オレの名前は赤山アツシ!
世界的に有名なカードゲーム『マジック:ザ・ギャザリング』のプレイヤーだ!

これを読んでるみんなはマジック:ザ・ギャザリングを知ってるか?
魔法使いになって、土地から魔力の源”マナ”を引き出して呪文を唱えて戦うカードゲームなんだぜ。
今日も小学校の授業が終わったら家にカードを取りに戻って、近所の公園に集合するんだ。
「あっ、アツシ来た! 早く勝負しよう? 今日こそは勝ってみせるんだから!」

こいつは森ちえ。オレと同じマジックのプレイヤーだ。
「よっしゃあ、さっそく始めようぜ!」
俺はカバンから60枚のカードの束を取り出す。これが俺の「デッキ」だ。
「「じゃんけん、ポン!」」
「よっしゃ、オレの勝ち! 先攻はもらった!」
デッキのカードをよく混ぜて、7枚引く。
マジックでは最初に7枚の手札を確認して、手札が悪ければ引き直すことができる。
オレの7枚は……うん、十分たたかえそうだ。この7枚をキープしよう。
「いくぜ、まずは手札から山カードを場に出すぜ」

プレイヤーは自分の番に1枚、土地カードを場に出すことができる。
そして場の土地カードを横向きに置き直す(=タップする)ことでマナを引き出せるんだ!
「さらに《稲妻波》を唱えるぜ!」

これでちえに3ダメージだ!
マジック:ザ・ギャザリングはこんな風にソーサリー・カードを使ってダメージを与えあうことで20点のライフを0にした側が勝つゲームなんだぜ。
ソーサリーは基本的に使い捨てのカードなので唱えた後は墓地に置かれるんだ。
「じゃあ、私の番。カードを1枚引いて、森カードを出して……ターン終了」
プレイヤーは自分の番のはじめにカードを1枚引ける。ただし、さっきオレが引かなかったみたいに、先攻の第1ターンにはカードを引かずにターンを始めるんだ。
「カードを1枚引いて……よし、2枚目の山を出してターン終了だ」
「私のターン! 《自然の知識》を唱えてライブラリーから、森カードを場に出すよ!」
ライブラリーって言うのはデッキを置く場所のことだ。デッキに入れる土地以外のカードは魔法の呪文書で、それを集めた図書館だからライブラリーって言うんだぜ。
「これでターン終了!」
「おっと、ターン終了時に手札から《稲妻の一撃》を唱えるぜ」
ソーサリー呪文は自分のターンにしか使えないけど、インスタント・カードは対戦相手のターン中でも唱えることができるんだ。その分、ソーサリー呪文よりも支払うコストが重いから、どっちをデッキに入れるかはプレイヤーの作戦によって変わってくる。
「オレのターン! 1枚引いて、3枚目の山を置いて《稲妻波》、《溶岩の撃ち込み》、《批判家刺殺》! 3枚の1マナで3点ダメージの呪文で合計9ダメージだ!」
「うう、ライフが残り5点になっちゃった……」
「私のターン、1枚引いて《野生の大魔術師の杖》を出すよ!」
「アーティファクト・カードか……!」
アーティファクトは魔法の力を秘めたアイテムを表すカードで、インスタントやソーサリーのように使っても墓地に送られず、場に残り効果を発揮し続けるカードだ。
「森を置いて、杖の効果でライフを回復! ターン終了だよ」
「それじゃあ、これで終わりだな! オレのターン、《稲妻》と《灼熱の槍》を使って6点ダメージ!」
「やっぱり、アツシのデッキは速いね。また負けちゃった」
「へへっ、なにせオレは学校でイチバンのマジック・プレイヤーだからな」
「へえ、学校でイチバンのプレイヤーか。じゃあ、僕とも遊んでくれるかい?」

「誰でも、相手になるぜ。ええっと、名前は……」
「レオ。そう呼んでくれればいい」
「レオ、か。よっしゃあ! 勝負だ、れお!」
「「じゃんけん、ポン!」」
「僕の勝ちだね。先攻はもらうよ」
「ようし、お手並み拝見だぜ!」
「まずは平地カードを置いて、1マナ。《サバンナ・ライオン》を召喚だ」
(なんだ、あのカード? 効果が無くて、キャラクターの台詞だけが書いてある)
「クリーチャーは召喚したターンには行動できない。これを召喚酔いと呼ぶ。きみはどうやらまだマジックのすべてを知っているわけではないようだね」
「なんだか分からねえが、攻めるのみだ! カードを引いて、山を出して、《稲妻》でお前に3点ダメージだ!」
「やはり、その程度か……。僕のターン、1枚引いて、平地を場に出す。そして《サバンナ・ライオン》で攻撃!」
「攻撃…?」
「召喚酔いの解けたクリーチャーは、毎ターン、対戦相手を攻撃し、右下に書かれた2つの数字の左側……パワーに等しい点数のダメージを与え続ける」
「使いきりの《稲妻》と違って、毎ターン ダメージを与えるっていうのかよ!?」
「戦闘後に2マナで《オレスコスの速爪》を召喚してターン終了」
「クソっ……《稲妻波》と《批判家刺殺》で6点!」
「ソーサリー呪文の火力は瞬間的なコストパフォーマンスでは、クリーチャーの召喚を上回る。だが、長期的に見れば毎ターン攻撃できるクリーチャー・カードの方がずっとダメージ効率がいい」
「3枚目の平地を置いて《群れの王》を召喚。《群れの王》が指揮することで、僕の操る猫たちはパワーが2点上昇する。ここで言う猫には無論、《サバンナ・ライオン》も含まれる」
「パワー4の《サバンナ・ライオン》とパワー5の《オレスコスの速爪》で攻撃。9点ダメージだ」
「そんな、もうアツシのライフを半分以上へらしてる!」
「次のターンで、僕を倒せなければライオンたちの攻撃で決着だ」
「ちくしょう、オレの火力呪文の速度でも追いつけないなんて……!」
「ソーサリーやインスタントだけでなくクリーチャーを使いこなさなくてはマジックを極めたとは言えない。クリーチャーを知らずにイチバンを気取るようでは、まだまだだね」
(何か……何か手はないのか! レオの使うクリーチャー・カードの右下の数字。左はパワーだと言っていたけど、じゃあ右は何だ? 攻撃力でない数字……もしかして!)
「オレは《稲妻の一撃》をお前じゃなく《群れの王》を対象として使う!」

「気づいたか、『致死ダメージ』のルールに!」
「クリーチャーの持つ右側の数字『タフネス』を越えたダメージをクリーチャーが受けた時、そのクリーチャーは死亡し、墓地に送られる」
「クリーチャー・カードを知らなかったキミが、このルールを見抜くとはね」
「《群れの王》が墓地に送られたことで、お前のライオンのパワーは低下した。まだまだ勝負は続くぜ!」
「いいや、終わりだよ」
ガルル……!

「2枚目の《群れの王》だと……!?」
「再び強化された2体のクリーチャーでキミを攻撃。ゲームセットだ」
「そんな、アツシが負けた!」
「自転車で行ける隣町に、マジック:ザ・ギャザリングの専門店がある。そこにはきみよりもずっと強いプレイヤーが何人もいる。きみが強くなりたいと願うなら、来ると良い」
「へへっ、オレより強いプレイヤーが何人も……。わくわくする話じゃねえか」
「じゃあね。待っているよ、赤山アツシくん」
この日、オレのマジック・プレイヤーとしての本当の道が始まった。
これはマジック初心者のまま学校でイチバンだったオレが、本当に強くなるまでの物語……。
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