バーチャルVtuver豆猫さんの与太話

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TRPGとは何か? その2「ハードとソフト」

この記事はTRPGについて話すシリーズの第二回です。

第1回はこちら↓

 

omamesensei2.hatenadiary.jp

 

 

前回のおさらい

①TRPGは「机を囲んで演じるゲーム」である。
②TRPGには「クリア条件」「ルールブック」「主体的な選択肢」がある。

 

さて前回の話では具体性が欠けていた。
ぼんやりとTRPGの輪郭を知るための話で、
具体的にTRPGとはどのようなものなのかは深めていない。

 

…というのもぼんやりと言うしかないのだ。
「具体的な話」に入ると非常にまとまりない話になってしまう。
そこでまずは外堀からTRPGの輪郭を探っていったのである。

 

さて、具体的にどのように遊ぶかと言う話になると何故まとまりがなくなるのか?
それはTRPGというのが広い範囲の「遊び」を包括するからである。

 

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例えば君がニンテンドー3DSってどうやって遊ぶの?」と誰かに聞かれたとしよう。

ソフトを挿して、電源を入れて…
その後、どうしたらいいのだろう?

 

答えは「入れたソフトによって違う」ということになる。

 

あるゲームが「TRPG」であるということは、
別のあるゲームが「ニンテンドー3DSのソフトである」というくらい中身がない虚無情報なのだ。

 

ああ、でも「ニンテンドー3DSのソフトである」ということは 遊ぶゲームついていくつかのヒントをくれるね。
それはきっとタッチペンを使うだろう。
(使わないなら他のゲームでもいいはずだ。)
それから画面が上と下の2つあることも恐らく重要だ。
あとは…ああ、そうだ。当然3Dで奥行きのある映像が見れるだろう。


…おわかりいただけただろうか?
TRPGってどんなゲームって聞くのはこれと似たような問であり、
故に答えはぼんやりとしたものになってしまうのだ。

 

 

Q.ニンテンドー3DSとはどんなゲームか?
A.ソフトによる。

Q.TRPGとはどんなゲームか?
A.ルールブックによる。

 

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一般的なコンピュータRPGは遊ぶのに2つのアイテムが必要になる。
「ハード」「ソフト」だ。


「本体」「カセット」という呼び方もできる。

具体例を挙げようか。


ニンテンドー3DSプレイステーション4、Switch、PSVita…
これらはゲーム機本体に当たる。


ポケットモンスター・サン、SEKIRO、ブレス オブ ザ ワイルド、シェルノサージュとかがソフトだ。


あー。電源ゲームに詳しくない人もいるかもしれない。


ここは有名な「コンピュータRPG」であるドラゴンクエストとかファイナルファンタジーの方がわかりやすいか。
ドラクエやFFはソフト
ファミコンとかゲームボーイハードだ。

 

ここまではOK?

コンピュータRPGは本家RPGであるTRPGの新しい形だというのは前回話したね?

コンピュータRPGの「ハード」「ソフト」にあたるものが本家RPGにも存在する。
先ほどのQ&Aからも分かるように、ソフトに対応しているのは「ルールブック」だ。

ではハードは?

 


そもそもなぜ「コンピュータ」RPGか?

 

さてテーブルトークRPGは机を囲んで離しながら遊ぶGameだ。


しかしこの遊びにはいくつか不便なところがあったのだ。
*現在は技術的な進歩により解決された部分も多い*

 

・進行役を担う者の負担が大きい
・判定の計算など頭を使う「作業」が出る
・複数人が予定を合わせて集まる必要がある
・集まれる場所が必要
・まとまった時間が必要

 

これらの問題の解決策として生まれたのがコンピュータRPGなのだ。

 

進行役をコンピュータにやらせることで人間の負担を減らし、
計算作業もコンピュータにやらせることで疲れることなくプレイできる。
他のプレイヤーの代わりもコンピュータにやらせることで1人で遊べるようになり
場所を取らず、予定合わせの必要もなくなり、長い時間続けて遊ばずともよくなり、
プレイ時間を分割することができるようになるのだ。


というわけでTRPGにおけるハード「人間の頭」だ。
参加者の脳みそがTRPGにおける「ハード」になるのだ。

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人間の頭という「ゲーム機」ルールブックという「カセット」を読み込ませる…という比喩は、
そもそもTRPGが本家RPGである以上、

ゴジラっていうのはメカゴジラの生物版だよ」みたいな話になる。
なので本来あまりよくない例えではあるんだろうけど、現代の知名度としてはそう言うしかない。

 


テーブルトークRPGはコンピュータRPGがやっている処理を人間が担当するゲームなのだ。

 

さて、なぜTRPGでは処理を「人間がやっていた」でなく今なお「人間がやりつづけている」のだろう?
機械ではなく人間の「あたたかみ」が大事という手作り信仰の類なのだろうか?
いいや、そうではない。

「あいまいな処理」や「予想外の処理」をするためだ。

 

たとえば君が魔王の城に攻め込む時、開かない扉があって「鍵」というアイテムを取ってこないと先には進めない…

 

これはコンピュータRPGでよくある「処理」だ。
機械的な処理はプレイヤーの所持アイテムリストから「鍵」の有無だけを見る。


でも一度くらい考えたことはないだろうか?


「いや、仲間には爆裂魔法の使い手がいるんだからこんなドア、どかん☆とやっちまえばいいのでは?」と。

 

君が画面の前でそういったところでコンピュータRPGは

「鍵がないと開かない扉だ…」とシステムメッセージを返すだけだ。

 

しかしTRPGでは処理をするのは人間である。

「確かに…魔王の城に挑めるほどの魔法使いの爆裂魔法でも壊れない扉なんて、そんなにないよな…」と納得すれば
扉を吹き飛ばせるかもしれない。
なんなら一部のTRPGはルールブックに「扉を壊すのに必要なのはどれくらいの威力か?」というのが書かれていたりする。

 

あるいは「確かにその通りだけど君たちは今、魔王暗殺のために忍び込んでいることを忘れないで。派手な音がすれば魔王城の衛兵に見つかる可能性が高いよ」
などと「鍵がないと開かない扉だ…」以外の答えが返ってくるかもしれない。


「ぶっちゃけ、鍵を取りに行く途中でゲットするアイテムがないと扉の向こうのボスが倒せないんだよ」という本音トークが聞けるかもしれない。

 

なんだ。やっぱり色々と理由をつけてみたがつまるところ手作りの「あたたかみ」があるって話じゃないか。

 

TRPGは「テーブルトーク(机を囲んで話す)」RPGだ。
積極的に話し合い提案して物語を進められる。


そしてTRPGのプレイヤーをする時、君は「演劇を見る観客」でも「台本通りに動く役者」でもない。
主体的に選択をすることができる人格(キャラクター)なのだ。

そしてそれを受けて劇を動かすのもまた「台本」ではなく、人間なのだ。

これがTRPGを演劇というEventでなくGameにしている部分なんだ。

 

 

今回のまとめ

 

TRPGは「人間の頭」というゲーム機で遊ぶRPGだ。
ソフトにあたるのがルールブックである。
TRPGのウリのひとつは「あたたかみ」のある処理にある。

TRPGとは何か? その1「ちくわ と かまぼこ」

TRPGとは何か?

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「いらすとや」には何でもあるなぁ。

ブログタイトルにTRPGとついてるけどTRPGの話をあんまりしないので何か書こうかな?ってことでネタを募集しました。

【追記

旧ブログタイトルは「与太話だったりTCGTRPGの話」でした。

 

「そもそもTRPGとは何かを書いてはどうか?」という提案があったので、その話題でシリーズ記事を書いてみることにします

 


TRPGのTは「テーブルトーク(机を囲んで話す)という意味です。
それじゃあRとPとGは?

という話をする前にちくわとかまぼこの話をしよう。

 

ちくわとかまぼこ

 

さて、ここで突然だが「ちくわ」と「かまぼこ」の話をしよう。

(OK,OK! 私には画面の前の君が「はぁ?」って顔をしていること、分かってるよ)

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もともと「かまぼこ」と言えば私たちが知っている「ちくわ」を指すものだった。

ところが「新しい かまぼこ の種類」として「板かまぼこ」というものが生まれた。
こちらが今日 「かまぼこ」と呼ばれているものの発祥である。

 

「かまぼこ」が二種類のものを指すのでそれぞれ
「本家かまぼこ である竹輪かまぼこ」と
「新かまぼこ である板かまぼこ」と呼び分けることになった。

 

言葉と言うのは使って人口に膾炙していくうちに短く言いやすくなっていくもので、
「竹輪かまぼこ」は短く「竹輪(ちくわ)」と呼ばれるようになり、
「板かまぼこ」は上が取れて「かまぼこ」になったのである。

 

いや、「本家かまぼこ」が「かまぼこ」じゃなくて「ちくわ」になって名前のっとられてるやん!

という雑学です。

 


なんで唐突にそんな話をしたかと言えば、
TRPGという言葉にも似たようなことが起こっているからです。

 

もともと「RPG」というものがありまして、
新しく「コンピュータRPG」という親戚が生まれました。

 

次第に本家の方はテーブルトークRPG
新しいものは「コンピュータRPG」と呼びわけることになりました。
(私が生まれるよりも前、Wikipediaによると1987年ごろだそうです。)

先ほども言ったように言葉と言うのは使って人口に膾炙していくうちに短く言いやすくなっていくもので…


というわけで現在ではRPGと言えばコンピュータRPGドラゴンクエストとかファイナルファンタジーを指すようになってしまい…
テーブルトークRPGは名前を乗っ取られてしまったのです。

 

「テーブルトーク/Tabletallk」の部分が長いので「T」とだけ略してTRPGという言葉が生まれました。
(あるいは「竹輪かまぼこ」を「ちくわ」と呼ぶようにTRPGを「テーブルトーク」と呼ぶ人もいるらしいですね)

 

というわけでテーブルトークRPGとは本家RPGなんですね(起源主張)

 


RPGとは何か?

 

というわけでTRPGこそが本家RPGだということをはっきりさせたうえで、
RPGってそもそも何? というところについて書いていこう。
RPは「演技」を表し、Gは「ゲーム」の略だ。


つまりRPGとは「演技をするゲーム」なのだ。

 


おままごとRPG

 

さて、演技と聞いてどのようなものを思い浮かべるだろう?
すぐに出てくるのは映画やドラマ、演劇などじゃないかな。
では「演技をする遊び」というと…
恐らく「おままごと」ごっこ遊び」というものが出てくるんじゃないかな。

 

これらの演技をする遊びとTRPGの違いは何だろう?
ヒントはG、Gameという言葉に隠されている。

 

 

《マークのゲーム定義》

《MARK'S DEFINITION OF A GAME

 

世界初のTRPGであるダンジョンズ&ドラゴンズ
現在その販売などを行っているWoCという会社の有名な社員Mark Rosewater氏が以下のような記事を書いている。
What Is a Game? | MAGIC: THE GATHERING

 

その中で彼が「マークのゲーム定義」として挙げているのは以下のようなものだ。

A game is a thing with a goal (or goals), restrictions, agency, and a lack of real-world relevance.

 引用:What Is a Game? | MAGIC: THE GATHERING


ゲームとは、「ゴール」「制限」「主体性」があり、「現実的意味」はないものである。

 

そして
「ゲームのようだけど『ゴールがない』」ものを toy(おもちゃ)
「ゲームのようだけど『制限がない』」ものをactivity(活動)
「ゲームのようだけど『主体性がない』」ものをevent(イベント)
などのように要素を満たしていないものを区分している。

 

注意:これは「○○はゲームじゃない!」という誹謗でなく、分類的な意味だ。
例えば「マインクラフト」は一般的にはゲームと呼ばれるが、
この記事では「遊ぶモードによる」としている。
例えば「サバイバルモード」はこの定義ではGameであるが、
「クリエイティブモード」だと定義上はToyになる。

 

 

さて、RPGは「演じる遊び」だが「おままごと」や「ごっこ遊び」ではなく「演じるGame」だ。
なのでそれらや演劇に似ているがGameの3要素を持っているんだ。

 

順に説明していこう。

1つ目、RPGにはゴールがある。
これは「クリア」と言い換えてもいい。
おままごとと違って「ゲームクリア」が存在するのだ。

 

基本的には「物語をハッピーエンドにする」のがたいていの場合のクリア条件だ。

RPGはクリアを目指してみんなで遊ぶゲームである。
*ゲーマーはすぐに例外を指摘する生き物なので書いておこう。他のクリアがあるTRPGもあるのはもちろん知っているよ。だから今はちょっとだけ静かにしていてほしい。いい子ならできるね?*

 

2つ目、RPGには制限がある。
これは「ルール」と言い換えることができる。


ごっこ遊びではそれぞれが好き勝手になりきるがRPGには従うべきルールがある。
例えば君が魔法使いを演じる時にどんな魔法が使えるかは大抵の場合ルールに書かれている。ルールブックと呼ばれる本がTRPGには必要なんだ。
魔法はどんな種類のものがあって戦士の使える武器はどんなものがあるのか、そういったことがルールブックには書かれている。

 

3つ目、RPGには主体性がある。
これは「選択肢」と言い換えてもいい。


演劇では筋書きは決まっている。
勇者が剣でドラゴンを切り殺す! そう台本にあれば物語はそのように進む。
君が剣ではなく魔法を使うと決めれば魔法で殺すかもしれない。
あるいはドラゴンと友達になり手を取りあう道もあるかもしれない。
(ああ、そしてゲームにはバットエンドもあるよね!君は負けて食べられるかもしれない)

劇と違ってあなたがどのように行動するかは、あなたに選択権があるんだ。

 

 

TRPGとは「演じるゲームである」

それは「クリアのある おままごと」に近い。

それは「ルールのあるごっこ遊び」に近い。

それは「選択肢を選べる演劇」に近い。

 

まだ多分TRPGとは何かわからないだろうけれど

輪郭は伝わっただろうか?

 

「TRPGとは何か? その2」では、もう少し詳しく迫ってみよう。

それでは今回はここまで。

次回、「ハードとソフト」の記事へ続く。

 

*4/11追記

第二回です↓

omamesensei2.hatenadiary.jp

 

 

 

ゼノンザードをべた褒めする

ゼノンザードというカードゲームを知っていますか?

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https://www.aicarddass.com/zenonzard/

 

「AIと共に、AIと戦う」というキャッチコピーの対戦カードゲームです。
そろそろクローズドβテストが始まるのでアドバンスドプレイヤーの私はとても楽しみにしています。

*もう始まってます。 βテスト落選しました。



*この記事はゼノンザードの絶賛記事です*
*発売前のデジタルTCGをバカにする殴り棒が欲しいならこの記事は全く逆の結論になるのでブラウザバックしてね*

 

とはいえ、私はこのゲームのアプリリリースに懐疑的でした。

というのもゼノンザードのアプリは「致命的な欠点」があると感じたからです。
ところが昨日、ゼノンザードのアプリにおける対戦システムを知ったとき…
私は手のひらを反すことになりました。

「ゼノンザードのシステム考えた人、神か…?」


私が意見を変えたのはなぜか?
まずは「ゼノンザードが抱えている(と思われた)致命的な欠点」について語るところから始めましょう。

 

 

致命的な2つの欠点

 

さて、私はリリース前のアプリに対して何の情報もなく批判しようと思ったわけではない。
実はゼノンザードでは「紙のカード」を配布したりするなど既に体験できる場を設けている。

そういったキャンペーンの中で私もゼノンザードを実際に遊んでみて、「致命的な欠点」を2つ発見した。

 

・フラッシュタイミングの存在
・敗北の理由が比較的はっきり出ること

 

 

フラッシュタイミング

 

さて、では1つ目の欠点について。

ゼノンザードがウリにする要素のひとつに「フラッシュタイミング」というものがある。
早い話、「対戦相手の手番に自分が行動できるタイミング」だ。

こう言った「相手のターンでの行動」は一般的に「紙のカードゲーム」に多く「デジタルカードゲーム」では少ない。
なので「デジタルゲームをメインのマーケットとして想定しているTCG」で、
フラッシュタイミングを設定するゲームは非常に珍しくウリにしようというのもわかる。

こういった相手のターンでの行動は「駆け引き」を生み勝負を盛り上げる逆転の要素になりカタルシスを生むのだ。


うん、確かにこのフラッシュタイミングの存在はゼノンザードを「珍しい」ものにしているのは事実だ。
だが多くのデジタルゲームがそれを行わないのにはちゃんと理由がある。

 

世界最初のTCGを現在も販売しているWoCが開発コラムとしてこんなことを語っていたことがある。


「失敗をやり直すことはできる。魅力的なことをすることはできる。それまで手がけたことのなかった発想を掘り下げることはできる。成功を繰り返すことはできる。そして、それまで破ったことのないルールを破ることはできる。

しかし、そのどれも、デザインの始点とすべきではない。それらは、個別に精査し、そしてそれにふさわしい場所が来るまでどこかに持っておくべきものなのだ。

これらを使うのは、そのゲームにおいて有機的に収まる方法があるからであって、何かを証明したいから、あるいは挑戦として、ではないのだ。」

 

これはつまり「何か真新しいこと」あるいは「自分なら上手くやれると思った、誰かが失敗していること」をゲームデザインにいれることを咎め
「それがそのゲームにとって必要だ」という時にこそ取り入れるべきだという戒めだ。

 

ゼノンザードのフラッシュタイミングはまさにこれだ。
「対戦相手の手番に動けるデジタルカードゲーム」は少ない。
だが少ないのにはちゃんと理由がある。


デジタルゲームに置いて「相手のターンに動ける」というのはゲームの利点ではなくウリにはならないのだ。
ゲームの方がそのデザインを求めていないのに「我々ならやれる」と組み込むのは大局的に見てゲームを悪くするのだ。

 

なぜ相手のターンに動くDCGは少ないのか

さて、ではなぜ相手のターンに動けるDCGは少ないのか?
それはずばり不快だからである。

相手のターンに行動し相手の計算を崩すのはカードゲームの楽しみや駆け引きを生む。
なのでこれはいわゆる「コントロールデッキは卑怯」という話とは全く異なる。

単純に「待ち時間」が不快だという話なのだ。

アプリ系のゲームでは「あっ、ちょっと待って今のところ巻き戻して」という処理をしづらいのだ。

 

例えば君が遊戯王カードゲームを紙で遊んでいる。
そして君が相手のターンに使いたい伏せカードを構えているとしよう。
相手が処理を進めようとして君がカードを仕えるタイミングを飛ばして戦闘に入ろうとした。
君は「ちょっと待って、これを使うから」と少しだけ処理を巻き戻してメインフェイズに戻ってもらう。

これがデジタルTCGではできない。
「処理を巻き戻す」というようなことができるシステムを僕は寡聞にして知らない。


できないので、ゲームは確認を行いながら進める事になる。

「カードを使いますか?」という質問があなたが行動するたびに、相手プレイヤーに問われる。

「使わないよ」「こいつを使うよ」と相手が答えて始めて先に進める。


通常、デジタルTCGで「相手のターンに動ける」場合、いちいちそこで「待ち時間」として相手の応答が挟まる。

相手が「カードを使うかどうか考える」時間はあなたのターンなのにゲームの進行が止まるのだ。


この「待ち時間」のストレスは実際に遊ぶとなかなか不快であることがわかるだろう。
言ってみればゲームのプレイ中にローディングが挟まるような感じになるのだ。

「自分の番」なのに「相手が動くか考えてる間、ゲームの進行が止まる」のは非常に不快なのである。


さらにもう一段階話を進めようか。

そこまでして「駆け引き」のカタルシスを生むことはできるか?
という第二の問題が迫る。

不快な時間を短縮するための施策として「相手のターンにできる行動がない」場合、
レスポンスのタイミングをスキップするゲームで顕著な欠点がある。

「スムーズに進むなら待ち時間がない」というデジタル特有の利点が、
「相手が何かの罠をしかけているのか」を読み取れるサインになってしまうんだ。


相手が本来行動できるタイミングで待ち時間なく次のステップに進めた?
きっと相手には何も こちらのターンに使えるカードがないのだろう。

何か構えてるように見えるても、それは9割方見せかけのブラフだ。

(もしかしたらそう思わせるためにキャンセルボタンを連打してたかもしれないけど)


この「待ち時間がない事でブラフだと判明する」問題により結局は駆け引きのカタルシスが失われる。


もし完全な形で駆け引きを残そうとするなら「使えるカードがなくても一旦 止める」ようにするぐらいしか現実的な対応はない。

これでは不快な「待ち時間」を増大させることになり本末転倒となる。

 

多くのデジタルTCGで「相手のターンに動ける」要素を入れない理由が、この「待ち時間問題」なのだ。


というわけで 

致命的な欠点1
フラッシュタイミングがアプリと相性が悪い」


もうひとつの致命的な欠点の理由となるのは、

このゲームの独自要素「フォース」「移動型マナシステム」だ。

これらについてはまた機会があれば細かく書くとして、
結論から言うとこれらは「ゲームのうまさ」が非常に濃くでるシステムだ。
玄人好みな感じ、とでも言うのだろうか。


この2つのユニークなシステムはゲーム慣れしているプレイヤーが好むとされる「運をテクニックでカバーできる要素」なのだが…

裏を返すと下手な場合、はっきりとそれが出てしまうのだ。


僕が紙でゼノンザードを初プレイして負けた時に思ったのは
「いやぁ、引きが腐ってたなあ」とかでなく、
「あっ、あそこのプレミまずかったな…」という部分だった。

そう、このゲームは「負けた原因」が己の実力だということが比較的わかりやすいゲームなのだ。

 

例えばじゃんけんというゲームで考えてみよう。
君がグーを出して相手がパーを出したので君は負けた。
君の敗因は「グー」「チョキ」「パー」という選択肢からグーを選んだことだ。

だが実際には多くの人がじゃんけんを「運ゲ―」だと認識する。
それは「相手の手」という自分に干渉できない部分が存在するからだ。

こういった「自分の選択」以外に敗因を見つけられるゲームは実はストレスがたまりにくくなっている。


「自分にどうにもならないこと」で負けるのは一見理不尽なように思えるが、
長期的なプレイでのストレスを自分以外の何かのせいにできることで全体としてストレスは軽減されるのだ。

 

しかしゼノンザードは「敗因が自分である」ことを認識しやすい。

 

序盤の立ち上がりに問題があった?
多くのゲームではその場合の問題は初手の事故だ。


だがゼノンザードの場合は違う。


君が序盤の立ち上がりが原因で負けた場合、フォースの選択ミスの可能性が高い。

 *フォース

ゲーム開始時に場における2枚のカード。

フォースカードには永続的な効果があるため、初動の助けとなる。


マナが足りなくて切り札を出せなった?
土地事故だろうか?
いいや、移動型マナシステムを上手く使えていないからだ。

*移動型マナシステム

いわゆるモンスターやクリーチャーにあたるカードをマナゾーンに移したら、逆にマナゾーンから場に出すことができるシステム

 

フォースと移動型マナシステムは「不運」を実力でフォローできるシステムだ。
それは逆に「フォローできず負けたのはキミが弱いからだ」という事実を浮き彫りにしやすい。


「負けた理由」を押し付ける先がないことは「カジュアルゲ―ム」であるスマホアプリとは非常に相性が悪い。


というわけで
致命的な欠点2
「フォースと移動型マナシステムはあなたに自分の弱さを思い知らせる」


さて、というわけで以上2点が僕が紙のゼノンザードをプレイして
これが「アプリゲーム」をメインで展開するのに致命的だと思った2つの欠点である。


こんなのぜーったい失敗すると思った。


大きく上げたのがこの2つであり細かい要素は他にも出てくる…
カジュアルゲームっぽいのに初心者にとって難しい要素が多いとか、無色カードの妙な強さとか)

 

さて、でもこの記事はゼノンザードをほめたたえるために書いている
何が私の意識を変えてゼノンザード記事を書くように駆り立てたのだろう?

 

ゼノンザードのキャッチコピーを思い出してほしい。
ゼノンザードは「AIと共に、AIと戦う」ゲームなのだ。


僕の中でゼノンザードの評価が大きく上がったのはファミ通の紹介記事だ。

ゼノンザードのメインとなる対戦システム「AIクロスバトル」について知ったことで僕の評価は逆転する。


「このゲームのデザイナー…神か…?」

 


AIクロスバトル

 

さて、このゲームでは君はAIをパートナーにして遊ぶ
AIはキミのプレイにアドバイスを与え、君のプレイ傾向を学びプレイスタイルを模倣する。


AIクロスバトルという対人システム…いや対AIシステムはそこに焦点を当てている。


このゲームでは「君VS他のプレイヤー」ではなく、
「君」VS「他のプレイヤーのAI」
「君のAI」VS「他のプレイヤー」の形でランク戦などが行われる。


具体的にどんな感じでランクが上げ下げされるかは蓋を開けてみるまでわからないが…この発表は衝撃的だ。

 

それではこれを踏まえて改めて「致命的な欠点」について改めて見ていこう。

 

致命的な欠点1
「フラッシュタイミングがアプリと相性が悪い」

 

この欠点は対人戦では相手もプレイヤーである前提での「待ち時間問題」だった。

「発動できるフラッシュタイミングのカードを使うかどうか?」の思考時間が原因だ。


だが対戦相手がAIなら?


AIの場合では思考時間がほぼ存在しない。
対戦相手のレスポンスは常にノータイムで行われると思っていい。


思考時間がないことで駆け引きが損なわれることもない。
仮に相手が「使える札がある」けど「このタイミングでは使わない」ことを学習したAIであればノータイムで「パス」してくるからだ。


待ち時間によって相手の手を知るような興ざめが起こらない。


致命的な欠点1の前提である「対プレイヤー戦」というものがそもそもゼノンザード のゲームシステムとは違うものだったんだ!


あなたが他のプレイヤーと戦う時、それは「対AI戦」になるのだ。

 

 

では致命的な欠点2はどうだろうか?

致命的な欠点2
「フォースと移動型マナシステムはあなたの弱さを思い知らせる」

つまるところこの欠点を構成するのは2つの理由だ。

「初心者には難しい部分が出てくる」
「敗因が自分だとわかってしまうストレス」

 

それぞれをAIと共に戦うという視点で考えよう。


AIはキミのプレイに指針を与え補助してくれる。
初心者にアドバイスをくれるよき友になる。

カジュアルアプリゲームっぽいのにシステムが以上にストイックである部分は、キミを支援するAIにとっての「魅せ場」になる。

 

君が敗北した時、それが君のせいだという「事実」は変わらない。
だが感覚としては大きく違うだろう。


君は負けを「AIのせいにできる」のだ。

AIはキミのストレスのスケープゴートになりうる。
君が負けたのは「AIのせい」なんだと感じることでストレスが軽減されるのだ。


ストレスが減ったので繰り返しプレイでき、

プレイは君の実力を高め…君のプレイをAIが覚えて、

AIもより君のデッキにあったプレイスタイルになる。


改めてTCGデザイナーの訓戒を読み直そう。


「失敗をやり直すことはできる。魅力的なことをすることはできる。それまで手がけたことのなかった発想を掘り下げることはできる。成功を繰り返すことはできる。そして、それまで破ったことのないルールを破ることはできる。しかし、そのどれも、デザインの始点とすべきではない。それらは、個別に精査し、そしてそれにふさわしい場所が来るまでどこかに持っておくべきものなのだ。これらを使うのは、そのゲームにおいて有機的に収まる方法があるからであって、何かを証明したいから、あるいは挑戦として、ではないのだ。」


この文章の意味は最初に解説したね。


ゲームのデザインは「珍しいこと」「他の人が失敗したことを自分ならやれると示すこと」でなく「ふさわしい場所」を見つけた時に「有機的に収める」べきなのだ。

 

ゼノンザードは「AIと共に、AIと戦う」ゲームなのだ。

フラッシュタイミング、フォース、移動型マナシステム。

この3つはどれも真新しかったり珍しかったりして大きな欠点がある。


だが、それら全てがAIにより解消される。

AIによって短所から利点へと変わるんだ!


つまり3つのシステムは「AIと共に、AIと戦う」ゲームでこそ採用できるシステムであり、
まさに「ふさわしい場所」に「有機的に収まっている」

 

ゲームデザイナーの手腕にただただ感心するばかりだ。

ゼノンザード。
それは「AIと共に、AIと戦う」ゲーム。

βテスト、そして正式リリースが待ち遠しい。


*追記

第一回 βテスト落選しました。

アドバンスプレイヤー(招待優先)だからとタカをくくっていたが、ゼノンザード の人気はアドバンスプレイヤーだけでβテスターの募集人数を軽く上回ったらしい。

ゼノンザード アプリをいち早く遊べるチャンスだっただけに悔しい。

第二回βテストを待とう。


*更なる追記

βテスト募集人数が拡大され、

第二回βテストの当選人数がドーンと2倍になった。

このキャンペーンのおかげで無事に筆者は第二回βテストに参加できるようになった。

ありがとう…プロデューサー様…


第二回βテストは5月初旬!

また何か記事を書くかもしれない。


www.youtube.com

【MTG】令和の苦花【灯争大戦】

【MTG】令和の苦花【灯争大戦】
 
私の好きなカードのひとつに、《苦花》というカードがある。

 

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一時は禁止カードにも指定されたが現在は解除されたので楽しく使わせてもらっている。
 
さて、そんな《苦花》を引き合いに出されるカードが次のセットで登場する。
《戦慄衆の侵略》だ!

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この「令和の苦花」は確かに2マナの黒のエンチャントで毎ターンライフ1を1/1分のステータスに変換していく。
とはいえこのカードは多分そのままでは苦花にはならないと思う。
 
苦花と違って回避能力がない。
全体‐1/-1修整などには強いが単体除去で沈んでしまうのだ。
このカードの使い方は多分大きく分けて2つ。
 
1つめ目は書いてある通りの使い方だ。
 
・他の動員と合わせることで素早く6/6まで育てて絆魂をつけて支払ったライフを取り戻す。
 
では2つ目は?
 
・毎ターン生贄に用いる
 
 
 
動員のアドバンテージ
 
動員の能力は1回目はトークンを生み、

 

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トークンにカウンターをのせる
2回目以降はそのトークンのサイズを挙げる。

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トークンは追加せずにカウンターを増やす。



1回目は無からクリーチャーが発生するためボードアドバンテージを得られる。
2回目はそうではない。
 
戦場のクリーチャーのサイズが1つ大きくなるのは悪いことではないが、
トークンをもらえるのに比べると多少見劣りする。
もちろん、相手のブロッカーを突破する性能で見れば1/1が3体より3/3が1体の方が嬉しいのでその価値は状況によって変わる。
 
さて、「1回目」でのみ得られるボードアドバンテージを利用してみるために
毎ターン、何かの生贄に充ててみるのはどうだろうか?
 
つまりサイズは関係なく、単に生贄に頭数にするのだ。
ああ、でも単純にそれだけではライフの損失があるね…。
 
生贄ギミックを絡めつつ受けるダメージを抑えられるカードがあるといいんだけど…

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というわけでデッキの形にしていこう。
 
まずは生贄を捧げることで恩恵が得られるカードたち。
《火刃の芸術家》《忘れられた神々の僧侶》
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それから《ゴルガリの女王、ヴラスカ》なんかがいいんじゃないかな。

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これで色はに定まった。
 
さて、生贄を用意するカードを令和の苦花だけにしていては回らない。
他の生贄を見繕おう。
《どぶ骨》《忘れられた神々の僧侶》のいい相棒になる。

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《組み直しの骸骨》も似たように扱える。

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《不気味な修練者》は奇妙なカードだ。
他にクリーチャーがいないなら白にたまにいる1/1トークンを残す1/1クリーチャーのように使える。

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さて、それぞれをデッキに組み込んで…
 
4 《戦慄衆の侵略》
 
4 《どぶ骨》
4 《不気味な修練者》
4 《組みなおしの骸骨》
4 《火刃の芸術家》
4 《忘れられた神々の僧侶》
 
3 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》
 
これで26枚。
僧侶がマナを供給してくれるので土地枚数はある程度絞ってもいいだろう。
土地23枚と言ったところか。
 
合計49枚。
 
残りの11枚でデッキを整えていこう。
新カード《戦慄衆の将軍、リリアナ》はこのデッキにぴったりのカードだ。

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少し重たいが僧侶がいれば十分に扱えるだろう。
 
このカードは「生贄に捧げる」「捧げられた時の恩恵」「生贄の確保」とこのデッキに必要な役割全てを満たせる。
そして奥義が素晴らしい。
この手の効果で珍しく「土地」が例外になっていない。
奥義を使った後に対戦相手の土地は1枚になってしまうのだ。
 
極めて強力なこのカードを切り札に据えよう。
重さと伝説性を考慮して2枚入れよう。
 
息切れ防止の手札確保に《恐怖の劇場》も入れようか。

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こちらは被ったときにもたつくので1枚。
 
ここまで気持ちよくデッキを回すことばかり考えて相手の行動に対して対策を入れていない。
残り8枚のうち、7枚は妨害札に充てようか。
 
クリーチャー除去は僧侶がいれば十分なので
エンチャントやプレインズウォーカーに対処したい。
というわけで万能除去《暗殺者の戦利品》を2枚。

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手札から対処しづらいカードを抜くために《ドリルビット》が3枚。

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後はカジュアルもガチもプレインズウォーカ―が増えるので
プレインズウォーカーの生贄を迫れる《疫病作り師》といったところかな。

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最後に。
僕がデッキを作るときのこだわり「呪文の枠の土地」だ。
呪文のように使える土地を土地にカウントせず入れることでマナスクリューのリスクを減らす。
今回は除去などにより生贄エンジンとなるクリーチャーを失ったときのために《愚蒙の記念像》を加えよう。

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あとは色のバランスを整えて…
 
かなり黒いカードが多いので2色土地は
赤黒、黒緑をそれぞれ2種4枚で合計16枚。
残りの7枚はアンタップインできる黒マナ源として沼を4枚。
3枚は赤緑の多色。1ターン目に《不気味な修練者》から出す場合を考えてショックランドの方にしよう。
 
果たして令和の苦花の実力は…?
続きは君の目で確かめてくれ!
 
【令和の苦花ジャンド】
 
4 《戦慄衆の侵略》
 
4 《どぶ骨》
4 《不気味な修練者》
4 《組みなおしの骸骨》
4 《火刃の芸術家》
4 《忘れられた神々の僧侶》
2 《疫病作り師》
2 《暗殺者の戦利品》
3 《ドリルビット》
3 《ゴルガリの女王、ヴラスカ》
 
土地 24枚
1 《愚蒙の記念像》
4 《沼》
4 《森林の墓地》
4 《竜髑髏の山頂》
4 《草生した墓》
4 《血の墓所
3 《踏み鳴らされる地》
 

帰ってきた増殖と ちょっとした変更

 

「増殖を行う」というキーワード処理は実にワクワクする。
カウンターを用いるカードに大きな革命を起こす効果は多くのプレイヤーの心をつかんで離さない。
いや、プレイヤーだけではない。
開発部にも多くのファンがいることは間違いない。
例えばカラデシュで増殖を再録する動きがあった。
エネルギー・カウンターという特殊なカウンターを使うメカニズムや製造というキーワード能力、それから亢進するサイクルに巻き付き蛇!
たくさんの楽しいカウンターメカニズムがあり…
増殖はそれらを容易にぶっ壊すだろう…という判断を下されセットから消えた。
つづく霊気紛争やアモンケットで調整版のカードが作られた。

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ああ、僕は彼らの能力で《自然に仕えるもの、ニッサ》の忠誠度を増やすのを楽しんだよ。

それでも開発部は満足しなかった。
彼らはラヴニカの献身でシミック連合の能力を考えるにあたり
過去のメカニズムを再録するなら何がいいか考え…増殖を真っ先に検討した。
それは同じセットの暴動とよく噛みあい…よく噛みあい…よく噛みあい過ぎた。

更にこのデザインのタイミングでは青白の優位メカニズム(仮)でも+1/+1カウンターを扱う機会が多かった。

  
暴動 増殖 優位

つまり緑青デッキは緑の暴動クリーチャーと青の優位クリーチャーが乗せた+1/+1カウンターを簡単に増殖で増やせた。
あまりにも完璧で強すぎたので結局は増殖は没になった。

ああ、だが素晴らしいことに遂に!遂に増殖は帰ってきた!

最新の増殖カードがこれだ!

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さて。ではこちらの最新の増殖カードを使ううえで気を付けてほしいことがある。
あなたの場にギデオンがいるとしよう。
そしてそのギデオンにはなんらかの効果で‐1/-1カウンターがのせられているとしよう。
あなたがここで《キオーラの堰破り》を召喚してギデオンの忠誠度を増やそうとする。

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ちょっとストップ!

以前のルールでは、ギデオンの上の忠誠度カウンターだけを増やせた。
だが新しい増殖のルールでは違うんだ。

注釈分を見てほしい。

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ギデオンを選んで、その後に乗っているカウンターを選ぶことができた昔の増殖と違い
新しい増殖ではギデオンを選んだ時点で決定は終わる。
その後、ギデオンの上のカウンターすべてが増える。

つまりマイナスカウンターも増えてしまうんだ。

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どうして変わったんだろう?

恐らくMTGアリーナなどのデジタルマジックで「クリック数を減らす」のが目的の変更だと思う。
ほとんどのカウンターは増やしたいものなので手間を省く目的での変更のはずだ。

だが一部のカウンターは増えることがデメリットになる。
デメリットのあるカウンターに注意して扱おう。


ただし、基本的にはこれは強化されたと言ってもいいかもしれない。

例えばさっきと逆に+1/+1カウンターの乗ったギデオンなら…


増殖によってどちらも増やせるのはいいことだ!




そうそう、これは新しい能力でなく増殖の再録とルール変更なので
過去の増殖カードをモダンで扱う場合も「灯争大戦」発売に伴いこれらも同じ処理になる。
それじゃあ対戦相手の感染に気を付けて楽しい増殖ライフを!



2019/05/28追記


ああ…!

ついに彼が、いやアイツがカード化された。

それも増殖を伴って…!

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ヨーグモスは昔からいるキャラクターだけど、ルールはもちろん最新のものだ。

この鬼畜外道の登場に歓喜して復帰する人は増殖のルール変更を忘れないように…!


【 #MTG初心者 向け】チュートリアルでは教えてくれない基礎用語「ゲームの外部」【サイドボード】

【MTGMTG初心者のためのルール講座

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今回はテキストを読んでもわからないMTGのルール説明。第…5回?
ちょっとカウントを覚えてないけどまあいいや。
今回、解説する用語は2つ。
「サイドボード」「ゲームの外部」だ。

サイドボードとはデッキとセットになる15枚以下のカードの束だ。
2本先取ルールだと、1本目と2本目の試合の間にデッキを改造するためにサイドボードを使える。

たとえばあらかじめサイドボードに「エンチャントを破壊するカード」を入れておけば…
1戦目で相手が切り札としてエンチャントを使ってきた場合、
2戦目の時はサイドボードからデッキにエンチャント破壊を加えることで対策できるのだ。

さて、ここで2つ目の用語解説。
僕のお気に入りの切り札を紹介させてほしい。

《首謀者の収得》だ…!

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うん。まあ上の効果は別に普通だね。
強いけどコストが重いカードだし、それほどでもない。

それよりも下の効果である。
ゲームの…外部…?

ゲームの外部とはつまりそのゲームで使用していないものを指す。
例えば君が自分の部屋で友人と紙のMTGをプレイしていて、このカードを使ったとしよう。

君は「ちょっと待ってて」と言って立ち上がり、引き出しを開けて別のデッキを取り出す。
「あったあった」と言って君はその中から禁止カードである《暴れまわるフェロキドン》を取り出す。
「いやあ、フェロキドンは禁止されてたからこのデッキは使えなかったんだけど、これで使えるね」


…は?

そんな話が合っていいのだろうか?
実はこれは適性なプレイだ。
君自身が法律上の持ち主で(今のゲーム中に使っているカードじゃないなら)どんなマジックのカードだっていい。
引き出しを開けて取り出したデッキケースの中の禁止カードであってもだ。

もちろん、そんなふざけた処理は大会では非現実的だ。

そこで公認大会(およびMTGアリーナ)では、
「ゲームの外部」=「サイドボード」と定義している。
先ほど説明した「組換え用の15枚」のことだ。


このサイドボードからカードを持ち込める…というのがアリーナにおける《首謀者の収得》の効果だ。

もし君が1本勝負を楽しんでいるなら通常サイドボードは用意していないだろう。

だが、もし黒を使うデッキで《首謀者の収得》を入れるなら…1本勝負でもサイドボードを作ろう!

 

というわけで今回はサイドボードを作る時のルールについて書いていこう。

アリーナでは1つのデッキケースには60枚以上の「メインデッキ」と15枚以下の「サイドボード」が詰め込まれる。
もし君がサイドボードを用意したことがない場合、今までずっと「0枚のサイドボード」を用意していたことになる。

メインのデッキは60枚「以上」だが、サイドボードは15枚「以下」なので、
0枚のサイドボードでも問題なく遊べたのだ。

さて15枚のサイドボードにはどんなものが入れられるだろう?


さっきの《暴れまわるフェロキドン》みたいな禁止カードは?
もちろんダメだ。
デッキ構築のルールに従う。
スタンダードで禁止されているカードはスタンダードのサイドボードに入れられないし、
スタンダード落ちしたカードも、サイドボードには入れられない。


《ラノワールのエルフ》は?
大丈夫だ。ただし、デッキに4枚入ってるなら別だ。
デッキ構築のルール、基本土地以外のカードは4枚だけというのはこちらにも適用される。
デッキに4枚入れているなら入れられないし、デッキに3枚だけならサイドボードに1枚入れられる。

PWデッキ限定カードは?
デッキビルダーズ限定カードは?
両方初心者導入用の製品だね。
それをサイドボードに入れる価値があるか、という問題を脇におくとして
ルール上、それらはスタンダード使用可能カードだ。
サイドボードに入れるのもアリだ。


《しつこい請願者》や《ネズミの群棲》は?

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大丈夫だ。好きなだけ入れるといい。
これらのカードのデッキに何枚でも入れていい能力もまたサイドボードで有効だ。
15枚のサイドボードすべてを《しつこい請願者》にすることもできる。

 

・サイドボードとはゲームの間にデッキに加えられるカードである。
・サイドボードには15枚までカードを入れられる。
4枚制限はサイドボードも含む。

「ゲームの外部」とはサイドボードのこと


「ゲームの外部=サイドボード」を用いるカード

MTGアリーナでは《首謀者の収得》の下の効果は
「サイドボードから1枚を手札に加える」能力になる。

そしてこれは非常に凶悪な能力だ。
通常、1本勝負では3本勝負よりも「初見殺しデッキ」が強くなる。
都合のいい対策カードがこちらのデッキに入っていることは稀で、対策カードがデッキにないことの方が多い。
仮にいろんなデッキの対策カードをデッキに入れたとして…ピンポイントの対策カードは効かない相手との試合で引くと事故要素になる。

だから初見殺しは強い。
そして、それに対応できるのが《首謀者の収得》なのだ。
なんならデッキのメインカラーと合わせる必要すらない。


例えば5色出る土地か宝物トークンを生むカードを入れておけば青白コンと戦って、
カウンターの隙を狙い《首謀者の取得》を使う。
赤いカードをメインデッキで使わないデッキでも、
ゲームの外から持ってきた《苦悩火》をX=10で唱えて打消されない直接火力で勝てる可能性がある。

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ああ、そうだ最後に…
紙のマジックでフェロキドンを持ってこれると言ったけどアレは半分嘘だ。


ルール上、公式での対戦でない場合は確かにあなたの所有カードを好きにデッキに加えられるが、
一般的なプレイヤーはアリーナなどと同じようにカジュアルプレイでも「ゲームの外部はサイドボード」だとすることが多いからだ。


もしゲームの外部を参照するカードを使うなら対戦前にサイドボードを指すのか自分のカードならなんでもいいのかの確認を取っておこう。


さあ、君も《首謀者の収得》を使って楽しくゲームの外部から持ち込もう!


相手の場にマーフォークの大群や野茂み歩き、フェロックスが待ち構えている?
《覚醒の太陽の化身》の出番だ。

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《殺戮の暴君》をはじめとする恐竜クリーチャーには無力なのでメインからは使いにくいカードだが、
サイドボードから使えるなら話は別だ。


《飢えた聖騎士》を使った無限コンボのパーツが見えた?
《漂流自我》で《飢えた聖騎士》をデッキから根こそぎ引き抜くのはどうだい?

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相手がデッキ破壊戦略をとってくる?
《ガイアの祝福》を持って来れば手軽にライブラリーを再生できるぞ。

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《ネズミの群棲》などの同名カード積み込みデッキ?
《イクサランの束縛》が非常に強力だ。

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既に並べられてしまっているなら《拘留代理人》なんて手もある。

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相手のライフが残り3点なのに防御用のトークン・クリーチャーを並べられて削り切れない?
《君主の一噛み》で直接ライフを狙うのはどうかな?

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デッキの外からカードを持ち込むなんて ズルい!と言われたら、こう返そう。


「限られたルールの中で勝利条件を満たしただけ」
いにしえのナイトの名言だ。


さあ、君も《首謀者の収得》でゲームの外部から勝利を持ち込もう!

 

【 #MTG初心者 向け】Q.伝説って? A.ああ!

やあ、バーチャルVtuver豆猫さんだよ。
今回の初心者用語講座は「伝説」だ。
 

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伝説って?
 
正確には「伝説の」までで1つの用語だ。
まあ面倒なので伝説でも通じるけど。

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伝説のクリーチャー

 
カードの真ん中に「伝説のクリーチャー…」といった形で書かれている。
この伝説ってなんだろう?
 
伝説とは固有のキャラであることを表すサブタイプだ。
 
伝説はマジックの背景ストーリ―における重要人物や場所、道具…
そういった固有の名前を持つものに付けられる特殊タイプだ。
 
伝説のパーマネントには特殊なルールが存在する。
(パーマネントって何? って人はこちら↓)
 
レジェンド・ルール
 プレイヤー1人が同名の「伝説の/Legendary」パーマネントを複数コントロールしている場合、
そのプレイヤーはその中から1個を選び、それ以外をすべてオーナーの墓地に置く。
 
要は自分の場に同じ名前の伝説のキャラクターとかアイテムは1つだけというイメージだ。
あくまでイメージ、実際にはMTGでは相手の場と自分の場は区別されない
昔は相手の場も含めて1個までというルールだったりした。
相手と自分の場の区別がないので「場に1枚」だと自分が2枚目を出せないだけでなく、
相手も同じ名前のカードを場に出すことができなかった。
 
伝説カードは名前付きキャラなので同一人物が二人いるのはおかしい! というわけだ。
 
次第に設定にこだわるよりゲーム的な面を重視するようになり、相手の場はノーカンということになった。
超強いコンボに使われる伝説カードがあったとき、そのカードを使わないデッキが
「先に出すことで相手のコンボを妨害できる」という理由で同じ伝説カードを使ったりしていたのだ。
こういった「テクニック」をなくすために各プレイヤーが1人だけ使えるということにしたのだ。
 
それから名前が違う場合はこのルールに影響されない。
例えば同じキャラが2回カード化されることがある。
その場合も名前が違えば場に並べても大丈夫だ。
同じキャラかどうかをルールの方ではチェックできないのでカード名が違えば並べてもいいのだ。
 

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名前が違えば同一人物でも並べられる
そうそう、復帰勢が間違えやすいところ。
昔はプレインズウォーカ―には厳しくて、カード名が違っても同じプレインズウォーカ―ならアウトだった。
現在はプレインズウォーカーもカード名が違えばセーフだ。
 
おそらく昔に比べて頻繁に同じキャラのプレインズウォーカ―カードが収録されるようになったことも無関係ではないだろう。
(単純にプレインズウォーカ―の扱いと伝説の扱いが違うのが複雑だったからかもしれない)
 
場に出る伝説カードは同名1枚までしか使えない。
 
出せないわけではなく1枚目があっても2枚目を使えて、その場合は好きな方を墓地に置く。
 
例えば《光明の縛め》を受けた梅澤哲子がいる時に
2体目を出して1体目を墓地に送ることで自由に動ける哲子を出したりできる。
 
逆に後から出た方を墓地に置くこともできる。例えばこんな場合だ。
場に+1/+1カウンターが載ったアイゾーニがいる時に、2体目のアイゾーニを出すと、アイゾーニが場に出た時の効果を使える。
もちろん強化されてる方を場に残したいので、後から出した方を墓地に置けばいい。
 
これが伝説ルールのすべてだ…! とは言えなくなったのが最近のMTG。
 
 
伝説のソーサリーというカードがある。
伝説のソーサリー?
 

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ソーサリーはパーマネントではない。
場に残らないカードの伝説とはなんなのだろう?
 
伝説のソーサリーは「ストーリー上の大きなイベント」を描いたものだ。
これらは「伝説の人物が使った大魔法」という意味で、
伝説パーマネントの場での制限と違い
「場に伝説のクリーチャーかプレインズウォーカ―がいる場合にのみ唱えられる」という唱える時の制限がある。
 
正直な話、僕はこのシステムが嫌いで「違う挙動」のものを同じ用語でくくるのは混乱の元だと思う。
でもルールなんだから仕方ない。
伝説のソーサリーは場に伝説のクリーチャーかプレインズウォーカ―がないと使用できない。
 
そうそう、あくまで呪文をとなえるフレーバーなので「伝説の土地」が場にあることは関係ない。
伝説の土地があっても伝説のアーティファクトがあっても、
それだけでは伝説のソーサリーは唱えられないのだ。
 
そのくせ伝説の生物でさえあれば魔法を使えそうに見えないカエルとかでもよかったりする。
なのでフレーバーと言うよりは「ゲーム的な」縛りなのかもしれない。
土地を出すのにはマナが必要ないのでデッキに十分な量の伝説の土地があれば使えるというのはマズい、
基本的にコストが必要な伝説のクリーチャーやプレインズウォーカを条件に設定することでバランス調整をするという目的なんだろう
 
 
というわけで今回のまとめ
「伝説をデッキに2枚以上積むのはルール上問題ない」
「同じプレイヤーは同名の伝説パーマネント2枚を並べられない」
「2対以上並べた場合、1つを選び残し他を墓地へ置く」
 
伝説のソーサリーは自分が伝説のクリーチャーかプレインズウォーカ―を使っている場合にのみ唱えられる」
 
伝説って? と聞かれて今ならこたえられるようになったかな?
ああ!