『ゼンディカーの夜明け』のプレビュー期間が近づいているね。
MTGの新パック発売が近づくとマローことMark Rosewater(MTGの開発部主席デザイナー)が自身のブログに新パックについてのティザー(思わせぶりな予告)を公開する。
このブログでも何度かそう言った予告からパックの内容を予想する遊びを行っている。
↓イコリアの時のティザーからメカニズムを予想した記事
↓テーロス還魂記のプレビューカードからストーリーを予想した記事
それでは『ゼンディカーの夜明け』でもMaro’s Zendikar Rising Teaserからストーリーの内容や匂わされているカードを予想してみよう。
今回の記事で扱うのは主に次の2つ。
• A white creature that can make an opponent lose the game simply by attacking them no matter how much life they have
here are some creature type lines you’ll see:
• Mouse
• Leviathan Crab
• Shapeshifter Rogue
• Demon Cleric
• Wurm Horror
• Hydra Horror
• Cat Horror
• Angel Wizard
引用:https://markrosewater.tumblr.com/post/627643477075820544/maros-zendikar-rising-teaser
一番最初のティザーと一番最後のティザーを見てみよう。
まずは一番最初のティザーだ。
• A white creature that can make an opponent lose the game simply by attacking them no matter how much life they have
私訳:
対戦相手を敗北させることができる白のクリーチャー。
それも相手のライフが何点残っているかに関係なく、ただ攻撃するだけでいい。
ふうむ。これはかなり奇妙なカードに思える。
何が奇妙かと言えば「対戦相手を敗北させる」という派手な能力だ。
しかしこれまでに白で敗北条件を扱ったカードは1枚も…
いや、「対戦相手の敗北」を扱ったカードは1枚もない。
白の敗北関連カードは基本的に「あなたは通常の敗北をしなくなる代わりに、別の条件で敗北する」という形で扱われる。
言ってみれば白のライフ回復の概念を拡張して「追加のライフ」を得る効果だと言える。
しかし予告されているカードはどちらかと言えば「勝利条件カード」に近いと言える。
なんらかの条件を達成した状態で攻撃することで、相手のライフ量に関係なく即死させることができる能力のはずなのだから。
こう言った「即死させる能力」は通常、非常に恐ろしいものを表現する黒のカードに現れる。
ふむ。ここには奇妙なねじれが存在する。
一体、どんなカードなのだろう?
この白のクリーチャーは2人対戦では実質的に「特殊勝利」として働く。
対戦相手のライフに関係なく特殊勝利できるカード…
ん?
何か少しひっかかるな。
ゼンディカーにはこれまで対戦相手のライフに関係なく特殊勝利できる白のクリーチャーがいたじゃないか!
《フェリダーの君主》はゲームの勝利条件を「相手のライフをなくす」ではなく「あなたがたくさんライフを得る」に変換するカードだ。
白らしく殺しはできるだけ避けたい(しないとはいってない)というスタンスを表明している。
そんな人気のクリーチャーであり、これまでゼンディカーを訪れるブロックがあれば毎ブロック収録されていると言えばこのクリーチャーを知らない人にも人気が伝わることだろう。
そして《フェリダーの君主》は、奇しくも初代ゼンディカーのティザーとして予告されたカードでもあるんだ。
・A creature whose rules text includes the phrase "you win the game."
引用:https://magic.wizards.com/en/articles/archive/making-magic/planechasing-your-dream-2009-08-31
私訳:・ルールテキストに「あなたはこのゲームに勝利する」が含まれたクリーチャー
このフェリダーの君主に「なんらかの変化」が起きた結果、白らしい勝利効果から恐ろし気な敗北条件へとリメイクされたカードが『ゼンディカーの夜明け』に収録されるんじゃないかな。
《フェリダーの君主》は統率者戦で非常に人気が高いカードだ。
そのリメイクも統率者戦を意識したカードになるだろう。
ライフが40点(あるいは開始時のライフから何点か高いライフを持つこと)を条件に、攻撃された対戦相手を敗北させる「恐ろし気なフェリダーの君主」になるんじゃないかな。
この勝利から敗北への変化には2つの意図があると思う。
1つ目の意図は既にウィザーズが記事にしているこちらを見てほしい。
青の「実質、特殊勝利」である敗北条件カードだ。
この能力は、多人数戦を考慮して、コントローラーを勝利させるものではなく対戦相手を負けさせるものになっている。
2人戦ではその2つに違いはないが、多人数戦の場合は単に周り全員を一掃してしまうのではないほうがうまくプレイできるのだ。
こうすることで、もう少し戦略的になる必要と、プレイヤー1人を負けさせることで政治的関係がどうなるかを前もって考える必要が出てくるのである。
アテムシスが特殊勝利だった場合、それは全ての対戦相手にとっての脅威となる。
当然、いくつもの妨害が飛んでくることだろう。
しかし、誰かひとりだけを倒す能力である場合、「政治的関係」が立ち現れる。
統率者戦においてデッキの相性がグ―・チョキ・パーの関係にある3人にアテムシスのプレイヤーを加えた4人が遊んでいるとする。
もし、アテムシスがチョキを狙う場合パーはこう考えるだろう。
「自分にとって不利であるチョキがいなくなるのは歓迎できる」
仮に除去カードを握っていても「チョキを倒すまで」は一旦アテムシスを放置するに違いない。
しかしチョキより先にパーを殴ろうとすれば直ちに除去呪文を唱えるだろう。
ウィザーズはこうした「政治的関係」を統率者に組み込みたいと考えているので、
フェリダーもその方針に沿ったリメイクをすることにしたに違いない。
2つ目の意図は…勝利よりも敗北の方が恐ろし気に映るからだろう。
勝利というフレーバーはハッピーエンドのイメージがついたものもいくつか存在する。
一方で敗北は…まあ、穏当なものにはならないだろうね。
なぜフェリダーを恐ろしくするのだろう。
猫をテーマにした統率者デッキで《フェリダーの君主》を使うプレイヤーも少なくない。
こんな愛らしく獰猛な猫ちゃんの何がそんなに怖いのかな?
それはティザーのもう1つの項目に関係している。
ティザーにはいくつかの項目があったけど一番最後に「ゼンディカーの夜明けに収録されるクリーチャー・タイプ」についていくつか例示されている。
• Mouse/ハツカネズミ
• Leviathan Crab / リバイアサン・蟹
• Shapeshifter Rogue / シェイプシフター・ならず者
• Demon Cleric / デーモン・クレリック
• Wurm Horror / ワーム・ホラー
• Hydra Horror / ハイドラ・ホラー
• Cat Horror / 猫・ホラー
• Angel Wizard/天使・ウィザード
どれも目を引く組み合わせだがホラー多すぎやしないか?
ここに出ていないホラーも恐らく登場するだろうし、ウィザーズはホラーをゼンディカーでそれなりの規模で扱うつもりなんだろう。
ゼンディカーで?
ホラーを?
ゼンディカーにはもともとホラー・クリーチャーは1枚しかないのに?
一体ゼンディカーに何が起こったんだ!!…心当たりしかないね。
ご存じない方のためにゼンディカーのこれまでをざっくりと紹介しよう。
ここは危険と冒険の次元、ゼンディカー!
豊富なマナが溢れ、躍動する土地そのものがエレメンタルとなって襲い掛かってくるスリリングな世界!
しかし、宝やマナを求めて原住民やプレインズウォーカーたちがこの世界で冒険をする。
いわゆるファイター(戦士)やスカウト・シーフ(ならず者)、僧侶(クレリック)、魔法使い(ウィザード)と言ったいわゆる「冒険者のパーティ」たちが謎の古代遺跡や面晶体という謎めいた石の秘密を探り、RPGのような旅をするのだ。
(この要素に再び光を当てているっぽいのがホラー以外の種族からも伝わってくるね)
そんな古代遺跡に神として祀られた3人の神。
その封印が解かれた時、世界は一変する。
それらは異世界からの強大な侵略者であり面晶体によって抑え込まれていた怪物、エルドラージであった!
長い時の中で伝承が誤って伝えられ神格化されたエルドラージの巨人は実際には神でもなんでもない。
善悪すら超えた破壊の化身である。
ゼンディカーの大地が荒々しく動くのは「異物」であるエルドラージをその中に押し込まれていた次元そのものの怒り、そして悲鳴だったのだ。
そして前回のゼンディカーの話ではニッサ・ジェイス・チャンドラ・ギデオンの活躍で、ついにこのエルドラージをぶっ倒すことに成功する。
もうこの次元、語ることほとんど残ってなくない?
しかし、エルドラージによって破壊された傷跡はいまだにゼンディカーに残る。
ゼンディカーにある「セジーリ」「バーラ・ゲド」と言った土地はエルドラージによって壊滅させられている。
特にヤロクというエレメンタルのことは抑えておくべきだろう。
ゼンディカーでは土地そのものがあらぶり、躍動するマナの化身となりエレメンタルが現れる。
エルドラージによって冒涜されたバーラ・ゲドの地も例外ではなく、荒廃した大陸からはホラーであるエレメンタルが生まれた。
こうしたエルドラージによる荒廃の傷跡を残した現地生物、あるいは冒涜されしエレメンタルたちによって影響を受けた生き物がホラーとして荒ぶっているのではないか?
(RPG的な要素とみれば魔王軍のモンスターっぽさがありますね)
ホラークリーチャーとして紹介されている猫・ホラー…
猫…フェリダー…恐ろし気な…
つながったな!
今回のまとめ
私がティザーから予想する『ゼンディカーの夜明け』はこんな感じ。
・ゼンディカーの夜明けはエルドラージによって壊滅した土地を「取り戻す」ために危険な地を冒険する話になる。
・「敵」の一部はホラーと化した現住生物。ボスはヤロク。
・「相手を敗北させる白のクリーチャー」の正体はフェリダーの君主のリメイクで恐らくホラー堕ちしている。
この予想が当たっているのか、これから先に待つ『ゼンディカーの夜明け』の公式スポイラーを心待ちにしよう!