ここからは残しておきたいカードと抜くカードの選別に入る。
真っ先に抜こうと思ったのは《悪意ある噂》である。
これを使う場合、特化しないといけなくなるので抜こ…
…特化しないといけなくなる…?
、
わざわざネットの海に記事を挙げるんだから、お行儀のいいデッキじゃなく
ちょっとくらい冒険した特化デッキのほうが面白そうだ!と気づく。
というわけで《悪意ある噂》について、ちょっと僕の評価を書きつつ
これを使うデッキについて書いていきたい。
《悪意ある噂》は1マナと軽いが効果が弱い。
弱いんだけど、弱い効果をたくさん詰め込んである詰め合わせセットになっている。
1マナで何ができるか?
手札破壊と1点のライフを減らすこと、1点のライフを得ることという3つのメリット。
相手のデッキを1枚破壊するという評価しづらい効果だ。
「1点のライフを奪い取る」のは誤差だろうか?
しかしこういう地味なものを積み重ねることで勝つデッキというのは1つのアーキタイプとして存在する。
マーク・ローズウォーターが言うところの「出血アーキタイプ」と言う奴だ。
「出血」とは状況を膠着させて、1点のライフを奪うような地味な効果を連打して勝つデッキだ。
相手に「『決定打』が何かあったわけではないのに、気づいたら死んでいた。」と思わせるじわじわとした有利を積み重ねるものだ。
膠着した状況と聞いて真っ先に思い浮かぶのは互いの盤面にクリーチャーが並んでいるが、
特に攻撃してもダメージが通らないのでただただターンが過ぎていく。
手札もなく今引きを期待してカードを引き続ける。
こんな状況になるかな。
《悪意ある噂》はその盤面を作るカードだ。
先攻1ターン目の《悪意ある噂》は「互いに手札6枚でゲームを行う」ようなものだ。
(マリガンすると手札が減るのででもっと少ないこともあるだろう。)
《悪意ある噂》はそういう「ゲームの規模を縮小化するカード」だ。
現在のスタンダードPauperには再活という墓地発動メカニズムがあるので、
一見不利に見えるが、再活は類似の能力であるフラッシュバックと違って「手札を捨てる」コストがかかる。
結局再活するには手札が必要なのだ。
《悪意ある噂》と再活の対戦は比較的相性が悪いが致命的なほどではない。
そして《悪意ある噂》はライフ1点を奪う。地味だが使えばこちらが確実に優位に近づくのだ。
《強迫》や《抜去》との比較も面白い。
それらに比べて確実性がなく確実性が高い。
言葉遊びのようだが、理屈はこうだ。
一般論として《強迫》と《悪意ある噂》で確実性が高いのは《強迫》だ。
これはつまり「相手の手札を見て、強いカードを捨てさせることができる」からだ。
《悪意ある噂》は相手にとって一番いらないカードを捨てる。
《強迫》は相手にとって一番よいカードを捨てさせられる。
だから「脅威に対処する確実性」が高いのは「見て選ぶ」方である。
そういう理屈だ。
私に言わせればそれは違う。確実性ではない。
なぜなら効果が発揮される前提でいるからだ。
《強迫》のテキストをもう一度読んでほしい。
もし相手の手札が土地3枚とクリーチャー4枚なら《強迫》は自分の側が手札を消費して相手は捨てない。
一方で《悪意ある噂》は絶対に相手の手札を減らせるので確実性が高い。
…ああ。絶対ではなかったね。《悪意ある噂》は相手の手札が0枚でも使えるんだった。
その場合でも《悪意ある噂》は相手のライフを1点奪う。
《強迫》のような強い方向への振れ幅はないが確実に効果を発揮するのだ。
参考までに書いておくとこれはスタンダードPauperというとても弱いカードプールでの話をしている。
真似してスタンダードやPauoerで使うと多分とても弱い。
出血デッキに必要なカードはなんだろうか?
・防御を固めるカード
・ゲームの規模を縮小させるカード
・じわじわとライフを得るカード
ふむ。改めてカードを選ぶ基準を見直してみよう。
例えば前回のメモにこんなことが書いてある。
《吸血鬼の新生子》
1マナ0/3の壁。2マナタップで1点ドレイン。
ドレインが馬鹿にならないかもしれないが壁としてはぎりぎり。落第。
とんでもない!
これこそ出血デッキが求めているものだ!
1ターン目に出して3マナ 2/3などの足止めができる防御的なカードで、
膠着した後はじわじわとライフを奪い続ける。
もちろんこいつにはパワー3を止めることはできない。
壁としてギリギリなところは相変わらずだ。
つまり? …パワー3を止められる壁を入れる。それだけの話だ。
そんなカードもさっきのメモにあったね。
《煌めく障壁》
2マナ0/4。死んだら宝物トークン。
0/3の壁をここまでクビにし続けてきたが0/4は壁として高評価。
パワー3のアタッカーは少なくないがパワー4となるとぐっと減るのだ。
色マナを問わずに出せて、突破されても色マナを出す置き土産があるので事故に強い。
《霧の壁》
0/5の壁。
煌めく壁とどちらを選ぶか。生贄やファクトシナジーを意識しないならこちら。
パワー3を止められるタフネス4は強かった。パワー4を止められるこちらは更に素晴らしい。
奇妙な言い方になるがこのレベルの「壁」は「除去」なのだ。
うん。素晴らしい。
特に《霧の壁》の紹介に書いた「壁」は「除去」というのが実に出血デッキらしい。
盤面にカードがあるので「なにもされてない」ように相手に見えるが、確実に「出血デッキの勝ちパターン」に進んでいるのだ。
とはいえこれらの壁では飛行しているクリーチャーを止められない。
飛んでいるクリーチャーを打ち落とす手段が必要になる。
除去呪文を探そう。
えっと確かメモの除去呪文には…
《切断された糸》生贄が必
要な除去。おまけで回復。
おまけで回復は…といいたいが生贄が気になる。タフネスの高い生贄が用意できるなら。
おまけ付きでタフネス3~4の生物がいるなら。そういえばここまでにそういうのをクビにし続けてるな。
彼らの評価が少し上がるだろう。諜報が欲しいから骨の壁(0/3)を入れるなどした場合、これも検討できる。
素晴らしい!
このデッキには大量のタフネス3以上のクリーチャー(タフネス5までいる!)が入っている!
《切断された糸》での除去はこちらのカード2枚と相手のカード1枚の取引になる。
ライフ回復で補ってはいるけれどやはり「戦場に出た時」や「死亡した時」の誘発がついているものを使うことで
有効に利用したい。
というわけでタフネス3を持っていて戦場に出た時に使えるのは…
《前兆語り》
2マナ1/3。占術2。
シンプルだがそれ故に強い。
対抗馬の2マナ1/3たちが「重く唱えてアドバンテージを稼ぐ」のに対して
こちらは直接的なアドバンテージこそ発生しないが2マナで唱えてすぐに効果を得られるのが特徴。
序盤に出せると展開が安定し、終盤でも勝ち筋を探すのに役立つため完全には腐らない。
それからタフネスはなくとも「戦場に出た時の能力」が1枚分の仕事をするカードも見逃せない。
《泥棒ネズミ》、手札を1枚捨てさせるネズミ。
悪意ある噂を入れるタイプや生贄の追加コストを要求するカードが入るなら検討できる。
メモに書いた通り。こちらは「歩く悪意ある噂」だ。
ライフ1点の代わりに生贄要求カードの生贄になれる。
さあ、優秀な生贄が準備できたね。生贄を支払うカードを足そう。
ただし、生贄を要求しすぎるとデッキが回らない。
生贄なしでも使えて、生贄で強化できる。そんなカードはあるだろうか?
《不純な捧げ物》
マイナス2。追加で生贄を差し出すとマイナス5。
生贄を用意しなくても使えるのは高評価。生贄確保できるなら更に加点。
小粒の速攻デッキ相手なら回復のある《渇望の時》を。相手が中速の場合はこっち。
簡単にいえば赤白使いと緑使いのどっちが多いかだ。君の周りの環境に合わせて調整しよう。
小粒の速攻相手には壁が揃っているので対策は取れている。
《不純な捧げ物》が生きるだろう。
ここまでで一旦整理しよう。
クリーチャー
《吸血鬼の新生子》
《霧の壁》
《煌めく壁》
《前兆語り》
《泥棒ネズミ》
スペル
《切断された糸》
《不純な捧げ物》
いやあ、出血デッキとはいえこれじゃあ勝ち筋が少なすぎるので「飛行」や「ブロックされない」クリーチャーも入れて
削ることも視野に入れるか赤い火力呪文も入れていく必要がありそうだ。
というわけでそこそこのタフネスがあるブロックされないクリーチャー《壁過の達人》。
最後に多色のパワーカードをトッピングする。
青赤の多色カード、《音波攻撃》と《高熱仮説》。
青黒の多色カード、《概念の雨》と《巧みな叩き伏せ》
クリーチャー
《吸血鬼の新生子》
《霧の壁》
《煌めく壁》
《前兆語り》
《泥棒ネズミ》
《壁過の達人》
《流血の空渡り》
スペル
《悪意ある噂》
《切断された糸》
《不純な捧げ物》
《音波攻撃》
《高熱仮説》
《概念の雨》
《巧みな叩き伏せ》
入れる枚数の基準はまず4枚か2枚
4枚→初手で引きたい・デッキの中核・いつでも使える のどれか
2枚→使い時を選ぶ・複数引くと腐る・同じ役割のカードが他に入っている
こんな感じだ。このタイミングでは3枚や1枚は考えない。
クリーチャー 20
4 《吸血鬼の新生子》
2 《霧の壁》
2 《煌めく壁》
2 《前兆語り》
4 《泥棒ネズミ》
2 《壁過の達人》
4 《流血の空渡り》
スペル 24
4 《悪意ある噂》
4 《切断された糸》
2 《不純な捧げ物》
2 《音波攻撃》
4 《高熱仮説》
4 《概念の雨》
4 《巧みな叩き伏せ》
44枚になった。
土地が26枚なので34枚にしないといけないが、
34枚を決めるには多すぎる。
ここで減らせそうなカードがあれば減らす。
デッキに奇数枚のカードはそうやって奇数になる。
クリーチャー 17
4 《吸血鬼の新生子》
2 《霧の壁》
2 《煌めく壁》
2 《前兆語り》
3 《泥棒ネズミ》
2 《壁過の達人》
2 《流血の空渡り》
スペル 17
4 《悪意ある噂》
3 《切断された糸》
2 《不純な捧げ物》
2 《音波攻撃》
2 《高熱仮説》
2 《概念の雨》
2 《巧みな叩き伏せ》
…はい、ゴミ―。
さすがに悠長な上に宇宙パワーによって突然死する。
壁はブロックできる間は除去だがブロックできない状態にとても弱い。
「切り札らしい切り札がない」というデッキを組むには継続ダメージのカードがない。
…ので妥協して…というか「勝てる」デッキにするために
切り札を入れよう。
相手の除去が通らなくて回避能力のあるクリーチャーだ。
このシリーズを読んできた方々にはもう馴染みだろう。
《急流の魂》を入れよう。
ここで改めて土地の枚数を考える。
このデッキは膠着状態で土地を引くのを避けたいので土地は減らしてもいいタイプだ。
《急流の魂》のために1枠開けよう。
あと、予想以上に黒マナが必要なので基本土地バランスを沼に寄せる調整もしたい。
早い段階で《悪意ある噂》を撃つには沼がいるからだ。
島を2枚、沼に入れ替えよう。
黒が欲しいので燃え殻の痩せ地を1枚足して、イゼット門を減らす。
そしてこれは非常に大事な工程なのだが
『デッキの名前』だ。今回作ったデッキは決して強くないが、オリジナルデッキだ。
青黒赤、グリクシスカラーのデッキなのでグリクシス○○っていう名前にしよう。
このデッキの特徴はやはり《悪意ある噂》というなんとも評価しづらいカードをメインに組んだところだろう。
そうだな。グリクシスのウワサ…ドナルドのウワサみたいで嫌だな。却下。
英語版のカード名からグリクシス・ルーモア…ルーモアの響きが丸っこすぎるからダメ(意味不明基準)
悪意ある噂はヴィシャス・ルーモア…うん。ヴィシャスはかっこいいしエッジが効いてるな。
というわけで【グリクシス・ヴィシャス】のかんせ…
ねえ、これ61枚ない…?
簡単な算数もできないのか…(困惑)
審議中…。
《ギルド門通りの公有地》…1枚抜いても…バレへんか…
最終的にめちゃくちゃ重いカードの入るデッキにはならなかったしな…。
改めて…
グリクシス・ヴィシャス!完成!
お値段 約¥350(基本土地代別)
【グリクシス・ヴィシャス】デッキレシピ
土地 25枚
4 《進化する未開地》
1 《ギルド門通りの公有地》
2 《高地の湖》
2 《水没した骨塚》
3 《燃え殻の痩せ地》
2 《イゼットのギルド門》
3 《ディミーアのギルド門》
3 《島》
4 《沼》
1 《山》
クリーチャー 17
4 《吸血鬼の新生子》
2 《霧の壁》
2 《煌めく壁》
2 《前兆語り》
3 《泥棒ネズミ》
2 《壁過の達人》
2 《流血の空渡り》
スペル 18
4 《悪意ある噂》
3 《切断された糸》
2 《不純な捧げ物》
2 《音波攻撃》
2 《高熱仮説》
2 《概念の雨》
2 《巧みな叩き伏せ》