以前「スペース漁業百合SF」として紹介したこちらの小説。
長編版を読み終わったので短編版と長編版の違いについて感想を書いていきます。
まず長編版と短編版では当たり前ですがボリュームが違います。
この「ボリュームの違い」について僕が勘違いしていたのは、短編版の内容はそのままに、新規エピソードを追加して厚みをだしたのが長編版なのだろうと思っていたことです。
しかし、実際には違いました。
短編で語られた部分も、紙幅の余裕ができたことで、描写の解像度があがっています。
結果的に短編と長編版では、単なるボリュームだけでなく、質の面でも大幅にパワーアップ!
具体的には次の3つの要素が短編版よりも濃くなっています。
1.百合
長編版では短編版よりも百合描写がしっかりと描かれています。
ざっくりとした感想になりますが「デカい犬みたいな女」と「ツンとした猫みたいな女」の百合でした。
何を言ってるか分からないかもしれませんが、分かってください。
いや、読めば多分 私が言おうとしてたことが伝わると思いますし、
表紙を見るだけで百合のオタクには伝わるかもしれませんね。
ツインスター・サイクロン・ランナウェイ pic.twitter.com/t3khq9fCen
— 望月けい (@key_999) 2020年3月17日
どちらが犬でどちらが猫か、見れば分かるので望月けい先生のイラストがとても良いですね。
長編版では犬っぽさ、猫っぽさの解像度が更に高まっています。
2.SF
ツインスター・サイクロン・ランナウェイは百合SFなので、百合だけでなくSFもまた強くなります。
短編版では「なんかそうゆうもの」で済まされていた変形粘土や宇宙魚類について、
長編版では更に話を深めていきます。
短編版のSF感では物足りなかったんだよなあ…というSFファンの方も長編を読めば満足できるかもしれませんね。
こちらから読める長編版一部無料公開で「SF感」が短編からパワーアップしているのを感じてください。
あと開幕年表!
個人的に初見の年表は目が滑って読めないタイプなのですが、
短編版を読んでいると「あれ?」と引っかかる言葉が出てくるので要チェックです。
3.クソ田舎
3つ目のパワーアップポイントはクソ田舎ですね。
「え? これは未来の宇宙の話なんですよね?」みたいに短編で時折ひっかかる田舎の閉塞感みたいな「ダメなところ」がパワーアップ!
セクハラクソ親父や田舎価値観の周りの視線描写が加筆修正でよりビビッドに!!
ただそれらが物語の展開や百合の関係性をプッシュするギミックになっているので「読みにくさ」を抑えたまま「不快感」だけを薄く募らせ、ツインスターがサイクロンでランナウェイすることで不快感を打ち破る爽快さ、カタルシスに繋がる構成が読んでいて気持ちいいです。
というわけで6倍のボリュームと3つのパワーアップを経て、最高に面白い旬の百合SFになった長編版ツインスター・サイクロン・ランナウェイ。
短編未読の方も長編読者の方も是非、読んでください。
ツインスター・サイクロン・ランナウェイ (ハヤカワ文庫JA)
そうそう、読んだ後はこちらのページで編集さんがアンケート募集しているので
ぜひ送りましょう。
もし前回のツインスター・サイクロン・ランナウェイ紹介記事を読んでいなければ、
どういう話なのかを紹介しつつ布教しているので参考にどうぞ。
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