さあ、マジックの新パック『イコリア 巨獣の住処』の足音が近づいてきているぞ!
MTGの首席デザイナー、マローが『Maro’s Ikoria Teaser』と題して、
イコリアに収録されるカードやメカニズムのヒントを公表した。
どれも気になる情報がたくさんあってわくわくするね。
その中でも、僕が真っ先に注目したのはこの予告だ!
• Twelve different types of counters
訳『・異なる12種類のカウンター』
カウンターが12種類も!?
マジックにおいてcounterと言えば「打消し」か「カードに置く目印」のことだ。
文脈的に、12種類はカードに置く目印のことだろう。
(マローはジョークを入れたがるのでもしかすると2つくらいは打消し呪文かもしれないけどね)
さて、12種類。
なんて豊富なカウンターの数なんだろう。
多くのマジック・プレイヤーはカウンターを表すのにダイス(さいころ)を利用する。
例えば【ダイス・フォージ】という銀色の枠が輝くデッキがあるけれど、
《古きバスバーグ》のようにダイスをたくさん振る銀枠のデッキではなく、
大量のカウンターを乗せるアーティファクトデッキのことを指している。
【ダイス・フォージ】系のデッキでは複数種類のカウンターを大量に使うことになる。
「その《霊体のヤギ角》に乗ってる6面ダイスは何だい?」
これは蓄積カウンターさ。
こっちの《歩行バリスタ》の20面体ダイスは+1/+1カウンターで、
《ウルザの後継、カーン》に乗っている10面体は忠誠カウンター。
ああ、追放領域のカードの上にあるおはじきはカーンが乗せた銀カウンターだね。
土地? 《爆発域》の上に乗せてある6面体は蓄積カウンターだよ。
カウンターを表すマーカーが並び、戦場はごちゃごちゃしている。
(こういうの、僕は大好きだけどね)
しかし、12種類には全然及ばない。
新パック、イコリアのカウンターのなんと多いことか。
こんなカウンターだらけのパックで遊んだりしたら、どのダイスが何カウンターを表しているか分からずに頭がパンクしてしまうんじゃないだろうか?
あーあ、僕は開発班がそういうところのプレイアビリティに気をつかっているんだと思ってたけど飛んだ思い違いだったみたいだ。
確かに「かつてないほどカウンターの種類が多いパック!」というのは興奮する要素にも思える。でも実際にプレイして複雑すぎたら、プレイヤーはすぐに見切りをつけるだろう。
マジックはもうおしまいですね。
などと結論を急いではいけない。
テストプレイをすれば一発で分かるような不便さに、開発班が気付かないわけがない。
となれば、これはプレイヤーへのある種の挑戦だろう。
「12種類のカウンターを使うようなセットって、な~んだ?」
ふむ。私のブログでは今までにも新セットのメカニズムの挙動などについて話題にしてきた。
カウンターをたくさん使うようなメカニズム、そしてプレイの複雑さを下げずに実装できるような方法があるのか、考えていこう!
基本的なカウンター
カウンターが12種類あるといっても、そのすべてが固有のメカニズムのためのものではないだろう。
マジックのセットでほぼ毎回、必ず採用されるカウンターが2つある。
+1/+1カウンターだ。
これは文字通り、乗っているクリーチャーのパワー/タフネスを+1するカウンターだ。
それからイコリアの宣伝画像には巨大なクリーチャーと、ビビアン・リードが描かれている。
ビビアンはプレインズウォーカ―だ。テキストにカウンターとは書いていないが、
プレインズウォーカーは場に出た時に忠誠カウンターを乗せる効果を持っている。
12種類のうち2つは+1/+1カウンターと忠誠カウンターで決まりだろう。
おや? マローがBlogatogになにかを追記しているぞ。
EDIT: Oops, there’s actually thirteen different type of counters. I searched for counter and planeswalkers don’t actually say “counter” on them. So that’s twelve not counting loyalty counters. Sorry.
訳『 編集:おっと、実際には13種のカウンターがあった。カウンターで検索したけどプレインズウォーカ―たちには「カウンター」とは書いてなかったよ。だから12種類には忠誠カウンターは含んでなかったんだ。すまない。』
ふむ。13種類から忠誠カウンターと+1/+1カウンターを除くと、
カウンターは残り11種類ということになる。
両手で数え切れないほどのカウンター、これらを使うメカニズムはどんなものになるだろうか?
実は僕にはひとつピンと来た答えがある。
それは『飛行カウンター』だ。
「そんなカウンター、聞いたことない!」って思うプレイヤーが多数派だろう。
なにせ、そんな名前のカウンターは日本語のカードに存在しないからね。
だけど英語版には”Flying Counter”が存在する。
そう、R&Dプレイテストカードだ!
以前の記事でR&Dプレイテストカードについて扱ったので、
R&Dプレイテストカードについて知らない人はそちらを参考にしてほしい。
↓
さて、ではイコリアのメカニズムの元になった(と僕が予想する)プレイテストカードとはどんなカードか?
これがそのカード、《Recycla-Bird》
訳『Recycla-Birdが死亡した時、あなたがコントロールしているクリーチャー1体を対象とし、その上に飛行カウンターを1つ置く。』
そのままのルールで処理すると、このカードは何もしない。
ほとんどのカウンターはカウンター自体に意味がない。
《成金、グヮファ・ハジード》と賄賂カウンターを例に見てみよう。
彼は対戦相手のクリーチャーに賄賂カウンターを乗せる。
そして賄賂カウンターがのっている限り、そのクリーチャーは戦闘に参加できなくなる。
しかし、これは賄賂カウンターそのものに特殊な効果があるわけではない。
賄賂カウンターはただの目印で、《成金、グヮファ・ハジード》が自身の効果で止めているだけにすぎない。
(なので彼が死亡すると、賄賂を受けているクリーチャーは攻撃できるようになる)
では先ほどの《Recycla-Bird》と飛行カウンターの関係を見てみよう。
このカードには「飛行カウンターを持つクリーチャーは飛行を得る」とは書いていない。
そもそも書いてあったとしても、飛行カウンターを乗せるのは死亡した時なので意味がない。
しかしそれはあくまで現在のルールの話だ。
プレイテストカードには、実装時にルールが調整されることを想定して作られたものが多く存在する。
このカードのリリースノートを見てみよう。
A permanent with a keyword counter on it gains that keyword.
訳『キーワード・カウンターがのっているパーマネントはそのキーワードを持つ。』
つまりイコリアのカウンター、残り11種類の正体はキーワード・カウンターなんじゃないだろうか?
+1/+1カウンターと-1/-1カウンターが似て非なるカウンターなのと同じように、イコリアには飛行カウンターや先制攻撃カウンターなどと言った、キーワード能力を与える違う種類のカウンターがたくさん存在するんじゃないだろうか?
現在、常盤木キーワード能力(ほぼ毎セット存在する基本的な効果)は16種類。
このうち、戦場のクリーチャーに持たせても上手く機能しない能力が3種類。
(装備・エンチャントなどの「つける能力」と、戦場に出すタイミングを変える瞬速)
残る能力にもいくつか扱いの難しいものがある。
例えば「攻撃することができない」を意味するデメリット能力の防衛。
場に出たターンにしか機能しないため継続的なカウンターで表す必要の薄い速攻。
これらを除くと残りはちょうど11種類。
おや?
これはもしかして正解か?
だが少し待ってほしい。
Blogatogの記事をもう一度見てみるとカウンターに関して言及する項目が他にもある。
・A card with the text “remove eight foreshadow counters”
訳『「foreshadowカウンター」を8個取り除くと書かれたカードが1枚ある』
ふむ。なにやらもう1種類カウンターがあるようだ。
考えられる可能性は2つ。
・キーワード能力のカウンターは11よりも少ない。
・キーワードカウンターのルール的な呼び名がforeshadowカウンターである。
『foreshadow』は「あらかじめ示しておく」という意味の動詞である。
示しておくカウンター?
「このクリーチャーは飛行を持っていますよ!」とあらかじめ示しておくカウンターという意味の可能性があるな。
イコリアについて「君だけの怪獣をカスタマイズして作れる」ようなことが予告で言われていた気がするけど、それならまさにキーワード能力カウンターは うってつけのメカニズムになるだろう。
接死を持つクリーチャーに先制攻撃をつけてみたいと思ったことはあるかい?
あるいはトランプルをつけようと考えたことは?
もちろん、その逆でもいい。
あるいはトランプルを持ったクリーチャーに二段攻撃をつけるのもいい。
3つ組み合わせるなら何が良いだろう。
僕なら破壊不能と警戒と接死を試してみたいなあ。
このメカニズム予想はそう外れていないだろうと思う一方で、
根本的な問題は解決していないことに気づいただろうか?
「そのクリーチャーに乗ってる6面ダイスは何だい?」
この6面ダイスは飛行カウンターで、こっちの4面体は接死カウンター。
20面ダイスがトランプルカウンターで、10面ダイスは呪禁カウンターだよ?
見づらいかもしれないけど、赤いおはじきが先制攻撃カウンターで白いおはじきが二段攻撃カウンターさ。
おいおいおい、こんなゲームはとてもじゃないがやってられないよ。
大丈夫、この問題の解決策は分かっている。
トークンカードだ。
通常、マジックのパックからはトークンカードが1枚出てくる。
これにキーワードを書いて置けば、目印として機能するだろう。
(飛行カウンターを2つ持っても意味がないので、同名のキーワードカウンターが乗ったら1つを残して他を取り除くルールも設定してあるかもしれない)
とはいえ、トークンカード1枚につき能力1つではいささか難がある。
十分な量のキーワード・カウンターを入手するには大量のパックが必要なんだとしたら…
安心してほしい。
既に過去のパックでうまくいった方法があるんだ。
パンチ・カード(切り抜きカウンター)だ!
これは1枚のトークンに切れ込みが入っていて、カード1枚からカウンターとして使える小さなトークンをいくつか作れるようになっている。
またパンチ・カードは両面印刷になっていて、裏面には別のカウンターが記されている。
これはアモンケット(エジプトをモチーフにした過酷な砂漠の世界)で使われたトークン枠のカードで、クリーチャーを弱らせる-1/-1カウンターや、3つ積み上げてピラミッドを建設することに意味がある石材カウンターなどを表現している。
EMBALMEDやEXERTEDは、アモンケットのパックに存在したメカニズムの名前でそれらを使った目安として置いておくことができる。
(前者は死者をミイラとして1度だけ蘇らせる能力。2回使わないようにミイラ化能力を1度使用した目印としてパンチ・カードを使うことができる)
(後者は自身の体を酷使することで限界を超えた力を発揮するが、次のターンは疲労して行動不能になるメカニズムだった。疲労していることを忘れないためにパンチ・カードを使える)
公式記事【 ストーム値:『カラデシュ』と『アモンケット』 】では、切り抜きカウンター(パンチ・カード)のストーム値は3として紹介されている。
*ストーム値…カードのメカニズムにもう一度出番が来るかどうかを評価した数字。
1~10で表され、小さいほど再登場の見込みがある。
ストーム値:3
私は、切り抜き技術について非常に楽観的である。
デザイン空間の未来の可能性を計画する責任者として、私はこれがマジックの可能性を動かす能力を持っているものだと思っている。
いつか、このストーム値が2に下がり、マジックのデザインにおける落葉樹部分を担うことになる可能性はある。
(ここでいう落葉樹は準レギュラーの意)
切り抜きカウンターであれば、先ほどの「どれが何だっけ問題」に悩まされることはない。
「そのクリーチャーに乗ってる『飛行』カウンターは何を意味してるの?」
「見りゃ分かるだろ、飛んでるんだよ」
うん。うん、うん。
なんだかすごくしっくりくるぞ。
新パック『イコリア 巨獣の棲処』に存在する大量のカウンターの正体は、キーワード能力カウンターで間違いない!
そうそう、WPNのサイトで面白いものを見つけたので紹介しておくよ。
イコリアを発売前に一足早く体験できるプレリリースイベントの商品についてだ。
プレリリース商品の内容物一覧は…
Contents:
訳『 内容物
・『イコリア 巨獣の棲処』6パック。
・『イコリア 巨獣の棲処』のレアまたは神話レアのプロモカードが1枚
・スピンダウンライフカウンター1つ
・両面キーワードカウンター1セット
・MTGアリーナ用のコード1つ』
下から2番目に注目…!
両面キーワードカウンター1セット
イコリアのカウンターの多くはキーワード能力のカウンターで間違いないだろう。
もう巨獣達の足音がすぐそこまで聞こえてきているぞ!
コロナでカードショップでのプレリリースの扱いがどう転がるか不安だけど、楽しみに発売を待とう!
今回の答え合わせ
やった! 予想的中!
リサーチの通り、パンチカードの能力カウンターもバッチリあるね!
12種類のカウンターを知るのに素敵なクリーチャーも公開されたみたいだ。
《結晶の巨人》は自身の上に10種類のカウンターを置ける。
・飛行
・先制攻撃
・接死
・呪禁
・絆魂
・威迫
・到達
・トランプル
・警戒
・+1/+1
巨人が乗せられないカウンターでパックに入るのは…
プレインズウォーカーの忠誠度カウンターと、
予告されている「foreshadowカウンター」
後はプレイヤーが持つ経験カウンターで12+1種類に当てはまるね。
経験カウンターについてはリンク先、英語でイコリアの構築済み統率者戦デッキに含まれると紹介されている。
さあ、これで…
ちょっと待って!
統率者戦デッキにはこんな伝説のクリーチャーが収録されるんだ。
こちらも《結晶の巨人》同様にたくさんのカウンターが乗るけど…
カスリルには二段攻撃と破壊不能が増えていることに注目してほしい。
おかしいな?
これでカウンターの数がオーバーしてしまったぞ。
この問題の答えはカスリルのエキスパンションシンボルにある。
カスリルは「スタンダードでは使えず、基本的にはイコリアのパックを買っても出てこないカード」なんだ。
なのでそれらのカウンターはマローの予告には含まれてないのだろう。
そうなると同様に統率者デッキ専用と思われる経験カウンターの枠が空くな。
もう1種類、何かのカウンターがイコリアのパックにはまだ隠されているんじゃないかな。
…まさか、ね?
【追記】
最後のカウンターを扱うカードが公開された。
《怪物の災厄、チェビル》だ。
彼が扱う「賞金カウンター」は実は彼専用のカウンターでなく、
かつて2度登場している。
効果の細かい挙動の違いはあるが、マシスに似た挙動をチュビルは取るみたいだね。
もし同時に仕えるフォーマットでプレイする機会があるなら、チェビルとマシスを並べてカウンターを乗せたら、賞金かせぎの能力で次々に死亡させて賞金をかき集めたいものだね!