第1話 ↓
前回 ↓
超次元MTG対戦TYPE/Zero
前回までのあらすじ
1ターンキルを超える0ターンキルを使うTYPE/ZERO四天王、長田(おさだ)
しかし我らが主人公カジュアルMTGプレイヤー、レイは0ターンキルに特化しすぎたが故のスキをついて攻略した。
残るTYPE/Zero四天王は2人!
戦え、レイ! 楽しいMTGを遊ぶために!
超次元MTG対戦TYPE/Zero
第3話「うねる右腕!3分の1の類人猿」
「また…ショップが…」
「うん。またTYPE/Zeroの暗黒面に落ちてるね…」
「今度は《ドロスの大長》が流行ってるの…?」
「みんな、子供だからね」
「正直、私だって0ターンキルって言葉にワクワクしないかって言われると、ちょっと気になるもの」
「でもまだ《ドロスの大長》は流行ってほどじゃないかな」
「流石にショップには十分いきわたるほどは大長は売ってなくて…」
「ナメクジを使う子たちが少しだけデッキに入れてるみたい」
「いやまあ、私も組んだからあんまり強くは言えないけど…」
「あれはもうMTGじゃないよ…」
「呪文も唱えずに戦うなんてマジックの名前にふさわしくない…!」
「よくわかってるじゃねーか。その通り」
「呪文を唱えてこそのマジックだ」
「マジック:ザ・ギャザリングは魔法使いになってデッキという魔導書から呪文を唱えるゲームだ」
「呪文を唱えなきゃ、マジックじゃないよなあ」
「俺はそこんところ弁えてるぜ」
「このTYPE/Zero四天王、猿渡(さるわたり)はな!」
「またTYPE/Zero四天王…!?」
「レイさん…! こいつのデッキは…!」
「おっと、使うデッキについて横から口を出すのはフェアじゃあねえな」
「長田、てめえ いつの間にかそっちに寝返ったんだ。」
「くっ…!」
「一緒に四天王を名乗っていたのに悲しいねえ」
「まあ、お前は一度も俺に勝ったことがないからな」
「その点ではとても仲間とは呼べなかったかもしれないが…」
「言わせておけば…!」
「レイさん、こいつの相手はわたくしにやらせてください!」
「ほう? 一度も俺に勝ったことのないお前がか?」
「いいだろう。TYPE/Zeroを挑まれて断るなんてことは俺達には許されない」
「また前みたいに消し炭にしてやる」
決闘!
「先攻はもらうぜ」
「別に構いませんわ」
「そうかい。じゃあ行くぜ!いや、来いといった方が良いかな?」
「どうせいつものデッキだろう?」
「私はゲーム開始時に手札から《ドロスの大長》を7枚公開!」
「出た! 長田さんの0ターンキルコンボだ!」
「あいてはゲーム開始時のカード公開無し!」
「これは勝負ありだな!」
「それはどうかな?」
「なあ、お前ら」
「ゲーム開始時の大長の効果とか、唱えることなく場にナメクジ出すとか…」
「そんなマジックして楽しいか?」
ざわざわ
「MTG、マジック:ザ・ギャザリングってのはさあ、呪文を唱えあう魔術師のゲームだ」
「それを忘れちまってるんじゃないか…?」
「俺が本当のマジックを教えてやるよ…!」
「俺のターン!…ここで《ドロスの大長》の能力がスタックに積まれる。そうだな?」
「スタック…?」
「知らないのか?」
「MTGでは唱えた呪文やカードの能力は、一度スタックってところに置かれるんだよ」
「例えば相手の呪文を打ち消すカウンター呪文とかあるでしょ?」
「そういったカードを相手の行動に対応して使うために、使われたカードはちょっと待機して、何も対応がなければ解決されるってルールになっているの…」
「…!」
「つまりあいつは対応して何かするってこと!?」
「俺は手札の《猿人の指導霊》2枚を手札から追放する!」
「これにより赤マナが2つ生まれた。」
「普通のマジックはこういうマナを支払って呪文を唱えて遊ぶもんだろうが」
「それじゃあ見せてやるぜ…これが本当のマジックだ。」
「《うねる炎》の呪文を唱える!!」
「《うねる炎》アルか…!?」
「知っているのか、ミンメイ!?」
波及 4
(この呪文をプレイしたとき、あなたは自分のライブラリーの一番上から4枚のカードを公開してもよい。 あなたは公開されたカードの中にあるこの呪文と同じカード名のカードを、マナ・コストを支払わずにプレイしてもよい。 残りのカードはあなたのライブラリーの一番下に置く。)
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。
うねる炎はそれに2点のダメージを与える。
「波及能力により山札の上から4枚を公開!」
「《うねる炎》《うねる炎》《うねる炎》《猿人の指導霊》」
「俺は3枚の《うねる炎》をコストを払わずに唱えて、更に公開!」
「ヒャハッ! また《うねる炎》が出たぞ!」
「ひっ、ひどすぎる…!」
「おいおい、おれはちゃあんと呪文を唱えたんだぜ?」
「ナメクジやドロスなんかより、よっぽど普通にマジックしてるじゃあないか?」
「ただちょーっと引きが良くて連続で当たっちまっただけかもしれないぜ?」
「さあ次の《うねる炎》の波及を解決しないとなあ」
「4枚めくって…ちっ、ぜんぶ猿か」
「まあいい」
「まだ解決してない方の《うねる炎》の波及だ…!」
「4枚めくって…よしっ2枚ゲット!」
「ははははは!次の《うねる炎》は…」
「おお! 4枚全部《うねる炎》がめくれたぞ!」
「これでめくれた枚数が10枚を超えたぜ」
「解決待ちのダメージが初期ライフ20点を超えたけど、まだ続けるか?」
「投了…ですわ…」
「ははは。そりゃあそうだわなあ…!」
「雑魚め! お前じゃあ俺には一生勝てないんだよ!」
「まさか《ドロスの大長》の0ターンキルよりも早い勝ち手段があるだなんて…」
「あんなデッキに勝てるわけがないじゃない…」
「0ターンキルをされる前に相手を倒すデッキ…!」
「言うなれば『0ターンキル』キル!」
「はははは。楽しい決闘だったぜ。さあ、次はお前の番だ!」
「よくも長田さんを…!」
「自分の仲間を手にかけて…! 笑ってられるね!」
「楽しいマジックを私が思い出させてあげるわ!」
「覚悟しなさい猿渡!」
(あれ?)
(でも友達とMTGで戦うって普通のことじゃ…)
(いや、私の考えでみんなを混乱させるわけにはいかない…)
(この考えは心に止めておこう)
「あなたは長田さんの決闘者の魂を侮辱した」
「もう手加減はしない…この禁断のデッキに手を染めてでも私は、お前を…!」
(なんだ、あの異様なデッキは…デッキの横に別のカードの束…?)
(まさか、あれはアイツと同じデッキ…いや、まさかな…)
「まあ楽しく決闘しようぜ。互いの決闘者の魂をかけてな」
「お断りよ。私はこのゲームに『何も賭けはしない』」
「こんなくだらないゲーム、すぐに終わらせてやる!」
決闘!
「先手後手は公平にコイントス…「なにを勘違いしているの?」
「あなたには先手をもらう『資格』すら存在しない!」
ざわ…ざわ…
「なんかレイちゃんの目、怖くない…?」
「いったいどうしちまったんだ」
「先手後手の決定前に…私はサイドボードからカードを公開する!」
「サイドボード?」
「サイドボードっていうのはデッキの予備のカードだ」
「試合の合間にデッキを組み替えたりするのに使うんだけど…」
「MTGのカードの中には試合の合間でなく、対戦の最中や対戦開始時にサイドボードを使うカードが少量ながら存在するアル」
「これが…ッ! 権力だぁッ!!」
「あれは! 禁断の『策略カード』アルか!?」
「知っているのか、ミンメイ!(本日2回目)」
「策略カード、それはMTGの特殊セット、策謀の多人数戦宮廷闘争を遊ぶ『コンスピラシー』のパックで登場したカード!」
「あまりの強さから使用できる可能性のある全フォーマットで『当然のように禁止』されたカード群ネ…!」
「ゲーム開始に際して、サイドボードの《権力行使》を私の統率領域に…」
「私が…開始プレイヤー、つまり先攻になる!」
「そんな!コイントスやダイスロールじゃなくて…」
「持っているだけで先攻になるカード!?」
「そんなカードが実在するのか…!?」
「そもそも使っていいのかよ!?」
「TYPE/Zeroは『定型のマジックのカード』を用いる限り、なんでも許される…」
「似たような特殊セットのカードとして『英雄カード』や『計略カード』『ヴァンガードカード』、そういった特別なカードはいくらでも存在するアル」
「でもそれらはパーティゲーム用の特大サイズカードや、裏面がMTGのものでなかったりしてType0で使用可能なカードを定義する『定型のマジックのカード』ではないアル…」
「でもコンスピラシーは違う…」
「策略カードは『他の普通のカードと混ぜて使うカード』…!」
「ゆえに『大きさ』も『カードの裏面』も『定型のマジックのカード』になっているアルよ」
「さあ、猿渡(さるわたり)。あなたも《権力行使》を使うならコイントスに応じてあげるけど、どうするの?」
「もっともサイドボードを用意してないように見えるあなたには…」
「聞いても無駄なようだけどね」
「先攻になったくらいで調子に乗るな!」
「さっきの対戦を見ればわかるだろう?」
「先手だろうと後手だろうと関係ねえ!」
「そう思うのは勝手だけど。まだ私マリガンするかどうかすら決めていないのよ?」
「見せてあげる。策略の真の力…呪文を唱える本当のマジックを」
ゾクッ…
(レイちゃん、怖いよ…いったいどうしちゃったの…!?)
次回予告
豹変するレイ…いったい彼女に何が起きているのか!
『策略』カードに秘められた真の力とは?
次回決闘は最終局面(ゲーム開始時)へと向かう!
次回、超次元MTG対戦TYPE/Zero
第四話 「刹那の策略!最強のTYPE/Zeroデッキ」
第4話はこちら↓