バーチャルVtuver豆猫さんの与太話

バーチャルVtuver(存在しないVtuberを装う遊びをする人) ※当ブログはファンコンテンツ・ポリシーに沿った非公式のファンコンテンツです。ウィザーズ社の認可/許諾は得ていません。題材の一部に、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社の財産を含んでいます。©Wizards of the Coast LLC. ウィザーズ・オブ・ザ・コーストのファンコンテンツ・ポリシー|WIZARDS OF THE COAST GAMES 連絡用Gmail:beencatsun@gmail.com

クソマンチビームのクソマンチとは何か

クソマンチビームとは何か

Twitterで話題の「クソマンチビーム」

あまりにもしっくりくるネーミングなので使っていたんだけど、名前のついた概念は広まりやすい。

知ってるアカウントが呟きまくってる小規模な言葉だったのが、今ではかなり広範的に使われる俗称になりつつある。

だがこの「しっくりくる名前」は前提としてクソマンチというものについて知っていないとわからない。

 

「クソマンチビーム」でTwitterを検索すると、

「クソマンチビーム」ってなに? という声は少ない。

どうやらそれがスマブラの新作映像に出てきた敵のビーム」ということは割と伝わっているようだ。

一方で、クソマンチビームの「クソマンチって何?」というツイートも見受けられる。

 


【スマブラSP】 灯火の星

 

クソマンチとは何かを説明し、いかにこのビームが「クソマンチ」と呼ばれるに値するのか…それをこの記事では紹介しよう。

 

マンチとは何か?

クソマンチビームのクソはまあクソ強いとかのクソだ。

超とか凄いとかスーパーとかそんな感じの強調表現だ。

ただ「クソ」という言葉の選択から「卑怯だぞ!」みたいなニュアンスが組み込まれている感じも伺える。

まあ修飾部分なのでここはどうでもいい。

クソマンチビームという言葉の意味がわからない人はつまり「マンチ」とは何かがわからないということだろう。

 

マンチはマンチキンの略だ。

マンチキンというのは欧米のTRPGテーブルトークRPG界隈で生まれた言葉で

噛み砕けば「とにかく強さにこだわるわがままプレイヤー」っていう感じの言葉だ。

「munchkin.txtマンチキン・テキスト) という一連の文章で、プレイヤーの性格やプレスタイルを分類するなかで生まれた概念だ。

 

よくある質問:「あなたがこのゲームで一番好きな武器はどれですか?」

マンチキンの答え:「一番強い武器。威力も命中も高いやつ」

よくある質問:「あなたがこのゲームで一番好きな防具はどれですか?」

マンチキンの答え:「一番強い防具。物理防御も魔法防御も堅いやつ」

よくある質問:「あなたがこのゲームで一番好きな仲間キャラは誰ですか?」

マンチキンの答え:「主人公。俺が使ってるから」

質問:「私は仲間を聞いたんですよ?」

マンチキンの答え:「あー。俺の次に強い奴。でも俺より目立つのはダメだな」

まあ、こんな感じのクソガキだ。

 

日本的な言葉に(ニュアンスが多少変わることを承知で)意訳するなら

「俺TSUEEE!!」の類かもしれない。

 

こうして海外のTRPGでマンチキンという言葉が生まれたのだが、

この言葉が日本に渡ってくるとニュアンスが変わってくる。

 

和マンチというもの

「とにかく自分が強くなるようにふるまう奴」の意味だったマンチは

日本に来ると紆余曲折あり意味が変わる。

まあ元が侮蔑的な表現なのでそこら辺を引っ掻き回して詳しく語るのはよろしくないからしないけど、

最終的に「ルールを読み込んで自分の有利なように主張する人」というイメージに変わる。

こちらを前述の海外のマンチキンとの区別のため和マンチと呼び、海外の方は洋マンチと呼ぶようになる。

 

この和マンチが言葉としては厄介。

洋マンチはあきらかに馬鹿にする言葉なんだけど

和マンチは定義ズレを起こしてて「豊富な知識やルールの理解が深い熟練プレイヤー」という意味にもとれるし、「ルールを絶対視して、ルール上できるんだ!(あるいはできないんだ!)」ということを過剰に主張する迷惑者という意味でも使われる。

 

まあ、RTAとかTASを見るの楽しいよね。みたいなのをTRPGプレイヤーにも夢見て褒め言葉的に使うという気持ちはわからないでもない。

 

しまいにはそれらを全部ひっくるめてマンチと呼び始め

「ほめてるつもりで使う人」「罵倒語として使う人」「熟練の意味で自称したり憧れたりする人」「それを見て罵倒語と勘違いして混乱する人」がいて…

ああもうめちゃくちゃだよ!

 

クソマンチビームは洋マンチか和マンチ

 

さて、話をクソマンチビームに戻そう。

クソマンチビームはどちらの意味でマンチと呼ばれているんだろう?

 

・当たっただけで戦闘不能

・防御系の特殊能力でガードできない

・追尾性能があり避けても追ってくる

・物量が多い

 

「ぼくの かんがえた さいきょうの ビーム」かな?

 

間違いなくこれは洋マンチ野郎の意味で使われてやがる…!と

結論を出すのはまだ早い。

 

このクソマンチビームを放つキーラという敵が、

実はかなりの策士であることが映像から読み取れる。

 

「リンクを狙う3本目のビームは途中で軌道を変えてリンクの体勢を崩し、4本目で仕留める」

「速いマシンを操るファルコンは乗る前に仕留める」

「それだけの速さがあるにも関わらず、ピカチュウはギリギリ逃げられそうな速さで追う→本来逃げ切れる速度のソニックピカチュウに手を差し伸べるために速度を緩めて手を伸ばしたところで急加速しソニックピカチュウも両方仕留める」

インクリングが潜ったインクごと地面を穿つ」

「一定時間無敵になる技を出したキャラクターは極太ビームが防御技が切れるまでずっと続くので無敵時間が終わるとやられる」

「女神パルテナの奇跡で飛行する二人の天使は一旦無視して、まずパルテナを倒し飛行できなくなったところで二人の天使を狙う」

カービィを比較的細いビームで取り囲み取れるルートを狭めてから極太ビームで仕留めようとする」

 

多分探せばもっとでてくるだろう。

これらはどちらかというと和マンチがしそうな理詰めの発想だ。

 

「洋マンチが作ったとしか思えない俺TUEEEビーム」を

和マンチが操作してるような徹底した作戦」で扱う。

 

そんな和洋折衷マンチキンとでもいうべきキーラさんのビームに

「クソマンチビーム」ほどしっくりくる名称など、そうないだろう。

 

かくして、クソマンチビームという名称は「マンチキン」を知る者たちの間で

しっくりくる名前として使われ、そういった人の考察ツイートなどが拡散されていく過程で「クソマンチビーム」という名前も定着していったのだろう。

 

実際、使っている側としてあまりにも雑語りに便利なので多分公式からビーム名が開示されても

相変わらず「クソマンチビーム」と呼ばれ続けるんじゃないかなあ…。

 

さて、もし君がクソマンチビームという言葉の意味を知りたくてこの記事を読んで

クソマンチビームの意味が分かったとしたらそれをとても嬉しく思う。

 

Twitterでこの記事を広めてくれると僕のブログの宣伝にもなってさらに嬉しいので感謝の気持ちはそうやって表現して欲しい。

以上、終わり!

【超次元MTG対戦】TYPE/Zero 最終話『突然のショックの解決よりも早く』

第1話リンク↓

omamesensei2.hatenadiary.jp

 

 

超次元MTG対戦 TYPE/Zero

最終話「突然のショックの解決よりも早く」

 

 

「レイが勝った!」

 

「凄い! まさかあのコンボを打ち破れる奴がいるなんてな…」

 

「レイさん、あなたは本当に素晴らしい決闘者ですわ」

 

「これで…やっとまたプレイできるんだね…」

「レイちゃんの望んでいた『楽しいカジュアルマジック』が…」

 

「…?」

「どうしたのレイちゃん…?」

 

「兄さんの様子が…」

 

「よくぞこの私を倒した…だがこれで終わりだ…」

「名実ともに【刹那策略】こそが最強のデッキとなったのだ」

 

「何言ってるんだ、【刹那策略】は今、倒されたじゃないか…!」

 

「そうですわ!」

「《Double Deal》による『次のゲーム』でのダメージで決着!」

「最強のデッキはレイさんの【千夜一夜物語】になったはず…!」

 

「…そうか! 『次のゲーム』!」

 

「気づいたようだな、そう。もはや『次のゲーム』は終わった」

「これでもうその手は使うことができない…!」

 

「最強は…! この私の【刹那さみだれうち】なのだ!」

 

「そんな…もうあのデッキを倒す方法は、同じデッキを使うしかないっていうのか…」

 

「そんなのマジックじゃない!」

「ただのお金のかかるコイントスだよ!」

 

「もはやマジックの可能性は行き止まりだ…!」

 

「これ以上どんなカードが登場したところで!」

「TYPE/Zeroがこれよりひどいゲームになることなどない!」

 

「その結論に至ってから…私自身、何度も抜け穴を探した…」

「だが無駄だった…」

「TYPE/Zeroは…もはやコイントスの権利を金で買うだけのゲームだ」

「こんなゲームが楽しいはずがない…!」

 

「レイさん、聞いてください…TYPE/Zero四天王の成り立ちを…」

「もともとTYPE/Zero四天王は『強さ』と『楽しさ』、その両方を極めるために集まりましたの」

 

「理論上最強のデッキを作る思考実験、それは『強さ』を求めるものであると同時に…『楽しさ』そのものでした」

 

「『最強のデッキ』。誰もが憧れるそれを探し求める遊び…」

 

「だがコンスピラシーの発売と共にその試みは露と消えた…」

「もはや環境の最適解は決まったも同然…」

 

「ただただコインを振るデッキに疲れた時、あなたの存在を知りました」

 

「強引なやり方とは思いましたが、きっとあなたなら膠着したTYPE/Zeroを楽しくしてくれると、そう思って私たちはこのカードショップに…」

「あなたなら5人目の四天王として『楽しさ』と『強さ』を共にできると信じて…」

 

「その為に俺もつまらない芝居を打ったってわけさ」

 

「猿渡…実はあなた あの演技、楽しんでたでしょう?」

 

「当り前さ、キャラを演じながらやるMTGは楽しいぜ」

「お前のお嬢様キャラだってそうだろ?」

 

「ゴホン! それは置いておいて…」

 

「四天王はそんなつもりで…それなのに私は…兄さんと同じデッキを…」

 

「でもあなたは、それを乗り越える答えを見つけてくれた…!」

 

「確かに素晴らしい一手だった…」

「だが それは一度限りの手品、まやかしの類でしかない!」

 

「次は《Double Deal》を7回使われる前に投了してしまえばいい…」

「もはや、【刹那さみだれ撃ち】は先攻において負けはない!」

「TYPE/Zeroの環境は終わったのだ…!」

 

「終わってない…終わってない…」

「私は…私のしたかった『何でもあり』のマジックは…」

 

「そう語るなら後攻で勝てると示して見せろ!」

 

「うわあああ!!!」

 

決闘!

 

「ゲーム開始時!」

「《神の導き》を公開!」

f:id:omamesensei:20181026231829p:plain

 

「さらに《別館の大長》を続けて公開!」

f:id:omamesensei:20181028132930p:plain

あなたはあなたのゲーム開始時の手札にあるこのカードを公開してもよい。

そうした場合、各対戦相手がこのゲームで自分の最初の呪文を唱えたとき、そのプレイヤーが(1)を支払わないかぎり、それを打ち消す。

 

「あれは《ドロスの大長》と同じ5枚の大長サイクルのうちの1つアル!」

「《別館の大長》は公開するだけで能力が誘発するカード!」

「刹那能力を持つ呪文すら撃ち消せる強力な1枚ネ!」

 

「さらに《神聖の力線》!」

f:id:omamesensei:20181028134621p:plain

 

「あれはわたくしとの試合では使わなかった白い力線…!」

「プレイヤーを火力呪文などからまもるカード!」

 

「ドロスの大長と違って《突然のショック》は対象を取る呪文だから、《神聖の力戦》が場に出ている限りレイを狙うことができない!」

「これなら!」

 

「さあ、兄さんのターンです…!」

 

「なあレイ? 本当にそれが私に通じるとでも思っているのか?」

 

「本当はお前もわかっているのだろう?」

「そんな程度では【刹那さみだれ撃ち】を防ぎきれないことを…」

 

「私のターン!《神の導き》にスタックし、解決前に…《Elvish Sprit Guide》を追放…」

f:id:omamesensei:20181028135441p:plain

 

 

「《猿人の指導霊》の元になったカード。」

「同じ効果で…生み出すマナが赤マナでなく緑マナ!」

「あいつはきっと緑の刹那呪文を使う気だ!」

 

「その通りだ! 《ブレイゴの好意》2枚と指定カードを公開し、それをそのまま唱える!」

「指定カードは《クローサの掌握》!」

「エンチャントを破壊できる刹那呪文だ!」

「お前を守る《神聖の力線》を破壊する!」

f:id:omamesensei:20181028135944p:plain

 

「ですが! 1マナ払わなければ白の《大長》でそれを打ち消す!」

 

「当然支払う!」

 

「そんなマナ、一体どこから!?」

 

「あるさ。この手札にな」

「《猿人の指導霊》を追放! 赤マナを出して追加のコストを支払う!」

 

 

「終わりだあ!」

「26点にライフが変化する前に…!」

「2枚目の《類人猿の指導霊》!」

「《一石二鳥》を9枚公開…! 」

 

「《突然のショック》! 9発追加して10連打ァ!」

「20点ダメージを与えてゲームエンドだ!」

 

「そんな、専用の対策すらも効かないっていうのか…!?」

 

「いったいどうすれば…あれに勝てるの…?」

 

「楽しいカジュアルプレイをしたいっていうレイちゃんの気持ちでは勝てないっていううの!」

 

「そんなの絶対におかしい!」

 

「アオイ…」

 

「お願い…レイちゃん…立ち上がって…!」

「また楽しく遊ぼうよ…」

 

「もう強い人と戦い続けなくていいから…身内で遊んでいればいいよ」

 

「私に銀枠カードのこと教えてくれるんでしょ…」

「面白いデッキを見せてくれるんでしょ?」

 

「この前、新しい銀枠のカードが出たんだって言ってたじゃない!」

 

「新しい銀枠…?」

 

「古い銀枠のカードじゃなくて、私たちが生まれてから発売した銀枠があるっていってたじゃない!」

 

「それで楽しく仲間内で遊ぼうよ…」

「強さだけに、こだわらなくていいから…」

 

「最新の銀枠パック、アンステイブル…!」

「あの銀枠パックには確か…!」

 

手持ちのカードファイルを探る…

ケースには銀枠パック『アンステイブル』のカード…

 

「ありがとうアオイちゃん、でもまだ私は戦うよ…」

 

「みんな! 私に力を貸して!」

「みんなが持ってる『あのカード』と友情の力を!」

 

「なんだかわからねーけど、勝てる方法を見つけたんだな?」

 

「 がんばれ! レイちゃん!」

 

「持ってるカードなら貸せるけど、あるのかなあ…」

 

「大丈夫、みんな持っているはずだよ」

「だって彼があなたたちに託したカードなんだから!」

 

「まさか、レイちゃん…!」

 

「あのカードを…!」

 

「そのカードで良いなら持ってるぜ!」

 

「私も!」

 

「僕も!」

 

「使うアルよ…!」

 

「みんな、ありがとう!」

 

「レイちゃん…私はそのカードを持ってなくて、ごめんね」

 

「アオイちゃんには別の役割があるの。」

 

「おねがいしてもいい?」

「これを…このカードを。このデッキをあなたに使ってほしいの…!」

 

「これは…!」

 

「うん、わかった!わかったよ!」

 

「兄さん! これでおしまいにしましょう!」

「最後の勝負です…!」

 

「好きにしろ。もう何度戦っても無駄なことだ…!」

 

「はたして、そうかな?」

 

「お前は…!」

「四天王、斜九寺(なめくじ)!」

 

「なめくじの兄ちゃんだ!」

 

「ナメクジありがとう!」

 

「楽しく遊べたよ!」

「カードの名前も絵柄も効果もバカみたいで」

 

「最高のプレゼントだった!」

 

「だろう? 《ロケット噴射ターボなめくじ》は楽しい銀枠カードなんだ!」

 

「ふん、あのデッキはTYPE/Zeroの高速化には耐えられん」

「戦闘フェイズにならなければ勝てないなど…遅すぎる紙束にすぎない!」

 

「兄さん、斜九寺はもう私たちの友達よ」

「そのデッキを侮辱するのは許さないわ…!」

 

「許さないならどうする?」

 

「もちろん決闘を挑む!」

 

「来い。正真正銘これが最後だ!」

「暗黒面に堕ちた【刹那さみだれ撃ち】にスキはない!」

 

決闘!

 

「ゲーム開始前にデッキからアンティカードを取り除き」

「策略公開! 《権力行使》!」

「私が自動的に先攻になる!」

f:id:omamesensei:20181027161115j:plain

 

「私は公開無し。後攻で十分よ」

 

「無駄だ。このゲームは絶対に先攻が勝つ!」

 

「そうやって思考停止していては答えは見えない!」

「新しいカードが出ても検討しないで固執する兄さんには…!」

 

「ならその答えとやらを見せてみろ!」

「私のターン!」

「食らえ! 《突然のショック》10連打ァ!」

 

20点。

MTGの初期ライフを削るための呪文がスタックにのせられる。

コピーを含めた10回のショックが解決を待つ…。

 

その間、レイは一切の呪文を唱えることができない…!

 

 

でも突然のショックの解決よりも早く!

 

「ミドリちゃん! 私とデュエルして!」

 

「なんでこんな時に!?」

 

「いいから!」

「アンティはなし! フォーマットはカジュアル!」

 

「いいけど…」

 

「早く!」

「10回目の突然のショックの解決より先に!」

 

決闘!

 

「《権力行使》で私が先行!」

「デッキから《宝石の鳥》を全て取り除いて初期手札を固定する!」

 

「ずるいぞ! 私は権力行使ないのに」

 

「今はそんなことはどうでもいいの」

「私のターン! 雪被り平地をプレイ!」

f:id:omamesensei:20181027235659p:plain

 

「…! あのカードは!」

「レイ、あのデッキはお前が…?」

 

「そうよ。あれが私の示す答え!」

「楽しいカジュアルのあるべき姿よ!」

 

「行くよ、レイちゃん!」

 

「お願い、アオイちゃん!」

 

「《ハイタッチしよう》!」

f:id:omamesensei:20181028144946j:plain

 

あなたは、このあと30秒間にあなたとハイタッチした1人につき1点のライフを得る。銀枠ゲームのプレイヤーであなたとハイタッチしたプレイヤーはそれぞれ1点のライフを得る。(ハイタッチを求めること。相手を叩くのではない。)

 

パァン!

 

アオイとレイがハイタッチする音があたりに響く。

 

「ふん。楽しく遊ぶ姿を見せれば改心するとでも思ったのか?」

「茶番はそこまでだ。」

「最後の《突然のショック》を解決して終わりだ!」

 

「それで、兄さん?」

「何もなければターンをもらうね」

 

「なんだと?」

「ターンだと? お前のライフはもう0だぞ」

 

「それはどうかな、お兄さん」

 

「まだ私のライフは1点残っている!」

 

「ふざけるな!」

「そのカードでライフが回復するのは銀枠ジョークカードを使う場合だけだ」

「カジュアルしてるんじゃないんだ!」

これはTYPE/Zero、『強さ』の決闘!」

 

「銀枠のジョークカードがついてこれるものか!」

 

「いいや、あるだろう?」

「TYPE/Zeroでも銀枠のカードが!」

 

「私のターン! ドロー!」

 

「みんなの思いを乗せたこのデッキで!」

 

「行けっ!」

「《ロケット噴射ターボなめくじ》!!」

f:id:omamesensei:20181025233354j:plain

 

 

「銀枠ルールマネージャーによる『銀枠ゲームの定義』は…」

「『少なくとも一人が銀枠カードを使うマジックのゲーム』」

 

「私が銀枠の《ロケット噴射ターボなめくじ》を使う以上、これは銀枠ゲームであり…!」

 

「《ハイタッチしよう》の効果で、ハイタッチした銀枠ゲームのプレイヤーはライフ1点を得る!」

 

「1点でもライフを得たなら【刹那さみだれ撃ち】を耐えて反撃できる!」

 

「刹那ギミックだけに特化した兄さんのデッキには、なめくじを対策する《不動の力線》を入れるスペースが残されていない!」

 

「超速攻! 24点アタック!」

 

レイ Win!

 

「負けたのか…?」

「【刹那さみだれ撃ち】は最適解じゃなかった…」

「まだまだMTGには先がある…TYPE/Zero最強のデッキは未だ決まらずか…」

 

「勝ちも負けもあるから勝負。あんたの妹が教えてくれたことさ」

「あんたも同じ思いを抱き、勝利が定められたそのデッキに心を惑わされてたんだ」

 

「なあ、初心に帰ろうぜ…」

「MTGに最強のデッキなんてない。楽しく遊ぶ仲間と『自分のデッキ』があれば十分なんだ」

 

「また仲良く決闘しましょう…」 

 

「斜九寺…!長田…!猿渡…!」

 

「このショップに通う仲間は受け入れてくれる。そうだろう?」

 

「もちろん! TYPE/Zeroだけがマジックじゃないわ!」

「遊びましょう! みんなで!」

 

数々のフォーマット(遊び方)のあるMTG。
新しいカードで常に新鮮なゲームを楽しめるスタンダード。
比較的最近のカードのみを扱うモダン。
かなり古いカードから最新の特殊セットのカードまで使えるレガシー。
ルール上の不具合のあるカードを除いて「一切の禁止カードがない」ヴィンテージ。

そんなMTGの多様な構築制限の中でも最も自由なフォーマット
「カジュアル」
これは楽しくマジックで遊ぶ真の決闘者たちの戦いを描いた物語である…。

 

 

↓ Take an Extra turn !

omamesensei2.hatenadiary.jp

 

 

 

 

 

 

【超次元MTG対戦】TYPE/Zero 第5話「思いは時を超えて…」

超次元MTG対戦TYPE/Zero

第5話「思いは時を超えて…」

 

前回までのあらすじ

 

最強のデッキ【刹那策略】デッキ。

それは「どんなカードでも使える」夢のフォーマットを

「特定のカードしか使えない」世紀末フォーマットに変えてしまった。

カジュアルと最強の間で兄妹が雌雄を決する戦いが始まろうとしていた…

 

~~~回想シーン~~~

 

「兄さん! MTGって面白いね」

 

「だろう? 病弱な子でも大男と対等に戦えて勝てる…」

MTGはそんな魔法のゲームなんだ」

 

「あれ? 兄さん、そっちにある英語のカードは?」

 

「ああ、これかい」

「これは銀枠カードと言って、MTGをもっと楽しくするカードなんだ」

 

「もっと楽しくなるの?」

 

「ああ。もちろんさ。MTGはいくらでも楽しめるんだよ」

 

でも私はまだ英語は読めない…」

 

「そうだね。でも大丈夫。今すぐに読めなくてもいいんだ。」

「レイが大きくなってからでも楽しめるよ」

 

「ええー。やだよ。今使いたい!」

「だって新しいカードは数年したら対戦で使えなくなるんでしょ?」

 

「ははは、大丈夫だよ。これは銀枠のカードだから」

 

「銀枠はスタンダード落ちしないの?」

 

「ああ、しないよ。というよりも銀枠はスタンダードでは使えないんだ」

 

「ええ!? 使えないカード!?」

 

「『普通のルール』では使えないんだ」

 「銀枠はカジュアル用のカードだからね」

 

「カジュアル?」

 

「『なんでもあり』のルールさ」

「スタンダードを落ちたけどお気に入りのカードとか禁止カードだって使える」

 

「禁止カードも!? なんで!?」

 

「うーん、例えば2枚のカードが組み合わせたら凶悪なコンボになるとき」

「どちらか一方を禁止カードに指定することがあるんだ」

 

「でも禁止されたカードはそのカード同士で組み合わせなければ安全でおもしろいことができる…」

「そんな時にカジュアルフォーマットで使うのを受け入れる」

「そのかわり禁止理由になったコンボは使わないようにする」

 

「そうやって楽しく、使いたいカードは『なんでも』使うのがカジュアルさ」

 

「私もカジュアルやりたい!」

「その箱の中のカード使いたい!」

 

「レイにはまだ英語が読めないだろう?」

 

「勉強するもん!」

 

「よし。じゃあ兄さんも付き合おう」

「まずはこいつからかな。これは《ロケット噴射ターボなめくじ》と言ってね…」

 

~~~それから数年~~

 

「ふふふ。できた!私のとっておきのデッキ」

 

「また面白いデッキを作ったのかい?」

 

「うん、最強のデッキだよ!」

 

「最強のデッキ?」

「それは凄いじゃないか!」

 

「でしょう?」

 

「じゃあどんな風に戦うのか教えてごらん?」

 

「ええ? 聞くよりやってみようよー!」

 

「それもそうだな。よし。じゃあ相手しよう。何がいいかな」

「よし、【頑固爺さんクロックパーミッション】で行こう」

 

「ふふっ。兄さんそれ好きだね」

 

「雪被り平地渡り…面白い能力だろう?」

(雪被り平地渡…《頑固爺さん》の能力のひとつ。〇〇渡りは対戦相手が〇〇という土地を出している場合に働く能力。対戦相手が雪被り平地というピンポイントなカードを使っているときにだけ強くなる)

 

 

コイントス…表。

 

「私の先攻ね! じゃあまずは雪被り平地をプレイしてターンエンド」

f:id:omamesensei:20181027235659p:plain

「おいおい接待プレイかい?」

 

「だって兄さんとカジュアルで遊んでくれる人は誰も雪被り平地を使わないじゃない」

「私くらいは使ってあげないと」

 

 

「よし、準備ができた。これが私の【千夜一夜物語】のメインギミック!」

 

「おお…よく考えたね…でもそのコンボには重大な欠点があるよ」

 

「ええ? そうなの?」

 

「ここで僕が投了したらそのコンボは止まっちゃうから完成しないんだ」

 

「そんなーずるいよー」

 

「ずるくない。ルールを守って楽しく遊ぶんだ」

「降参するのもルールのうちさ」

 

「ぶー。」

 

「…やれやれ。これは雪被り平地の分だからな」

 

「優先権を放棄する。投了もしない」

 

「…!」

「やったあ! 見てて見てて!」

「これをーこうしてー!」

「できたー!最強のコンボ!」

 

「うわあ…やられたー!」

 

それが兄さんとの最後の決闘になった。

その少し後に兄さんは家を出てしまったのだ…。

 

~~~

 

「さあ、終わらせよう」

「TYPE/Zeroを極めた以上これはコイントスのゲームでしかない」

「コインが表なら私の先攻。裏ならお前の先攻だ。」

「そしてコイントスはそのまま勝者が決まることを意味する。」

 

「いいえ、私は兄さんを否定する必要がある」

「コイン投げに勝った方が先攻か後攻を選べる形式にしましょう」

 

「何か考えがあるのか?」

「いいだろう見せてみろ! 私は表を宣言する!」

 

コイントス…(裏)

 

「先攻はレイだ!」

 

「レイちゃん…」

 

「私は…後攻を選ぶ!!」

 

ざわざわ

 

「ええ…」

 

「どうして…」

 

「私はこのゲームが先手が絶対勝利するわけじゃないと示したいの!」

「カジュアルには無限の可能性がある!」

「それはTYPE/Zeroも同じなんだから!」

 

「なら容赦はしない!」

「デッキからアンティカード《青銅のタブレット》を取り除き、残りデッキは7枚!」

「マリガンはなし!」

 

「私もマリガンはしない…」

 

「おい!レイのデッキを見ろ! デッキが厚いぞ!」

 

「7枚に圧縮したデッキじゃない…?」

 

「これが私の【千夜一夜物語】!」

 

「ゲーム開始時に…はるか時を超えて7発の《Double Deal》!

f:id:omamesensei:20181028001635p:plain


他のプレイヤー1人を選ぶ。

Double Dealはそのプレイヤーに3点のダメージを与える。

そのプレイヤーとの次のゲームの開始時に、さらにそのプレイヤーに3点のダメージを与える。

 

「兄さん! あなたは忘れているかもしれないけど!」

「私たちの最後のゲームはこのデッキと同じコンセプトだった!」

 

「そしてあの日、私は墓地回収で使いまわした《Double Deal》を7回唱えた!」

 

「ゲーム開始時に、過去からの21点ダメージを受けてもらいます!」

 

「…!」

「驚いた…お前の方こそ…覚えていたんだな…」

 

次回、最終話。

「突然のショックの解決よりも早く」

 

最後の一撃は…刹那い…。

 

最終話↓

omamesensei2.hatenadiary.jp

 

https://omamesensei2.hatenadiary.jp/entry/2018/10/28/152150

 

【超次元MTG対戦】TYPE/ Zero 第4話『刹那の策略! 最強のTYPE/Zeroデッキ』

 

前回までのあらすじ

3人目の四天王、猿渡の使う【うねる炎の類人猿】デッキは【黒単ドロスの大長】すら凌駕する「『0ターンキル』キル」デッキだった。

仲間であったはずの同じ四天王、長田を手にかける猿渡

我らが主人公、レイが豹変する。

 

次元MTG対戦 TYPE/Zero
第4話 「刹那の策略! 最強のTYPE/Zeroデッキ」

 

「まだ私、マリガンするかどうかすら決めていないんだよ?」
「見せてあげる、策略の真の力…呪文を唱える本当のマジックを」

ゾクッ…

(レイちゃん、怖い…いったいどうしちゃったの…!?)

 

「まずはゲーム開始前の処理として私のデッキからカードを取り除く…」

f:id:omamesensei:20181027173304p:plain

アンティを賭けてプレイしない場合、プレイを開始する前に宝石の鳥をあなたのデッキから取り除く。
(T):宝石の鳥をアンティにする。そうした場合、そのアンティにあるあなたがオーナーである他のすべてのカードをあなたの墓地に置く。その後カードを1枚引く。

 

「あれは『アンティに関するカード』アルか!?」

 

「知っているのか、ミンメイ!?」

 

「アンティはいにしえのMTGに存在した賭けのルール!」

 

「互いのプレイヤーはカードを賭けて戦い、勝者は敗者からアンティのカードを奪うことができたアル」

「そういったアンティに関わる効果を持つカードも少数ながら存在し、それらのカードにはこう書かれているアル」

 

「アンティを賭けてプレイしない場合、プレイを開始する前にこのカードをあなたのデッキから取り除く、と」

 

「プレイを開始する前に?」

 

「もはやTYPE/Zeroではゲームが始まる前から勝負は始まっているっていうのか…」

 

「言ったはずよ、私はこのゲームに『何も賭けはしないと』!」

「私のデッキからすべてのアンティカードを取り除く…残りデッキは7枚」

 

ざわざわ

 

「ええっ!? 7枚だけ!?」

 

「7枚…それってMTGの初期手札枚数じゃないか!?」

 

「これにより私の初期手札に『手札事故』はなくなり確実に決められた7枚で戦える」

「さあマリガンチェックに進もう。私は当然キープ」

 

「俺もキープだ」

 

「じゃあ、ゲーム開始時に何かあるかな?」

 

「ないぜ。お前のターンを初めて構わない」

 

「では私のターンから。 そしてこれで、おしまい」

 

「手札からあなたと同じ《猿人の指導霊》を追放して赤マナを1つ得る」

 

「そして策略カードをサイドボードから公開する!」

「《ブレイゴの好意》」

f:id:omamesensei:20181027175338j:plain

 

そのカードには≪突然のショック≫という文字が書き込まれた付箋が貼られていた。

 

「さらに公開。《一石二鳥》を9枚。指定はこちらも全て《突然のショック》」

f:id:omamesensei:20181027175857j:plain

 

「そしてあなたを対象に2点のダメージを与えるインスタント呪文、《突然のショック》を唱えるわ」

 

 

「唱えるためのマナコストは《ブレイゴの好意》で1マナ軽減。」

「残りの赤1マナを《類人猿の指導霊》から確保。」

 

「指定された呪文を唱えたことにより、9枚の《一石二鳥》の効果。」

「《突然のショック》のコピーが9個生まれる」

「対象は当然すべてプレイヤーである猿渡(さるわたり)! あなたよ!」

 

「コピー元と合わせて10個の《突然のショック》から合計20点の直接ダメージ」

「グッドゲーム…。」

 

一瞬、それは刹那のできごとだった。

猿渡が何かをする暇もなく、ライフポイント20点が0に変わっていた。

 

「いったい何が…?」

 

「猿渡のやつ…なんで【うねる炎の類人猿】コンボをしなかったんだ?」

 

「スタックとかなんとかで対応できるんだろう?」

 

「無理アルよ」

「突然のショックに対して《うねる炎》で対応できない理由があるアル」

 

「なにか知っているのかミンメイ!」

 

「『刹那』アル」

f:id:omamesensei:20181027212839p:plain

 

刹那(この呪文がスタックにある限り、プレイヤーは呪文やマナ能力でない起動型能力をプレイできない

 

「刹那能力を持つ呪文が唱えられてから解決されるまでの間、次の呪文を唱えることはできないアル」

「《類人猿の指導霊》からマナを出すことは出来ても、そのマナで《うねる炎》を唱えられないネ…」

 

「それだけじゃないアル。」

「打ち消しなどのカウンター呪文やダメージの矛先を捻じ曲げる呪文、あるいはダメージを軽減しなかったことにする呪文」

 

「そういった妨害呪文すら、刹那呪文に対しては使うことが許されないアル…」

 

「それじゃあ、あの《突然のショック》と《一石二鳥》9枚のコンボが始まったら…」

 

「一切の妨害ができないってことか…」

 

「すげー!最強のデッキだ!」

 

(それがレイちゃんが本当にしたかった決闘なの?)

 

「アンティが無しって決まりだから拘束力はないけど、あんたは二度とこのショップには来ないで」

「私は、私のしたい『楽しい』マジックを守らないとならないんだ…」

 

パチパチパチ…

乾いた拍手の音がレイの言葉に続いた

 

「素晴らしい。素晴らしいデッキだよ。レイ」

 

「!?」

 

「あなたは一体…?」

 

「…兄さん…。」

 

「えっ!? レイちゃんのお兄さん!? 数年前に家出したっていう!?」

 

「気を付けて…あの男こそ四天王最後の1人ですわ…!」

 

「レイの兄貴が…最後の四天王!?」

 

「お前もついにこちら側に堕ちたな、レイ」

「TYPE/Zeroの暗黒面に」

 

「暗黒面…」

 

「うすうす気づいてはいたんじゃないか?」

「楽しいゲームと面白さを求めるカジュアルゲーマーだったお前が」

「そんな凶悪なデッキを作り上げたんだ」

 

「勝つのは面白いだろう?」

「勝利こそが全てだろう?」

「勝つからゲームは面白いんだろう?」

 

「違う…私は…もっと…みんなと楽しいマジックがしたかったのに…」

 

「普段は使わないジョークセットの銀枠カードや、策略カードを使った多人数戦のパーティプレイがしたくて…」

「それで色んな面白そうなカードを集めて…みんなとカジュアルフォーマットで遊びたくて…」

 

「そうやって《ロケット噴射ターボなめくじ》のような銀枠カードを実際に使って遊べるフォーマットを探し…」

「そうしてTYPE/Zeroにたどりついた」

「同じなんだよ、レイ」

 

「楽しいゲームのための『なんでもあり』であるカジュアルと」

「力を求め勝利がすべての世界になる『なんでもあり』のTYPE/Zeroは!」

 

「レイの兄貴だか何だか知らないけど勝手なことを言ってるんじゃねえ!」

「こいつはこの店の誰よりも『楽しいゲーム』ができるよう頑張って、四天王から店を守って…」

「レイのプレイスタイルを否定させたりしない…!」

 

「ミドリちゃん…!」

 

「アタシと勝負しろ!」

 

「構わんよ」

 

決闘!

 

【刹那さみだれ撃ち】!

 

「うわー!!!」

 

「ミドリちゃん…!」

 

「あのデッキはやはり…」

 

「同じデッキアル!」

「刹那呪文と策略による完封デッキ!」

 

「つまらないものだな…」

「強すぎるデッキの行き着く先は…」

 

「兄さん…」

 

「カジュアルのゲームをしたかった、しかしカジュアルだからという理由でガチデッキに敗けたくはなかった」

「カジュアルで友と遊ぶ時もできれば勝ちたかった」

 

「『なんでもあり』のカジュアルフォーマットの行き着く先は…」

「『なんでもあり』の理論上最強を探すTYPE/Zeroだったのさ」

 

「そんなの!私は認めない!兄さん!互いの信念をかけて決闘して!」

「力を求め理論上最強を探す兄さんと、どんなカードでも使えるゲームを楽しむ私と…」

 

「悪いな、それじゃあ賭けになどなるまい」

「おまえの握っているそのデッキがすべての答えだ」

「その禁断のデッキを手にした時点で…お前の信念は折れているんだ…」

 

「それでも私は…!」

 

「決闘せずにはいられないんだろう? わかるさ」

「勝ちたいのだろう?」

 

「だがこのデッキとそのデッキが戦えば答えは明白だ」

 

「まず互いに《権力行使》を見せ合い、結局はコイントスで先手後手を決め…」

 

「先手になった方が必ず勝つ」

「対戦相手にカードを使わせずにな…」

 

「そんなの…やってみないとわからない…!」

 

「いいや、やらなくてもわかっているはずだ」

「そのデッキとのゲームにつけいるスキはありはしないのだと…」

 

「それとも私と不毛なコイントス遊びをするか?」

 

「私は…私は…」

「証明して見せる…!」

 

「来い!レイ!」

 

(そして、俺を倒してくれ…TYPE/Zeroは、こんな不毛な『コイントスするだけのゲーム』ではないんだという可能性を…俺に…)

(などと考えてしまうのは流石に虫が良すぎるか…)

 

(お前と戦い、俺は名実ともに最強の決闘者になる…!)

 

 

次回予告

遂に現れた最後の四天王。

その正体はレイの兄だった。

「楽しさ」を求めて『なんでもあり』のカジュアフォーマットで遊びたかったレイと

「強さ」を求めて『なんでもあり』のTYPE/Zeroにたどり着いた兄。

表裏一体、コインの裏表である二人の試合はコイントスだけで決まってしまうのか?

次回、超次元対戦MTG対戦TYPE/Zero

第5話「思いは時を超えて…」

 

 第5話はこちら↓

omamesensei2.hatenadiary.jp

 

 

 

 

 

【超次元MTG対戦】TYPE/Zero 第3話「うねる右腕!3分の1の類人猿」

第1話 ↓

omamesensei2.hatenadiary.jp

 

前回 ↓ 

omamesensei2.hatenadiary.jp

 

超次元MTG対戦TYPE/Zero

 

前回までのあらすじ

1ターンキルを超える0ターンキルを使うTYPE/ZERO四天王、長田(おさだ)

しかし我らが主人公カジュアルMTGプレイヤー、レイは0ターンキルに特化しすぎたが故のスキをついて攻略した。

残るTYPE/Zero四天王は2人!

戦え、レイ! 楽しいMTGを遊ぶために!

 

超次元MTG対戦TYPE/Zero

第3話「うねる右腕!3分の1の類人猿」

 

「また…ショップが…」

 

「うん。またTYPE/Zeroの暗黒面に落ちてるね…」

 

「今度は《ドロスの大長》が流行ってるの…?」

 

「みんな、子供だからね」

「正直、私だって0ターンキルって言葉にワクワクしないかって言われると、ちょっと気になるもの」

 

「でもまだ《ドロスの大長》は流行ってほどじゃないかな」

「流石にショップには十分いきわたるほどは大長は売ってなくて…」

「ナメクジを使う子たちが少しだけデッキに入れてるみたい」

 

「いやまあ、私も組んだからあんまり強くは言えないけど…」

「あれはもうMTGじゃないよ…」

「呪文も唱えずに戦うなんてマジックの名前にふさわしくない…!」

 

「よくわかってるじゃねーか。その通り」

「呪文を唱えてこそのマジックだ」

 

マジック:ザ・ギャザリングは魔法使いになってデッキという魔導書から呪文を唱えるゲームだ」

「呪文を唱えなきゃ、マジックじゃないよなあ」

 

「俺はそこんところ弁えてるぜ」

「このTYPE/Zero四天王、猿渡(さるわたり)はな!」

 

「またTYPE/Zero四天王…!?」

 

「レイさん…! こいつのデッキは…!」

 

「おっと、使うデッキについて横から口を出すのはフェアじゃあねえな」

「長田、てめえ いつの間にかそっちに寝返ったんだ。」

 

「くっ…!」

 

「一緒に四天王を名乗っていたのに悲しいねえ」

「まあ、お前は一度も俺に勝ったことがないからな」

「その点ではとても仲間とは呼べなかったかもしれないが…」

 

 

「言わせておけば…!」

「レイさん、こいつの相手はわたくしにやらせてください!」

 

「ほう? 一度も俺に勝ったことのないお前がか?」

 

「いいだろう。TYPE/Zeroを挑まれて断るなんてことは俺達には許されない」

「また前みたいに消し炭にしてやる」

 

決闘!

 

「先攻はもらうぜ」

 

「別に構いませんわ」

 

「そうかい。じゃあ行くぜ!いや、来いといった方が良いかな?」

「どうせいつものデッキだろう?」

 

「私はゲーム開始時に手札から《ドロスの大長》を7枚公開!」

 

「出た! 長田さんの0ターンキルコンボだ!」

 

「あいてはゲーム開始時のカード公開無し!」

「これは勝負ありだな!」

 

「それはどうかな?」

 

「なあ、お前ら」

「ゲーム開始時の大長の効果とか、唱えることなく場にナメクジ出すとか…」

「そんなマジックして楽しいか?」

 

ざわざわ

 

「MTG、マジック:ザ・ギャザリングってのはさあ、呪文を唱えあう魔術師のゲームだ」

「それを忘れちまってるんじゃないか…?」

 

「俺が本当のマジックを教えてやるよ…!」

「俺のターン!…ここで《ドロスの大長》の能力がスタックに積まれる。そうだな?」

 

「スタック…?」

 

「知らないのか?」

「MTGでは唱えた呪文やカードの能力は、一度スタックってところに置かれるんだよ」

 

「例えば相手の呪文を打ち消すカウンター呪文とかあるでしょ?」

「そういったカードを相手の行動に対応して使うために、使われたカードはちょっと待機して、何も対応がなければ解決されるってルールになっているの…」

 

「…!」

「つまりあいつは対応して何かするってこと!?」

 

「俺は手札の《猿人の指導霊》2枚を手札から追放する!」

f:id:omamesensei:20181027152543p:plain

 

「これにより赤マナが2つ生まれた。」

「普通のマジックはこういうマナを支払って呪文を唱えて遊ぶもんだろうが」

 

「それじゃあ見せてやるぜ…これが本当のマジックだ。」

「《うねる炎》の呪文を唱える!!」

 

「《うねる炎》アルか…!?」

 

「知っているのか、ミンメイ!?」

 

f:id:omamesensei:20181027152935p:plain

波及 4

(この呪文をプレイしたとき、あなたは自分のライブラリーの一番上から4枚のカードを公開してもよい。 あなたは公開されたカードの中にあるこの呪文と同じカード名のカードを、マナ・コストを支払わずにプレイしてもよい。 残りのカードはあなたのライブラリーの一番下に置く。)
クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。

うねる炎はそれに2点のダメージを与える。

 

「波及能力により山札の上から4枚を公開!」

「《うねる炎》《うねる炎》《うねる炎》《猿人の指導霊》

「俺は3枚の《うねる炎》をコストを払わずに唱えて、更に公開!」

「ヒャハッ! また《うねる炎》が出たぞ!」

 

「ひっ、ひどすぎる…!」

 

「おいおい、おれはちゃあんと呪文を唱えたんだぜ?」

「ナメクジやドロスなんかより、よっぽど普通にマジックしてるじゃあないか?」

 

「ただちょーっと引きが良くて連続で当たっちまっただけかもしれないぜ?」

 

「さあ次の《うねる炎》の波及を解決しないとなあ」

「4枚めくって…ちっ、ぜんぶ猿か」

 

「まあいい」

「まだ解決してない方の《うねる炎》の波及だ…!」

「4枚めくって…よしっ2枚ゲット!」

 

「ははははは!次の《うねる炎》は…」

「おお! 4枚全部《うねる炎》がめくれたぞ!」

「これでめくれた枚数が10枚を超えたぜ」

「解決待ちのダメージが初期ライフ20点を超えたけど、まだ続けるか?」

 

「投了…ですわ…」

 

「ははは。そりゃあそうだわなあ…!」

「雑魚め! お前じゃあ俺には一生勝てないんだよ!」

 

「まさか《ドロスの大長》の0ターンキルよりも早い勝ち手段があるだなんて…」

 

「あんなデッキに勝てるわけがないじゃない…」

 

「0ターンキルをされる前に相手を倒すデッキ…!」

「言うなれば『0ターンキル』キル!」

 

「はははは。楽しい決闘だったぜ。さあ、次はお前の番だ!」

 

「よくも長田さんを…!」

「自分の仲間を手にかけて…! 笑ってられるね!」

 

「楽しいマジックを私が思い出させてあげるわ!」

「覚悟しなさい猿渡!」

 

(あれ?)

(でも友達とMTGで戦うって普通のことじゃ…)

(いや、私の考えでみんなを混乱させるわけにはいかない…)

(この考えは心に止めておこう)

 

「あなたは長田さんの決闘者の魂を侮辱した」

「もう手加減はしない…この禁断のデッキに手を染めてでも私は、お前を…!」

 

(なんだ、あの異様なデッキは…デッキの横に別のカードの束…?)

(まさか、あれはアイツと同じデッキ…いや、まさかな…)

 

「まあ楽しく決闘しようぜ。互いの決闘者の魂をかけてな」

 

「お断りよ。私はこのゲームに『何も賭けはしない』」

「こんなくだらないゲーム、すぐに終わらせてやる!」

 

 

決闘!

 

「先手後手は公平にコイントス「なにを勘違いしているの?」

 

「あなたには先手をもらう『資格』すら存在しない!」

 

ざわ…ざわ…

 

「なんかレイちゃんの目、怖くない…?」

 

「いったいどうしちまったんだ」

 

「先手後手の決定前に…私はサイドボードからカードを公開する!」

 

「サイドボード?」

 

「サイドボードっていうのはデッキの予備のカードだ」

「試合の合間にデッキを組み替えたりするのに使うんだけど…」

 

「MTGのカードの中には試合の合間でなく、対戦の最中や対戦開始時にサイドボードを使うカードが少量ながら存在するアル」

 

「これが…ッ! 権力だぁッ!!」

 

「あれは! 禁断の『策略カード』アルか!?」

 

「知っているのか、ミンメイ!(本日2回目)」

 

「策略カード、それはMTGの特殊セット、策謀の多人数戦宮廷闘争を遊ぶ『コンスピラシー』のパックで登場したカード!」

 「あまりの強さから使用できる可能性のある全フォーマットで『当然のように禁止』されたカード群ネ…!」

 

「ゲーム開始に際して、サイドボードの《権力行使》を私の統率領域に…」

f:id:omamesensei:20181027161115j:plain

 

「私が…開始プレイヤー、つまり先攻になる!」

 

「そんな!コイントスやダイスロールじゃなくて…」

「持っているだけで先攻になるカード!?」

 

「そんなカードが実在するのか…!?」

「そもそも使っていいのかよ!?」

 

「TYPE/Zeroは『定型のマジックのカード』を用いる限り、なんでも許される…」

 

「似たような特殊セットのカードとして『英雄カード』や『計略カード』『ヴァンガードカード』、そういった特別なカードはいくらでも存在するアル」

 

「でもそれらはパーティゲーム用の特大サイズカードや、裏面がMTGのものでなかったりしてType0で使用可能なカードを定義する『定型のマジックのカード』ではないアル…」

 

「でもコンスピラシーは違う…」

「策略カードは『他の普通のカードと混ぜて使うカード』…!」

「ゆえに『大きさ』も『カードの裏面』も『定型のマジックのカード』になっているアルよ」

 

「さあ、猿渡(さるわたり)。あなたも《権力行使》を使うならコイントスに応じてあげるけど、どうするの?」

 

「もっともサイドボードを用意してないように見えるあなたには…」

「聞いても無駄なようだけどね」

 

「先攻になったくらいで調子に乗るな!」

「さっきの対戦を見ればわかるだろう?」

「先手だろうと後手だろうと関係ねえ!」

 

「そう思うのは勝手だけど。まだ私マリガンするかどうかすら決めていないのよ?」

「見せてあげる。策略の真の力…呪文を唱える本当のマジックを」

 

ゾクッ…

 

(レイちゃん、怖いよ…いったいどうしちゃったの…!?)

 

 

次回予告

豹変するレイ…いったい彼女に何が起きているのか!

『策略』カードに秘められた真の力とは?

次回決闘は最終局面(ゲーム開始時)へと向かう!

次回、超次元MTG対戦TYPE/Zero
第四話 「刹那の策略!最強のTYPE/Zeroデッキ」

 

第4話はこちら↓

omamesensei2.hatenadiary.jp

 

 

【超次元MTG対戦】TYPE/Zero 第2話『黒単の恐怖!脅威の0ターンキル!』

第一話はここから↓

omamesensei2.hatenadiary.jp

 

 

前回までのあらすじ!

驚異の1ターンキルデッキ【ロケットなめくじビートダウン】を使うTYPE/Zero四天王、斜九寺(なめくじ)を相手に、

使うことはないだろうと思いつつも用意していたTYPE/Zeroデッキで勝利したカジュアルMTGプレイヤー、レイ
そんな彼女に新たなる四天王の魔の手が迫ろうとしていた…。

 

超次元MTG対戦 TYPE/Zero
第2話黒単の恐怖! 脅威の0ターンキル!』

 

「レイちゃん、大変!」

 

「昨日の今日でどうしたのアオイちゃん」

 

「実はあの後ショップにくる子供たちの間でTYPE/Zeroが流行り出しちゃって…」

 

「そんな!? あの禁断のフォーマットが!?」

 

2人が店につくと子供たちは不毛な遊びをしていた…。

 

「じゃんけんポン!はい勝ち~~~~」

 

「うわーん負けたー」

 

「いったい何が起こっているの?」

 

「斜九寺が無限回収(同じカードを何枚でも集めること)していた大量のなめくじを子供たちに分け与えたの」

 

「でもあれは私が倒し方のお手本を見せたはず…!」

 

「それがショップにはナメクジ対策の《不動の力線》が売ってなくて…」

「先攻を取れるかをじゃんけんで決めるだけのゲームになるか」

「そうでなければ、なめくじをもってなくて負けるかしかないっていう惨状なの!」

 

「どうして…? せっかく斜九寺くんも改心したのに…」

「これじゃあ私のしたいカジュアルで楽しいMTGができないよ…」


「ふうん、この店ね。斜九寺を倒した子がいるっていうのは」

 

「お前、見かけない顔だな。この店は初めてか?」

 

「ええ。わたくしはTYPE/Zeroが遊べると聞いて来ましたの」

 

「ならアタシが相手になってやるよ…!」

 

決闘!

 

「まずは先手後手の決定。じゃんけんでいいか?」

 

「お好きにどうぞ」

 

じゃんけん ポン !

 

「アタシの先攻な!」
「マリガンチェック…当然キープ」

 

「わたくしも当然キープですわ」

 

「それじゃあ先攻の私のター…「お待ちなさい!」

 

「!?」

 

「ゲーム開始時!」

「わたくしは手札からカードを公開しますわ」

 

「あっ!あれは《ドロスの大長》アルか!? 」

「知っているの、ミンメイ!?」

 

f:id:omamesensei:20181026230931p:plain



あなたはあなたのゲーム開始時の手札にあるこのカードを公開してもよい

そうした場合、最初のアップキープの開始時に、各対戦相手は3点のライフを失い、その後、あなたはこれにより失われたライフの総量に等しい点数のライフを得る。

 

「最初のアップキープ。つまり先攻であるあなたのターンの初めに…」

「3点のライフを奪い、わたくしのものにしますわ」

 

「そんな! アタシはじゃんけんに勝って先攻になったはずだ!?」

「それよりも早く…!」

 

「ライフを3点回復されたら相手のライフは23点…」

「7体のナメクジじゃあワンキルできない!」

 

「でも待てよ。なめくじのコストは次のターン終了時までに払えばいい…。」

「つまり次のターンの戦闘でもなめくじで攻撃すれば…」

 

「そうか!まだミドリちゃんにも勝ち目はある!」

 

「がんばれー!」

 

「何を勘違いしていますの?」

「まだ、わたくしの『ゲーム開始時』は終了していませんわ」

 

「…!?」

 

「わたくしの残りの手札を全て公開!」

 

「初期手札7枚、全て同じカード…!?」

 

「えっと3点のライフドレインが7枚だから…21点…!?」

 

「それってつまり…初期ライフ20点よりも…!」

 

「これでアタシの敗けだと…?」

 

わー! わー!

 

「レイちゃん、あれ…」


「あれこそまさにTYPE/Zeroにおけるメタゲームの一角を担っていた最強候補デッキのひとつ」

60枚の《ドロスの大長》」

「私以外に組んでいる人なんて初めて見たよ」

 

「あっ…レイちゃんも組んでるんだ…(遠い目)」

 

「あなたが斜九寺(なめくじ)を倒したという決闘者ね? わたくし、長田(おさだ)と言いますの」
「さあ、あなた! わたくしとTYPE/ Zeroを…真の決闘をしましょう!」

 

「くっ!」

「TYPE/Zeroでの戦いを振られて応じないなんて私にはできない…!」
「受けて立つよ!」

 

決闘!

 

「先手後手はダイス目の大きい方が選択でいい?」

 

「よろしくてよ」

 

コロコロ… コロコロ…

 

「ダイスは私の勝ちね。後攻を選ぶわ」

 

「後攻…?」

「まあいいですの。ですがあなたのターンは訪れませんわ…」

「マリガンチェック…当然キープ」

 

 

「やってみないと…わからない…!」
「マリガンチェック…マリガンで…」

 

「ふん、得意の《不動の力線》を探しても無駄ですのよ」
「あれは場に並べるカードを制限するだけのカードですもの」

「場に出ることなく効果を使える《ドロスの大長》には関係ありませんわ」

 

「マリガン…よしっ! 3枚でキープ!」

 

「それでは始めましょうか。」

「ゲーム開始時に…ドロスの大長を7枚公開!」

「 これで終わりですの!」

 

「ゲーム開始時に! 私は手札からこのカードを公開する!」

 

(白いカード枠…まさか白の力線カード…?)

 

「ふっ。たしかに白の力線、《神聖の力線》はプレイヤーへの直接ダメージを妨害するための常套手段ですわ」
「しかし《ドロスの大長》によるライフ吸収は、その妨害をルール上かいくぐれる…」
「残念ですわね。わたくしの勝ちですわ!」

 

「私が公開するのは!《神の導き》!」

f:id:omamesensei:20181026231829p:plain

 

「なんですの、そのカード!? 初めて見るカードですの!?」


「このカードは私のライフを26点にしてゲームを始める…!」

 

「26点…!」

 

「あのデッキのコンボは21点のライフを奪う!」

「つまりレイのライフが5点残る…!」

 

「でもライフは5点だけ…」

「《ドロスの大長》を場に出して1回でも攻撃されたらレイちゃんの敗け…」

 

「いいえ、それはできませんわ…」
「わたくしのデッキは《ドロスの大長》だけを60枚入れたデッキ…」
「《ドロスの大長》を普通に場に出すマナすらありませんの…」

 

「ええ!?」

 

「いや、でもあの子はそうするしかないんだ!」

 

「もしデッキに《ドロスの大長》以外のカードを入れて、それを最初に引いてしまうと手札の大長は6枚…」

「18点吸収ではゲームに勝てない」

 

「このまま続ける?」

 

「いいえ、わたくしの負けは明らかですわね…」

「ここで投了します」

 

わー! わー!

 

「このわたくしが負けるなんて…」

 

「ハラハラする楽しい決闘だったよ。でもこんどはあなたと普通にマジックが遊びたいな…」

 

「…よくってよ!」

「次は  わたくしのメインデッキ【ノワール】でお相手しますわ!」

 

~~~

 

「まさか長田まで負けるとはな…」

 

「四天王も残り2人だけか…」

 

「次は俺が行かせてもらう。お前が行くとすべてが終わっちまうからな…」

 

「いいだろう…」

(レイ…はたして おまえは…いつまでTYPE/Zeroを楽しめるかな…?)

~~~

 

次回予告

60枚のドロスの大長の使い手も攻略したレイ!

しかし四天王はまだ2人いる。

果たしてレイはいつまでタイプ0を「楽しむ」ことができるのか…

終わりの時は確実に迫ってきている。

そしてついにデッキ全てが同じカードではないプレイヤーが…!

 

次回、超次元MTG対戦TYPE/Zero

第三話 「うねる右腕!3分の1の類人猿」

 

第3話はこちら↓

omamesensei2.hatenadiary.jp

 

【超次元MTG対戦】TYPE/Zero 第1話「なめくじの歩行速度よりも速く!」

 

MTGには数々のフォーマット(遊び方)が存在する。

新しいカードで常に新鮮なゲームを楽しめるスタンダード

比較的最近のカードのみを扱うイオニア

古いカードから最新の特殊セットのカードまで、幅広く使えるレガシー。

極一部のカードを除いて「一切の禁止カードがない」ヴィンテージ

 

だがMTGの構築フォーマットは奥が深く、他にもいろいろな構築制限がある。

レアリティの低いカードだけが使用可能なパウパー

約1円以下のカードだけしか使えないペニードレッドフル

味のある絵柄のカードが主役の旧枠モダン

電子ゲームに戦場を移したヒストリック

 

そんなMTGの多様な構築制限の中でも異色な『なんでもあり』のフォーマット。

「タイプ0」

これはその魔境に身を置く真の決闘者たちの戦いを描いた物語である…。

 

超次元MTG対戦 TYPE/Zero

 

注・タイプ0は公式サポートが存在しないフォーマットのため「何をタイプ0とするか」の厳密な定義がありません。
一般的に「どんなカードでも使用可能な無差別級試合」であるとされています。

この物語では、TYPE0/Zeroを「あらゆる定型のマジックのカードを使用可能で、同名カードの枚数制限のないルール」として定義しています。

 

超次元MTG対戦 TYPE/Zero

 第一話「なめくじの歩行速度よりも速く!」

 

「私の名前はレイ!」

「至って普通のMTGプレイヤー。今日も行きつけのカードショップでルールを守って楽しくマジック!」

 

「大変! レイちゃん!」

 

どうしたの? 私の親友のアオイちゃん?」

 

「お店に悪質なMTGプレイヤーが来てるの!」

 

「悪質なMTGプレイヤー? そんなの絶対許せないよ!」

 

 

いきつけのカードショップ

 

「へへっ。また勝っちまった!」

「この斜九寺(なめくじ)様に勝てるやつはいないようだな!」

「次にやるのは、お前か?」

 

「わ、私…あなたと同じフォーマットのデッキがなくて…」

 

「へへっ。安心しな。俺がやるフォーマットはTYPE/Zero

「デッキ構築に煩わしい制限のない理想のフォーマットさ」

「 TYPE/Zeroじゃあ どんなデッキでも『アリ』だ」

 

「じゃあ私のこのデッキも?」

 

「どんなデッキかは知らねーが、TYPE/Zeroはそれを受け入れるぜ」

 

(かかった!)

(このデッキは禁止改定で使えなくなったアタシのとっておき!)

(これならアイツに負けた他の子たちの仇をとれる!)

 

決闘!!

 

「先攻、後攻はじゃんけんでいいか?」

 

「それでいいよ」

 

じゃんけん、ポン!

 

「アタシの先行!」

「土地カード、《霊気拠点》から緑マナを払って《霊気との調和》!」

 

f:id:omamesensei:20181026204053p:plain

 

 

「あれは禁止カード《霊気との調和》!!」

 

「大会使用禁止の禁断のデッキ!」

 

「ずるいぞ、ミドリちゃん!」

 

「へんっ。なんでもありなんだろ?」

「これもTYPE/Zeroとやらじゃあ当然アリ、違うか?

 

「その通りだぜ。だがなあ…遅い! 遅すぎるぜ!」

 

「えっ!?」

 

「俺のターン! 行けっ! 7枚の《ロケット噴射ターボナメクジ》!!」

 

シュパ―――――ン!!!

 

Life/Zero

 

斜九寺 Win!

 

「一体、今のは…」

 

「まさか…あれはまさか伝説の…」
「【
60枚の《ロケット噴射ターボナメクジ》デッキ】 アルか…」

 

「知っているのか…ミンメイ!」

 

《ロケット噴射ターボナメクジ》

f:id:omamesensei:20181026132558j:plain

超速攻あなたはこれをプレイする1ターン前に、これで攻撃してもよい。

(あなたは自分の攻撃クリーチャー指定ステップに、手札からこのカードを、タップ状態で攻撃している状態で戦場に出してもよい。そうした場合、あなたの次のターン終了時に、あなたがこのカードのマナ・コストをそのターン中に支払っていないかぎり、あなたはゲームに敗北する)

 

「《ロケット噴射ターボなめくじ》は速攻を超える超速攻のカード」

「場に出したターンに直ぐ攻撃可能な速攻能力を上回る『コストを払って場に出すよりも1ターン早く攻撃できる』というジョークカード ネ…」

 

「ライフ20点のゲームでパワー3のナメクジが7体も攻撃してきたなら…」
「当然、1ターンで試合が終わるアル」
 
 「でもデッキに同じ名前のカードは4枚しか入れられないはずだろ!?」 
 
「それは一般的な現代MTGの話アル。」
「いにしえの『本当のマジック』では同名カードの使用枚数に制限がなかったと中国4千年の歴史に刻まれているネ。」
「20枚の《ブラックロータス》が使われていた時代もあった…と」
 
 
 「その通り。TYPE/Zeroフォーマットは そのころの『本当のマジック』に最新のカードを加えた遊びさ」
 
 「こんなことって…」
 
 「さあ、これでこの店の決闘者はみんな倒したわけだ!」
 
 「待ちなさい!私が相手になるわ!」
 
 「レイ、無茶だ!」
「アタシの禁止カード入りデッキでも手も足も出なかったんだぜ!」 
 
「あいつと戦えるデッキならあるわ!」
「いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていた!」
 
「勝負よ、斜九寺! こんな『つまらないゲーム』は私が終わらせる!」  
 「アンティ勝負よ!」アンティ…賭け試合のこと
 
ざわっ…
 
「アンティに賭けるのはカードだけでなく、この店でのType/Zeroプレイ権利!」
 
  「そのアンティ乗った!」
「俺のデッキに貴様が勝てたならもう二度とこの店でType/Zeroはやらねーと誓うぜ!」
 
  決闘!
 
  「先攻後攻はコイントスでいいかしら?」
 
 「構わねーぜ、俺は裏を宣言する」
 
 ピンっ!くるるる… ( 裏 ) 
 
「へへっ。俺様の先攻だー!」  
 
「じゃあマリガンチェックね」
マリガン…ゲーム開始時の手札が悪かった場合、手札を1枚減らして引き直すことができる。
 
  「へへっ。俺様のデッキは60枚全部同じカードなんだ。手札事故なんて起こらねーよ」 
 
「そう…。私は…マリガンするわ…」 
 
「どうやら命運尽きたみたいだな…」 
 
「それはどうかしら?…まだマリガンするわ」
 
 「ははは、好きなだけしていろ。負けるまでの時間稼ぎにはなるかもな」 
 
「マリガン終了。残り手札2枚でキープ」 
 
「少ない手札で俺に勝てるものか…俺のターンだ!」 
 
「待ちなさい…!」
この瞬間、手札から力線(りきせん)カードを公開!」
 
 「何ぃっ!?」
 
「あれは力線カード!」
「力線はゲーム開始時の手札に持っていればノーコストで場に出せる妨害カード アル!」
 
 
「だが、使用頻度の高い力線の中に俺のナメクジを妨害できるカードなどない…!」 
 
「これを見ても言えるかしら?」 
 
「青い力線…たしかカードをインスタントタイミングで使えるようにする…」
「いや、イラストが違う! なんだその力線は?」 
 
「あれは!《不同の力線》アル!」
 
「知っているのか!ミンメイ!?」
 
f:id:omamesensei:20181026132507j:plain 
 
「《不動の力戦》は全てのクリーチャーが伝説のクリーチャーになる力戦ネ!」
「レジェンドルールによって伝説のカードは場に同名カードを2枚以上出せない決まりアルよ!」 
 
「これであなたのデッキは、名実ともに伝説のナメクジデッキになったのよ…!」 
 
「俺のナメクジが1体しか場に残せなくなる…!」 
 
「ナメクジ1体じゃあ1ターンキルは成立しない…!」
 
 「さあ、あなたのターンよ!」 
 
「だが先攻プレイヤーはドローをしないんだ。先にライブラリアウト(山札切れ)で負けるのは後攻のお前の方だ!」
 
 「それはどうかな?」
「マリガンは手札を引き直す場合、手札が減っていく…」
「その手札はどこへ消えていくの? 
 
「そうか!マリガンをしたプレイヤーのデッキはその数だけ増える!」
 
「私はこれでターンエンド。」
「これであなたの敗け。さあ、サレンダーするなら…」
 
  「サレンダーは…しない!」
「行くぞ《ロケット噴射ターボナメクジ》!」
「超速攻で攻撃してターンエンドだ!」
 
 「…!?」
 
 俺は投了はしない主義だ…ゲームは決着までちゃんと遊ぶものさ」 
 
「…!」
「私のターン。ドローしてエンド」 
 
「俺様のターン。ドロー。そしてエンド。」
「ナメクジの超速攻コストが払えないのでナメクジの効果によりゲームに敗北する…」
 
「お前はつまらないと言ったが…」
「久しぶりにマジックで勝負ができた…」
「勝ちと負けがあるから勝負…それを思い出させてくれて、ありがとよ」 
 
「斜九寺(なめくじ)…!」 
 
「約束通り、俺はもうこの店では二度とMTGで遊ばないぜ…」
 
 「待ちなさい…アンティに賭けたのはType/Zeroのプレイ権だけよ」
 
 「…!」 
 
「今度は普通のデッキを持ってきて」
「普通のマジックならみんなも遊んでくれるはずだよ」 
 
「ありがとう…俺もお前らと…遊んでもいいんだな…」 
 
「もちろんだよ!」
 
「普通のデッキなら大歓迎さ」
 
  私はこんなにも素敵な仲間に囲まれている。
 素敵な仲間たちのいるショップをもう二度と荒らさせない…!
 
  ~~~~ 
「ナメクジがやられたようだな…」 
 
「ふん、奴はTYPE/Zero四天王の中でも最弱」 
 
「自分のカードによって敗北するとは、我ら四天王の面汚しね」
 
 「次は私が行く…あの力戦デッキでは私のデッキには勝てないもの…」 
 ~~~~

 次回予告 

60枚のナメクジを倒したレイのもとに新たなる資格が現れる。

また現れる60枚同じカードを入れたデッキを使うゴスロリに果たしてレイは勝つことができるのか…!

次回、超次元MTG対戦 TYPE/Zero

第二話『脅威の0ターンキル! 黒単の恐怖!』

次回もMTGの闇を覗いてもらおう。     

2話はこちら↓

omamesensei2.hatenadiary.jp