やあ、久しぶりの『今日のフォーマット』の記事だよ。
今回ご紹介する虚無フォーマットは、
『パイオニアルファ40(フォーティ)』
一体どんなフォーマットなのか?
君たちもMTGの深淵に足を踏み出そう!
前提知識1
アルファ版って何?
MTG、マジック:ザ・ギャザリングにはたくさんのカードセットが存在し大量のパックが売られ続けてきた。
その中でも「一番最初のセット」
すなわち、世の中に初めて出たマジックのブースターパックがある。
まあ何事にも初めの1つと言うのは存在する。
当たり前のことだよね。
そしてその「マジック最初のパック」の中でも、特に一番最初に世に出た「第1版の第1刷」こそがアルファ版である。
カードというよりも骨董品やアンティークの類であり、高額な価格で取引される。
高額カードとしてよく話題に挙げられる《Black Lotus(ブラックロータス)》なんかを例に挙げれば分かりやすいだろう。取引価格が約1千万円とか、そんな感じ。
ただブラックロータスは単純に「強いカード」なのでちょっとノイズかもしれない。
ここでは何度も再録されている赤の代表的な火力《稲妻/Lightning Bolt》を例に出そう。
《稲妻》は何度か再録されている。
当然これらの再録された《稲妻》もゲームに使用できるし、
性能もアルファ版と全く一緒だ。
つまりゲームの道具として見た時には、アルファ版も再録版も同じ『価値』を持つ。
再録版はだいたい500~600円くらい。
「限定販売品」「特殊イラスト」とかの《稲妻》だと再録版でも1500円くらいする。ゲームとしての『価値』は同じなので、希少性 やコレクション性に追加の価値が生まれているんだ。
これが「アルファ版の《稲妻》」だとどうなるかというと、
ネット通販で4万5千円で売れたりした記録が残ってたり、もっと上の5万円台での取引もある。
「アルファ版って何?」という疑問への答えは分かっただろうか?
答えは「マジック最初のカード。貴重なので高い」だ。
フォーマット
「アルファ40(フォーティ)」って何?
アルファ40はマジックの遊び方のひとつである。
マジック:ザ・ギャザリングは現代までいくつものルール変更を重ねてきた歴史がある。
それらの変更が加わる前の「最初のマジック」を遊ぶためのフォーマット、それが「アルファ40」なわけだ。
ざっくりした説明として…
「デッキ枚数が現代の60枚と異なり40枚」
「同名カードは4枚までの枚数制限がない」
などの構築上の特徴がある。
このアルファ40フォーマットの特徴のひとつに「再録カードの使用禁止」が挙げられる。
通常のマジックではデッキに《稲妻》を入れるなら、アルファ版の《稲妻》だろうと、シークレットレアの《稲妻》でも、基本セット2010の《稲妻》だろうと好きな《稲妻》を使用できる。
同じカード名のカードは同じように扱われるのだ。
アルファ40ではそうではない。
アルファ40で使用可能な稲妻は「アルファ版の《稲妻》」だけなのだ。
さっきも書いたように500円くらいのはずの稲妻がアルファ版だと5万円くらいする。
アルファ40はゲームバランスがルールの上では機能してない。
ブラックロータスを好きなだけデッキに入れられるのだ。
まともにやったら先行が高い確率で勝つだけのゲームになると思う。
しかし、現実的な「予算」の問題として1千万円のブラックロータスを山のように積んだデッキなどは組めるはずがない。
結果的に「予算」がアルファ40のゲームバランスを取る機構になっているのだ。
僕みたいな貧乏にはとても手を出せない「古きを懐かしむ天上人の遊び」、
それが「アルファ40(フォーティ)」である。
フォーマット
「パイオニア」って何?
パイオニアは近代マジックを長く楽しむためのフォーマットとして設立された。
最新カードでのマジックを楽しみたいなら「スタンダード」を遊び、
同じデッキを長く使って近代マジックをするなら「モダン」という住みわけがされたのも今は昔。
その住みわけからそこそこ長い年月が既に経過した。
結果的にモダンという名前に反して「モダン」は少しばかり古さを感じさせるフォーマットになった。
パイオニアはモダンの設立当初の目的を再現すべく2019年に生まれた新フォーマットだ。
パイオニアこそ「更新された近代マジック」のための「比較的新しいカードだけを使えるフォーマット」であると言えよう。
虚無フォーマット民特有の悪魔合体
さて、ここに古き良きアルファ40と近代マジックのパイオニアがある。
この2つを混ぜるのはどうだろう?
つまり、「マジックが初めて生まれた時」から存在しつつ、
未だに近代マジックで再録され続けるような「お馴染みのカード」たちを使って遊ぶのだ。
アルファ40の参入障壁であった「金銭面の負担」を取り払い、近年になってから再録されたカードを解禁づることで安く組むことができるようにする側面もある。
アルファ40が「予算」によって取っていたバランスが失われる懸念はどうだろう?
この問題は近代マジックであるパイオニアのプールが解決してくれる。
当たり前のことながら、ブラックロータスなどのぶっ壊れカードは再録されたりすることがない。
近代でも再録されるような「長く親しまれるバランスの取れたカード」だけが使えるようにすれば、想像よりもずっと「壊れた環境」にはならないようにセーフティがかかるに違いない!
というわけでここに今回の虚無フォーマットを設立する…!
フォーマット
『パイオニアルファ40(フォーティ)』
使用可能カードは「初出がアルファ版のパイオニア使用可能カード」
デッキの構築制限は「40枚以上、同名カードの枚数制限なし」とアルファ40同様。
ゲーム中のルールは「アルファ40」のものでなく、パイオニア側を利用することにしよう。(大昔のルールとか知らない人のが多いしね)
アンティークの味わいあるカードたちが新イラストや新枠で活躍する奇妙なゲームにようこそ!
それではパイオニアルファ40について語っていこう。
一体どのようなカードがこのフォーマットで使えるんだろう?
白が要する攻防一体の切札として長年にわたり親しまれてきた天使クリーチャーと言えば…古参プレイヤーの想像した通り《セラの天使》だ!
《セラの天使》はマジック最初のセットであるアルファ版で登場してから何度も何度も再録されている。
2018年に再録されているカードであるためパイオニアでも使用できる!
警戒能力がキーワードになるよりも遥か昔から、《セラの天使》は攻撃にもブロックにも参加できる能力で白の防御を固めてきた。
白の防御力を象徴するこんなカードもある。
《高潔のあかし》をご覧あれ!
基本セットに5回ほど収録されている白の防御的な側面を表現したカードだが10年近く再録されることがなかった。
しかし2019年、『エルドレインの王権』のパックで再録!
僕は最初「新規カード」が来た!と思ったんだけど、驚くほどに初出はアルファ版と言うとても古式ゆかしいカードだったんだ。
記事執筆時点ではスタンダードでも使えるカードなので昔のカードを知らないマジックプレイヤーでも見かけたことがあるかもしれないね。
青のカードは何が使えるだろう?
青と言えばクリーチャーの色…もといインスタント呪文を使い魔法を唱える色として推されている。
対戦相手の呪文を打ち消したり、クリーチャーを手札に戻して妨害するなどトリッキーな動きをする。
この動きはパイオニアルファ40でも健在だ。
呪文を打ち消すなら《呪文破》を使うことができる!
《呪文破》はちょっと古いカウンターで『基本セット2014』を最後に再録されていないけど「パイオニア」の範囲でギリギリなんとか使うことができる。
手札に戻す方はどうだろう?
《送還》の呪文がある!
『基本セット2020』でも再録されているので《呪文破》は見たことがなかったという最近のプレイヤーでも知っているだろう。
黒が使えるカードの中にはこのフォーマットの『最強クリーチャー』が存在する。
《夢魔》はパワーとタフネスが黒マナを生み出す基本土地、《沼》の枚数によって決まる。
それはつまり沼を並べれば並べるだけ強くなる!
6マナを払って呼び出した時点で6/6、次のターンも沼を置けば7/7…さらに置ければ8/8と巨大になり続ける!
理論上は、このクリーチャーが最大の「基本のパワー」を持っているといえるだろう。
その上、黒と言えばクリーチャーを死から呼び覚ます墓地回収系カードの存在も忘れてはいけない。
《死者再生》は墓地のクリーチャーをたった1マナで手札に回収できる。
対戦相手がなんとかして倒したナイトメアが蘇るさまはまさに悪夢と言ったところか…
待った!
確かに悪夢的に強いナイトメアだが、
パワーでは赤のドラゴンも負けていない!
「基本のパワー」の最大値は夢魔でも起動型能力によるパワーアップならどうだ?
あの切札勝舞くんも使った《シヴ山のドラゴン》が赤にはいる!
《シヴ山のドラゴン》の基本のパワーは夢魔に劣る。
しかしドラゴンの炎のブレスを表現した起動型能力によって、
赤マナ1点を支払うたびに、そのターン中のパワーが上昇する!
パワー10を超える飛行クリーチャーの攻撃は対戦相手の20点のライフなどあっという間に焼き尽くすことだろう。
とはいえドラゴンにも弱点はある。
炎と相反する氷の力でドラゴンさえも凍結する魔導器が存在する。
アーティファクト・カード《氷の干渉器》だ。
アーティファクトは現在では金属的な見た目の銀色のカードだが、アルファ版の頃は古代の魔導器を表す茶色だった。
こう言った魔導器による妨害を主体とする「茶」も色と同じようにデッキ名に冠されることがあって、今でもたまに使われる。
「残念だったな! お前のドラゴンは《氷の干渉器》でタップされ続けて攻撃できない!」
「甘いぞ! 俺のドラゴンはその程度では止まらない! 《粉砕》!玉砕!大喝采!」
赤の色の役割である「アーティファクト破壊」はアルファ版から存在しつづけている。
妨害アーティファクトを壊せるカードも当然あるのさ。
緑が最後になったね。
緑と言えばクリーチャーとマナの色だ。
つまりマナを生むエルフがいる。
エルフと聞いて想像するようなか弱い1/1のボディからかけ離れた凶悪な《ラノワールのエルフ》の印象的なフレーバーテキストは覚えている人も多いんじゃないかな?
小枝を踏み折れば、骨を折ってあがないとする。
――ラノワールのエルフの、侵入者への処罰
そんな1/1の貧弱なエルフにやられるものかと油断しているプレイヤーは緑のクリーチャー強化呪文にゲームを覆される。
定番のコンバットトリック《巨大化》があるのだから。
さて、パイオニアルファ40で使用できるカードの一部を紹介してみた。
古き良きマジックの懐かしさと、近代マジックの交わるこのフォーマット。
虚無のフォーマットに見えて意外と味がするのであなたも楽しんではどうだろうか?
このフォーマットのいいところはいくつかあるが、
なかでも特に強調したいのが「価格」だ。
価格によりバランスをとる元祖アルファ40と違って、パイオニアらしく新しいカードが使える。デッキを組むための価格は非常に安いものとなっているんだ。
(1枚10円どころか1枚当たり約0.1円という格安カードまである)
次の記事では安さにものを言わせてこのフォーマットを遊んだ話をしよう。
このフォーマット…虚無と見せかけた『有』の可能性が眠っている…!
それではまた次回!
それまであなたに温故知新の心がありますように!
実践編プレイレポート↓
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