【#MTG】負けてない…Mark Rosewaterは、負けてない…!【テーロス還魂記】
「木のように高い巨人がカラフィに
貢物を求めて立ちふさがった。
狐のように狡猾なカラフィの
怪しい言葉が巨人の感覚を狂わせた……」
ーー「カラフェイア」
マローが書く開発者コラム「Making Magic-マジック開発秘話-」が更新された。
以前の記事で触れたバニラのクリーチャー・エンチャントに関する話があったので改めて扱おう。
以前の記事「マローの敗北」のあらすじ。
「マローはバニラのクリーチャー・エンチャント収録をめぐる争いで敗北し、未来予知でバニラのクリーチャー・エンチャントが収録された。彼がバニラのクリーチャー・エンチャント反対派だという根拠をいくつか提示した。しかし、テーロス還魂記ではバニラのクリーチャー・エンチャントが収録される運びとなった。【悲報】マロー、再びの敗北」
さて、公式で投稿されたマローのコラムに興味深い内容があったので引用しよう。
クリーチャー・エンチャントがエンチャントであることを正当化したかったので、私はクリーチャー・エンチャントはクリーチャー・トークンでない限りエンチャントらしい能力を持たなければならないという規則を定めた。
あのブロックで得た教訓の1つが、この規則は厳しすぎたということである。
今は、フレイバー以外にアーティファクトらしさを持たない、有色のアーティファクト・クリーチャーを作っている。ゲームプレイを向上させるために必要な場合には、これと同じことをクリーチャー・エンチャントでもできるのだ。
可能な場合にはエンチャントらしい一文を追加しようとしているが、今回はそれを義務にはしなかった。
その結果、コモンにはバニラのクリーチャー・エンチャントが見受けられることになった。(信心を溜めやすくするため、コストに色マナ2点が必要になっていることが多い。)
引用:死の扉にて その2|読み物|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト
ここで出てきた「アーティファクトらしさを持たない、有色のアーティファクト・クリーチャー」というものから、バニラのクリーチャー・エンチャントについて話を掘り下げてみよう。
もともとアーティファクト・クリーチャーはほとんどが「無色カード」だった。
どの色のデッキでも、必要があればアーティファクトの力を借りて自分の色の欠点を克服できる。
青は基本的にダメージ呪文を扱えないが、ダメージを与えるアーティファクトがそれを可能にする。
同様にクリーチャーが必要になればデッキにアーティファクト・クリーチャーを入れることができる。
緑は飛行を嫌う色なので緑の飛行クリーチャーはあまり多くないが、戦略上どうしても緑のデッキが飛行クリーチャーを欲しがる場合、アーティファクトの鳥をデッキに入れることができる。
アーティファクトらしい効果を持たないアーティファクト・クリーチャーが存在したのはこういう出張性こそが、アーティファクトらしさとして認められていたからだ。
極一部で色を持つアーティファクトと言うものは存在したが、それらはセット固有のメカニズムに過ぎなかった。
しかし、昨今のマジックでは色マナをコストに要求するアーティファクトは落葉樹メカニズムとして扱われる。
*常盤木メカニズム…飛行や速攻のような「どのパックにも必ず存在する能力」
*落葉樹メカニズム…常盤木メカニズムに準ずる「毎回使うわけではないが、必要があればいつでも使える」カードのメカニズム。
*セット固有のメカニズム… そのパックを特徴づけるテーマとなるメカニズム。その世界らしさを感じさせプレイヤーを興奮させる部分ではあるが、世界観との結びつきが強すぎると他のパックには収録しづらいという見方もできる。BushidoやNinjutsuなどで顕著。
結果的に「アーティファクトらしい能力」も「アーティファクトらしい無色性(=出張性)」も持たない有色アーティファクト・クリーチャーと言うのが出てきている。
このカードのアーティファクトらしさはどこにあるのだろう?
答えはフレイバー要素だ。
アーティファクトが魔導具である、つまり金属的な性質や機械的な性質を持つということがアーティファクトらしさになっているのだ。
《通路の監視者》が何故アーティファクト・クリーチャーなのか?
それはこれが防犯ロボットだからだ。
テーロスのバニラ・クリーチャー・エンチャントもそれと同じだ。
マジックの歴史が重なる中でテーロスを4度に渡って扱った。
この繰り返しによって「テーロスではエンチャントが息づいている」ということが定着し、今回の再訪ではついにエンチャント・クリーチャーが「テーロスのニクス生まれである」というそれだけで生けるエンチャントらしいと認められるようになったのだ。
ただ、バニラのエンチャント・クリーチャーが落葉樹であるかは明言されていない。
思うに、あくまでもテーロスと言う次元の世界観に紐づいたエンチャントらしさであるため、セット固有のメカニズムの扱いとなるだろう。
今後も基本的にはテーロス以外で見かけることはない…と私は考えている。
なんにせよ、今回分かったのはマローは負けていなかった、ということだ。
負けてない…天堂マローは、負けてない…!
バニラのクリーチャー・エンチャントはマローの掲げる理想が現場のデザイナーとの対立に負けて生まれたものではなかった。
自分で定めたルールを盲信せず、妥当であったかを改めて考え、時に柔軟に変革していく。そうした変化の中で生まれたものであった。
軽率に「【悲報】マロー、敗北」などとバニラのクリーチャー・エンチャントを茶化していた自分を反省してリードデザイナー、Mark Rosewaterに敬意を評そう。
Mark Rosewaterは負けてない。
元記事:マローの敗北
その他テーロス還魂記