最新パック『イコリア:巨獣の棲処』のプレビューが始まったね!
新メカニズム「変容」についてはもう見たかな?
今回の記事では変容カードと神を使った不思議な挙動について考えてみよう。
まずは基礎知識を抑えよう。
新メカニズム変容は次のような若干特殊な枠を持つクリーチャーだ。
プレイヤーはこのクリーチャーをそのまま唱えるか、
変容コストを支払いクリーチャー1体を対象にして唱えるかを選ぶ。
対象として適切なクリーチャーは「その変容クリーチャーとオーナー(持ち主)が同じで、人間でないクリーチャー」だ。
ちゃんと呪文が解決されたなら、対象となったクリーチャーに変容クリーチャーを重ねる。
この時、対象のクリーチャーの下に差し込んでもいいし、上にかぶせてもいい。
好きな方を選ぶことができる。
こうして重ねられたクリーチャーは1体として扱い、
1番上のクリーチャーに下にいるクリーチャーすべての能力を付け足したものになる。
(すべて、だ。もし同じクリーチャーを2回変容させれば3体すべての能力を持つ)
注意:パワーやタフネスは足し算にはならない。能力だけだ。
イコリア、またレッドキャップやエルフを括るフェアリーフォークみたいに「人間でない部族」メカニズムを使って欲しいんですよね…
— 豆にゃあ (@MAME_NYA) 2020年3月31日
(人間部族は今のスタンでやらないで欲しい&多様な予告の種族を繋げて巨大生物シナジーを組めるので) pic.twitter.com/MBaRIc5ewO
こんなことをツイートしていたけど、まさかメカニズム規模で「人間でない」を推してくるとは思わなかった。
公式はプレイヤーの考えるようなことは当然考えているんだね。
『無』を取得する。
さて、ではここでひとつ前のパックに収録されている《太陽冠のヘリオッド》を見てみよう。
こいつはクリーチャーでもありエンチャントでもある。
信心を高めるまでは単なるエンチャントとして効果を発揮し、
信心を高めた後はクリーチャーとして顕現し戦闘に参加できるようになる。
信心はマナコストにある色マナシンボルの数に等しい。
例えば、今戦場にちょうど白の信心が5点だとしよう。
ヘリオッド自身も白の信心1点分があるので他に4点分あればいい。
ここでさっきの変容クリーチャーを唱えよう。
対象にヘリオッドを選び、その下に差し込む。
これで到達と変容するたびに誘発する能力を持ったヘリオッドが生まれる。
ここまではいいかい?
では、今度は同じ状況でヘリオッドの上にかぶせてみよう。
今度はヘリオッドのすべての能力を持つ雲貫きが作られることになる。
破壊不能とライフ回復で誘発する能力、絆魂をつける起動型能力。
そして「信心がなければクリーチャーでなくなる」という能力だ。
なんだか雲行きが怪しくなってきたね。
ここで改めて信心を数えてみよう。
まずは他のクリーチャーが持つ4つ。
そしてヘリオッドの…そう、もうわかったかな?
ここにいるのは白いヘリオッドでなく赤い雲貫きだ。
雲貫きはコストに白マナがないから白の信心には貢献しない。
そのため、白の信心は4点しかない状況と言うわけだ。
つまり?
この雲貫きはもはやクリーチャーではなくなってしまったのか?
それだけじゃない。
ヘリオッドはクリーチャー・エンチャントなので、クリーチャーでない間はエンチャントとして扱われる。
しかし雲貫きは単なるクリーチャーだ。
クリーチャーでないクリーチャー・エンチャントはエンチャントになる。
クリーチャーでないクリーチャーは…何になるんだ?
こうして『無』が生まれた。
無は取得できるか?
さて、このブログではたびたびマジックの新パックについて既存のルールや公開された情報をもとに話す記事を書いてきた。
今回も『無』についてもうすこし考えて見よう。
まず最初に疑うべきは変容のルーリングがちゃんとあってるかだ。
まず変容することで重ねられたクリーチャーがもつ特性を調べていこう。
先ほどの予想ではマナコストは失われ白に信心を捧げなくなった。
この挙動はあっているだろうか?
重なるように置かれ、それら全体で1体のクリーチャーとして扱われます。そのクリーチャーは一番上のカードの特性をすべて持ち、さらにその下に置かれているカードすべての能力もすべて持ちます。
引用:『イコリア:巨獣の棲処』のメカニズム|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト
一番上のカードの特性(のみ)をすべて持つようだね。
特性とは名前やパワー/タフネス、クリーチャー・タイプなどのステータスだ。
当然、マナコストもこれに含まれる。
上にヘリオッドがいるならマナコストは白シンボルを含むし、
上に雲貫きがいるならマナコストは白シンボルを含まなくなる。
同様にクリーチャー・エンチャントであるという特性はヘリオッドだけのものだ。
雲貫きは単なるクリーチャーになり、エンチャントではない。
それじゃあ次は「名前」と能力のチェックをしよう。
先ほどから「クリーチャーではなくなる能力」として扱っているテキストは正確には以下のような文章で書いてある。
「あなたの白への信心が5未満であるかぎり、太陽冠のヘリオッドはクリーチャーではない。」
そう、太陽冠のヘリオッドがクリーチャーでなくなるのだ。
ところで先ほどの特性の中に名前が含まれていたのを覚えているかな?
上に雲貫きを被せたなら、カード名は《雲貫き》になり《太陽冠のヘリオッド》ではなくなってしまう。
もしかして、この能力は意味をなさなくなってしまうのではないか?
これについては既に総合ルールに答えがある。
総合ルール201.4bを見てみよう。
総合ルール201.4b
そのオブジェクト自身をカード名で参照している能力をカード名の異なるオブジェクトが得た場合、得られた能力に含まれる、前者のカードを参照するために用いられている前者のカード名はすべて後者のカード名であるとして扱われる。
参考:マジック総合ルール(和訳 20200122.0 版)|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト
ちょっとよく分からないかもしれないので具体的に名前を書き込もうか。
雲貫きの下にヘリオッドがある場合、総合ルール201.4bは以下のように働く。
太陽冠のヘリオッド自身をカード名で参照している能力を雲貫きが得た場合、得られた能力に含まれる、太陽冠のヘリオッドを参照するために用いられているカード名はすべて雲貫きであるとして扱われる。
つまり、この2枚を重ねたクリーチャーがもつ効果は、
「あなたの白への信心が5未満であるかぎり、雲貫きはクリーチャーではない。」
と読み替えることになる。
というわけで結論は出た。
信心がちょうど5である時にヘリオッドの上に雲貫きを乗せて変容させると、
タイプを持たないカードを生み出すことだ出来る!!
いやあ、問題を解くとすっきりするね!
え? まだ問題が残っているって?
無は存在できるか?
そもそもこの無は場に残ることができるのだろうか?
戦場に存在するカードはルール用語で「パーマネント」と呼ばれる。
基本的にパーマネントであるカードは、
クリーチャー・土地・アーティファクト・エンチャント・プレインズウォーカ―だけだ。
無はどうだろうか?
この無は場に留まることは出来るのか?
雲貫きを被せるなり、無は戦場から墓地に送られたりしないんだろうか?
この疑問もまたルールブックを読むことで解決する。
総合ルール110.4Cをご覧あれ!
総合ルール110.4c
パーマネントが何らかの方法ですべてのパーマネント・タイプを失った場合、それはそのまま戦場にあり続ける。それはパーマネントである。
参考:マジック総合ルール(和訳 20200122.0 版)|マジック:ザ・ギャザリング 日本公式ウェブサイト
というわけでタイプが無であるパーマネントは依然としてパーマネントである。
タイプのない無のカードとして場に残ることになる。
この無のパーマネントは《啓蒙》の対象に取れるだろうか?
No! それはエンチャントではない!
《殺害》はどうだろうか?
No! それはクリーチャーではない!
《名誉回復》ならどうだろう?
Yes! それはパーマネントなので対象としては適切だ。
ただし、忘れてはいけない。
そいつにはヘリオッドの持っていた破壊不能が受け継がれているぞ!
何てしぶとい奴なんだ。
こいつを倒すにはタイプに言及しないパーマネント除去で、破壊じゃない方法が必要になるみたいだ。
???「そこまでです、ヘリオッド! 罪を償うべき時がきたようですね!」
彼女は…エルズペスだ!
ヘリオッドの裏切りによって死の国をさまようプレインズウォーカ―!
そう、テーロス還魂記では彼女がヘリオッドを打ち倒す様子が英雄譚として語られている!
《エルズペス、死に打ち勝つ》の1つ目の能力はマナコストが3以上のパーマネントをは対象とする。
もうルールは覚えたね?
変容パーマネントの特性は一番上を見ることになる!
ヘリオッド、いや雲貫きの点数で見たマナコストは5!
対象として適切だ!
更に破壊ではなく追放であるため、破壊不能によって邪魔されることもない!
おお、見よ!
太陽の宿敵、エルズペスの勇姿を!
悪が栄えたためしなし!