バーチャルVtuver豆猫さんの与太話

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『三体』読み方のコツ。

 

あなたは『三体』を知っているだろうか?

 

知っている方は「もう聞き飽きたよ」と思いつつ少しだけ読み飛ばしてもらうとして、
知らない方向けに『三体』についての概説をしよう。

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三体(早川書房)

 

『三体』中国のSF小説で、今月初めに遂に日本語訳が出版された
ハリーポッターのような「お茶の間」を騒がせるタイプの作品ではないものの、
世界レベルで人気の出た傑作である…

 

実際にこの作品を読み始めて感じた面白さについてはまた改めて書くことにして…
(これを書いている時点では私はまだ『三体』を読み終えていない。読み終えた時に改めて書こう)

 

この本の『読みにくさ』と『読みやすさ』について触れていこう。

 

『三体』が当初の予想に反して単行本化した時にめちゃくちゃ流行ったというエピソードや、英訳された翌年に西洋のSF賞『ヒューゴー賞』初のアジアSF受賞作になったこと…
現在日本でも初動で予想された手ごたえ以上に売れているという事実。

三体は「巷で話題」というほどではないが界隈を震撼させている。


近所の書店では「売れてるランキングコーナー」みたいなのに「5位 『三体』」みたいな表示だけあって『現在品切れにつき出版社への注文になります』みたいなポップが出てたりと、予想以上のブームのようだ。

なんでも発売の翌日には3回目の増刷が決まり、10日の時点で10刷まで決まったというから驚きだ。

 

ソース:小説「三体」が日本で人気!発売1週間で10刷、小島秀夫ら有名人がこぞって推薦―中国メディア (2019年7月12日) - エキサイトニュース

 


なぜこんなに『三体』が流行ったか?


評論家ぶって批評する資格が僕にはないので一読者の感想ではあるが、
かなり『読みやすい』のだ。

雑に言うと、おもしろい。
誰が言ったか「面白いということはどんな欠点も覆い隠す」なんてコトワザ(?)もある、SFは小難しいとかそういう偏見を吹き飛ばすほどに、僕は『三体』をおもしろいと感じた。

『三体』は面白いから読みやすい。


その上で、あえて言おう。
『三体』はめちゃくちゃ読みづらいよ。

なぜこんな読みづらくて面白くない小説が流行るのか甚だ疑問なほど、『三体』は読みづらい。(掌ぐるぐる回り過ぎである)


大きく分けて問題点は2つ。
うち1つは別に疑問でもなんでもないのだけれど。

まずはその疑問でもなんでもないほうから語ろうか。

 

『三体』の読みづらさ
「人名がわかりにくい」

 

いやもう、こんなの完全に日本人の事情である。
なぜこんなに人名が読みづらい小説が中国や英語圏で流行るかといえば、
別に向こうの人たちには読みづらくもなんともないからとしか答えられない。

 

『三体』2人の視点人物で語られる。
それぞれの主人公の名前は葉文潔(イエ・ウェンジエ)と汪淼(ワン・ミャオ)

この時点でふつーの日本人の方は僕と同じような気持ちになるはずだ。
名前が読みづらいと…


振り仮名なしで文潔とか汪淼とか書かれると脳がバグる。
普段なら「ぶんけつ」と読むであろう字を「ウェンジエ」と読むことや
汪淼(もはやなんて打ったらいいかわからないのでコピペした)とかが著しく読みづらさを高めている。

 

原作の中国語版を読んだ中国語の話者は、これらの名前は恐らく日本人が「青葉 文子(あおば・ふみこ)」さんや「水谷 清太郎(みずたに・せいたろう)」みたいな名前を読むようにすらすらと頭に入るのだろう。


あるいは英語版にしたって「Wenjie」や「Wang Miao」といった名前はエキゾチックではあるものの字と音とキャラクターが脳内でリンクされるまでそう時間はかからないに違いない。

 

ところが日本人にとっては漢字を使いながらも、普段使う読みと違う読みなのでなかなか頭に入ってこない。
本文のおもしろさや翻訳の良さとかとは完全に別の部分でのつまずきポイントだ。

 

対処法1
新品で紙の『三体』を買う。

 

まるで出版社の回し者みたいなことを言っているが、とりあえず理由を聞いてほしい。


紙の『三体』を買って「あー、電子書籍じゃなくてよかった…」と思った。
例えば数ページ前に出た端役の名前であればパラパラとページをめくって戻れる


この辺、電子書籍慣れしてる人にとっては苦にならないのかもしれないけど。
僕はこういうざっくりしたページ戻しは紙の本の方が慣れているし、そっちのほうがふつーの感覚だと思う。
別に強制はしないのでそういうのが電子書籍の方がやりやすいって人は、kindleとかで買って読んでも問題なし。でも次に書く理由があるので紙も検討してほしい。

 

もう1つ、新品で紙の本を買うのを勧めるのは、中に入っているピンク色の紙だ。
新品にはピンク「登場人物」の名前を書いた紙が挟まっている。
右手で本をめくり左手に名前表を持つことで、登場人物の把握が捗る。
こういう内容物は中古販売ではクリーニングの時に廃棄されることも少なくない。
確実に手に入れるならやはり新品を買うべきだろう。


対処法2
自分ルールで読む。

 

僕は「日本語で音読みできる名前は音読み」で「日本語で読めないような漢字はカタカナ発音で覚える」ようにしている。

 

この物語には二人の主人公がいる。
女性天文学者葉文潔(イエ・ウェンジエ)
現代の男性研究者、汪淼(ワン・ミャオ)

 

僕は脳内で2人の名前を葉文潔(よう・ぶんけつ)と汪淼(ワン・ミャオ)として読んでいる。

 

どのようなルールにするかはあなたの自由だが、とにかく「読み方のルール」を決めること。
そしてルールをすべての名前で統一する必要はない。

これをすると、ある程度だが名前とキャラクターのリンクが張りやすくなる。
(逆に『正しい読み』であるイエ・ウェンジエはわざわざ調べないと書けなかったので弊害もあるわけだけど)

でも『正しい読み』は後で適宜、調べたりどっぷりハマってから覚えればいい。
最初はとにかく自分で読みやすく読む。
そして、その代わりに読みを貫くことだ。


最初に出てきた時に「イエ・ウェンジエ」と読んで2度目の登場時に「よう・ぶんけつ」と読んでしまうと脳内でつながらない。


一方の主人公の物語に出てきた人物が別の主人公の物語に関わった時に「アッ!」て繋がる感覚が失われてしまうのはもったいない。

 

自分が読みやすく、振り仮名なしでパッと思いついた読みを貫くのがいい。

訳者によると汪淼の日本語読みは(おう・びょう)だと書いてあった。
「びょう」というのは馴染みのない読みかもしれない。
だったらあなたは汪淼を王と水という漢字が含まれてるから(おう・すい)と脳内で読んでもいいんだ。
とにかく自分ルールで勝手に名前を読むのをためらわないのがコツだ。

 

『三体』の読みづらさ
いきなりの文化革命

 

物語は幼少期の葉文潔(よう・ぶんけつ)の家族が文化革命に巻き込まれるところを描くところから始まる。
ここ、めちゃくちゃ読みづらかった。


というかもしここを先に読んでいたり、電子書籍の「試し読み」とかで読んでたら多分、僕は『三体』を読まなかったと思う。
なぜこんなにも読みづらい出だしの小説が大ブームになったのか?
お国柄の違いというか、単に自国の出来事なので身近だからなのだろうか?

 

結論から言うと、そういう話ではなく「翻訳版」での改稿なのだ。

原作の中国版三体では日本語版冒頭のシーンは実は第9章に回想シーンとして出てくる。

原作者の意図としては日本語版の順で書き始めたかったが、なにせ書かれたのは『13年も前の中国』である。
政治的な事情でそこから書き出すのはマズい…という考えから、この章は後に回されることになったらしい。

 

ソース:【#三体ニュース】いよいよ発売! 翻訳・大森望氏によるあとがきを公開!|Hayakawa Books & Magazines(β)

 

結果的にダブル主人公である葉文潔(よう・ぶんけつ)と汪淼(ワン・ミャオ)について、登場順が逆転している。


最初に流行った時点での中国語版はワンミャオ→ぶんけつ→ワンミャオの順なのだが、
作者の意図を尊重して訳版では原作では9章での回想シーンだった文潔の幼少期を冒頭にし
ぶんけつ→ワンミャオ→ぶんけつ という順に来るのが日本語版と英語版の構成になっている。

日本語版の順は作者の意思を尊重したものではあるが英語版の訳者ケン・リュウ氏も言うように原作の順序(汪淼のシーンから)の方がエンタメとしては読みやすい

 

 

対策1

第一部を読み飛ばす。

 

原作者に極めて失礼であることを承知で言うと…

「政治的事情で歪められた」構成である原作版の流れの方が、
現代日本人の僕にはとても読みやすいし、物語が動き出す感じが非常に面白かった。
是非、日本人読者には原作同様の順、あるいはワンミャオのパートから読み始めてほしい。

とはいえそれだと「試し読み」ができない…という方々に朗報である。

 

冒頭の「過去編」である第一部から四十数年後、

「現代」であるワンミャオのパートから始まる第二部の冒頭がこちらから読めるのだ。

発売前にネットで公式先行公開された部分だ。

映画の「冒頭10分映像」みたいなものだと思ってまずはここから読んでみるのはいかがだろうか?

現代中国の研究者、汪淼(ワン・ミャオ)の元に4人の男(2人の軍人と2人の警官)がやってくるところからワンミャオの物語が動き出す。


先行公開前半(2部冒頭)

wired.jp

先行公開後半(続き)

wired.jp

 


読んでもらえただろうか?
私は自分の布教が成功するのを祈ってはいるが、それでもやはり『三体』は万人受けは難しいかもしれないと思う。

 

それでも、『三体』は当初予想された「コアなファン」より一回り多い層のファンを引き付けた。
それは『三体』が読みやすいからだと思う。

ここまで読みづらい読みづらいと繰り返して調子のいいことを言うようだが、
それでもやっぱり『三体』は読みやすい。


それは『三体』がおもしろいからだ。
誰でも楽しめる!という保証はしないけれど「刺さる」人は確実にいると思う。

ひとりでも多くの『三体』読者が増えて出版社にお金が入ることで、続刊もしっかり売れることを祈ってます…

www.hayakawa-online.co.jp

 

 

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