バーチャルVtuver豆猫さんの与太話

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新しい黒力線を考えてみよう!

新しい黒力線を考えてみよう!


豆猫さんのカードデザインシリーズ第4弾…?

たぶん4弾。

 


鉄は熱いうちに打て。
さて、本ブログでお馴染み「力線」エンチャントが夏の基本セット2020に収録されることが決まった。

 

赤の新しい力線の情報公開や、

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TYPE/Zeroでも使用された《神聖の力戦》の新イラスト再録も決まる中でふと気になる点がある。

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そう。黒の力線についてだ。

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力戦は過去に2度、5枚1組でセットに収録されている。
しかし、黒の力線は二度目の収録時に再録されている

 

力線はスタンダードでは各色1枚存在したが、
マジックのすべてのカードの中で力線が黒だけ少ない

 

これは開発部も直面した難問だ。

 

元々、1回目の力線5枚の中で最も好まれたのは黒の《虚空の力線》だった。
それは《虚空の力線》が「対策カード」だったからだ

 

「ゲームの開始時から場に出せる」という派手な効果をうまく発揮できるのは、
「特定の戦略に対してピンポイントで有効なもの」であるということを開発部は学んだ。

なので《虚空の力線》のような対策効果力線サイクルを作ることにした。
サイクル…1つのテーマに沿ったシリーズカードのこと

 

そして新しい力線のサイクルはすべて新規カードにするつもりで…
黒の力線のデザインに困った。

 

《虚空の力線》のような素晴らしい黒の力線を収録する何か良いアイデアはないものだろうか?
当時の力線サイクルが含まれた基本セット2011のリードデザイナー、Erik Lauerは決断した。

車輪の再発明は無価値だ」
it wasn't worth trying to reinvent the wheel

 

《虚空の力線》のような黒の力線が欲しいって?

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なら、最良の答えは《虚空の力線》だということになる。

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こうして黒の力線はイラスト違いで基本セット2011に再録ということになった。

 

基本セット2020でも「最良の白の力線である《神聖の力線》がイラスト違いで再録された。

なにせTYPE/Zeroでも使われるくらいだからね、これは非常に良いデザインだ。

それじゃあ黒もきっとまた再録だろう。


…そうだろうか?
スタンダードでは常に5枚の力線があることになるが…
マジック全体で見ると黒だけは力線が1枚のまま増えることはない…?
それは少しデザイン空間がもったいないし、なによりも「不公平」だ。

 

もしかして「今度こそは」とウィザーズが新しい黒の力線を開発してくれるんじゃあないか?

 

というわけで、本題に入ろう。


今回、基本セット2020で黒の力線が再録されようが新規で刷られようが関係ない。
ここは1つ、黒の力線について考えてみよう。

 

2019/06/18追記

無事、基本セット2020には《虚空の力線》がイラスト違いで再録される運びとなった。

https://twitter.com/CalebDMTG/status/1140796782835916800?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1140796782835916800&ref_url=http%3A%2F%2Fmtg-news.net%2Farchives%2F22944

でも、この記事ではそんなことを気にしてはいけない。

 

 

 

 


「制限は想像の母」だと Mark Rosewaterも言っている。

まずはデザインの制限を確認しよう。

 

・それは力線という名前のつくエンチャントである。
・それはゲーム開始時に手札にあれば戦場に出せる。
・それは何かの戦術への対策カードである
・それは黒である。

 

ここまではわかりやすい。
それから…
・それは対策すべき戦術以外のものまで不必要に対策するべきではない
・それは4マナのダブルシンボルエンチャントのはずだ。
・それはレアカードだ
・それは基本セット2020のスタンダードにふさわしい。

さあ、オリジナルの黒の力線を考えて見よう!

 

まず最初に守るべき制限はこの中で何だと思う?
それはもちろん…力線という名前のつくエンチャントだということだ。
ここを守らずに「新しい力線」だとは言えない。
では次に守るべきは?
「ゲーム開始時に手札にあれば戦場に出せる」という力線の特徴だ。
そうでなければ「力線のサイクル」だとは言えないからね。

 

その次は…「対策カードであること」だろうか?
答えは「ノー」だ。

 

それよりも黒らしくないといけない


良い対策カードのアイデアができてもそれが黒の役割に合わないなら、
それはカラーパイがふさわしくなるように他の色に割り振る必要がある。

 

となれば考えるべきは「黒には何ができるか」だろう。

 

1種色2種色という言葉を聞いたことはあるだろうか?


ああ、なくても別に悪いことではない。
これはルール用語でなくマジック開発部の用語なのでマジックのカードデザインについて積極的に調べない人が知らないのも無理はない。

 

例えば「青はドローの1種色である」という場合、それはすべての色の中で最も青がドローを得意とすることを表す。

 

「[色]は[効果]の1種色である」というのは、その効果を持つカードの中で一番多いのがその色のカードだということを指す。

 

2種色である場合、メインの色が他にあることになり…3種色に至っては特例でごく珍しい場合にのみ許容される。

 

さて、黒らしい力線を作るならそれはずばり「黒が1種色である」能力を持つべきだろう。

実際、《虚空の力線》「墓地からカードを追放する効果」は黒が1種色である。
*厳密な挙動を言えば虚空の力戦は墓地のカードを追放するわけではないが理念としては同じだろう。


さて、黒が1種色である能力は何があるだろう?

 

メカニズム的カラー・パイ 2017年版|読み物|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト


上記の公式デザイン記事には各色について1~3種色である能力が列挙されている。


黒の1種色の能力で「対策カードのエンチャント」っぽいものを抜き出してみよう…

「毎ターン、プレイヤー/対戦相手はクリーチャー1体を生け贄に捧げる。」
「-N/-N(敵軍全体、継続的)」
「墓地からカードを追放する」
「敗北しない」


ふむ。1つ目はどうだろう?

「毎ターン、プレイヤー/対戦相手はクリーチャー1体を生け贄に捧げる。」

 

特定の戦略に対して強いだろうか?
確かにこれは呪禁能力を対策する効果に思えるが、実際のところそうでないデッキに効きすぎる。
《虚空の力線》が素晴らしいのは、その効果は墓地やクリーチャーの死亡を「悪用」するデッキに対しての劇的な対策であると同時に、
「普通」のデッキに対してはそれほど強烈な影響を与えるわけではないという点にある。

毎ターンの生贄は多分強すぎるだろう。

 

では2つ目。

「-N/-N(敵軍全体、継続的)」

 

これはアグロデッキに対して抑止力になるが…少しばかり強烈すぎやしないだろうか?
仮に最小の-1/-1だとしても、余りにも多くのデッキが嫌がるだろう。

 

3つ目を見てみようか。

「墓地からカードを追放する」

ああ、つまり《虚空の力線》を再録するか、調整版を作ることになる。
我々はこの問題に敗れ去るという選択肢だ。
できれば最後の手段にしたいものだね。

 

4つ目は「敗北しない」
ああ、素晴らしい対策になるだろう。
ただし、このタイプの黒のカードには同時に敗北条件がつくことがある。

 

ふむ。4つ目は検討に値するのではないだろうか?

例えばこんなカードはどうだろう?

 

《強食の力線》 (2)(黒)(黒)
エンチャント
強食の力線があなたのゲーム開始時の手札にある場合、あなたはそれが戦場に出ている状態でゲームを始めてもよい。
あなたはゲームに敗北することはなく、あなたの対戦相手はゲームに勝利することはない。
あなたがライフを失うたび、あなたのライフの総量が0以下であるなら、あなたは強食の力戦を生贄に捧げる。
強食の力線が戦場を離れたとき、あなたはこのゲームに敗北する。

 

これはどんなデッキへの対策か?

特殊勝利、特殊敗北への対策だ。
スタンダードにも対戦相手を敗北させたり、特殊勝利をするカードがある。
それらに対して「正々堂々と勝負しろ」という要求を突き付けてライフのやり取りをするように呼びかけるものだ。

 

…非常に魅力的で「あったらいいな」と思えるカードではあるのだが…
これは果たして黒のカードだろうか?

 

第1種色の「敗北しない」というのは《リッチの熟達》のような「代償を伴う不死」を表す。

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正々堂々なんていう言葉を黒は好むだろうか?
(ああ、僕の個人的な感想を述べるなら彼らは正々堂々としたやつのことは好きだろう。勝手に自分に枷をかける連中だ。黒がそれに乗ってやる必要はないがね)

なんだか全体のフレーバーが少しだけ歪になってしまう。

 

ああ、そして何よりテキストが長く他の力線のようなテキストの美しさに欠ける。

もう少し何か良いデザインはないものだろうか?

 

ここで私が提案したいのは2つ目だ。

「-N/-N(敵軍全体、継続的)」

ただし、そのままでは少しばかり「対策」として広すぎる。
ではどうしようか?

 

《弱肉の力戦》 (2)(黒)(黒)
エンチャント
弱肉の力線があなたのゲーム開始時の手札にある場合、あなたはそれが戦場に出ている状態でゲームを始めてもよい。
クリーチャー・トークンは-1/-1の修整を受ける。

 

これは横並びのクリーチャー・トークン戦術へのメタカードである。

確認してみよう。

 

・それは何かの戦術への対策カードである
→1/1トークンを並べる戦術への対策だ。

・それは黒である。
→その通りだ。

・それは対策すべき戦術以外のものまで不必要に対策するべきではない。
トークンを使わないアグロデッキまで機能停止させることはない。

・それは4マナのダブルシンボルエンチャントのはずだ。
→そうなった。ただし少しばかり強化して-2/-1でもいいかもしれない。
ただ計算が少しだけ面倒になる。

・それはレアカードだ
→ふさわしいんじゃないか?

・それは基本セット2020のスタンダードにふさわしい。
→さて、その時点でのスタンダードにはタフネス1のトークンはいるだろうか?

1/1の吸血鬼や兵士やゴブリンやマーフォーク、苗木、霊気装置、鳥…スタンダードには多くの1/1トークンがいる。

基本セット2020より後の環境は?
基本セット2020にも1/1のエレメンタルトークンやスピリットトークンなどが既に公開されている。

 

すばらしい!

さらに嬉しいおまけとして、デザインしてから気づいたんだが
《弱者の力線》の裏返しでありそこも黒らしい。

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記事を書く時点ではそれがわかったあとなのでせっかくだから名前を似せてみた。

 

もちろんこれは「予想」でなく「デザイン問題への挑戦」だ。

(だから虚空の力線再録が決まったからといってこの記事の価値は失われない)

 

トークン対策には既に青の《不同の力戦》があるという見方もできるだろう。

つまり、これではまだ合格点にならないという考えだ…
(ただしこちらは次々にそれを生贄に捧げるなどのデッキにはあまり効果がないので住み分けできるだろう)

 

まだまだ他の答えを考える価値がある問題だろう?

 

他にも何かデザイン空間はあるだろうか?

例えば黒はカードの上に載ったカウンターを取り除く効果も1種色である。
そこからの拡張でカウンターの載るカードは1つ少ないカウンターが載るという形でプレインズウォーカーの忠誠度に邪魔できるかもしれない。

(やりすぎると白のカラーパイに踏み出すので注意がいるだろう)

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さあ、君ならばどんな「黒の力線」を思いつくだろうか?