私の名前は濃丸 小紋(のうまる こもん)。
好きなカードゲームはマジック:ザ・ギャザリング。
最近の悩みはお財布の薄さ。
そう、マジックという趣味はとてもお金がかかるのです。
「スタンダードは使えるカードが入れ替わる割にレアカードが高いし、エターナルフォーマットは参入コストが高すぎるしなあ…」
何かそれなりの参入コストで始められてランニングコストの安いフォーマットはないものでしょうか?
「あら? こもんさん、何かお悩みですか?」
そう声をかけてきたのはロリータファッションが店内でも異彩を放つ名物プレイヤー、吉良フォイルさん。
「あ、フォイルさん。お疲れ様です。あの…わたし、実は『団結のドミナリア』でスタンダードを引退しようかと思っていて…」
私の引退宣言にフォイルさんは驚くこともなくうなずいた。
「ローテーションの時期ですものね。それで? マジック自体をやめるわけではないのでしょう? 次はどのフォーマットを中心に遊ぶつもりですの?」
そう、私とてマジックそのものを引退するつもりはない。
…ないのだが、マジックはお金がかかるのだ。
「モダンほど参入コストが高くなくて、そこそこメジャーで、ランニングコストが安いエターナルフォーマットってありませんか?」
そんな都合のいいフォーマットなどあるわけないと思いつつダメもとで聞いてみることにした。
「ありますわよ。参入コストが高くなくて、そこそこメジャーで、ランニングコストが安いエターナルフォーマット」
あるんだ!?
「こもんさんはPauperというフォーマットを知っていますか?」
ええっと、たしか一番レアリティが低いカードだけでデッキを構築するフォーマット…だったような。
「なんとなくは。でも、メジャーなんですかPauper?」
私の問いにフォイルさんは首を縦に振った。
「仮にも公式フォーマットですからね。プレイ人口は決して少なくありませんよ」
ふむ。ここは人生の先輩の意見に従っておこう。
「じゃあ、それ始めてみます。どんなデッキにしようかな…」
今はインターネットでデッキレシピがすぐに検索できる時代だ。
知らないフォーマットを始めるならまずはコピーデッキで始めるに限る。
「こもんさん、使いたいカードとかあります?」
そう聞かれ私は考える。
「そうですね…このタイミングで始めるんでせっかくなら手元にあるNEO神河とかカルドハイムのカードが使えるデッキ…。あ! あと《稲妻》。あれ一度使ってみたいんですよね」
「それなら、うってつけのデッキがありますよ。氷雪フェアリーなんてどうでしょう?」
氷雪フェアリー。
手元のスマホでレシピを検索してみる。
うん。うん、うん。
これはなんだか、手になじみそうな気がする。
「いいですね。このデッキ! 好きになれそうです。特に《呪文づまりのスプライト》っていうカードが可愛くて強くてグッドです」
私の返答にフォイルさんは笑顔になった。
「それでは早速、パーツを買いそろえましょうか」
「え?え? 今から?」
「善は急げ。鉄は熱いうちに打て。デッキを組むなら思いたったその日が一番ですよ!」
こうして私のコモン構築戦の道が始まった。
店員「お会計、1万1,350円になります」
「低レアカードだけ買ったはずなのに、そんなにするの!?」
Pauper、思ってたより安くない。
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濃丸こもんシリーズは立ち絵にジュエルセイバーFREE様の素材を使用させていただいています。