さて、BOOK☆WALKER期間限定ラノベ読み放題記念の昔のラノベ布教記事3本目。
今回は比較的新しくて2013年…
20131年…?
もう5年以上前の作品なんですね。
そんな第三回のオススメラノベはこちら。
駆逐艦擬人化少女が、 煽る! 罵る! 殴る、蹴る!
『陽炎、抜錨します!』
艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します! (ファミ通文庫)
ゲーム「艦隊これくしょん」の複数あるノベライズのうちの1本だ。
まず初めに書いておくと この小説、めちゃくちゃ賛否が分かれる。
私はめちゃくちゃ好きで特装版全部買ったぐらいハマったけど、
好きじゃない人がいるのも「うん、まあ…わかる…」ってなるんだ。
一体何がそんな好き嫌いの差を生み出すのか?
その理由とは…キャラ崩壊である。
なんとこのノベライズ、既存のキャラクターに原作ゲームとは違うキャラ付けがされているのだ。
「僕の知っているあのキャラ」を求めて読むと「何…この…なに?」となってしまうだろう。
(めちゃくちゃ『主人公感』が高い陽炎とか)
「え? 流石にそれノベライズとしてどうなの??」って感じになる原作ファンが出るのも仕方がない。
わかる。
わかるとしか言いようがない。
じゃあなんで局所的にやたら人気があるの? そこには主に2つ…いや3つの理由がある。
理由1 キャラが魅力的
キャラの改変が激しい一方で改変後のキャラがめちゃくちゃ魅力的なの、卑怯だぞ!
面白ければ何をしてもいいと思ってるのか!! と言いたくもなる。
そうだよ。
原作には原作の、この作品にはこの作品のキャラの魅力が存在する。
そういうわけでまるで「ビーフシチューを作ろうとして生まれた肉じゃが」みたいな良さがある。
ビーフシチューとは言えないようなものがそこにはあるかもしれないけれど、
でも肉じゃがは肉じゃがとして美味しいんだ。
筋トレ狂と化した皐月は原作の皐月とは別人に感じるかもしれないが、
筋トレ狂で鳳翔さんのところでビールを調達する皐月もかわいいよ。
艦これでやる必要ある?
やたら「お姉ちゃんって呼んでくれないと~」とか「お姉ちゃんって呼んでくれたらいいですよ」と原作に一切ないお姉ちゃん呼びの押し付けで主人公・陽炎に絡んでくる愛宕とか
艦これでやる必要ある?
理由2 燃える王道のストーリー
本作はかなり燃える王道少年漫画っぽさを感じる。
スポ根ものの空気に死の影が差すので…なるほどこんな読み味になるのか!と驚いた。
自分はあまり読まないけど戦記物って案外こうゆう空気感なのかもしれない。
仲間を守るために命を懸ける戦士の矜持と、
喧嘩したり百合百合したりする女の子キャラの側面とをハイブリッドさせるのは、なるほど「原作が艦これだからこそ」のものかもしれない。
「艦これでやる必要ある?」と「艦これだからこそ!」みたいなのが交互にやってくる作品。
それが陽炎抜錨します!が各種艦これノベライズの中でも異彩を放つ魅力を生んでいるのだ。
理由3 世界設定の表現
世界設定の表現が上手くて、ゲーム上の挙動にうまいこと説明付けたりアレンジしたりしている。
アレンジ成分が強くて原作設定でフワフワしてる部分を独自設定で埋めていくので
前述の「それ艦これでやる意味ある?」問題はさらに答えが分からなくなる。
原作の解釈として「艦これだからこそ!」であると同時に、独自設定の多さはかなり「艦これでやる必要ある?」に傾いてるともいえる…
さらに時折挿入される原作台詞も賛否が分かれるところだろう。
使い方が上手いところとイマイチなところがあって、なんとなく原作台詞を当てはめたけど原作とはキャラがずれてるので違和感がある時もあれば、めちゃくちゃぴったりとピースが埋まるところもある。
特に戦闘海域で行方不明になった仲間の駆逐艦を探す陽炎たちに提督が「捜索打ち切り」の命令を下すシーン。
曙がそれに対して食い下がる陽炎を部屋の外に押し出したあとで、提督に向かって叫ぶ原作罵倒ボイス「このクソ提督!」のシーンとかはパズルのピースがかちゃりとハマる感じがして「艦これだからこそ!」ポイントが高い。
いやあ、なるほど。
これはアンチとファンでばっさり分かれるだろう。
総評として、かなり『できのいいオリジナル解釈同人誌』っぽいのだ。
そんな『陽炎、抜錨します!』の最大の魅力は「駆逐艦」「軽巡」と言った艦種にフォーカスした部分である。
他の艦これ派生作品に比べて「艦種の壁」がめちゃくちゃ色濃くでている(個人の感想です)
駆逐艦は言ってみれば「使い捨ての駒」であり、戦死する可能性が一番高く…
故に生き急ぎ、享楽的で一瞬の輝きやお祭りを好み、仲間同士の情に特にあつい。とか。
軽巡洋艦は駆逐艦の指導役であり「先生」であるという側面を強調されて、
鬼教官・神通や明るく駆逐艦に絡む一方で深い影の指す大人っぽく描かれる阿武隈とか。
擬人化美少女として、モチーフに「軍艦」を選んだ点をちゃんと活かした「軍人っぽさ」とでも言えばいいのかな…。
特に各所で阿武隈の印象的なセリフとして語られる以下の台詞などは
「原作と違う!」という気持ちと「陽炎抜錨における軽巡阿武隈の魅力」とが如実に表れていると思う。
「天国は知らないけど、地獄はあると思うよ。ないと困る」
「あたしたちはそこに行くんだ」
そんな原作ゲームに比べて暗い影の指す世界観の中で、
一瞬一瞬の輝きを生きるのに必死だからこそ『陽炎抜錨します!』の駆逐艦娘は原作にない「少年っぽさ」を見せる。
粗暴で、口汚く、友情を大事にする。
喧嘩っ早くて互いを罵り、煽り、口だけでは済まず殴り合いの喧嘩もする。
それ艦これと言う原作ゲームのある作品でやる?
ああ、戦争の船の擬人化美少女だからこそだ…!
独特な魅力を持った作品なので艦これファン(何でも許せる方)や艦これをよく知らない…昔少しやってた…みたいなひとに是非読んで欲しい。
そんな「青春百合SF」作品だと思う。
いや、これは百合なのかな…?
百合と言う言葉も多様性で、これは確かに百合ではあるのかもしれないけど…
なんてゆうか「美少女の皮を被せた少年の友情!」みたいな…。
うまく言えないけどそんな感じなのだ。
現在1巻の冒頭(巻頭カラーイラスト・1章・2章の最初)が無料試し読みできる。
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