バーチャルVtuver豆猫さんの与太話

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【読切MTG短編】LO探偵ミルの事件簿~手札事故?いいえこれはデッキ殺害事件です!~

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LO探偵ミルの事件簿

 

前回までのあらすじ

カードショップのデュエルスペースで山札破壊デッキを回す少女ミル彼女の前に次々と現れるデッキ構築犯罪者たちの山札を墓地へ送り、デッキ構築の過程を推理し、プレイングやデッキ選択の問題でなくデッキ構築に問題があったことをミルは指摘していくのだった…。そんな彼女の前に、今日も構築犯罪者が現れる。

 

「さて、今日も店舗でLOして気持ちよくなっていくわ! こんにちわ、店長さん。今日はフリプできそうな人来てるかしら?」

*フリプ…フリープレイ。野良試合のこと。

 

「やあ、ミルちゃん。今日は普段あまり見かけないお客さんが来てるよ。ちょうどよかった、相手をしてやってくれないかい?」

 

「おう、1人で暇してたんだ。嬢ちゃん、ここの常連かい? ちょっとばかりマジックで対戦してくれよ」

 

「ええ、もちろん。こちらこそよろしくお願いします。フォーマットは何にしましょう?」

 

「モダン。強そうなデッキに自分のアレンジを加えて組んできたオリジナルデッキがあるから回させろ。ただサイドボードは揃えてないから1本勝負でな」

 

「なるほど、ではモダン1本勝負で。ダイス用意しますね。2つ振って出目の大きい方が先手でどうでしょう?」

 

「おう、そうしようや」

 

「では、お互い2d6で…8」

 

「ちっ、3だ。」

 

「では、先手を頂きますね」

 

マリガンチェックを終えて互いにキープ。

 

先手はミルから。

「島を置いて1マナ。《遺跡ガニ》を出してエンドです」

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「《遺跡ガニ》…? なるほどね、デッキ破壊か。じゃあ、俺のターン。《尖塔断の運河》をアンタップイン」

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(青赤のファストランド…!《カウンターモンキー》ですか…!)

 

【カウンターモンキー】

特殊セット『モダンホライゾン2』の発売以降に登場したアーキタイプ

伝説の猿クリーチャーを軸に、相手の行動を妨害しながら軽いクリーチャーで攻め切るクロックパーミッション・デッキ。

 

「《ドラゴンの怒りの媒介者》を出してターンエンドだ」

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(媒介者/Channeler…! あれもカウンターモンキーの1マナ域に採用されるクリーチャー。蟹で止まる猿よりも、諜報で墓地を肥やして昂揚条件を満たせば蟹を越えられるチャネラーを優先してきたわけですね…いや、結論を出すにはまだ早すぎでしょうか。 とはいえカウンターモンキーだと仮定して動きましょう)

 

(墓地が肥えると強くなる媒介者とデッキ破壊は相性が悪いんですよね。さて、どうするべきか…)

 

「こちらは1マナで《面晶体のカニ》を出して、ランドセットは青白フェッチ、即座にクラックしてサーチは島。2匹の蟹で上陸2回。ライブラリーを合計12枚墓地に送ります」

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墓地へ落ちていくカードを見て感じる違和感。

赤黒のファストランドや青黒のスペル《湖での水難》と言った黒を混ぜていることを匂わせるカード群。

 

(カウンターモンキーは青赤の2色デッキ。そこに黒を足したグリクシスカラー…? もしかしてカウンターモンキーではない…?)

 

「ターンをもらうぜ。ドロー。ちっ、使えないクリーチャーだ。どうしてコピー元のデッキを作ったやつはこんなゴミカードを入れてんだか分からねーぜ。まあいい、戦闘に入って媒介者で攻撃。昂揚はお嬢ちゃんが達成させてくれたからなぁ。飛行の攻撃を受けてもらうぜ」

 

「テイク3点。もらいます」

 

「戦闘後にランドセット、赤黒ファストランドを置いて《表現の反復》。《スカイクレイブの災い魔》を追放してターン終了だ」

 

(…? このデッキはもしかして、いや違うそれにしては重要な点を間違えている…そんなはずは…)

 

「ターンをもらいます。アンタップ、アップキープ、ドロー。《雲の宮殿、朧宮》を置いて上陸。デッキを6枚削ってもらいます。

 

「3マナ払って《ターシャズ・ヒディアス・ラフター》! 合計コストが20マナになるまで山札から墓地へ送ってもらいます!」

 

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「0マナ、2マナ、土地、土地、1マナ、1マナ、土地、2マナ……」

 

(今のでかなり削れた! 恐らく次のターンには勝てる!)

 

「ちっ、俺の番だ。ドローして、よしっ。2マナで《瞬唱の魔道士》を出して効果で墓地から《稲妻》を唱えて《面晶体のカニ》を焼いて媒介者で攻撃」

 

「ターンをもらいます。アンタップ、アップキープ、ドロー。《彼方の映像》で3ドローします」

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「《遺跡ガニ》を出して朧宮の能力をそれぞれ起動。このターンの土地のセット権利を使って再び朧宮をランドセット。上陸で6枚削ってエンドします」

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「ターンもらってドロー、戦闘に入ってクリーチャー2体でアタック。」

 

「魔道士はカニでブロックします」

 

「2点のライフを払って《はらわた撃ち》でブロックしたカニを焼く」

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「土地を置いて4マナで《スカイクレイブの災い魔》を2体召喚してエンドだ」

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(やっぱり、このデッキは…)

 

「ターンを貰います。アンタップ、アップキープ、ドロー。再び《朧宮》を起動して置き直して上陸。あなたのライブラリーは0枚です」

 

「はっ、つまんね。ライブラリーアウトなんて陰湿なデッキ使いやがって。ライフを削ってくるフェアデッキ相手ならもっと俺は上手く戦えたのによぉ〜」

 

「…なんですって?」

 

「あぁ? ライブラリーアウトは陰湿だって言ったんだよ!」

 

「そこじゃない! 相手がライフを削ってくることがなかったから負けたですって?」

 

「ああ、そうだよ! 嬢ちゃんがちゃんとライフを削って戦うデッキなら俺の手札が事故ることもなかったんだ!」

 

「それは事故なんかじゃない! デッキ殺害事件です!」

 

「…!?」

 

なんだなんだと集まってくるギャラリーたち、手札事故ではなくデッキ殺害事件とはどう言う意味なのか?

フリープレイ中の他のプレイヤーも興味をそそられて円になりミルと対戦相手を囲む。

 

「さて、まず最初に私はあなたのデッキを見て【カウンターモンキー】だと予想しました」

 

ミルは戦場の青赤ファストランドとドラゴンの怒りの媒介者を指差した。

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「しかし、ライブラリーを削り始めておかしさに気づきました。そのデッキには青赤だけでなく黒のカードや赤黒のファストランドが入っている。これはカウンターモンキーの通常の構成ではまずありえない特徴です」

 

「そしてすぐに別のデッキが脳裏をよぎりました。青赤に加えて黒、つまりグリクシスカラーで、媒介者を使う前のめりなデッキと言えば…」

 

ひと呼吸ためてミルは言い切った。

「あなたのデッキは、【グリクシスシャドウ】ですね?」

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非公開情報である手札を指してミルは宣言する。

そのデッキのアーキタイプの名前を…

切札でありデッキ名の由来となるシャドウ…《死の影》はライブラリ破壊で一枚も現れなかった。

もし、ミルの推理どおり対戦相手のデッキが【グリクシスシャドウ】であるならば見えてない手札にこそ《死の影》はあるはずだった。

 

【グリクシスシャドウ】

死の影(デスシャドウ)を中心としたグリクシスカラー(青赤黒)の3色デッキ。

自身のライフを減らしながら、ライフがピンチの時に使うと強くなるカードで闘うビートダウンデッキ。

 

 

「おい、だけど待ちなよ。ミルちゃん。」

 

そう言って店長が声をかける。

 

「そのお客さんは手札のカードを『なんで入れているかもわからない雑魚カード』だと言っていたよ。グリクシスシャドウの使い手が、《死の影》のことを雑魚カードなんて言うものかい?」

 

「店長さんの言う通り、普通はそんなことを言ったりしないわ。でも彼はどうやら違ったようね。おそらく採用理由も分からずにデッキをコピーして、その後に土地を入れ替えたのでしょう」

 

対戦相手が取り落とした手札が衆目に晒される。

そこにはミルの宣言どおり《死の影》のカードがあった。

 

「恐らく彼はモダンの試合で結果を出したグリクシスシャドウのリストを見てこう思った…『このデッキなら自分でもっといいものが組める』とね」

 

「どういうことだい?」と尋ねる常連の客にミルは語る。

 

「グリクシスシャドウのメインデッキには通常、大量のショックランドやフェッチランドが採用されます。その美しい『ライフを失う土地』によるマナベースを、ライフを支払わないファストランドなどに置き換えて『オリジナルデッキ』などとぬかしていたのです」

 

ミルはライフ計算用のメモ用紙を1枚切取り、ペンで書き出していく。

 

「始めのターンに彼は青赤のファストランドから入った。カウンターモンキーでも使われ、本来のグリクシスシャドウには入らないカードです。もしこれが青赤のフェッチランド《沸騰する小湖》だったとしましょう」

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「このカードから、最後まで山札から墓地へ行くことのなかった…つまり、彼がコピー元のレシピから勝手に抜いて『強化』した《血の墓所》を探してきて戦場に出します」

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「これによりライフは合計で3点失われます。彼の戦場に今、土地は4枚」

 

20-(1+2)×4=8

 

「元のデッキに手を加えていなければ、こちらがライフを削らなくてもマナベースだけで自力で自身のライフを8点まで減らすことができたのです」

 

「なんてこった、そうなれば《死の影》は1マナで5/5のハイスペック・クリーチャーということになるぞ」

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『でも、こいつはデッキコンセプトをきちんと理解していないまま土地以外をコピーしたデッキを組んだんだ…!』

 

「手札にそれだけ強力なクリーチャーがあれだけたくさんあれば、私に勝利することは決して難しくなかったはず。…つまりこれは手札事故などではなく、デッキ殺害事件だったということよ!」

 

うずたかく積まれた公開領域の墓地と推理によって明かされた非公開領域の手札。

LO探偵ミルは相手のデッキレシピすべてを白日の元にさらけ出したのだ。

 

「あなたのデッキはもはやすべて丸っとお見通しです!」

 

「くそっ、不快な気分にさせやがって!こんな店出てってやる!」

 

『何が不快な気持ちだ!』

『黙って聞いてれば、あんたの態度も初めて会うプレイヤーのフリプにしては行儀が悪い不快なプレイばかりだったぞ』

『ミルちゃんに罵倒されるのはご褒美みたいなものだろ』

 

ギャラリーが次々に声を上げる。

 

どちらが悪質なプレイヤーか、もはやそれは誰の目にも明らかだった。

 

数日後…

 

「あの時はすまなかった。私の新しいグリクシスデルバーと相手をしてもらえないだろうか?」

 

「えぇ、是非!」

 

カードショップにはまたひとり、LO探偵ミルにデッキを明かされたいファンが生まれた。

 

「前のデッキより格段にマナベースは良くなっていました。ただ、私との試合だから良かったものの昂揚達成を自力で達成するのは難しそうな構築に見えました。ウルザズサーガがミシュラのガラクタを入れてみるのはどうでしょう?」

 

「ありがとうございます!」

 

LO探偵ミルの事件簿 デッキ殺害事件編 これにて解決!

 

 

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