やあ、バーチャルVtuverの豆猫さんだよ。
今回の記事で扱うのは「メカニズム的カラーパイ」の話だ。
マジックのカードは5つの色に分かれ、それぞれの色ごとに「得意な事」や「苦手なこと」がある。
今までにない挙動を取る新カードが出ると「これはカラーパイに違反している!」という叫びがTwitterや掲示板で見受けられるのは最早、風物詩と言ってもいいだろう。
今回、目についてびっくりしたのは「鴉変化(からすへんげ)はカラーパイ違反!」という呟きだった。
それも一人の呟きでなく複数の人が「違反だ!」という声を上げているのが観測できた。
一体、どんなカードなのだろう?
《鴉変化》を見てみよう!
新キーワード能力「予顕」を引っ提げて登場した青の除去呪文である。
今回の議題に予顕は関係ないのでその部分は一旦無視してほしい。
このカードがカラーパイ上の問題点を抱えている(と騒がれている)のは恐らく除去能力の方だ。
いや、でもこれって凄く「青らしいカード」なんじゃ…
青いカードが対戦相手のクリーチャーを直接除去することは少ない。
青いクリーチャー対策の多くは「打消し」か「手札やデッキに戻す」の形で行われる。
でも一部には「クリーチャーを別の生物に変化させる」という形で疑似的な除去を行うことがある。
《猿術》や《急速混成》は《鴉変化》とよく似たカードだ。
これらは相手の10/10のギガントサウルスを3/3に縮めたり、
厄介な能力を持つクリーチャーを「能力なしクリーチャー」に変えることができる。
《鴉変化》もこれと同じなんじゃないか?
カラーパイ警察の言葉に少し耳を傾けて、何に文句をつけているのか聞いてみよう。
主張1
「《鴉変化》は青っぽくない」
僕は《鴉変化》を見た時、青だと強く感じた。
しかし、第一印象が「青くない」という人もいたわけだ。
ふむ。思うにこれは《猿術》や《急速混成》の「古さ」によるものだろう。
《急速混成》は2013年のカードである。
リメイク元の《猿術》に至っては2007年初出と10年以上も昔のカードである。
(は? マジ??)
どちらもMTGアリーナなどの新しめのゲームには収録されていない。
最近のスタンダードになじんだプレイヤーにとって、そもそもこれらの呪文は馴染みがないんだ。
そもそも《猿術》を知らないのであれば「これは猿術に似ている!」とは思い浮かばない。
つまり「《鴉変化》は青っぽくないよ」という人たちの何人かは、そもそも類例となる青のカードを知らない可能性がある。
主張2
「このカードは緑や白であるべきだ」
こちらの主張の念頭にあるのは恐らく《内にいる獣》や《過大な贈り物》だろう。
これらのカードもまた《猿術》同様に、いや…むしろ《猿術》よりもよく似ている。
パーマネントには「クリーチャー」だけでなく「アーティファクト」も含まれるからだ。
加えて緑や白にはアーティファクトを追放するカードもある。
たしかに「アーティファクトを追放するカード」は緑や白の方が自然なのかもしれない。
しかし、「他の色の方がよりふさわしい」ということは「別の色がしてはいけない」ということとイコールではないことに注意が必要だ。
青が戦場のアーティファクトを追放することはほとんどない。
アーティファクトをアーティファクト・クリーチャーにするカードは青にはよくあるが、アーティファクトを「アーティファクトでないクリーチャー」へと変えてしまうことは滅多にないことだった。
クリーチャーをクリーチャーでないものに変えるカードはある。
しかし、その逆にクリーチャーでないものをクリーチャーへと変える除去はこれまで青のメジャーな除去手段ではなかったというのは事実だろう。
これらの点から、カラーパイ 違反指摘派は《鴉変化》を問題視しているのだろう。
青はアーティファクト対策をしてよいか?
実は青のカードがアーティファクトを「除去」する例はないでもない。
《攪乱のオーラ》のようにアーティファクトを結果的に除去するカードは存在する。
《昏睡のヴェール》のように、「タップして使うアーティファクト」を抑制するカードも存在する。
青はアーティファクトに触ることができない色ではないのだ。
カラーパイの「染み出し」
メカニズム的カラーパイは絶対神聖にして犯すべからざるものだろうか?
実際にはカラーパイとは2つの点で変化する。
「セットごとの変化」と「時代ごとの変化」だ。
カラーパイは時と共に流動的に変化するし、
セットごとにカラーパイから染み出すことがある。
除去の仕方として今回は《昏睡のヴェール》と違い「タップして使うアーティファクト」以外にも対処できるように染み出している。
この染み出しは恐らくセットの傾向によるものでもあるだろう。
《昏睡のヴェール》が入っているパックには「タップ能力を持つアーティファクト」が20種類近く入っている。
「タップして使うアーティファクト」全般を咎める能力をセットの染み出しとして認めたのだろう。
一方、《鴉変化》が収録されるカルドハイムはどうだろう?
まだプレビューが始まったばかりなので分からないが、カルドハイムは「タップして使うアーティファクト」の少ないセットになると思う。
恐らく「装備品」や「機体」などの「タップ能力を持たないアーティファクト」がメインのアーティファクト・カードになるだろう。
それらの「タップしないアーティファクト」への対処を行うための「染み出し」をするなら、装備品や機体も除去できるように範囲を広げることは十分に考えられる。
局所的な染み出しと時代の変化が重なりズレ幅が大きくなったせいで、
カラーパイ違反だという声も大きくなったのだろう。
僕の好きな公式の記事「クールな染み出し方」で語られる『秩序代理人』の概念を紹介しよう。
秩序代理人
このグループはカラーパイを聖なるものだと捉えている。これらのプレイヤーの考えでは、色の染み出しは起こってはならないものだ。色の染み出しが起こっているカードが印刷されると、指摘し、コメントをする。これらのプレイヤーは常に、色の染み出しを二度と起こさないように求めてくる。
引用:クールな染み出しかた|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト
カラーパイが動き、セットの染み出しが見られる時、
自分が秩序代理人になっていないかを振り返ってみる必要がある。
カラーパイのためにマジックがあるのでなく、マジックのためにカラーパイがある。
「ぼくの考えた理想のカラーパイ」を追い求めるあまり、実際に印刷されたカードにケチをつけるのは本末転倒のようにも思える。
カラーパイは時に染み出し、時に曲がり、時と共に移り変わる。
理由なくカラーパイを曲げるべきではなく、大局的な目的のためでなければならない。この分類の好例が『スカージ』の《ドラゴン変化》である。このカードはフレイバー的に、この呪文を唱えた者をドラゴンに変えるというものだ。飛行を持っているので、飛行を持たないクリーチャーによって攻撃されることはなくなる。この《Moat》系の効果は赤の能力ではないが、全てを組み合わせるといかにも赤だったので、我々はこのカードの染み出しを認めたのだ。
引用:クールな染み出しかた|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト
何かを別の者に変化させる魔法はフレーバー的に青のすることとして相応しい。
少なくとも私はそう感じる。
染み出し、特に誤った類の染み出しが多すぎれば、マジックは本当の危機に陥ることになる。足りなければ、全てのセットは同じようなものになり、マジックの魅力の多くが失われることになる。
引用:クールな染み出しかた|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト
模範的なカードばかり作られてもプレイヤーは飽きてしまう。
色ができることは少しずつ少しずつ広げられていっているのだ。
昔は赤に「デッキトップからカードを使う効果」はなかったが、いつからかそれは赤が持つメジャーな能力になった。
「これまでしなかったこと」が常に「してはいけないこと」ではないのだ。
これまでは青は「クリーチャー→非クリーチャー」の変化除去呪文はあっても、
その逆の「非クリーチャー→クリーチャー」の変化呪文はなかった。
だが、それは「してはいけない」ことなのだろうか?
してこなかっただけで、これから新しい色の役割として認めらていく領域になるかもしれない。
(もちろん、カルドハイムだけに留まることもあるだろう)
…それはそれとして、《鴉変化》はリミテッドでめちゃくちゃ便利な除去。
恐らくきっと強いカードのはずだ。
だいたい相手の側に出てくるカラスが小さすぎるんだよなあ…。
カルドハイムのカラスを見ながら、僕はそう思うのだ。
カルドハイムのトークンじゃないカラス、デカい。
デカくない?
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