さて、Twitterの「おすすめツイート」機能でこんなツイートが回ってきた。
要約すると「《未来派の歩哨》は過去に刷られた機体カードとそのまま同じ性能なのに、色マナを要求するのは『酷すぎるカード』だ」という旨のツイートだ。
ふむ。
では、なぜこんな「酷すぎるカード」が出来たのか少し考えてみよう。
まず、記事の初めに2つ書いておかなければいけないことは2つ。
ひとつめはMTGの首席デザイナーMark Rosewaterがデザインの大局観について触れた記事からの引用となる。
優先度問題
プレイヤーはそれぞれ、自分の観点からマジックに触れている。つまり、各人にとってのマジックとは、どのようにプレイするか、どのように体験するかなのだ。そのため、何かがなくなったと感じたり、あるいは何か新しいものが欲しいと考えたりしたら、それは即座に解決されるべき喫緊の問題であるかのように思うのだ。
無駄問題
これは優先度問題からの帰結である。我々が特定のプレイヤー向けでないものをデザインした時、我々が時間やリソースをマジックを進歩させないものに無駄遣いしたとして苛立たせる可能性がある。(中略)
この問題は、製品全体ほど大きいものであるとは限らない。メカニズム、テーマ、あるいはカード1枚であることもある。1つ前の問題同様、これはすべてのプレイヤーに共通するものではない。何が無駄で何が無駄でないのかは、マジック内の何を重視するかという主観によるものである。
大局観|読み物|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト
ふたつめは「酷すぎる」というツイートをした人はPauper(コモンカードのみを使いデッキを組む遊び方)のプレイヤーで、どうも機体デッキについて一家言ある方らしいということだ。
つまり、《未来派の歩哨》が酷すぎるカードなのは特定のプレイヤー…つまりPauper機体デッキの愛好家たちにとっては事実であり、
時間やリソースをマジックを進歩させないものに無駄遣いしたとして苛立たせてしまっていることもまた事実なのである。
ああ、あまりにも酷すぎる!
なぜ、こんなことになってしまったのか!
《未来派の歩哨》はなぜ青なのか?
この謎を解く鍵はドラフト戦にある。
ドラフト戦は8人のプレイヤーが各自未開封のパックを3つ持ちよって遊ぶフォーマットだ。
各プレイヤーはパックを開封したらその中から1枚を取り自分のものとして、残りのカードを隣の人に渡す。
反対隣の人から受け取った「余ったカード」から更に1枚を取り、回していく。
こうして集めたカードでデッキを即席で組んで遊ぶのがドラフト戦だ。
《未来派の歩哨》が青なのは『神河:輝ける世界』のドラフト戦で「青白の機体強化デッキ」を使うプレイヤーへの贈り物なのである。
仮に青くない《未来派の歩哨》…つまり《鉄装破壊車》がセットに入っていたとしよう。
NEO神河のパックには白のアンコモンに何枚も『パワーが2大きいかのように機体に搭乗する』というテキストが出てくる。
(パワーは2や1である)
これらのカードをドラフト戦で取ったプレイヤーにとって《鉄装破壊車》は非常に魅力的に映る。
本当にこれがドラフトで魅力的なのか疑問に思っている人もいるだろうが、
《鉄装破壊車》は収録された『霊気紛争』のパックから出るトップコモン機体としてプロプレイヤーが選んだうちの1枚である。
参考:行弘賢のよくわかる!リミテッド 第18回:『霊気紛争』ドラフト|マジック日本公式ウェブサイト
もし白黒を組んでいるプレイヤーがこれを見ればピックする可能性は大いにある。
NEOにおける白黒の定石アーキタイプは「アーティファクトやエンチャントを集める」ことだからだ。
その結果、「機体を集める」のが定石アーキタイプである青白を選んだプレイヤーが《鉄装破壊車》を取ることができなくなってしまうという事態は大いにあり得るのだ。
恐らく開発チームがドラフトをデザインするにあたり、この事態を解決する方策として
青い《鉄装破壊車》である《未来派の歩哨》を作ったのだろう。
《鉄装破壊車》でなく《未来派の歩哨》であれば、白黒のプレイヤーは見向きもしないため、青白機体のプレイヤーが『トップコモン』を入手できるチャンスは格段にあがる。
《未来派の歩哨》はなぜ青なのか?
それは、これが青白機体アーキタイプを選んだドラフトプレイヤーへの贈り物だからである。
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