される。

多相によるクリーチャータイプの変化もここで適用されることになる。

多相が変更できる特性はあくまでサブタイプのみである。

名前と言う特性に直接触る効果は含まれていない。

なのでカード名は初期値のまま、多相がいじれるサブタイプのみ第四種変更効果によって書き換えられる。

 

つまり、「トークンの名前の決定」よりも後で、「トークンのサブタイプの追加」が行われていると考えることで、トークンのカード名が「多相の戦士」1つであることが説明づけられる…はずだ。

 

 

それではまた次回、次なるパックに伴うルールの面白い話があればまた会おう。

それまであなたに知識の神アールンドの加護がありますように…!

 

 

 

今回のまとめ

 

カルドハイム発売時点でのスタンダード対戦中に《リトヤラの熊々》によって生成されたトークンの名前は「多相の戦士」である。

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マジックには同じ名前を持つ《多相の戦士》というカードが大昔に作られている。

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《ルーンの光輪》を使い《多相の戦士》を指定することで目の前の「多相の戦士」トークンからのダメージを軽減することができる。

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(2021.11.11追記)

マジックの総合ルールに改定が入りました。

この記事で触れたマジックの「バグ」的な挙動を整理するために、

トークンの名前は「そのサブタイプの名前・トークン」であるというルールに変更されます。


つまり、今回の例では「多相の戦士・トークン」と言うのがトークンの名前になるため、既存のカード《多相の戦士》とは異なる名前であるため、

《ルーンの光輪》で《多相の戦士》を指定しても、多相の戦士・トークンの与えるダメージを軽減することはできなくなります。



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