マジック:ザ・ギャザリングの新セット『霊気走破』について公式から情報が出始めたね。
なかでも注目度が高いのがマローの愛称で知られる主席デザイナー Mark Rosewaterによる『霊気走破』についてのヒントだ。
このヒントの中で私の興味を惹いたのは、この部分だ。
・Cycle of vanilla legendary creatures
(伝説のバニラ・クリーチャーサイクル)
バニラは古いプレイヤーにはよく知られた俗語だけど新しいマジック・プレイヤーには馴染みがないかもしれない。
特殊な能力を一切もたず、飛行や速攻のようなキーワード能力すら持たないカードのことを、アイスクリームの最も基本的でシンプルな味からとってバニラと呼ぶ。
昔は文章欄をフレーバー・テキストに回せるバニラ・クリーチャーはリミテッドのバランスを取りつつ世界観の説明を出来ることから頻繁に収録されていた。
しかし近年はバニラ・クリーチャーの登場する頻度は大きく減っている。
これについては公式記事『こぼれ話2024』の中でプレイヤーから寄せられた質問にマローが答えている。
『ストリクスヘイヴン:魔法学院』以降、『機械兵団の進軍』の〈ヤーグルとムルタニ〉を除いてバニラ・クリーチャーの姿を見ていません。
デザイン・チームはバニラ・クリーチャーを作らなくなったのでしょうか?
もしそうなら、それにより失ったことがあると感じていますか?
最近は収録カードの枠争いが激しくなっている。
その中でバニラ・クリーチャーを推すのは基本的に難しい。バニラ・クリーチャーにはバランス調整をできる部分が多くないため、より機能的なカードに枠を譲ることになりやすいのである。
加えて、バニラ・クリーチャーのデザイン領域の多くはトークンに吸収されており、機能面の必要性が減っている。
もうバニラ・クリーチャーは作らないとは言わないが、その必要性は大きく減っており、本流のセットで姿を見る機会は少なくなると予想される。
引用:こぼれ話2024 その2|マジック 日本公式ウェブサイト
2024年のしめくくりで「見る機会は少なくなる」と書いていたバニラ・クリーチャーだが、2025年の最初のセットではサイクルとして複数枚が登場するという。
バニラは収録カードの枠争いが激しくなり消えていくのではなかったのか?
この謎を解くカギは新セット『霊気走破』の設定に理由を求めることができる。
『霊気走破』ではギラプール・グランプリという次元を渡るレース・イベントが物語の焦点になる。
グランプリではアヴィシュカー(旧カラデシュ)とアモンケット、そしてムラガンダの3つの次元を領界路を通り駆け抜けることになる。
この3つ目の次元、ムラガンダこそがキーとなる。
ここでは現在のムラガンダの世界設定については紙面を割かない。
現在のムラガンダの様相について知りたい人は以下の公式記事を読んで欲しい。
ムラガンダの名前がマジックに初めて登場した時、この次元は「先史文明の次元」として生まれた。
すなわち、原始人や恐竜が暮らす自然豊かな世界だ。
デザインが「バニラであることがむしろ有利になる」というテキストを生み出し、クリエイティブ・チームがそこに「発達してない先史文明の次元」というフレーバーで設定をつけたのだ。
こうして生み出されたのが《ムラガンダの印刻》である。
長い間、このムラガンダという次元が本流のセットでは取り扱われなかった。
しかしいくつもの次元を巻き込んだ新ファイレクシアによる侵攻によってムラガンダにも危機が訪れると久しぶりにムラガンダはカード化され、
この時は「クリーチャーの能力を失わせる」という形でバニラ要素を扱っていた。
このようにムラガンダは古参のプレイヤーにとってバニラ・クリーチャーとは切っても切れない関係性で知られている。
いよいよ本流のセットでスタンダードにムラガンダがやってくるのだから、そこにはムラガンダらしいものが必要になるだろう。
そう、バニラ・クリーチャーだ!
これがバニラ・クリーチャーの収録機会が減ると言った舌の根も乾かぬうちに、伝説のバニラ・クリーチャーがサイクルとして収録されるに至った理由だろう。
いかがだったろうか?
経験の浅いプレイヤーにとって新セットの伝説のクリーチャーの枠がテキストのないバニラで埋められることには大きな不満があったかもしれないが、
マジックの歴史に郷愁を起こさせるうえで、必要な措置だったと分かってもらえたかな?
それではまた次の記事で。
それまであなたがバニラ・クリーチャーのフレイバーテキストから次元の雰囲気を味わえますように…!
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