さて、というわけで今回もヒブロプことヒストリック・ブロール・プレインチェイス/Historic Brawl Planechaseをした話をレポートするよ。
まず最初にざっくりとヒブロプのルールを説明するね。
・使用可能なカードプールはMTGアリーナ実装済みのカードすべて
(*当然ながらヒストリック・ブロール禁止リストにもの含まれるカードを除く)
・デッキはリーダーとなる統率者カードを含む60枚
(*61枚目として相棒能力を持つクリーチャーの使用が可能)
・統率者として指定できるカードは『伝説のクリーチャーorプレインズウォーカー』
・ランダムに選ばれた『次元』を舞台に戦う。
・ターンプレイヤーは毎ターン『次元ダイス』を振る権利を1回分持つ。
・上記の権利はマナを支払うことで追加できる。
(追加のN回目につきN点の不特定マナを支払う)
・開始ライフは4人プレイでは30点。
(*いわゆる統率者ダメージの特殊勝利ルールはない)
今回のヒブロプ統率者紹介
1人目
《隠された手、ケシス》
ケシスコンボと呼ばれるループコンボで有名。
恐らくフィオーラ次元に住んでいる伝説のエルフ。
同名2枚必要なコンボパーツがあるケシスコンボは、同名1枚制限ルールのあるヒブロプでは行うことはできない。
しかし、伝説の呪文をコスト軽減する能力を起点にレジェンダリー・カードを早期から連打でき、盤面をリセットされても2つ目の能力で素早く立て直せる強みがある玄人好みの統率者。
伝説呪文が多いことから出てくるカード出てくるカードに「あっ、あいつかぁ!」となる見ていて楽しい統率者だ。
2人目
《冒涜されたもの、ヤロク》
ゼンディカー次元に棲む伝説のエレメンタル。
「Etb(場に出た時の能力)」が2倍になるという強力なクリーチャー。
雑に「○○が戦場に出た時、~~する」というカードを多く積むだけでもデッキの形にできるため初心者でも組みやすく、上級者の仕様にも耐える奥深さのあるクリーチャーコントロール。
3人目
《深海住まいのタッサ》
テーロス次元に存在する神の一柱。
海を司る神であり、ブリンク (クリーチャーなどを一旦ゲームから追放して場に戻すこと)を得意とする。
ヤロク同様に場に出た時の効果を増やせるクリーチャーなので色が多く選択肢が広いヤロクに対して、色は狭いが同じカードを何度も繰り返せるタッサと使い分けられ、単なる劣化品ではない。
4人目
《ギトラグの怪物》
次元『イニストラード』から参戦したカエルの怪異。
土地に関連する能力パッケージを持つ。
メリット能力がデメリット能力を克服し、またデメリットをトリガーとしてメリット能力が誘発するという特徴から『回っている間は強く、止まってしまうとそのままジリ貧』というピーキーな統率者。
『デッキの半分以上を土地カードで埋めたい』というランドジャンキー向け。
ブログを読んでくれている読者ならご存じの通り『デッキの半分を土地カードで埋めたい』のが誰かと言えば当然、筆者である。
この4人の統率者でのヒストリック環境での対戦となった。
まずはゲーム開始時の次元カード公開。
公開されたカードは《プラーフ》
《プラーフ》
次元 ― ラヴニカ
このターン、あなたがいずれかの呪文を唱えた場合、あなたはクリーチャーで攻撃できない。
このターン、あなたがいずれかのクリーチャーで攻撃した場合、あなたは呪文を唱えられない。
あなたがカオス・シンボルを出すたび、あなたは自分の手札にあるカードの枚数に等しい点数のライフを得る。
一番最初の次元カードが《プラーフ》だったことはヤロクにとって追い風であった。
序盤の手札が多い段階で立て続けにダイスを振り22点ものライフを得ていく。
ヤロクデッキのプレイヤーは「統率者に《ボーラスの城塞》を指定したい…なんでアーティファクトは統率者になれないんだ…」と普段から呟くほどの城塞好きプレイヤーである。
ひとたびマナの支払いをライフで肩代わりできる《ボーラスの城塞》が出れば22マナを得たも同然である。
50点超えのライフを持つヤロクは一気に他の3人のプレイヤーを敵に回し卓の魔王となった。
*魔王
統率者系ルールの俗語。
魔王戦と言う名前の統率者戦とは別の形式のカジュアルフォーマットがあり、
強力な専用カードを使える「魔王プレイヤー」を複数のプレイヤーで協力して倒すスタイルの遊び方をする。
転じてバトルロイヤルであるはずの統率者系ルールにおいて、突出したプレイヤーを他のプレイヤー全員で協力して攻める状況でのヘイトトッププレイヤーを魔王と呼ぶ。
魔王となったヤロクのライフを削るために次元カードを何枚も超える激戦が繰り広げられる。
《ステンシア》
次元 ― イニストラード
あるターンに、いずれかのクリーチャーが1人以上のプレイヤーに初めてダメージを与えるたび、それの上に+1/+1カウンターを1個置く。
あなたがカオス・シンボルを出すたび、ターン終了時まで、あなたがコントロールする各クリーチャーは「(T):プレイヤー1人かプレインズウォーカー1体を対象とする。このクリーチャーはそれに1点のダメージを与える。」を得る。
ギトラグ出身次元のイニストラードにある吸血鬼領ステンシアを訪れた時など、クリーチャーで殴れば殴るほど強化される状況となり、ギトラグもテンションが上がって攻撃しにいく。
魔王ヤロクを相手に本来はサポート用のクリーチャーである《イリーシア木立のドライアド》なども含めて一斉攻撃し、ヤロクの血をむさぼりに襲いかかる。
当然ヤロクも除去カードでギトラグの攻め手を潰して《ボーラスの城塞》のコストにするためのライフを残そうと抵抗する。
しかし、やがてライフが減っていき魔王と呼ぶに値するプレイヤーは他へと移ることになる。
次なる魔王はタッサであった。
タッサの場にはヒストリック禁止カード《裏切りの工作員》が立っている。
ヒストリック・ブロールとヒストリックでは禁止リストが異なるため、ヒストリックで禁止されていてもヒストリック・ブロールでは使用可能な場合があり、《裏切りの工作員》もまた そうして野放しにされている反則すれすれ合法カードの1枚である。
本来ならば場に出た時に1回だけ使える「相手のカードを奪う」という強力な効果をタッサの効果で使いまわすことで盤面を制圧していく。
まさに魔王の所業である。
許せねえ! ヤロクさん、さっきまでの事は水に流して一緒にあいつをぶちのめしましょうよ!
こうしてヤロク・ギトラグ・ケシスの3人が結託し、魔王タッサ討伐のためのレイドバトルが始まる。
ケシスの盤面は強力なレジェンダリー・クリーチャーが複数並んでいるが、
工作員をブリンクし続けられる今、それらは「頼もしい仲間」でなく「入れ食いの漁場」も同然。
ここでヤロクが手札を補充するために出したクリーチャーが以前このブログでも紹介した《半真実の神託者、アトリス》。
・表3裏0
基本的に選ぶことはない選択肢だがルール上は適性であるということはあまり知られていない。
総合ルール700.3d
束は0個のオブジェクトからなっていてもよい。当然アトリス側は3枚を取るだろう。
このパターンを選択する貴重な例がブロールのような多人数戦だ。
多人数戦では「対戦相手」は必ずしも「敵対的」を意味しない。
少なくとも短期的には…。
今こそまさにあの記事で書いた貴重なパターンである。
「表3枚!」
ヤロクは振り分けプレイヤーに筆者を指定し、筆者は表の束に3枚、裏の束に0枚を割り振り、一気に手札を3枚ブーストさせてサポートしていく協力プレイ!
ギトラグは《死者の原野》からゾンビ・トークンを並べていき、
《終末の祟りの先陣》で強化したゾンビトークン突っ込ませて手持ちのクリーチャーを損耗しながらなんとかタッサのライフを削って圧をかけていく。
猪とゾンビが玉砕覚悟で突撃した直後、ケシスが伝説の呪文《上古族の栄華な再誕》を唱えた。
伝説のカードを多用するケシスらしい切札である。
これで《不和のトロスターニ》を墓地から蘇らせれば、その能力によって工作員に奪われた全てが持ち主のもとへと戻る!!
しかしタッサ、これを《否認》。
ケシス「それは分かっていた。こっちが本命の《戦慄衆の指揮》!!」
ライフと引き換えに他のプレイヤーの墓地を含むすべての墓地からクリーチャーをリアニメイトできるフィニッシュムーブ!
《不和のトロスターニ》による奪還プランに重ねて更に他のプレイヤーからもパワーカードを取りに行く強力な動き…!
タッサ「それにスタックして《ナーセットの逆転》」
終わった。
すべてが終わった。
ナーセットの逆転により手札に戻された呪文の効果は適用されず、代わりにその効果は逆転を打った側が使える…誰もが絶望する状況だった。
しかし、あきらめない限り何が起こるのかわからないのがヒブロプ。
続くターン、打消しを消耗しきったタッサの隙をついてヤロクが唱えた呪文は《出現の根本原理》
デッキから「好きな組み合わせの呪文を踏み倒せる」という強力な効果だ。
ただし、このカードはコンボとなるカードを確実に持ってくることができないように「対戦相手」が最終的な決定に介在する。
再びヤロクのカードをギトラグが選ぶ。
ギトラグ「なんか適当にコンボになる2枚出したら、それ残すよ」
というわけで敢えてコンボになる組み合わせであるリリアナと祝賀を残して解決。
本来、プレインズウォーカー・カードが数ターンかけて自身の上のカウンターを増やすことで初めて使用可能になる強力な「奥義」
《次元を挙げた祝賀》での4回の選択すべてをカウンターの増殖に向けることでリリアナはその過程を吹っ飛ばす。
即座にリリアナの奥義により土地以外のすべてのパーマネントは1つを残してすべて吹き飛ぶ!
盤面の大半を吹き飛ばす強力な奥義だ!
これで勝負はわからなく…ん?
リリアナの効果、土地以外って書いてない?
ヤロク以外のプレイヤーが土地1枚と1枚か2枚のパーマネント を持っただけの状態からゲームは再開。
流石にヒストリック・ブロールならこのままヤロクの勝ちで終わりそうだ。
だがこれはヒストリック・ブロール・プレインチェイス。
ここからさらにゲームは動く。
《クローサ》
次元 ― ドミナリア
すべてのクリーチャーは+2/+2の修整を受ける。
あなたがカオス・シンボルを出すたび、あなたは(白)(青)(黒)(赤)(緑)を加えてもよい。
ケシス「カオスシンボル! 5色5マナと1枚残った土地で6マナ…《戦慄衆の指揮》!」
先ほど《ナーセットの逆転》で戻された《戦慄衆の指揮》を唱え直し、他の全員の墓地からリリアナの奥義で屠られたパワーカードを一気に並べていく。
ヤロクの墓地からはリアニメイト・回収用に統率領域でなく墓地におくられていた《冒涜されたもの、ヤロク》を拾いつつタッサからはここまでさんざん場を荒らした《裏切りの工作員》を。
ギトラグからは《終末の祟りの先陣》と《探索する獣》。
《冒涜されたもの、ヤロク》によって増幅された2回のコントロール奪取でヤロクのブロッカーをどかすと、《終末の祟りの先陣》が2回誘発して超強化された《探索する獣》が次元の修整を受けて10/10・速攻・接死・トランプルで突っ込んで魔王ヤロクを倒した。
魔王は倒された!
しかし、魔王を倒した勇者の末路は新たなる魔王だっていう展開もまた飽きるほど見たやつだ。
魔王の座が今度はケシスへ移る。
《戦慄衆の指揮》の反動で大きくライフを失ったとはいえ、中盤に《黎明をもたらす者、ライラ》で大きく回復したライフは未だ残っている。
ここでタッサが《圧倒的な波》で盤面をバウンスし、一旦リセット。
タッサ「デッキは何枚か確認いいですか?」
それぞれ残りデッキは20枚と少し…
するとタッサは《迷える思考の壁》を出してライフを狙うのではなくライブラリーアウト戦法へ舵を切る。
ギトラグは土地1枚から《エルフの開墾者》を召喚。
リリアナに落とされた大量の土地があるので自身の能力で強化、次元効果も受けて、1マナ の5/6と化しリセット後の盤面に圧をかけ粘る。
ケシスの攻撃を壁で阻みつつタッサはカオスシンボルを出すことに成功。
そこから《スフィンクスの精神壊し》に繋いだことで2人のデッキを10枚削った。
《深海住まいのタッサ》でスフィンクスを再利用。
2人のプレイヤーのデッキを一気にライブラリアウトに押し込んで勝…
ギトラグ「待った! 落とされた10枚の中に《ガイアの祝福》があったので効果が誘発! 墓地のカードをすべて再装填しライブラリーを修復!」
返す刀で《探索する獣》を速攻で走らせタッサを追い詰める。
次元クローサによる修正を受けているため通せば残りライフが少ないタッサは敗北してしまうが、《探索する獣》の持つ「パワー2以下にブロックされない能力」により壁を無視することができる。
ブロックするためにはデッキ10枚を破壊し続けられるはずのスフィンクスで防ぐしかなく、
その場合は接死によりスフィンクスと獣が相打ち。
ギトラグ「スフィンクスを道連れだ! 探獣(たんけも)で速攻パンチ!」
ギトラグは土地デッキであり、リアニメイトカード もデッキに眠っている。
ここでゲームを停滞させれば有利なのはこちら側! この勝負もらった!
タッサ「瞬速クリーチャーは相手のターンでも場に出すことができる!これにより青への信心が5点になり、タッサがクリーチャーとして顕現する!」
顕現したタッサが探索する獣をブロック。
本来なら相打ちだが、タッサは「破壊不能」を持つ…!
返しの総攻撃を受けギトラグの残りライフはあとわずか…
タッサ「…あっ、まってクローサ次元で打点伸びてるからダメージもう少し伸びるから勝ちだわ。」
勝者、タッサ!
ヒブロ(ヒストリック・ブロール)なら塩試合になりそうな展開が何度も起きつつも、
それが次元カードによって覆る波乱万丈の試合展開だった。
ぜひ皆も、ヒストリック環境から統率者を選んで君のデッキでプレインズウォークしてみてほしい!
なお、本記事はハイライトにスポットライトを当ててかっこいいシーンばかりを書いているが醜い小競り合いもあったことを正直に書いておこう。
ヤロク「あー。もういいやギトラグに次元能力で『このターン、ブロックされない』がついたヤロクで攻撃。ギトラグの息の根を止めておこう。」
ギトラグ「なんで!? アトリスで手札3枚あげたじゃん!」
ヤロク「その前に次元修正を受けた7/6先制・接死のギトラグで殴ってきた恨みを思い出しました」
ギトラグ「通したら死んじゃうからヤロクに《迅速なエンド》」
ヤロク「除去あるならもっと早くあっちの2人のデカいのに撃ってくれても良かったのに…」
ギトラグ「呪禁と破壊不能が多すぎるから…」
なんていうグダグダな展開も挟んでいたりする。
…でもこのグダグダがなければリリアナ奥義の後の返しの時にヤロクが墓地にいなかったことを考えるとここも重要な局面だったんだな…。
マジック、何が起こるかわからんわからん。
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