バーチャルVtuver豆猫さんの与太話

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【SF】百合SFとしての幻想再帰のアリュージョニスト3章【女と女の関係性】

「SF百合」としての幻想再帰のアリュージョニスト3章

 

小説家Gengen Kusano氏は百合SFの第一人者であるIori Miyamoto氏との対談Yuri made me human,part2の中で、百合ハードSFというジャンルの親和性について語っている。

Yuri made me human,part2は真に力ある言葉が繰り返されるので是非英語版を読んで欲しいところ。

teletype.in

 

今でこそ百合とハードSFの親和性については一般的によく知られるようになった。
(もちろん、この『一般的』はIori Miyazawa氏が言うところの「私の観測範囲では一般的です」である)

 

直近では百合SFアンソロジー「アステリズムに花束を」の発売も記憶に新しいが、

平成という一昔前の元号の時点でこの点を指摘していたGengen Kusano氏の慧眼には恐れ入る。

www.hayakawa-online.co.jp

 

 

 

さて、ここで話題は私がかねてよりこのブログで触れてきた小説「幻想再帰のアリュージョニスト」に移る。

 

みなさんは幻想再帰のアリュージョニストをご存じだろうか?

この小説は章ごとに読み味が大きく変わる作品である。
その中で【女と女の関係性詰め合わせセット】とでも紹介すべき濃い百合パートで満たされているのが、
第3章「特権者のヒロイック・シンドローム、さもなくばアズーリア・ヘレゼクシュの憂鬱」である。

 

 

アはSFであるが、ハードSFではない


WikipediaにはハードSFに対する言葉として「ソフトSF」という言葉が載っていた。
ハードとソフトという言葉選びのセンスは絶妙で、
いわゆるハードSFに対する世間一般のイメージが「機械的なハードウェアの科学」なのに対して「内面的なソフトウェアの科学」という対比になっているのが良いと思う。

 

私はいいと思う。しかし、こういった線引きは雑語りや棍棒につながりやすく、いくらゼオーティアが棍棒と呪術の世界であるといっても不要な争いになることは避けたい。

 

ジャンル線引きの響きにかかる呪詛の話としてはハイ&ローファンタジー論などがあり、不用意な発言が誰かの怒りを買いかねない。

 

幻想再帰のアリュージョニストがSFであるかについては非常に難しい問いになりかねないので、ここでは一旦アリュージョニストはSF小説だという観点の元で進めさせていただく。

 

 

話を戻そう。
どこまで戻すか?
アリュージョニスト?
いや、百合SFまで戻そう。

 

百合SF


『百合とハードSFの相性がいい』という話に立ち変えり、
この考えを拡張しよう。
恐らく百合はハードSFだけでなくソフトSFとも相性がいい。

 

相性の良さの一旦としてGengen Kusano氏が説明した「難解なSF説明パート」を「女と女が話すシーン」にできるという指摘は非常に示唆に富んでいる。

 

すなわち、「難解な説明」がひとつのウリであるSFの説明パートに別のベクトルの面白さを発生させる、ギミックとしての百合が活きてくるのだ。

 

以下にアリュージョニスト3章から少し引用して示す。

 

 

リーナという少女の提案に続く、呪術論のパートである。

_______________

 ハルベルトの反応は素気ないものだった。

 

「断る。呪文とは神秘。秘匿されるべきもの。他者に伝えるにしてもそれは出来る限り師匠から弟子に、伝達の齟齬が無いように、解釈の誤りが無いようにされるのが理想。そうすることで摸倣子の純粋さを保ち、神秘としての格を維持するの」

 

 ハルベルトの言葉は呪文使いとしては当然のものだった。リーナは悄然と項垂れて諦めたようだった。

 そのやり取りを見て、ミルーニャが馬鹿にしたように口を開く。

 

「はあ、これだから呪文使いはせこいって言われるんですよ。そうやって呪術を独占するから、既得権益を抱え込んだ血統系呪術師の貴族なんかが未だに大きな顔をしている。格差が拡大して資源は偏るばっかり。古代の言語支配者たちの理念に立ち返れば、あらゆる呪術はオープンソースであるべきだというのに」

 

「下らない。ラディカルな思想を掲げた杖使いの言いそうな戯言。そんなことをすれば呪術を呪術たらしめている非再現性や非局所性が失われてしまう」

 

「それは仮説に過ぎません。大体、再現性のある杖の呪術が呪文をエミュレート可能な時点でその理屈は成り立たないはずです。詭弁ですよ」

 

________________
引用:https://ncode.syosetu.com/n9073ca/47/
タイトル:「幻想再帰のアリュージョニスト」 著:最近

*キャラクターの名前とセリフが判別しやすいように色を付ける編集をしている

 


この会話の後に作中世界観の世界法則に関わる非常にSF的・呪術的な説明パートが始まる。


会話は若干の難解さを含むものになっているが、
この会話に百合の視座を持ち込むことで「難解な説明」は「女と女の関係性」としての読み味を持つようになる。

 

ここでいう「杖」とは我々のイメージする科学に近いものである。
幻想再帰のアリュージョニストは「呪術」という魔法的なものが存在する世界であり、
その中で『理系っぽい科学』は「杖の呪術」、科学者は「杖使い」と呼ばれている。

 

これは簡単に読み取れる事実だとは思うが、ハルベルトミルーニャは仲が悪い。

仲が悪いということは百合なので、百合の視座を持って読むと、このシーンとそれに続く難解な説明パートは「女と女の関係性」のシーンとしても楽しめるようになる。

 

ハルベルトミルーニャは二人とも3章の視点人物の女性(つまり地の文の記述者)に想いを寄せている。
つまり2人は恋敵の関係性にある「女と女」である。

 

ハルベルトはとある国の王家の血を引くエリートである。
ミルーニャは父親がクズで、ミルーニャの母と結婚しているのに、有力な家計のお嬢様と浮気して子供を作った。
社会的圧力によってお嬢様が正妻であり先に結婚していたミルーニャの母が浮気ということにされたという悲痛な過去を持つ女だ。
つまり2人にはエリートと貶められた庶民という「女と女の関係性」がある

 

ところでその浮気の末に生まれた子供がリーナである。
しかし上の会話では義妹であるリーナの提案を強く否定したハルベルトに喧嘩を売るミルーニャが描かれている。
ああ、「女と女の関係性」である。


アリュージョニストのメインのストーリーラインは「末妹候補戦」と呼ばれる戦いに置かれている。
ハルベルトは4人の末妹候補の1人として選ばれしものである。
ミルーニャは杖使いの代表として参戦し、敗れた。
現在は予備候補としてハルベルトの支援をするように偉い人から命令を受けている。
つまり2人には女と女の関係がある。


アリュージョニストには絡み合うように錯綜する女と女の関係性の糸が張り巡らされた百合のエモさがある。

 

アリュージョニストの話をしている人たちを見て
「難しそうなものを読んでいるなあ」と思ってしまうかもしれない。

 

しかし難しいSFの事などわからなくてもアリュージョニストは楽しめる。
何を言っているかわからなくても、「何かを言っている」というそれっぽさが分かれば十分に関係性を見いだせる。

女と女の関係性がアリュージョニストのすべてではないが、アリュージョニストには女と女の関係性がある。

幻想再帰のアリュージョニスト3章という百合SFをぜひ読んで、女と女の関係性にうちのめされて私と一緒に死んでほしい。

 

 

幻想再帰のアリュージョニスト

https://ncode.syosetu.com/n9073ca/

 

 

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