MTGには数々のフォーマット(遊び方)が存在する。
新しいカードで常に新鮮なゲームを楽しめるスタンダード。
比較的最近のカードのみを扱うパイオニア。
古いカードから最新の特殊セットのカードまで、幅広く使えるレガシー。
極一部のカードを除いて「一切の禁止カードがない」ヴィンテージ。
だがMTGの構築フォーマットは奥が深く、他にもいろいろな構築制限がある。
レアリティの低いカードだけが使用可能なパウパー。
約1円以下のカードだけしか使えないペニードレッドフル。
味のある絵柄のカードが主役の旧枠モダン。
電子ゲームに戦場を移したアルケミー。
そして、ここに未開拓のフォーマットを楽しもうとする1人の少女がいた。
「いやあ、『ダスクモーン:戦慄の館』がいよいよ発売だね!」
「そうだね。レイちゃんは注目しているカードなにかある?」
「よくぞ聞いてくれました、アオイちゃん。ずばり《我は一人にあらず》だね」
「そんな名前のカードあったっけ? ちょっとプレビューで見た覚えがないな」
「たぶん、アオイちゃんは見てないんじゃないかな。これは統率者セット『積みあがる死者の山』に収録される計略カードだからね」
「計略カード?」
「計略カードはアーチエネミー、いわゆる魔王戦で使う特殊な大判カードだよ」
「特徴的なのは従来の魔王戦用の計略と違って統率者戦形式の魔王戦に対応したテキストで刷られてることがあげられるね」
「へえ、このカードはタイプ0でも使えるの?」
「残念だけど定型のマジックのカードではないから、タイプ0では使えないね」
「タイプ0でも使えないカード、かあ……」
「そして今回、マジック史上初めて計略カードの日本語版が刷られたことで遊びやすくなったフォーマットがあるんだよ!」
「それが、魔王戦?」
「ううん。魔王戦も確かに遊びやすくなったけど私が思い描いてるのは別のフォーマット。その名も『プレナー・インヴェイダー』。3対3のチーム戦フォーマットだよ」
「3対3の6人ゲームって言うのは今まで遊んだことないな」
「でしょでしょ! まだまだ開拓しがいのあるフォーマットだと思うんだよねえ」
「6人って言うと……私とレイちゃん、ミドリちゃん、クロミちゃん、ミンメイ、斜九寺(なめくじ)くんで丁度6人だね」
「他の皆も誘って今度の週末は『プレナー・インヴェイダー』を楽しもう!」
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「と言うわけで皆に『プレナー・インヴェイダー』について説明するね」
「『プレナー・インヴェイダー』は侵略陣営3人と防衛陣営3人、2つのチームに分かれて遊ぶフォーマットなの。カジュアル・ルールだからプレイグループごとに細かいルールが違うから今日はそれの確認ね」
「まず、6人は統率者戦用のデッキを構築して持ち寄ります。それに加えて侵略陣営は3人で10枚の計略デッキを構築、この『計略デッキ』がダスクモーン統率者戦デッキに収録されたことで集めやすくなってるの」
「防衛陣営側は計略デッキを使わないのか?」
「いい質問だね、ミドリちゃん。防衛陣営には計略デッキの代わりにホームプレインと呼ばれる次元カードを1枚使う権利が与えられます」
「次元カード、プレインチェイス戦で使う大判カード アルね」
「知っているのか、ミンメイ!」
「プレインチェイス戦も魔王戦と同じく大判カードを扱う変種ルール ネ。通常のプレインチェイスでは複数の次元カードを渡り歩く戦いを楽しむために複数の次元カードを集めた次元デッキを使うアル」
「その通り! でも、プレナー・インヴェイダーは侵略者であるファイレクシアから故郷の次元を守るための戦いを遊ぶから、次元デッキのカードは1枚のみを使い、そこからプレインズウォークすることはないの」
「各陣営はソーサリー・タイミングで4マナ支払うことで、それぞれの大判カードを使用することができるの。具体的には侵略陣営は4マナ支払うと計略カードを1枚実行することができ、防衛陣営は次元の下段に書かれたカオス能力を誘発させることができる」
「ライフの扱いはどうなる? 統率者ってことは各プレイヤーが40点ずつか?」
「斜九寺くん、良いところを付いてくれました! ライフはチームで共有。各チームが60点のライフを持っていて、戦闘では味方プレイヤーへの攻撃もブロックすることができるよ」
「なるほど。分かりました。他に特筆すべきルールはありまして?」
「よく聞いてくれたね、クロミさん。重要なところでは3点。まず、ゲームは必ず侵略陣営のターンから始まる。それと防衛陣営のプレイヤーが毒カウンターを10個得て敗北する場合、ファイレクシアの油によって転生し、即座に毒カウンターをすべて取り除き、侵略陣営にチームが切り替わるの」
「3つ目、これは完全な私のわがままでつけるオプション・ルールだけど、統率者は侵略陣営はファイレクシアンを、防衛陣営はホームプレーンの次元に存在するクリーチャーを指定しないといけないことにします。雰囲気作りだね」
「そういう訳で、各チーム、統率者デッキや次元カード、計略デッキの準備が必要だと思うから今日はチーム分けだけして実際にプレイするのは週末ってことで。それじゃあチーム分けのくじ引きね」
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侵略陣営
レイ
ミドリ
「わたくし達がファイレクシアですのね」
「ファイレクシアならやっぱりアタシはヴォリンクレックスを使いてえな。対戦相手に乗せるカウンターを倍増させる効果は毒カウンターの条件を満たすのに有用な気がするぜ」
「いいね、そうしたら私は増殖で毎ターン終了時に毒カウンターを増やせるアトラクサかな」
「毒カウンターに注目するなら堕落能力を持つイクセルを私は選びますわ」
「計略カードは適当にダスクモーン統率者デッキの奴から選んでおくね」
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防衛陣営
アオイ
ミンメイ
斜九寺
「さて、レイちゃんたちはまず間違いなく感染能力での毒殺を狙ってくるよね」
「ああ、容易に想像できるな」
「それなら良い次元カードがイニストラードにあるアルよ。スマホで検索するからちょいと待つアル」
「こ、これは……!?」
「こんなカードが許されていいのか!?」
「禁止カードとしていくつかの次元が使えないけれど、このカードは規制されてないアル」
「それじゃあ、この次元カードに合わせてイニストラードから統率者を決めようか」
「俺はウルリッチと『イニストラード:真夜中の狩り』の狼男を合わせたデッキにするぜ」
「それなら自分はトヴォラーと昔の狼男を合わせたデッキにするネ」
「私はふたりの狼男デッキをバックアップするために、青黒の……そうだなあ、ルノのデッキにしようかな」
「それじゃあ、頑張ってイニストラードからファイレクシアを追い出そう!」
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週末
「それじゃあ、いよいよプレナー・インヴェイダーを遊んでいこう! よろしくお願いします!」
「「「「「よろしくお願いします!」」」」」
「まずは防衛陣営のホームプレーンの公開から!」
「私たちが守る場所はイニストラードのケッシグ!」
「ケッシグかあ、厄介な次元カードだね」
「狼男以外のあらゆるクリーチャーが戦闘ダメージを与えられなくなるから、私たちのチームの攻撃だけが一方的に届くようになるよ」
「そんな横暴が許されていいのか!?」
いよいよ火ぶたを切ったプレナー・インヴェイダー。
侵略陣営のファイレクシアは感染を封じられ、通常の戦闘ダメージによる勝利も封じられた中で果たしてまともな勝負をできるのか!?
次回、超次元MTG対戦 TYPE/Zeroいんべいだー 第2話「計略を高らかに読み上げよ!」
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