超次元MTG対戦 TYPE/Zeroこんすぴらしー
第3話「ゲームは踊る」
「じゃあ皆、準備はいいかな? 《権力行使》がなければダイスロールで順番を決めるよ!」
ころころ…
「それじゃあアタシから時計回りだな」
「ゲーム開始時に策略を公開、防衛トークンを生成するアル」
(普段行うType0からは想像できないほど、ゆっくりとした立ち上がり。…これを更に遅らせます!)
「わたくしの3ターン目、コモンカード《リリアナの死霊》を召喚しますわ」
「げえ…ハンデスかよ」
(ここから2ターン連続リリアナの死霊…! ゲームスピードを鈍化させますわ)
「《桜族の長老》から加速したマナで速攻で盤面を掌握させてもらうぜ!」
「《魂売り》を召喚!」
「わたくしの除去が効かない生物! 誰か、アレに対処できる人は…!」
「そんなのに居座られるわけにはいかないネ!《剣を鋤に》で追放するアル!追放除去は再生能力を貫通できるアルよ」
「んなッ!アタシの切札が!」
それぞれが得意な戦略の小型クリーチャーを並べて盤面を構築していく…
(ここですわ。切札と除去の応酬で皆さんが一呼吸着くこのタイミングで…)
「秘策を公開します。《反復分析》、指定はコモンカード《吸魂》です」
「ドローして、引いたカードは2枚目の《吸魂》! これも唱えますわ!」
(ミンメイさんの防衛デッキは放置しておくとドンドン強くなるアーキタイプ。)
「戦闘に入って2体の飛行する死霊で防衛クリーチャーを無視して上空から4点!」
「…ッ! それは通せないネ。《火山の流弾》!一度全体火力で盤面をリセットさせてもらうヨ!」
(全員の盤面がガラ空きに…!)
「今度こそ、盤面はもらったぜ。《甲鱗のワーム》だ!」
「通せない、《夢の破れ目》でワームを打ち消すよ」
「だあああ! どいつもこいつもアタシの邪魔ばっかりしやがって!」
「私はそこで争っている場合じゃないと思うけどなあ。今、一番ライフがあるのは《吸魂》で回復しているクロミちゃんなんだよ。そこから崩していかないと。ほら、クロミちゃんにクリーチャーで攻撃!」
(このままレイさんの中型クリーチャーに攻め込まれるのは困りますわね)
「《屍術の渇き》を唱えますわ! エンチャント先はレイさんのクリーチャー!」
「自分のクリーチャーでなくこちらのクリーチャーに張るなんてテクニカルなことをしてくるね」
「これで、レイさんが私を攻撃するなら《リリアナの死霊》を使いまわして全員の手札を枯渇させることになりましてよ? 流石にそんなことはしたくないでしょう? 攻撃をやめてくださいな」
「それじゃあ、こう言うのはどうアルか、クロミ?」
「防衛クリーチャーの数だけ、クロミのライフに直接ダメージを与えるネ」
「っく…!」
「私も忘れてもらっちゃ困るよ。瞬速の飛行クリーチャーで奇襲をしかける! この攻撃でクロミちゃんはライフトップから陥落だよ」
「ああ、これでクロミのライフは十分に削れたな。アオイ、お役目ご苦労! 軽量クリーチャーが足りずに序盤の攻防についてけなかった上に、吸魂で追い打ち食らってライフも残り少ないだろ? がら空きのアオイにクリーチャーで攻撃、最初に飛行デッキを脱落させれば後はアタシの大型地上クリーチャーで勝てる!」
「《歪んだ爪の変成者》の2枚目があるよ! 瞬速で出して能力を使いつつブロック! まったく、油断も隙もあったもんじゃないよ、ミドリちゃんったら」
(ゲーム中盤を過ぎて、それぞれのプレイヤーが手札を惜しみなく吐き出し始めている、付け入るチャンスですわ!)
「《リリアナの死霊》を2体、墓地から蘇生して全員の手札を2枚捨てさせます!」
「一気に手札リソースがもってかれた!」
「こうなってしまえば後は盤面とデッキトップ勝負ですわ」
(青らしく手札を増やして整えることに序盤を使ってよかった、これで今度は私の番!)
「増やした手札を捨てて温存していた《飛び回る玻璃凧》を召喚!」
「除去耐性もちの飛行クリーチャー! さらに《順風》でサイズアップして5/5に!これで流れは私の物!」
「クソッ、除去はあるけど対象に取れば打ち消されちまう。なんて厄介な…!」
「ミドリちゃんにはあるんだね、除去? それじゃあ私の呪文で対象に取って能力を誘発させ道をこじ開ける!」
「サンキュー、レイ。それじゃあここで除去呪文だ!」
(状況は再びフラットに戻りつつありますが…)
「《孔の歩哨》をさらに召喚し、火力を追加するネ」
「これでワタシはいつでもレイを焼き殺せるアル。それが嫌なら、レイはワタシの指示に従うアルよ?」
「クロミを攻撃するアル」
「…はい。攻撃します」
(傀儡政権の樹立…!まずい、急いでミンメイさんを倒さないと!)
「リリアナの死霊2体で防衛クリーチャーを超えて空から攻撃! ミンメイさんのライフを6点まで追いつめますわ! さあ、アオイさん。とどめを任せました!」
「…しない。」
「えっ?」
「私はミンメイを攻撃しない。」
(今、攻撃に参加すればミンメイを確実に倒せるけど、返しのターンに私がミドリちゃんに倒される。今は争わずに戦線を構築する時…それに…)
「なんでアオイのやつは攻撃しないんだ? レイ、今、助けてやるからな!」
「全軍でミンメイに攻撃!!」
「ミドリちゃん、馬鹿! やめて!」
「その攻撃が通れば負けるアル。ビリにはビリにはなりたくないネ!」
「レイを対象に防衛火力を起動して、先に直接火力で落とすアル!」
レイ、脱落。
つづいてミンメイも脱落。
「ここですわ、全軍でミドリさんを攻撃し、倒します」
「しまった…!」
ミドリも脱落。
残るはクロミとアオイだけ。
「もう、ミドリちゃんが逸るから盤面がめちゃくちゃだよ」
「さあ、どちらが勝つか玉座を争いましょう。アオイさん」
「もっとも、勝つのはわたくしですけれどね…戦闘後メインにキャスト…!」
「《よじれた嫌悪者》!」
「このコモンが、私の切札ですの」
「除去を受付けず、戦闘でも死亡しない再生能力…、やっかいな…!」
(ここからは慎重に戦闘をしないと、勝利を持っていかれる…!)
「ブロッカーを立てて、牽制しながらターンエンド」
「ドロー、これで終わりです!トップから引いたのは《小悪疫》の呪文!」
「ライフを削り、ブロッカーを生贄に捧げさせる!」
「…! 計算を狂わされた!」
「よじれた嫌悪者で残りライフ5点のアオイさんを攻撃!」
「攻撃用に残しておきたかったけど仕方ない、飛行クリーチャーでブロックして相打ち」
「当然、再生します」
「次のブロッカーを引けなければ負け…ドロー。島か。私の負けだね、GG」
「グッドゲーム! やりました、レア無しの黒単で勝てましたわ!」
「あーっ悔しい、もう一戦やろうぜ!もう一戦!」
「もう、ミドリちゃんが雑な攻撃するからこんなことになったんだよー!」
「スタンダードがメインなんだ多人数戦のコンバットのいろはなんか分かるかよ!」
「ミンメイ、さっきはよくも操ってくれたね。今度はそうはいかないよ?」
「ワタシだって、今度は倒す敵を間違えないから同じようには行かないネ」
楽しい。多人数戦の醍醐味はやっぱりこの混沌とした政治的な駆け引きでコンスピラシードラフトは、フィオーラ次元はそれをもっともよく表しているのだ。
開発部はコンスピラシーをデザインした時に、最初そこを闘技場にするつもりだった。
しかし、駆け引きに踊る多人数戦ゲームの動きを見てコンセプターは提案したのだ。
コンスピラシードラフトを宮廷闘争風に仕上げることを。私はそのフレイバーが大好きだ。何度でも悪役令嬢として振舞おう。この策謀の舞台で。
でも、もう少ししたら闘技場での戦いもしてみたいものですわね。仲良くなれた彼女たちと。裏切りなく友情と絆で結ばれた他人数戦を……!
バトルボンド編へ続く。