あなたは死ぬ覚悟を持って何かの作品に挑んだことはあるかい?
あるいは何かの作品の感想を呟くときに「死んだ…」といったことは?
萌え死ぬ、尊くて死ぬ、そういった感想と狂気の悲鳴を上げる人たちは多い。
ツイッターアイコンをいらすとやの墓画像に変える人も少なくない。
でも今回の記事はちょっと違う。
あなたはこれから勧める作品と向き合うために死ぬ必要がある。
さあ、死ねどす。
看取られ音声のすゝめ
君はもう看取られたか?
何の話かと思うだろうけど、今回話すのはいわゆる「同人音声作品」だ。
音声作品と言う言葉はあまりにも広いジャンルで「同人RPGのサントラ」とかも含んでしまうけれど、
ここでは「視聴者をキャラクターの1人として扱うボイスドラマ」を想定している。
わかりやすい例としては「耳かき音声」が一番メジャーかもしれない。
「視聴者にキャラクターが耳かきをしてくれる…」と言う設定で耳元で音がガリガリするやつだ。
朝起きる時に聞く音声や食事中に聞く音声、安眠用音声などの「今している行動」に合わせて聞くものや
耳かきや、シャンプーで頭を洗っている音を聞く「心地よいシチュエーション」を疑似体験するもの、
ほかにはえっちいもの等…
一口に音声作品と言ってもそのシチュエーションは様々だ。
そして新たに生まれ落ち、これからのブームになるのではないか?と私が注目しているのがこち
ら…
サークル「オミ・オクル」の『看取られ音声』だ…!!!
もう既に名前でオチてる気がするけど改めて紹介しよう。
こちら「オミ・オクル」(サークル名)の『看取られ音声』(商品名)は文字通り、
看取られる音声だ。
看取(みと)るとは、その対象の死にゆくところを見守ることを意味する。
つまり「看取られ音声」は「視聴者」が死んでいくシチュエーションを疑似体験するボイスドラマである。
安眠ならぬ永眠を歌う名前に、最初僕は少しばかり困惑した。
いや、だってさあ…名前でもうオチじゃん。
それに同人作品だ。
世の中には「発想はいいんだけど…」と思わせるような「声がイマイチ」「台本がイマイチ」な音声作品というものがある。
(名前を挙げてしまうのは問題なのでしないけど、まああるんだよ。そういうハズレみたいなのが)
だがしかし、試聴してみたところ思ったより声は悪くない。
むしろいい。
台本については視聴用に切り取られたものではあまり多くを語れないが感触は悪くなさそうだった。
ふむ。800円は決して安くはないが野口1枚かからないのであれば…と勇気を出して購入することにした。
僕は「吸血鬼に食べられる」というシチュに弱いのだ。
~~~~
というわけで購入に踏み切り、昨日ついにすべての音声を聞き終えた。
実に…実に素晴らしかった。
これ、後続が出てもっと流行ってもいい、いや、流行るでしょ(確信)
というわけで流行ったころに「僕は最初から知っていたんでね」みたいな態度を取るためにも今のうちにブログで紹介しておこうというわけだ。
オタクはそういう汚いことをする。
さて、そんな冗談は置いておいて新しい時代を開きそうな予感のある令和を感じるニュージャンル。
『看取られ音声』はその基本セットとしてとてもよかった。
収録されているシチュは全部で4つ。
track01 お姉さんに甘々看取られ
看取られ音声基本セット。
天使とかワルキューレだとかそんな感じの「死者を導く超常の存在」に看取られて死んでいくシチュ。
看取られ音声のtrack1に相応しい、正統派「看取られ」だと感じさせる。
(看取られ音声自体が初の試みなのに正統派も何もないとは思うけれど、シンプルな美は無から正当性を生み出すものだ)
track02 見習い弟子に泣きながら看取られ
2本目にして異色作というか、看取られ音声なのか?と感じる作品。
いや、まあ『看取られ音声』(作品名)に入っている看取られる音声が【看取られ音声】ジャンルじゃなきゃなんなんだって話だけど。
どちらかというとこれは「かわいそうな女の子」を楽しみたい方、
ごめんなさいってひたすら謝ったり、泣いてしまう女の子をアニメとかで見るのが好きな人に向いてる。
こういうのなんていうんだろうね?
肉体的には一切女の子にダメージがないのでリョナではないと思う。
精神的にリョナ? よくわかんないけど。
とにかく「かわいそうな女の子」を楽しむ音声としては非常に良い作品であるのは間違いない。
【追記】
この「かわいそうな子」はむしろ看取られ音声シリーズの常盤木メカニズムになった。人気があるメカニズムは定着するものなのだ。
track03 皮肉屋なボクっ娘に看取られ
後述
track04 ロリ吸血鬼ご主人様に看取られ
弟子に看取られるのがS向けとするならこちらはM向け。
ぶっちゃけコレが聞きたくて買いました。
いや、ほんと好きなんですよ吸血鬼に仕えたいっていう欲求がね、あるんですよ。
ともあれじゃあ、吸血鬼主従好きな人たちすべてに送れるかっていうと、
万人向けではない。
吸血鬼主従で万人向けの看取られシチュといえば「老衰でなくなる執事と、看取る長命主吸血鬼」であることはみなさんもご存じだとは思いますが[要出典]
この音声ではそうではなく「カニバリズム」的なテーマです。
そう、吸血鬼モノでたまにいる「血を吸うだけでも生きられるけど、それはそれとして人間の体は全部食べ物だよ」タイプの吸血鬼です。
近年の有名どころで言うとキスショット・オリオン・ハートアンダーブレードとか。
(驚くべきことに近年というほど最近の作品ではないけどマガジンでちょうどコミカライズがその辺の話やってるので近年のと言い張る)
というわけで聞き手は吸血鬼様に食べていただきます。
吸血鬼様に自分を食べてほしい!と思うあまり、美味しくなる努力をする筋金入りです。
でも、わかる…確かにそういう欲求あるよ…
そんな下僕を吸血鬼様が食べるハッピーエンドです。
いや、わかるよ。
そこで情が移って食べられなくなるのがハッピーみたいな常人の感性も。
でもですね、ちゃんと食べられることだって立派にハッピーエンドなんですよ。
僕はそう思います。
吸血鬼様の日本語が時折おかしいのは多分わざとやってるんですが、
若干気になってしまい「さめる」ことがあった…くらいかな減点ポイントは
減点と言うか「僕には合わない部分」ってだけですが。
いずれにせよ、最高。
そして…
track03 皮肉屋なボクっ娘に看取られ
まさかの番狂わせ。
このCD最大の目玉。
心の中で映画化決定、「全米が泣いた」フォルダに突っ込まれる。
タイトルからは分かりづらいですが、これは「侵略者と戦うタイプのSF」っぽい世界観で戦死する『キミ』を看取る『ボクっ娘』の話です。
やばい。
感情を破壊される。
吸血鬼のレビューから一転してこれについてはあまりだらだら書きたくない。
購入してフルで聞いてほしい。
ただ、それだけだ。
~~~~
というわけで非常に満足いく内容だった『看取られ音声』。
人が死ぬのは悲しいことであると同時に、主要人物の死は物語を大きく動かすシーンだ。
看取られというジャンルは…
作品自体の文脈でなく「オタクの共通認識」から文脈を取ることで主要人物の死だけに焦点をあてて「クライマックスの美味しいところ」を切り取るジャンルだとも言えるだろう。
是非、また作ってほしいし、オミ・オクル以外のサークルも流れに乗って作るべきだと思う。
【追記】
そうなった。
確実に、確実に需要がそこに存在する。
そして、看取られ音声、【乙女向け】バージョンも製作決定しました。
— オミ・オクル✞看取られ音声作品 (@Omi_Ocl) July 18, 2019
情報は近日公開となります。
今しばらくお待ち下さい。
というわけだ。
『看取られ音声』シリーズはまだまだ続く。
願わくば、これがシリーズでなくジャンルになり世にあまねく「看取られ」が広まらんことを…!