個人的にお世話になっているグループSNEの北沢慶先生の新刊が発売したので布教記事を書かせていただきます。
『異世界冒険ガイド 君ならどうする?はじめての冒険』(以下、異世界冒険ガイド)はファンタジー世界の冒険でのあるあるシチュエーションについてクイズ形式で楽しく学べる令和の新作だ。
ただし、こういったクイズ形式の作品は令和になって新たに生まれたものではない。
私の場合は予告を読んだときに、平成のファンタジークイズ本「ここは冒険者の酒場」(以下、ここ酒)などを連想した。
そして、昭和64年刊行の「ファンタジーRPGクイズ 五竜亭の一夜」(以下、五竜亭)も同じく脳裏をよぎった。
今回の記事では最新のファンタジークイズ本「異世界冒険ガイド」や「ここ酒」、「五竜亭」について紹介していこう!
これらの本に共通しているのはファンタジー世界を舞台に、クイズ形式でつづられている点だ。
逆に言うと、それ以上の共通点はないかもしれない。
ああ、いやもうひとつ。
そのどれもがTRPGの存在を下敷きにしていることだろう。
「五竜亭」と「ここ酒」では酒場でベテランが出す問いとして、
様々なシチュエーションについて自分で考えながら本を読み進めていく形式を取っているが、それぞれの元号ごとにその物語のありようは異なる感触がする。
「五竜亭」は3作品の中で一番、古くクイズで扱われる問題は「地に足の着いた問題」が多めになっている。
例えば「五竜亭」では最初の問いは「冒険に出る前に買うべき武器は何か?」から始まる。
オールドタイプなTRPGを遊ぶ上では現代TRPGでありがちな「データ優先での武器取得」でなく、「五竜亭」の回答のようなものが好まれていたのだろう。
一方、「異世界冒険ガイド」「ここ酒」では武器に関する問いは目立たない。
キャラクターに相応しい物、戦闘ゲームとしてのデータ的に強いものをとりあえず買えば用が足りる最近のTRPGのプレイスタイルでは「五竜亭」のころには「不正解」とされた騎士のランスが正解となることもあるからだろう。
「ここ酒」は平成の作品で、「五竜亭」よりもファンタジー世界の在り方が少しだけ緩くライトノベル的に寄っている。
一番わかりやすいところで言えば英雄的な選択を好み不正解を連発する騎士フンバルト・ヘーデルホッヘの役回りが女性である女騎士シルヴィアへと移っている点が挙げられる。
シチュエーションとしてもヒロイックで大掛かりなものが増えてきて、ダンジョン作成側の魔王の視点で考える…なんて問題もあるくらいだ。
「ここ酒」にはいくつかのファンタジー世界で頻出の概念や道具などの解説がついていて「五竜亭」よりも事前知識を軽めに読める本に仕上がっていると感じた。
令和最新の「異世界冒険ガイド」では問題の出し方は「なぞかけ」ではなく、
実際にその選択を目の前にした様子が描かれ、選択肢ごとにその先のシチュエーションが描かれ、ゲームブックへのリスペクトを感じられる造りになっている。
クイズが基本的に選択肢式というのも今どきのマスタリングだなあ…と思わされた。
この本は内容予告の時点では明確に「五竜亭」からの流れを汲む本だと思っていたが、
どちらかと言えばファンタジーTRPGを遊ぶ上でのアドバイス本としての側面をより強めている。
『異世界冒険ガイド』を書くきっかけのひとつが、初心者さんと遊んでいた時、「ゴブリンの住む洞窟の入り口につきました。中は暗くて見えません。さあ、どうしますか?」と告げたら、困惑したように「シーン」となることが割と多かったから、というのもあります。
— 北沢慶(6/17異世界冒険ガイド発売!) (@kitazawak) 2022年6月10日
お役に立つといいなあ( ´ ▽ ` )。
特に世界設定面でそのポイントはある意味露骨なほどであり、「ここ酒」は様々なTRPG世界の冒険者が時代やシステムを超えて酒場で交流しているという設定があるのに対して、「異世界冒険ガイド」では世界観は現行のTRPGシステム「ソード・ワールド2.5」の世界観をベースとしていて、この本から実際にソードワールドへと手を伸ばす導線となるように書かれている。
このように、一見似ているようで想定される読者層は全くと言っていいほど異なっている。
(だが、それぞれの重なり合う部分も当然あるだろう)
どれを読むのが自分にとって良いのか悩ましいという場合には、いっそのことすべてを読む事をオススメする。
まずは、発売日の近い令和の「異世界冒険ガイド」から予約してみるのも手だろう。
一番、入手にかかるコストが安い*し同時期に読む読者も少なくない分、Twitterなどで語り合うのに向いているからだ。
こちらのAmazonリンクから予約できる。
*五竜亭の方が単価は安いがシリーズ作品であるためすべて電書でそろえるとなると五竜亭の方がコストがかさむのだ。
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