アート:ファイレクシアの憤怒鬼
●「ゆっくりしていってね!」
●「ゆっくりターシャだぜ。なあ、《ファイレクシアの憤怒鬼》ってクリーチャーを知ってるか?」
●「知らないわ」
●「それじゃあ、今日は新弾『団結のドミナリア』で再録される《ファイレクシアの憤怒鬼》について解説していくぜ」
●「《ファイレクシアの憤怒鬼》は『アポカリプス』で登場した黒のコモン・クリーチャーだぜ」
●「『アポカリプス』…? 知らないパックね」
●「もう20年以上前のパックだから知らないのも無理はないぜ。『アポカリプス』は『インベイジョン・ブロック』の第3セットで…」
●「待って、待って。解説の中で知らない言葉がまた出てきたわ。『インベイジョン・ブロック』って言うのは?」
●「そうか、令和のクリーチャーはブロック制を知らないんだったな」
●「なによ。ターシャだって令和のプレインズウォーカー・カードでしょ」
●「私の場合はD&Dのコラボカードだからな。マジックで登場したのが令和でも、地元D&Dではもっと前から愛されているんだぜ」
●「ふーん。まあ、いいわ。ブロック制と『インベイジョン・ブロック』について教えて」
●「まずブロック制の説明をするぜ。この前、イニストラード次元を舞台にしたパックが2つ続けて発売されたのは知ってるよな?」
●「ええ。『真夜中の狩り』と『真紅の契り』ね。」
●「最近ではたまにしかやらなくなってしまったけれど、かつては同じ次元を舞台にしたパックが3つくらい連続で出るのが普通だったんだぜ」
●「同じ次元のパックを3連続で?」
●「ああ。3連続で同じ次元のパックを出したりそれ以上連続することもあったんだぜ。この3連続パックをひと固まりの『ブロック』としてスタンダード落ちを決めるのがブロック制なんだぜ」
●「なるほど。3連続のパックが変なところで分断されないように同じ次元ごとにローテーションしてたわけね」
●「その通り。多少の例外はあるが、概ねその認識であってるぜ」
●「それで? 『インベイジョン・ブロック』はどの次元を舞台にしたパックなの?」
●「ドミナリアとファイレクシアの次元間戦争を題材にしたパックなんだぜ」
●「ドミナリアとファイレクシアの…? それってつまり、新パック『団結のドミナリア』と同じってこと?」
●「その通り! 『団結のドミナリア』のセットデザインチーム、特にエリック・ラウアー氏が、新パックを『インベイジョン』へのリスペクトを込めたセットにしようとデザインしたんだぜ。再録メカニズムであるキッカーや版図はどちらも『インベイジョン・ブロック』で初登場したメカニズムで、ここからもインベイジョンへのリスペクトが伺えるな」
●「キッカーや版図も『インベイジョン・ブロック』が初出のメカニズムなのね」
●「ああ、だから令和の新パックに『インベイジョン・ブロック』から《ファイレクシアの憤怒鬼》が新アートで再録されるのは古参や『インベイジョン・ブロック』ファンにはたまらないファンサービスなんだぜ」
●「でも、ターシャ…」
●「なんだぜ?」
●「憤怒鬼ってスタンダードセットのコモンとして、ちょっと弱すぎない?」
●「な、なんてことを言うんだぜ」
●「だって、ひとつ前のパックで白には《鼓舞する監視者》がいてコモンの3マナ2点クロックのキャントリップ が1点ルーズどころか1点回復して、それどころか飛行してるのよ」
●「せめて1点ルーズじゃなくて1点ゲインする新規コモンでも良かったと思うの」
●「ま、待って欲しいんだぜ。ファイレクシアの憤怒鬼がライフルーズドローなのはガルガンチュアと同じ救命サイクルのカードだからなんだぜ。ここをズラしたら、古参の心を動かすことは難しいんだぜ…」
●「それにしたって飛行もないし」
●「そ、それは…タ、タフネスが1点違うんだぜ」
●「タフネス1とタフネス2に大きな差なんてないでしょ」
●「そんなことはないんだぜ! ファイレクシアの憤怒鬼はパウパー・キューブやPauperなんかでは環境定義をするタフネスラインに乗っかっているんだぜ( )」
●「どういうことかしら?」
●「例えば、《電謀》を見てほしいんだぜ」
●「イゼットフェアリーなんかに積まれている火力呪文ね」
●「他にもPauperの1点ダメージは《クォムバッジの魔女》なんかが有名だぜ。白の《鼓舞する監視者》は一見、《ファイレクシアの憤怒鬼》よりも強く見えるけれど環境火力ラインの第一段階を越えることができている点において《ファイレクシアの憤怒鬼》にも強みがあるんだぜ」
●「なるほど、2/1と2/2はPauper系フォーマットにおいては大きな差があるのね。スタンダード目線で見てた私が間違っていたわ」
●「分かればいいんだぜ」
●「ところでターシャ。Pauperにはこんなカードもあるみたいだけど」
●「薄汚ぇラノワールモリゴキブリどもがよ!」
●「ターシャ!?」
●「本当は分かってるんだぜ。《ファイレクシアの憤怒鬼》が時代についていくにはギリギリ駄目よりのスペックだってことは…」
●「…ターシャ」
●「Pauper黒単で今でも使われる憤怒鬼の再録に最初は私も喜んだんだぜ。でも、本当に欲しいのは憤怒鬼よりもひとまわり強くなった令和のファイレクシアンだったんだ。《ファイレクシアの抹消者》と《ファイレクシアの抹殺者》みたいな関係を匂わせるけど明らかに強くなってる新規コモンが欲しかったんだぜ。でも、デザイナーのエリックたちはそれに応えてくれることはなかった…!! Pauperの黒単信心が令和レベルのキャントリップ クリーチャーを貰うことはなかったんだぜ。この想いをどこにぶつければいいんだぜ?」
●「WoC(ウィザーズ・オブ・ザ・コースト)よ、ターシャ」
●「WoC…そうだWoC、この記事を見てる頃には手遅れかもしれないが、頼むよ。頼む、『兄弟戦争』か『機械の行進』にはつよつよファイレクシアの憤怒鬼をコモンで収録してほしいんだぜ」
●「そうよ、そのWoCへの要望を出す姿勢こそターシャらしい生き方よ」
●「ようし、そうと決まればWoCやマローに英語でメッセージを送るんだぜ。皆んなも手伝ってくれ、新しいつよつよファイレクシアの憤怒鬼のために…!!!
●「それはそれとしてだ。ファイレクシアの憤怒鬼が新規絵の別の新規クリーチャーだったら、インベイジョンブロック構築を今も楽しむプレイヤーがデッキに新イラストの憤怒鬼を入れた【マシーンヘッド】や【No-Mar】を令和に回す喜びを得ることもなかったんだぜ。」
●「だから、これはあくまで順番の問題なんだぜ。今は令和のインベイジョンブロック構築民が喜ぶ番なんだぜ。来年までにはきっとPauper黒単民も喜ぶスーパー憤怒鬼がコモンで出てくる。そう信じて私は待っているのぜ」
●「そうね、期待して待ちましょう」
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