バーチャルVtuver豆猫さんの与太話

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超次元MTG対戦TYPE/Zeroかじゅある 第5話『嵐雲のカラス飛び去り…』

第一話

 

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前回

 

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「マジック? それって手品のこと?」

 

「ううん、カードゲーム。外国の」

 

「カードゲームって男の子たちの遊びだと思ってた」

 

「むしろクラスの男の子たちは遊んでないかな」

 

「そうなの?」

 

「外国のカードだからあんまり流行ってないんだよ」
「私はお兄ちゃんから教えてもらったんだけど」

 

(レイちゃんのお兄ちゃん…)
(そういえば家出しちゃったとかって聞いてるけど…)

(ああ、そうか。だからレイちゃんは今、遊び相手がいないんだ)

「ねえ、レイちゃん。私にも遊び方教えて!」


「……!」
「もちろん!えっとまずはデッキの色…あっ、デッキっていうのはカードの束でね…」

 

寂しそうな顔をしていたレイちゃんの顔が笑顔に変わって、
私も嬉しかった。

こうして私は、MTGを始めた。

 

~~~

 

レイちゃんは私にデッキをくれた。
アオイにちなんで色は青。
だから私は青使いとしてマジックを始めた。
「打消し」とかの難しいカードなしで他の色との違いを出すために、
小型の飛行クリーチャーと壁、「手札に戻す呪文」「カードを引く呪文」だけのデッキだった。

手にしたカードは男の子たちのやってるようなキラキラしたカードとは違って、
なんだが古文書のような感じで、背伸びしたい女の子だった私にはとってもかっこよく見えた。
日本語のカードと英語のカードが混ざっていたけど、
ほとんどは数字だけ分かれば十分だった。
それに動物さんたちも可愛かったし。
(これについてはすぐに間違っていたと気づくことになったけど)

「それじゃあ教えながらやるね…」

土地を置いて、マナを生み出し…
呪文を唱える…

 

「しょうかん呪文?」

 

「そう、仲間になってくれる動物とかを呼び出す呪文だよ」

 

「それじゃあ…えっと水のマークだから島を寝かせて…1ってあるからもう1枚…」

「島2つからマナを出して…この鳥さんを呼び出すよ!」

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それが私が初めて唱えた「呪文」だった。

 

~~~

 

しばらくしてミドリちゃんもマジックを始めた。
外で体を動かすのが好きな子だったから意外だったけど、
仲のいい友達がまた一人マジックを始めたのは嬉しかった。
ミドリちゃんは大きな生き物のカード、象とかなんだかよくわからない生き物とかを気に入っていた。

私はそういう大きなクリーチャーを呪文で手札に戻して、
その間に《嵐雲のカラス》でぺしぺし叩いた。

 

~~~

 

「よし、レイちゃんの残りライフ1点!」

 

「でも、アオイちゃん手札が尽きたみたいだね」
「それじゃあ、《神の怒り》!」

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「ああっ!私の並べた子たちが全部やられちゃった…!」

 

そして経験上、次のターンには《セラの天使》が出て来るに違いなかった。

 

「うう…ドロー。」

「来た!」

「私の《嵐雲のカラス》! 攻撃して私の勝ち!」

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「バカ! 速攻がないクリーチャーは召喚酔いで攻撃できないだろ!」

 

「…! 持ってるもん!速攻持ってるもん!」

こんなにかっこよく空を飛ぶ《嵐雲のカラス》が速攻を持ってないのがなんでかわからなかった。
そして、私はとんでもないことをしでかした。

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マジックで書き込まれたへたくそなひらがなの「そっこう」
これにはレイちゃんも笑い出して、言った。

「わかった、アオイちゃんの《嵐雲のカラス》は速攻があるんだね」

それ以来、私たち3人の間では私の《嵐雲のカラス》は
2マナの1/2で飛行と「そっこう」を持つことになった。

 

~~~

今にして思えばなんてことをしたんだって感じだ。
あの綺麗な英語の詩のフレーバーテキストを隠すなんて…って思うけれど、
当時の私にはゲームに関わらないフレーバーテキストよりも
「そっこう」の方が大事だった。
1人だけだとズルいのでミドリちゃんの《甲鱗のワーム》は「とらんぷる」を持った。
持ってないのが不思議だったのでこれは私もいいことだと思った。
私の弱いクリーチャーでは止められなくなったので、私は「手札に戻す呪文」についてより深く考えるようになった。

レイちゃんの《セラの天使》はパワーが5になった。
能力じゃなくてパワー1で許してくれるレイちゃんは優しいと思った。

(今にして思えば、キルターンが1ターン短くなってることがわかった)

 

~~~

 

英語の歌を習ったので、音楽の先生は英語が読めるんだと思って
何枚かのカードのフレーバーテキストを訳してもらったりした。

《嵐雲のカラス》のフレーバーテキストは先生も感心していた。

口に出した時、歌うようにきれいな韻を踏んでいて、
とてもすてきな詩だった。

 

Storm crow descending, winter unending.

Storm crow departing, summer is starting.

 

嵐雲のカラスが下りてきて、冬が続く。

嵐雲のカラスが飛び去って、夏が始まる。

 

私はカタカナで英語の読みを書いてもらって、

ずっとずうっと口ずさんでいた。

Storm crow descending, winter unending.

Storm crow departing, summer is starting.

 

~~~

超次元MTG対戦TYPE/Zeroかじゅある 

第5話『嵐雲のカラス飛び去り…』

 

 

「やっとたどり着いた…後攻第1ターン」
「ここまで来ないと使えないカードたちがあった…」
「これが私の反撃ののろし…!」
「秘策公開!」

「秘策カードを仕込んでいたのはレイちゃんだけじゃなかったんだ!」

「でもどうしてここまで使わなかったんだ?」

「使わなかったんじゃない。使えなかったんだ」
「秘策カードは統率領域に伏せておくカード…」

「そして最初に《権力行使》についてレイさんが言ったようにメインゲームの策略はサブゲームに持ち込めない」


「だからこそレイは『秘策をサイドボードに用意して設置しない』というルールの穴をついていたんだ」
「逆にいえばサブゲームが連打されるとは想定していなかったアオイちゃんの秘策カードは…」

「そうか!ずっとあったんだ『一番最初の机の上』にずっと!」

「ようやく…私は戻ってこれた、このテーブルに!」


「秘策《ブレイゴの好意》!指定は《魔力の櫃》」

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「このコンボで《魔力の櫃》は『0マナで無色3マナを生むカード』になる!」
「手札から3枚の《魔力の櫃》を設置!これも呪文なのでストームのカウントが3つ!」

「だが0マナから3マナを生み出すだけならデメリットもない《ブラック・ロータス》でいいはず!」


「《ブラック・ロータス》ならマナにも色がつくし…」

「でも《ブラック・ロータス》は場に残りませんわ」

「…?」

「ここで秘策《予想外の潜在力》指定は《Ancestral Recall》」

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「この秘策は指定した呪文に払うマナの色を無視できる!」
「無色マナ3点を《魔力の櫃》から引き出して、無色1マナから4つめの呪文《Ancestral Recall》」

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「カードを3枚ドローして…、5つめの呪文、再び《Ancestral Recall》!」
「追加の《Ancestral Recall》が引けたよ!6つ目の呪文《Ancestral Recall》!」

「怒涛の《Ancestral Recall》連打!」

「場にカードを並べてるのに手札が初期手札より増えている!」

「7から9枚目の呪文、《モックス・サファイア》を3枚」

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「10から12枚目の呪文、《モックス・ジェット》を3枚」

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「私は場のすべてのアーティファクト・カードからマナを取り出す!」
「合計で12マナ!」
「そのうち青1マナで13枚目の呪文、《撤収》」

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「このカードは私の場のアーティファクト・カードをすべて手札に戻す」

「そうか!これが《ブラック・ロータス》でなく《魔力の櫃》を使う理由!」
「使い終わった《ブラック・ロータス》は墓地へ送られるが、《魔力の櫃》は場に残り続ける…」
「《撤収》で手札に戻せばまたマナを出せるわけか!」

 

「それだけじゃない!もう一度すべてのアーティファクト呪文を場に出すときに《カラスの嵐雲》のストーム・カウントが伸びる!」

「すべてのアーティファクトを唱えなおすよ」
「合計のストーム・カウントは22!マナは26点分!」

Storm crow lonely, boon for a birder.
Storm crows together, likely a murder.


「嵐雲のカラス1羽、鳥殺しには格好の獲物。」
「嵐が叫んで共に来たなら、殺人的なカラスの群れ。」


「《カラスの嵐雲》!」

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「ストームが誘発して、このターンに唱えた呪文の数…22回分コピー!」
「合計23体の《嵐雲のカラス》を呼び出す!」

 



「秘策公開!《即応行動》!」

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「そうか、トークンに速攻を付与し一斉攻撃を…!」

「だけどトークンの名前は策略では指定できない…」
「秘策で指定できるのは『実在するマジックのカードのみ』だろう?」

「例えば《カラスの嵐雲》同様に《巣穴からの総出》というゴブリン・トークンを並べるストーム呪文がある」

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「でも生成されるトークンの名前は《ゴブリン》、《ゴブリンの~~》や《~~ゴブリン》というカードがあっても《ゴブリン》というカードはない」

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「だから《即応行動》で《巣穴からの総出》のゴブリン・トークンを指定することはできないんだ」
「《カラスの嵐雲》でも同じはずだぜ」


「このカードで指定したのは実在するマジックのカード。」

「マーカーとしてスリーブに一緒に入れてあるカードだよ」
「ねえ、レイちゃん。ミドリちゃん覚えてる?」


「《嵐雲のカラス》は『そっこう』持ちなんだよ!」

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「アオイの《嵐雲のカラス》!」


「《カラスの嵐雲》は実在するクリーチャー・カード《嵐雲のカラス》を元ネタにするジョークカード」


「だから生成されるトークンの名前も《嵐雲のカラス》になっている!」

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「ゴブリンと違って《嵐雲のカラス》はクリーチャー・カードの名前だから《即応行動》で指定できる…!」

「そっこうのカラスで一斉攻撃してアオイの勝ちだ!」

(これでやっとゲームが終わる!)
(レイちゃんもしたいことをして、私もしたいことをする、最高に楽しいゲームだった…)
(…本当にそう…?)
(何か見落としていない…?)
(それにレイちゃんのあの顔、あれは計画がうまく行ってる時の顔だ)
(《セラの天使》を手札に持っていて《神の怒り》を撃つ時の…!)

「凄いよ、アオイちゃん」
「これで終わりだね…私の負「待って!」

(そうだ!レイちゃんの『真の狙い』はアレだ!)
(たぶんやらせてあげるのが良いんだろう)
(それで私は『気づかなかったなあ、一本取られたよ』とでも言えば丸く収まる)


(でもね、気づいちゃったんだ)
(勝ち負けがあるから勝負。)
(それなら一度ゲームが始まった以上は勝ちに妥協しちゃいけないんだ!)

「レイちゃん、私はここまでちゃんとゲームに付き合ったよ」
「だからこれから私がすることもちゃんと見届けてくれないと」

「…!」
「それもそうだね。投了は無粋だったよ」
「いいよ、アオイちゃんがこの試合、何をしても私は投了しない」
「アオイちゃんのやりたいことを見せて」

「約束したからね!投了は許さないよ!」

次回、超次元MTG対戦TYPE/Zeroかじゅある
最終話「嵐はともに鳴く」

 

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