来年発売の『テーロス還魂記』と言うとなんだか遠い先のことのように感じるけれど暦はもう12月。
来年1月に発売する『テーロス還魂記』はもう1ヵ月後に迫っている!
カードのプレビューも開始され今はとっても楽しい期間だね。
特にプレリリースは素敵なイベントだ。
発売前に一足先に、みんなでパックを作り即興でデッキを組み上げる。
カード資産にかけたお金の有利不利はなく、パック運と構築力そしてプレイの技術を競い合い…
まあ競うのは賞品のためなんだけど、それ以上に遊んだことのない新メカニズムに心を躍らせることで新鮮な体験が得られるイベントだ。
テーロスには魅力的なエンチャント・カードがたくさんある。
そして神や怪物と戦う英雄たちがいる!
そんなテーロスにぴったりのカードが英雄譚だ!
英雄譚の初登場はテーロスではないけど、この『英雄の物語を描くエンチャント』はきっとテーロスで再録されるメカニズムだと思ったプレイヤーは少なくないだろう。
1ターンごとに物語が進んで効果を発揮するエンチャント。それが英雄譚だ。
今の時点で公式から公開されている英雄譚が…
《アクロス戦争》だ!
アクロスと言うのはテーロスにある都市国家で、この地での戦いはアクロスの武勇として語り継がれ、城門前でキテオン・イオラが取った戦術は~…みたいな蘊蓄を語りだすと長くなるのでカット。
(そのエピソード自体は怪物との戦いなので人間同士の争いであるアクロス戦争とは関係ないしね)
まあでもアクロスで「戦い」と言えば今までのほとんどのカードはアクロス人vs神が送り込んでくる怪物の構図だったので人間同士が戦っているシーンは珍しい。神が生まれる前の伝説だったりしたら面白いなあ。ってほら! 止めないとまた語り始めたぞ、こいつ。
フレーバーの話がいつまでも続くのはそのセットの物語が芳醇な証だけど、そろそろ本題に入ろう。
この《アクロス戦争》の効果を君は正しく理解しているだろうか?
プレリリースでうっかり間違えたり、相手の間違いで不利益を被らないようにしっかり予習しておこう。
まずはプレリリースでありそうなシチュエーションから。
君が先手で相手が後攻だ。
相手の後攻3ターン目に相手は《ニクス生まれの狩猟者》を呼び出した。
返す君の先攻4ターン目に満を持して君は《アクロス戦争》をプレイした。
さて、じゃあここで1問目。
Q1.アクロス戦争が場に出たことで直ぐに《ニクス生まれの狩猟者》を奪えるかな?
それとも、狩猟者を奪うのは次のターンになる?
A1.このターン、すぐにケンタウルスを奪える。
英雄譚の上に章カウンターが置かれたら、置いた時点でのカウンター数に等しい章の効果が誘発する。
英雄譚にカウンターがのるのは「戦場に出る時とドローステップの後」なので、
戦場に出す時には1つ置かれたた状態で出て、戦場に出た時点で第1章が誘発する。
だから場に出てすぐにケンタウルスを奪うことができる。
それじゃあ次の問題だ。
Q2.君はそのまま戦闘フェイズまで進んで、奪った狩猟者で攻撃をしかけた。
すると相手は君に「ちょっと待って」と言ってジャッジであるカードショップの店員さんを呼んだ。
いったい何がいけなかったんだろう?
A2.そのケンタウルスは召喚酔いをしているので攻撃できない。
アクロス戦争のように相手のクリーチャーを奪う赤のカードを見てみよう。
《反逆の行動》
テキストよく読んでみると「それは速攻を得る」と書いてある。
速攻を持つクリーチャーは召喚酔いを無視できる!
だから《反逆の行動》の場合は攻撃することができたんだ。
ところが《アクロス戦争》にはそうは書いてないよね。
君は召喚酔いしているケンタウルスに攻撃させることはできない。
次のターンになれば君はケンタウルスで攻撃することができる。
Q3.じゃあ似たような例で奪ったのが速攻持ちの《敵意あるミノタウルス》なら攻撃できる?
A3.もちろんできる。
速攻を持っていれば召喚酔いを無視できるからね!
何も問題はないよ。
必ずしも奪うカード自身で速攻を与える必要はないんだ。
Q4.じゃあ相手が《ニクス生まれの狩猟者》を召喚し、《松明の急使》で速攻を付けて殴ってきた。
返しのターンに君は《ニクス生まれの狩猟者》を《アクロス戦争》で奪った。こいつでそのまま攻撃できるかな?
A4.できない。
ここは若干のひっかけ問題だ。
《アクロス戦争》の効果を読んで欲しい。
《反逆の行動》のように「アンタップする」とは書いていない。
攻撃しているのだからその狩猟者はタップされているよね?
タップ状態のままでは攻撃できないのは初歩的なルールだね。
Q5.じゃあもしも4の状況で《ニクス生まれの狩猟者》がアンタップ状態だとしよう。(攻撃しないひどいプレイミスだ。あるいは警戒も与えて攻撃したのかも)
これなら攻撃できるかな?
A5.できない。
速攻という能力は召喚酔いを解除したり、召喚酔いにかからなくするわけではない。
あくまで「速攻を持つ間は召喚酔いを無視できる」んだ。
召喚酔いしているクリーチャーに1ターンの間だけ速攻を与えたとしても、
速攻を失えば召喚酔いの影響からは逃れられないんだ。
よくできました!
間違えた君はこの機会に覚えれば大丈夫!
これで安心して《アクロス戦争》と召喚酔いの関係はバッチリだね?
召喚酔いのことさえ把握しておけば、実際のプレイで困ることはないだろう。
それじゃあ最終問題だ!
Q6.
君が先行で相手が後攻だ。
対戦相手が2ターン目に《灰色熊》を召喚した。
相手は3ターン目に《灰色熊》で攻撃しなかった。
そして返しの君の4ターン目に《アクロス戦争》を唱えた。
君はアンタップ状態で召喚酔いの解けた速攻を持たない《灰色熊》を対象に取った。
特に妨害はなく《灰色熊》は君に従うことになった。
さあ、戦闘だ!
君は《灰色熊》で攻撃できるかな?
A6.できない。
ここまで読んでくれた君はバッチリ正解できたよね?
おめでとう!
できなかった人は一体どこで間違えたんだろう?
ここでちょっと「召喚酔い」について詳しくなっておこう。
恐らくマジックの初歩的なルール「召喚酔い」について大きく勘違いをしている。
召喚酔いは「場に出た時にかかるもの」ではないんだ!
MTGの総合ルールにはこう書いてある。
総合ルール302.6
クリーチャーの起動型能力のうち起動コストにタップ・シンボルやアンタップ・シンボルを含むものは、そのコントローラーがそのクリーチャーを自分のターン開始時から続けてコントロールしていない限り、起動できない。
また、そのコントローラーが自分のターン開始時から続けてコントロールしていない限り、そのクリーチャーでは攻撃できない。
このルールは非公式に「召喚酔い」ルールと呼ばれる。
そう。
召喚酔いと「場に出たターン」は実は直接的な関係がないんだ。
召喚酔いかどうかを判断するのは「ターン開始時のコントロール」なんだ。
もし召喚酔いしていないクリーチャーを《アクロス戦争》で奪ったとしたら…
言ってみればそれは奪ったことで再び「召喚酔いにかかる」んだ。
ここ、恐らくプレリリースイベントで間違えやすいポイントだ。
うっかり攻撃したりしないように、あるいは相手がうっかり攻撃した時にちゃんと正しいルールを教えられるようにしよう!
(たぶんジャッジを読んで説明してもらうのが一番こじれないとは思うけど)
「召喚酔いは場に出たターンに攻撃できない」とだけルールを覚えていると陥りやすい罠なので気を付けよう。
最期に宿題。
Q6で《灰色熊》ではなく
相手の《ザル=ターのゴブリン》だとしたらどうなるだろう?
ただし、暴動の効果で相手は速攻を選んだものとする。
速攻と召喚酔いに関しては以前にも扱っているので良ければそちらも…
『テーロス還魂記』関連記事