Twitterでこんな旨のツイートを見かけた。
「灯争大戦のボーラスと《灯の分身》と《狡猾なる漂流者、ジェイス》の3枚で無限にボーラスのコピーが作れるんじゃないの?」
「コピー可能な値がどうなのか知らんけど」
どういうことだろうか?
想定される動きは恐らくこうだ。
場にジェイスとボーラスがいる。
ここで《灯の分身》を唱え、その能力により「忠誠度カウンターが1つ多く載るボーラス」として場に出す。
これで忠誠度5のボーラスが出る。
(以降、このオブジェクトを【ボーラスの分身】と呼称する)
この【ボーラスの分身】はその能力により、ジェイスの奥義を即座に使える。
奥義を使うとまず【ボーラスの分身】からは忠誠度カウンターが5つ取り除かれる。
【ボーラスの分身】の忠誠度能力がスタックに乗り、
その直後の優先権のチェックに合わせて状況起因処理によって【ボーラスの分身】は死亡する。
【ボーラスの分身】の忠誠度能力を解決することで【ボーラスの分身】のコピートークンが2体、忠誠度5で戦場に出る。
これにより出たトークンを【トークンA】【トークンB】とする。
以降、奥義により出るトークンをトークンC,D,E,…とする。
【トークンA】が奥義を使用し【トークンC】と【トークンD】を生成し、
【トークンB】が適当にボーラスの+1能力を使い1枚ドローして相手にカードを追放させる。
【トークンC】が奥義を使用し【トークンE】と【トークンF】を生成し、
【トークンD】が適当にボーラスの+1能力を使い1枚ドローして相手にカードを追放させる。
…これを繰り返した後で今度はボーラスの+1の代わりにジェイスの-2を使うようにしていけば、
《残骸の漂着》などを撃つマナや手札を残さずに2/2の群れが相手を攻撃して勝てる…ということであろう。
さて、本当にそんな事が可能なのだろうか?
いくつかの「ルール上可能か?」というハードルを越える必要がありそうだ。
それらを検証していこう。
Q1.すでに忠誠度能力を使ったプレインズウォーカ―のコピーは忠誠度能力を使えるか?
A1.可能である。
忠誠度能力は1ターンに1度までだ。
果たして既に効果を使ってしまったプレインズウォーカーのコピーは能力を使えるか?
コピートークンは忠誠度能力を使えるか?
忠誠度能力は1ターンに1度までという制限はオブジェクト1つあたりにかかるので、
コピーはコピー元が使っているかを参照しない。
加えて言えばコピー元は能力を使っていない本物のボーラスなので、この質問自体がお門違いだ。
ちょっとばかり君たちがちゃんと読んでくれているか試したのである。
Q2.【ボーラスの分身】が出すトークンは「狡猾な漂流者、ジェイス」ではないのか?
A2.【ボーラスの分身】が出すトークンはボーラスである。
総合ルール 201.4b
そのオブジェクト自身をカード名で参照している能力をカード名の異なるオブジェクトが得た場合、
得られた能力に含まれる、前者のカードを参照するために用いられている前者のカード名はすべて後者のカード名であるとして扱われる。
というわけで今回のパターンにあてはめると…
「そのオブジェクト自身をカード名で参照している能力(ジェイスの奥義)」を
「カード名の異なるオブジェクト(【ボーラスの分身】や【トークンA】)」が得た場合、
「得られた能力(ジェイスの奥義)」に含まれる、
「前者のカードを参照するために用いられている前者のカード名(狡猾な漂流者、ジェイス)」はすべて
「後者のカード名(Nicol Bolas,Dragon-God)」であるとして扱われる。
つまりボーラスの常在型能力によってジェイスの奥義を得た場合、
その能力は「‐5:それが伝説でないことを除きNicol Bolas,Dragon-Godのコピーであるトークンを2体生成する。」となる。
なので出てくるトークンはボーラスのコピーである。
というわけで問題はすべて解決したのでデッキの形にこのコンボを組み立てて…
待った!
我々は重要なところを見落としている。
果たして出てくるボーラス様の上の忠誠度は5つなのだろうか?
すべてのプレインズウォーカ―は「戦場に出るに際し、初期忠誠度に等しい数の忠誠度カウンターを乗せた状態で出る」という能力を持つ。
これを《灯の分身》が場に出るに際し~の能力で上書きした。
この「戦場の出るに際し~」の能力が【ボーラスの分身】のコピー可能な値として認められる場合、
忠誠度カウンターは5つ載る。
だが、これがコピー可能でないとしたら【トークンA】および【トークンB】の上には忠誠度カウンターが4つしか乗らないことになる。
はたして「それが戦場に出るに際し」という部分はコピー可能な値なのだろうか?
総合ルール 706.2
(略)
オブジェクトの「コピー可能な値」とは、オブジェクトに記載されている値(カード名、マナ・コスト、色指標、カード・タイプ、サブタイプ、特殊タイプ、ルール文章、パワー、タフネス、忠誠度)に、他のコピー 効果、裏向きの位相であること、パワーやタフネス(や、場合によってはその他の特性)を定める「戦場に出るに際し/as ... enters the battlefield」「オモテになるに際し/as ... is turned face up」の能力、そのオブジェクトを裏向きにする能力による影響を加味したものである。
(略)
なるほど。どうやらそれが戦場に出るに際しての能力はコピー可能な値らしい。
すなわち【トークンA】には5つのカウンターが乗るということか!
…と私は考えたのだが該当の文をよく読みなおすとどうも違う。
パワーやタフネス(や、場合によってはその他の特性)を定める「戦場に出るに際し/as ... enters the battlefield」「オモテになるに際し/as ... is turned face up」の能力
その特性を定める…?
そうここだ!
灯の分身をよく読むと「追加の忠誠度カウンター」を得るようになっている。
これは初期忠誠度という特性を新たに定めるのではなく、
初期忠誠度に加えて1つのカウンターを乗せる。
故にコピー可能な値ではないのだ。
(仮に《灯の分身》が初期忠誠度という特性そのものを書き換えるものだったなら成立したのだろうか?)
というわけで今回の結論。
《灯の分身》《Nicol Bolas,Dragon-God》《狡猾な漂流者、ジェイス》の3枚での無限コンボは成立しない。
*注*
未発売カードなのでリリースノートが出るまでは確定でなく私がルールを読んで解釈した内容です。
高レベルのジャッジの方で違うよ!って思う方いたら訂正と謝罪の記事をあげますので連絡下さい
とはいえ、できないで終わるのも寂しいので
「できる方法」についても考えて…わーい、コンボ―!