さて、今回は9月9日に発売するマジック:ザ・ギャザリングの最新パックの話をさせてほしい。
ああ、待って!
「なんだ知らないカードゲームの記事か」とブラウザバックするのは少しだけ待って記事を読んでほしい。
9月発売の新パック「エルドレインの森」は最新のカードセットなのにどこか懐かしい雰囲気を纏っている。
むかしマジックに魅せられた人にも、何もマジックのことを知らない人にも、新しい最新のマジックのことを知ってほしい。
私は「プレイしてほしい!買ってほしい!」とさえ強制しない。
ただ、知ってもらうだけでもいいんだ。
あなたが「マジックを遊ぶこと」に興味がないとしても、
良かったらこの記事を読んで、ちょっとだけマジックについて知ってほしい。
- そもそもマジック:ザ・ギャザリングとは何か?
世界で初めて生まれたトレーディング・カードゲーム。
それがマジックだ。
マジック(魔法)・ ギャザー(集める)という名前の通り、魔法を集めるカードゲームだ。
カードゲームと言う概念自体はトランプやカルタなど昔からあるものだ。
そこにマジックはいくつかの要素を加えた。 - パックを買ってカードを足す
- 友達と交換したりカードを賭けた勝負をしたりして集める
- 自分でカードを組み合わせてデッキを組む。
今ではよく知られているこれらの概念を、マジックが初めてカードゲームに取り入れたんだ。
MTGの絵柄って古臭そう…というイメージはたぶんここに起因している。
世界最古のトレーディングカードゲームだ。
「古そう」でなく本当に「古くからある」んだ。
とはいえ「古臭い」ということは何も悪いことではない。
むしろかなり個性的な味がある。
僕が人生で初めて手に入れたマジックのカードの中から1枚をご覧に入れよう。
なんだかすごく「絵本」や「図鑑」のように見えないだろうか?
絵本というにはちょっと名前が過激だけど。
(日本語訳版のカード名は左が《暴行》で右が《殴打》)
そう、マジックのカードは「呪文図鑑」なんだ。
マジックを遊ぶ人は、みんな魔法使い。
トランプ ゲームなどでは「山札」とかって呼ぶカードの束のことをマジックではライブラリー(図書館)と呼ぶ。
呪文図鑑を納める魔法の図書館から、何冊かを手に取って相手の魔法使いと呪文比べをする戦い。
それがマジックの基本の世界観だ。
クリーチャー(生き物)が描かれたカードは「召喚の呪文」だ。
生き物なので、野獣や巨大な魚、鳥、ドラゴン…ああ、そうそう。人間やエルフ、ゴブリンなんかもクリーチャーだ。
プレイヤーは雷を落として対戦相手にダメージを与えたり、
あるいは相手の魔法に対抗する呪文を唱えて、呪文を打消してしまう。
もちろん全てのカードが呪文と言うわけではない。
異世界の美しい風景を描いた土地という種類のカードもあって、呪文を唱えるのに必要なマナ(魔力)は土地のエネルギーを汲み上げることで生み出されている。
小学生の時にマジックと出会い、こう言った美しい絵柄と古めかしい魔導書のようなカードの束を集めて遊んだときに僕はとてもわくわくした。
さて、マジックは他の多くのカードゲームと同じようにパックと呼ばれる袋詰めで販売している。(1袋にだいたい15枚くらい入っている)
そして、どんどん新しいパックを売ることで
毎年たくさんの新カードが生まれる。
カードを袋詰めで売るのもマジックがはじめてカードゲームに持ち込んだ販売方法だ。
今では完全に「常識」になり、ポケモンや遊戯王など色々なカードゲームのパックがコンビニで売ってたりする。
このパック販売にマジックはひとつの仕掛けをしている。
プレイヤーである魔法使いたちはプレインズウォーカ―(次元渡り)と呼ばれる異世界転移魔法の使い手という背景設定がある。
新しいパックが発売されるたびに、別の世界が描かれて、新しい次元を訪れたり、昔のパックで訪れた世界を再訪したりする。
パックが変わるたびに新たな物語が紡がれるんだ
次のパックでは2019年にパックになった世界エルドレインが再登場する。
2019年からプレイしている人には馴染み深い世界だが、まだプレイヤーでない君はこの世界のことを知らないだろう。
でもきっとみんなが、この世界のことを知っている。
マジックは時折「元ネタ」のある世界をデザインする。
オリジナル世界ではあるが、プレイヤーが既に知っている知識から類推できるように世界をデザインしているんだ。
例えば「ギリシャ神話」を基にした世界や「ゴシック・ホラー」を基にした世界…
エルドレインは2つの元ネタの抱き合わせだ。
「アーサー王伝説のような騎士道物語」と「おとぎ話・童話」だ。
つまり「古き良き西洋ファンタジー」の要素だ。
さあ、エルドレインの世界を知るためのアートを見ていこう!
リンゴを持った魔女の姿からは白雪姫のストーリーを連想するね。
どうやらマジックの世界の赤ずきんはオオカミとボウガンで渡り合うみたいだね。
『エルドレインの森』は最新なのに懐かしいパックになるだろう。
新パック「エルドレインの森」からマジックを始めてみたくなったかい?
あるいはカードゲームで遊ばなくてもいいんだ。
1パックだけ買ったり、カードショップで安売りされてるカードを見てなんとなく100円分くらい買ってみるとか。
ちょっとした宝物として手元に置いておきたくなる。
そんな魅力的なカードセットだ。
ちょっとした添え字のある「手のひらサイズの絵画」として
あるいは「変わった言葉」で書かれた「小さな1枚の絵本」として
エルドレインからマジックの世界に飛び込んで欲しい。
ここまで読んでくれてありがとう。
最後に2019年のエルドレインの公式CM動画を見てほしい。
マジックについて何も知らなくても短編アニメーションとして楽しめる。
何度見ても素晴らしい。
見る者のテンションを見事に操作する脚本が練られている。
クッキーマンに感情移入させ、壊れたクッキーから不穏さを感じさせ…
光りさす窓は希望を示す…
しかし行く手を阻むジャムの鍋はまる煮えたぎる溶岩!
ミルクの濁流を受けても二人が無事だったので観客は心を落ち着ける。
「ああ、なんだかんだで最後にはハッピーエンドになる話なんだ」と。
しかし、その直後…!
斧を振るう男によってクッキーガールは落ちていく。
ああ、なんてショッキング何だろう「騎士はお姫様を助けられませんでした」とでも言うような終わり…
さらに追い打ちをかけるかのような「ただのお菓子」を食べる斧男。
だが、ここで終わりなら「嫌なものを見た」だけで終わる。
その先にもう1つ何かカタルシスが無いといけない。
ああ。最近のヒロインはただ助けられる か弱いプリンセスじゃあないだろう?
反撃だ! かたき討ちだ!
新パックの発売は9月。
だが基本無料のPCゲーム「MTGアリーナ」が絶賛配信中だ。
僕は気に「やれ!」とは言わない。
だが君がマジックを始めたくなった時…扉は常に開かれているんだ。
紙のカードでもPC版でも。
カードを手に入れた瞬間から…君は魔法使いだ。
世界を超える魔力の火種は既に君の中に宿っている…あとはただ、それを使うだけだ。