さあ、また新しいカードがプレビューされたぞ。
テーロスの新しい神、《運命の神、クローティス》だ。
このカードを巡って『カラーパイに違反しているのではないか?』という話題があった。
正直、その発想はなかったのでかなり驚かされたものの主張に関してエビデンスの提示があったので確かに興味深い問題提起ではある。
今回の記事では《運命の神、クローティス》の墓地追放とカラーパイについて考えよう!
そもそもカラーパイって?
カラーパイという言葉は実は様々な文脈で使われ、その意味が揺れ動く言葉だ。
この捉えどころの難しい言葉をまとめると「その色にふさわしいか?」という心理的な分類となる。
とはいえ何をもって「その色にふさわしい」とするのか。
その基準次第でカラーパイはその姿を変える。
分かりやすいポイントは2つだ。
機能的カラーパイと哲学的カラーパイだ。
(関係性のカラーパイと言うものもあるかもしれないが、一般的にこちらはカラーホイールと呼び分けられる気がする)
どちらもその色に相応しいかを判断するチェック基準だ。
それぞれが何を基準として見るのかを掘り下げよう。
機能的カラーパイ
こちらはカードのメカニズムに関するカラーパイだ。
例えばダメージ呪文について…
クリーチャーやプレイヤーにダメージを与える呪文は赤が一番多く、次いで黒が多い。
攻撃またはブロックしているクリーチャーにダメージ…となると白に。
飛行しているクリーチャーにダメージ…これは緑だ。
青は基本的にダメージを与えることはない。
(ティム、あなたは座っていてくれ)
こう言ったカードのゲーム的な性能が色ごとに相応しいかどうかを決めるのが機能的カラーパイだ。
哲学的カラーパイ
色ごとに思想があり、その色の思想に相応しいかを考える。
それが哲学的カラーパイの基準になる。
白は平和を望み、青は完璧さを望む。
赤が望むのは自由であり、黒は力を望んでいる。
そして緑は受容を求めているのだ。
白の《平和な心》はクリーチャーを殺すことなく戦闘から遠ざける。
白の望む平和を体現するカードだ。
ただし、これは指針にすぎない。
色の構成要素の中で大きな役割を持つが、その色の全てではないのだ。
《ゼゴビアの大怪魚》は青のカードだが完璧さや知性を象徴するものではない。
じゃあ《ゼゴビアの大怪魚》を青足らしめているものはなんなんだろう?
ぶっちゃけて言えば「雰囲気」である。
島は青マナを生むので水棲生物は青のカードなのだ。
一見雑に見える括りだけれど、これが案外大事だ。
イメージと色は深く結びついているので青単色で電気ショックを放つ火力カードと言うのはとても奇妙に見えるんだ。
(ボルト、これはお前の話だからな。)
逆に言えばイメージに合うカードと言うのはある程度融通が利く。
《ドラゴン変化》はその最たるものだ。
赤! 火力! ドラゴン!
ドラゴンと言う存在は赤の象徴だ。
《ドラゴン変化》のテキストは一見ややこしく
機能的にも赤が本来しない効果も持っている。
飛行を持たないカードから攻撃されない能力は白だ。
しかしカード全体のイメージは分かりやすい。
君自身が5/5のドラゴンになることだ。
何故これは赤なのに地上クリーチャーの攻撃を防げるのか?
ドラゴンには翼があり空を飛べるからに決まっている。
カラーパイ違反
よくカラーパイを破っているとかカラーパイに違反しているとか言われるのは
「その色らしくない」というニュアンスだ。
この『カラーパイ違反』について公式記事でマローが何度か語っている。
一番読みやすいのは恐らくこの記事だろう。
クールな染み出しかた|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト
『カラーパイ違反』に対して彼はこの記事の中で「カードがカラーパイにふさわしいか?」を8つの分類に分けている。
クローティスの分類は?
《運命の神、クローティス》は一体どの分類になるだろう?
問題視されていたのは以下の部分だ。
「墓地のクリーチャーを追放するのは黒が第1種色で第2種色は白」
「墓地追放はカラーパイで緑は持っていない能力」
この第○種色という考えはカラーパイの考え方の中でも機能的カラーパイ(メカニズム的カラーパイ)において注目される。
エビデンスとして提示されていたのは以下の記事の一部だ。
メカニズム的カラー・パイ 2017年版|読み物|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト
これは2年ほど前にマローが書いた記事で当時のメカニズム的カラーパイにおいて
「この色はこんな効果を使うことができる」や「こういう効果を使えるのは何色か」といった話をまとめたものだ。
墓地からカードを追放する
1種色:黒
2種色:白この能力は墓地から使える能力があるカードへの対策として用いられている。黒が一番多いが、白も必要なセットでは行なうことがある。
引用:メカニズム的カラー・パイ 2017年版|読み物|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト
確かにこのリストの中ではクローティスの「墓地を追放」する機能は黒が最も多く、次いで白であり赤や緑には許可されていない。
つまりクローティスは墓地を追放する能力をもつので機能的カラーパイを破っているという考えだ。
この弁に従うのならクローティスの分類は第8分類(カラーパイを破るカード)に近づくかもしれない。
さて、ここで当該記事の冒頭から引用しよう。
カラー・パイを、(私が覚えている限り)全てのメカニズムと関連付けて並べるのだ。
今までこれをしてこなかった理由は、カラー・パイはマジックそのものと同じように変わり続けるものなのに、私が書き記してしまうと何年も後になって見た人が混乱するのではないかということであった。
そこで私は、これから数年ごとにカラー・パイを記し、これを更新して変遷が目に見えるようにしようと決めたのだ。
このメカニズム的カラー・パイは、今日、2017年6月5日現在のカラー・パイを表している。
ここに書いてあることが常に正しいというわけではない。
実際、その逆だと言える。
この中のいくつかは時とともに変わっている。
比喩的に言えば、私はメカニズム的カラー・パイの今の瞬間を写真に残しているが、カラー・パイは常に成長し続けるものであり、その写真のままの姿ではないのだ。
引用:メカニズム的カラー・パイ 2017年版|読み物|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト
そう、カラーパイは不変でなく流動し変化する。
記事では緑が墓地追放効果を使うことは認められていない。
しかし、これが書かれたのは2年前のことだ。
ではここ2年の間に新登場したこれらのカードを見てほしい。
2017年 レア
2018年 レア
2019年 コモン
2019年 コモン
緑には今では当然のように墓地追放機能が付いている。
特にレアでなくコモンのカードに付けられて、より普遍的なものになり、
ついには最新のパックでは再録までしている。
(この記事の執筆時点でテーロス還魂記は未発売だ)
墓地のカードを追放する効果。
それはもう緑の能力としては不自然なものではないのだろう。
恐らく緑は墓地追放の2種色でクローティスは染み出しの第2分類になっている。
(あるいは第1分類かもしれない)
カラーパイを破っているのでなく、きっと一般的な効果として分類するようにメカニズム的カラーパイ自体が変化していったのだろう。
しかし!
最初に言ったことを思い出してほしい。
カラーパイと言う言葉が指すものは曖昧なのだ。
クローティスが赤緑っぽいかどうか?
それは これからテーロス還魂記の物語を見ていく中で改めて判断する必要がある。
クローティスはカラーパイ違反なフレイバーを持つのか?
まだわからない。
この運命の神が本当にカラーパイを外れた存在か。
それを知るためにはもっともっと物語が必要だ。
性格・思想・背景設定。
そもそもテーロスを舞台にした過去のセットでは1度たりともクローティスなんていう神はいなかった!
一体、彼女がどんな存在なのか、これから発売するテーロス還魂記を心待ちにしたい。
*2019/12/27追記*
Exiling card’s from graveyards is primary in black, but is secondary in green.
引用:https://markrosewater.tumblr.com/post/189893043048/wow-all-three-chapters-in-the-binding-of-the
26日に更新したマローのBlogatogから。
『墓地からカードを追放するのは黒が一番だが、緑は二種色だ』
この2年の間の方針変更で緑は墓地追放の2種色として位置づけられたようだ。
来年には新たなるメカニズム的カラーパイの記事が出るかもしれない。
こちらも楽しみにしておこう。
*12月27日の修正について
元の記事ではツイートを引用する形で使っていましたが、
『晒っぽい』と指摘を受けました。
確かにぐうの音も出ないと思ったのでツイート引用を取り除く形で再編しました。