この記事はTRPGについて話すシリーズの第二回です。
第1回はこちら↓
前回のおさらい
①TRPGは「机を囲んで演じるゲーム」である。
②TRPGには「クリア条件」「ルールブック」「主体的な選択肢」がある。
さて前回の話では具体性が欠けていた。
ぼんやりとTRPGの輪郭を知るための話で、
具体的にTRPGとはどのようなものなのかは深めていない。
…というのもぼんやりと言うしかないのだ。
「具体的な話」に入ると非常にまとまりない話になってしまう。
そこでまずは外堀からTRPGの輪郭を探っていったのである。
さて、具体的にどのように遊ぶかと言う話になると何故まとまりがなくなるのか?
それはTRPGというのが広い範囲の「遊び」を包括するからである。
例えば君が「ニンテンドー3DSってどうやって遊ぶの?」と誰かに聞かれたとしよう。
ソフトを挿して、電源を入れて…
その後、どうしたらいいのだろう?
答えは「入れたソフトによって違う」ということになる。
あるゲームが「TRPG」であるということは、
別のあるゲームが「ニンテンドー3DSのソフトである」というくらい中身がない虚無情報なのだ。
ああ、でも「ニンテンドー3DSのソフトである」ということは 遊ぶゲームついていくつかのヒントをくれるね。
それはきっとタッチペンを使うだろう。
(使わないなら他のゲームでもいいはずだ。)
それから画面が上と下の2つあることも恐らく重要だ。
あとは…ああ、そうだ。当然3Dで奥行きのある映像が見れるだろう。
…おわかりいただけただろうか?
TRPGってどんなゲームって聞くのはこれと似たような問であり、
故に答えはぼんやりとしたものになってしまうのだ。
Q.ニンテンドー3DSとはどんなゲームか?
A.ソフトによる。
Q.TRPGとはどんなゲームか?
A.ルールブックによる。
一般的なコンピュータRPGは遊ぶのに2つのアイテムが必要になる。
「ハード」と「ソフト」だ。
「本体」と「カセット」という呼び方もできる。
具体例を挙げようか。
ニンテンドー3DSやプレイステーション4、Switch、PSVita…
これらはゲーム機本体に当たる。
ポケットモンスター・サン、SEKIRO、ブレス オブ ザ ワイルド、シェルノサージュとかがソフトだ。
あー。電源ゲームに詳しくない人もいるかもしれない。
ここは有名な「コンピュータRPG」であるドラゴンクエストとかファイナルファンタジーの方がわかりやすいか。
ドラクエやFFはソフト。
ファミコンとかゲームボーイがハードだ。
ここまではOK?
コンピュータRPGは本家RPGであるTRPGの新しい形だというのは前回話したね?
コンピュータRPGの「ハード」と「ソフト」にあたるものが本家RPGにも存在する。
先ほどのQ&Aからも分かるように、ソフトに対応しているのは「ルールブック」だ。
ではハードは?
そもそもなぜ「コンピュータ」RPGか?
さてテーブルトークRPGは机を囲んで離しながら遊ぶGameだ。
しかしこの遊びにはいくつか不便なところがあったのだ。
*現在は技術的な進歩により解決された部分も多い*
・進行役を担う者の負担が大きい
・判定の計算など頭を使う「作業」が出る
・複数人が予定を合わせて集まる必要がある
・集まれる場所が必要
・まとまった時間が必要
これらの問題の解決策として生まれたのがコンピュータRPGなのだ。
進行役をコンピュータにやらせることで人間の負担を減らし、
計算作業もコンピュータにやらせることで疲れることなくプレイできる。
他のプレイヤーの代わりもコンピュータにやらせることで1人で遊べるようになり
場所を取らず、予定合わせの必要もなくなり、長い時間続けて遊ばずともよくなり、
プレイ時間を分割することができるようになるのだ。
というわけでTRPGにおけるハードは「人間の頭」だ。
参加者の脳みそがTRPGにおける「ハード」になるのだ。
人間の頭という「ゲーム機」にルールブックという「カセット」を読み込ませる…という比喩は、
そもそもTRPGが本家RPGである以上、
「ゴジラっていうのはメカゴジラの生物版だよ」みたいな話になる。
なので本来あまりよくない例えではあるんだろうけど、現代の知名度としてはそう言うしかない。
テーブルトークRPGはコンピュータRPGがやっている処理を人間が担当するゲームなのだ。
さて、なぜTRPGでは処理を「人間がやっていた」でなく今なお「人間がやりつづけている」のだろう?
機械ではなく人間の「あたたかみ」が大事という手作り信仰の類なのだろうか?
いいや、そうではない。
「あいまいな処理」や「予想外の処理」をするためだ。
たとえば君が魔王の城に攻め込む時、開かない扉があって「鍵」というアイテムを取ってこないと先には進めない…
これはコンピュータRPGでよくある「処理」だ。
機械的な処理はプレイヤーの所持アイテムリストから「鍵」の有無だけを見る。
でも一度くらい考えたことはないだろうか?
「いや、仲間には爆裂魔法の使い手がいるんだからこんなドア、どかん☆とやっちまえばいいのでは?」と。
君が画面の前でそういったところでコンピュータRPGは
「鍵がないと開かない扉だ…」とシステムメッセージを返すだけだ。
しかしTRPGでは処理をするのは人間である。
「確かに…魔王の城に挑めるほどの魔法使いの爆裂魔法でも壊れない扉なんて、そんなにないよな…」と納得すれば
扉を吹き飛ばせるかもしれない。
なんなら一部のTRPGはルールブックに「扉を壊すのに必要なのはどれくらいの威力か?」というのが書かれていたりする。
あるいは「確かにその通りだけど君たちは今、魔王暗殺のために忍び込んでいることを忘れないで。派手な音がすれば魔王城の衛兵に見つかる可能性が高いよ」
などと「鍵がないと開かない扉だ…」以外の答えが返ってくるかもしれない。
「ぶっちゃけ、鍵を取りに行く途中でゲットするアイテムがないと扉の向こうのボスが倒せないんだよ」という本音トークが聞けるかもしれない。
なんだ。やっぱり色々と理由をつけてみたがつまるところ手作りの「あたたかみ」があるって話じゃないか。
TRPGは「テーブルトーク(机を囲んで話す)」RPGだ。
積極的に話し合い提案して物語を進められる。
そしてTRPGのプレイヤーをする時、君は「演劇を見る観客」でも「台本通りに動く役者」でもない。
主体的に選択をすることができる人格(キャラクター)なのだ。
そしてそれを受けて劇を動かすのもまた「台本」ではなく、人間なのだ。
これがTRPGを演劇というEventでなくGameにしている部分なんだ。
今回のまとめ
TRPGは「人間の頭」というゲーム機で遊ぶRPGだ。
ソフトにあたるのがルールブックである。
TRPGのウリのひとつは「あたたかみ」のある処理にある。