朝、学校の昇降口で…
「なんだ、このカード。G・A・T…ゲート…ルーラー?」
「何をしている。構内への玩具の持ち込みは禁止だぞ」
「生徒会長! 俺が持ち込んだわけじゃないんだ」
「ならなぜ靴箱にそんなモノが入っている」
「知らねえよ。入ってたんだ。ラブレターかなんかだと思ったんだけど」
「どう見てもラブレターではないな。放課後まで預かっておく」
「後でちゃんと返せよ。俺の靴箱に入ってたんだから」
放課後…
「会長! 朝のあれ、返してくれよ」
「ああ、このカードゲームだったな」
「そうだ! せっかくだから会長、ちょっと遊んでみようぜ!」
「そもそも、どういうゲームなのかルールはわかっているのか?」
「いや、全然わかんねえから会長に教えてもらおうと思って」
「なぜ俺に教わろうとするんだ…?」
「休み時間にスマホで調べようとしたんだけど難しくってさ」
「難しい? たかがカードゲームのルールだろ?」
「まあそう言わずにちょっとルールを読んでみてくれよ。URL送ったから」
「このPDFファイルか…」
(なんだこれは、まるで法律文書のような難解さだ…!)
「やっぱり流石の会長でもこの複雑なルールは読み解けっこなかったか」
「な…!?」
「無理なこと頼んで悪かったよ、会長」
「む、無理なことなどあるか! カードゲームのルールくらい直ぐに理解してみせる!」
しばらくして…
「ダメだ…さっぱり、わからん」
「マジで!? 会長でも無理なわけ?」
「ある程度、ルールは理解できた…つもりだ。だが色々と肝心なところがわからない」
「肝心なところ?」
「例えば『ターン開始時に何枚カードを引くのか』や『カードを使うのにどうコストを支払うのか』がさっぱりわからん」
「そんな最初のところから分からないのか?」
「ああ、逆に戦闘システムやダメージ計算の方法、勝利条件なんかはわかるんだが」
「そうなのか? じゃあ分かるところだけ教えてくれよ」
「わかった。じゃあ実際にカードを並べて……」
「………。」
「どうしたんだよ、急に黙っちまって」
「カードの並べ方が…分からん」
「は?」
「カード置き場の名称はルールを読んで理解した。だが、置き方が分からないんだ」
ピロン!
「ん? なんだこれ」
「どうした?」
「いや、なんか知らないアドレスからゲートルーラーのプレイシート画像のメールが送られてきて」
「タイミングが良すぎるな。誰かこっそり覗いているのか?」
(……ドキッ!)
「まあいい。その画像、俺にも送ってくれ。生徒会室のプリンターで印刷してくる」
生徒会室から戻ってきて…
「それじゃあ、カードを並べて説明するぞ」
「 頼むぜ、会長!」
「どうやってコストを払ったかは分からないが、こんな感じで盤面にユニットカードが並んだとする」
「ユニットカード?」
「いわゆる『モンスター』や『クリーチャー』のような戦闘を行うカードをゲートルーラーではユニットと呼ぶんだ」
「このユニットカードで攻撃したり防御したりするんだな」
「それじゃあ実際にやってみるぞ」
「攻撃をすることができるのは攻撃ゾーンのユニットとルーラーであるプレイヤー自身だ」
「たまにあるプレイヤーも攻撃に参加できるタイプのカードゲームか」
「カードの左下に数字の書かれた丸がいくつかあるだろう?」
「それらが戦闘で扱う数字だ」
「この《聖剣の騎士》の左下に緑色の丸があるだろう?」
「これがSTK(ストライク)、プレイヤーに与えるダメージだ」
「《聖剣の騎士》を横向きにしてお前への攻撃を宣言する」
「いわゆる『タップ』ってやつだな」
「ゲートルーラーでは横向きにする行為をレストと呼ぶらしい」
「縦向きに戻すのは?」
「アクトと書かれていた」
「…続けるぞ。《聖剣の騎士》はSTK(ストライク)1だから与えるダメージは1点だ」
「ダメージを受けたプレイヤーはデッキの上から受けたダメージ分のカードをめくる」
「《陽炎童子》っていうのが出たぜ」
「そうしたらそのカードをダメージゾーンに置く」
「わかってきたぜ」
「ダメージゾーンに何枚かカードが溜まると負けってことだな?」
「察しがいいな、その通りだ」
「ダメージゾーンのカード枚数がルーラーのLIFE(ライフ)の数以上になると敗北する」
「続けてルーラーで攻撃してみるか」
「ルーラーも同様に攻撃できる。このルーラーのSTK(ストライク)は3点か」
「3枚ダメージゾーンへ置いてもらうぞ」
「ルーラーの打点は結構高いんだな」
「さらにもう1体の《聖剣の騎士》で攻撃するぞ」
「ルーラーとユニットの攻撃順は自由なのか」
「そうだ。さらに攻撃先の説明もしよう」
「攻撃はルーラーに対してだけでなく敵ユニットに対しても行える。《陽炎童子》に攻撃だ。」
「ああ、盤面を殴るシステムのあるゲームなのな」
「ユニットへの攻撃は一方的に行われる」
「相打ちなどはなく、攻撃側だけが相手ユニットのHPをATK(アタック)の数値だけ削るんだ」
「左下の数字のうち、赤い丸に書かれているのがATK(アタック)だ」
「LIFE(ライフ)を減らす攻撃力とHPを減らす攻撃力は別なんだな」
「それからユニットに与えられたダメージはそのターンの間、残り続ける」
「だから2体の自軍ユニットでHPの高い敵ユニットを袋叩きにして倒すこともできる」
「青い丸がHPで、HPが0以下になったユニットは墓地に送られる?」
「その通りだ。攻撃された《陽炎童子》のHPを《聖剣の騎士》のATK(アタック)が上回っているから墓地に置いてもらう」
「ようし、完全に理解したぜ。俺もやってみていい?」
「ああ、攻撃してこい」
「それじゃあ《陽炎童子》でルーラーに攻撃だ!」
「ここで守備ゾーンの説明だ」
「俺の場にはルーラーの前に横向きで《先触れの蝶》が置いてあるだろう?」
「この守備ゾーンにユニットがいる場合、ルーラーへの攻撃は代わりに守備ユニットが引き受ける」
「その場合、HPは何点けずれるんだ?」
「元々ルーラーを攻撃してたからSTK(ストライク)の分?」
「それともユニットとの戦闘だからATK(アタック)の分?」
「後者、つまりATK(アタック)の数値分だ」
「よし、じゃあATK(アタック)4でHP4の蝶を倒したぞ」
「これで守備ゾーンにカードがないから対戦相手へ直接攻撃できるんだな」
「ああ、正解だ」
「いけ、ルーラーのSTK(ストライク)3で攻撃!」
「攻撃を受けて3枚めくる。1枚目、2枚目、ほぅ。CNT(カウンター)が出たか」
「CNT(カウンター)? 殴り返してくるのか?」
「そういうカードもあるかもしれないが、これは違う。」
「赤いCNT(カウンター)アイコンが左上の数字の下に書かれているカードはカウンターカード」
「ダメージ判定でCNT(カウンター)がめくれた場合、ダメージゾーンではなく墓地に置く」
「CNT(カウンター)カードの中には特殊な効果を持つカードもあるらしいから、お前の言う通り反撃してくるカードもあるのだろうな」
「今、めくれた《時喰らいの魔神》はLIFE(ライフ)2点以下なら特殊な効果があるが今は不発だ。墓地へと送られる」
「墓地へ行く分、ダメージが減ってるってわけか」
「墓地へ置いた後、3点目のダメージをめくって…」
「これにはCNT(カウンター)がないからダメージゾーンへ置く」
「よっしゃあ! これでルールは理解した! さっそく遊んでみようぜ!」
「アタックフェイズのルールは、な…」
「結局のところ、ユニットをどうやって場に出せばいいのかがわからない以上、まだ遊べないぞ。セットカードなんかのルールも教えていないしな」
「今日のところは返してやるからカードはお前が持って帰っておけ」
「明日までに俺が残りのルールを調べておく」
(会長、めちゃくちゃ面倒見がいいんだよな)
「学校には持ってくるなよ、明日の放課後にお前の家で教えてやるから」
謎の視線…
「学校にカードは持ってくるなですって…」
「私の『学校でこっそりゲートルーラーを広めよう作戦』がぁ〜」
「いや、でもこれは逆に会長を沼に落とすチャンス…だったりして?」
Rule.2へ続く。
キャラクターイラストにFree配布コンテンツ[ジュエルセイバーFree]様を使用しています。