TYPE/Zeroほらいぞん第1話
『新たなる地平線』
新パックが出るたびに大きく環境を変えるスタンダードに対し、
使用可能なカードが多いフォーマットでは環境を激変させるカードは稀だ。
あるいは逆に大きく環境を変え過ぎたカードが禁止されて結局は元に戻ったりする。
そんな膠着を打ち破るかのように生まれた新パック、モダンホライゾン…
プレビューカードが公開されるたび、
『モダンに変革をもたらす』と言われたそのパックの挑戦的なデザインは、
モダンのみならず多くのフォーマットに衝撃を与えた。
旧枠モダンの民は突然の過剰供給に狂喜乱舞し…
統率者戦の民は新たな統率者候補たちに心を躍らせ…
部族モダンでは数多の多相クリーチャーが新戦力となった…
そしてここにも、新カード情報で盛り上がる少女がいた。
「来た…来てしまった…」
モダンホライゾンのプレビューを前に興奮する女子高生。
そう。このシリーズの主人公、レイちゃんである。
「ああ、このカードはあのデッキに使えそう…」
「ええ…これって再録していいの…?」
プレビューに湧くレイが見つけたのは…
「ぴ…ピッチスペルのサイクルだ…!」
ピッチスペル。
「マナを支払わずに唱えることができる呪文」
それはつまり…
「土地を置くことが遅すぎる環境」でも使える呪文だということ…
すなわち…
「TYPE/Zeroの新規カード…?」
「赤のピッチスペルは手札の赤いカード1枚をコストにすれば0マナで、3/1速攻のトークンが2体か…」
「…! これってつまり60枚ロケット噴射ターボなめくじデッキの新しい枠なの?」
「ちょっと考えてみる必要があるね…」
手札のナメクジ2体の代わりに、
「コストになる赤いカード」と《憤怒の力》があれば…
ダメージを落とさずに1キルができる…
「『コストになるカード』に、なめくじ対策カードへの更なる対策カードを入れれば完璧なのでは…?」
「たとえば…初期手札7枚を固定するコンボを使って…」
「《憤怒の力》を3枚とコストに赤のカード3枚…《ロケット噴射ターボなめくじ》が1枚」
「これでパワー3のトークンが2×3で6体とパワー3のナメクジ1体」
「合わせて7体のパワー3で…21点ダメージで勝ち…」
「なめくじデッキのコンセプトを崩さずに対策カードを入れられる…?」
「でもそうすると対策カード使っちゃった場合に結局勝てないな…」
「あっそうだ。なめくじ自体は次のターンも場に残るから…」
「対策カード使っても《憤怒の力》Aをコストに《憤怒の力》Bを使えばいいのか」
「それで次のターンも残ってる なめくじでアタックして勝ちか。」
「対策カードかあ…」
「無難に《猿人の指導霊》と《赤霊波》でいいかな」
「これで、なめくじの天敵の《不動の力線》を壊せる」
「うん。いい感じなんじゃないかな」
「ふふふ。これはきっとTYPE/Zero環境に新しい風が吹き込むね」
「楽しみだなあ…」
~~~翌日、ショップで~~~
「っていうことを考えたんだけど」
「レイちゃん…それって…」
「ああ、うん。大丈夫。ちゃんと分かってるから…」
そう。
致命的な欠陥があったことに気づかずデッキを組んでしまったのが恥ずかしい…
「新しいピッチスペル…『相手のターンにしか使えない』っていうのを忘れてたよ…」
そう。そもそも速攻トークンを出して攻撃できる自分のターンには、マナなしでエレメンタル・トークンを出せないのである。
「どうやら私は紙束を作っちゃったみたいだね…」
「私もつい同じく緑の《活性の力》で相手の力戦を割れるとか考えちゃったから…」
「うーん、このフォーマットを動かすのはなかなか難しそうだね…」
「結局いつもの『ハイタッチなめくじ』になるかなあ…」
「まあ《不動の力線》を張られたら終わるわけだけど…」
「そこの読みあいが今のTYPE/Zero環境だから」
「紙で遊ぶじゃんけん…」
「そういう悲しいこと言わないでよ…」
「御機嫌よう。どなたか私の相手をして下さる方、いらっしゃいますか?」
「あっ、長田さん」
「いいよー。何やるー」
「TYPE/Zeroですの。それで…モダンホライゾンの新規カードのプロキシを使いたいのですが…」
*プロキシ
まだ持っていないカードの使い心地を試すために代用カードを使うこと等を指す…
「……!」
これはどっちだ…!
初めの私たちと同じく「テキストを読み間違えてる」のか…?
それとも本当に何か新しい可能性を…?
「おもしろい! 受けて立つ!」
「長田さん、あなたがモダンホライゾンで得た答え…見せてもらうよ…!」
次回!
超次元MTG対戦
TYPE/Zeroほらいぞん 最終回!
「女は黒く染まれ」