オーラと《鏡細工》
はあい、バーチャルVtuberの豆猫さんだよ。
今回扱う話題はDiscordで頂いたこんな質問だ。
ふむ。
コピー能力を持ったカードとオーラの相互作用についての問いだね。
オーラ呪文は唱える時に対象を取る。
そして対象のパーマネントやプレイヤーにつけた状態で戦場に出るんだ。
ふむ、質問者が疑問に思ったのは恐らくこういう事だろう。
オーラ呪文を唱える時は普通、対象を取る。
↓
オーラのコストを払う。
↓
ついた状態で戦場に出る。
こういう流れでクリーチャ―に つけられるわけだ。
一方《鏡細工》で戦場のオーラをコピーする場合どうなるか?
まず、第一のポイント。
《鏡細工》には「対象」という言葉がテキストに出てこない。
これは戦場に出る直前に何になるかを選ぶカードだからだ。
例えば戦場にアーティファクトである《魔法の馬車》とエンチャントである《パンくずの道標》があり、
《鏡細工》をエンチャントの方のコピーにするつもりで唱えた。
ところが、対戦相手が対応して《自然への回帰》でエンチャントを破壊してしまった。
この場合、《鏡細工》はどうなるか?
鏡細工は唱えた時にはまだ、何をコピーするかを決めていないので、
不発に終わることはない。
《鏡細工》を《魔法の馬車》のコピーとして出すことができる!
《鏡細工》は対象を取らず、対象を取る呪文より後のタイミングでコピー先を選ぶので、コピーしようと思ったものが解決時になければ、別のものをコピーできる!
さて、では改めてオーラに話を戻そう。
オーラのコピーとして鏡細工を出すなら…
普通は対象を取るタイミング(《鏡細工》は何もしない)
↓
《鏡細工》のコストを払う。
↓
《鏡細工》が何をコピーすることを決める。
↓
戦場にオーラとして出る。
ということになる…あれ?
オーラをつける先を選んでいない…?
つまり…オーラのコピーとして戦場に出た《鏡細工》は付ける先がないから墓地送りになるの!?
安心してほしい。
MTG総合ルールはそのようなパターンにも対応している。
総合ルール303.4f
オーラが、オーラ・呪文が解決される以外の方法でいずれかのプレイヤーのコントロール下で戦場に出、
その出す効果がオーラのエンチャント先を指定していなかった場合、そのプレイヤーがそのオーラが戦場に出るに際してそのオーラのエンチャント先を選ぶ。
そのプレイヤーは、オーラのエンチャント能力その他適用される効果に従い、適正なオブジェクトまたはプレイヤーを選ばなければならない。
どういうことか?
これは基本的には「墓地のエンチャントを戦場に戻す呪文」などで墓地からオーラ呪文を持ってきた場合、
「唱えてない」ので→対象を選ぶことが出来ず→つけることができない…!という現象に対処するためのルールだ。
「唱える」以外の方法でオーラが戦場に出るなら、
オーラが戦場に出る直前のタイミングで「何につけるか」を選ぶことになる。
というわけで、結論。
《鏡細工》はオーラを選んでコピーするなら、正常に場に出るし適正な対象につけることができる!
あれ?
でもまって、《鏡細工》って戦場に出る直前に何になるかを決めるんだよね。
それだと、結局ギリギリのタイミングで被るから、
やっぱり「オーラのコピーになる《鏡細工》」は何につけるかを選べないんじゃないのか?
そのような細かいことに気づいただろうか?
思わなかった人は正常な思考回路をしているので、そのままマジックを楽しもう。
気になった人へ。
あなたはアゾリウス評議会の法の制定の助けになれる人材ですね。
素晴らしい、一緒に総合ルールを読み解いていきましょう。
アゾリウス評議会志望者のために、記事の最後でそのことも扱い、気になる場合は読めるようにしておきます。
ここでは一旦、「できる」という仮定の下に読み進めるか、
どうしても気になる法の守護者たりえんとするあなたは先にスクロールして読んでください。
ここでは一旦、「できる」ものとして進んでください。
さて、では次にどこに付けるかについて、以前にコピーのルールでも少し扱いましたが、「対象を取る呪文」をコピーした場合、それは同じものを対象にとらなければなりません。
プレイヤーを対象に撃った《稲妻の一撃》をコピーしたなら、
コピーの方はクリーチャーを狙うことにする…のような変更はできません。
(それが呪文のコピーを作る効果に特記されているなら別ですが)
参考:
しかしこれは「呪文」(唱えているカードなど、まだ場には出ていない)に関するルールですから、既に場に出ているカードが取った対象まではコピーしません。
何かについているオーラをコピーした《鏡細工》は別の何かに付けることができます。
では、ここで問題です。
呪禁能力(対象にとられない)と、オーラの相互作用を考えてみましょう。
問題
戦場には対戦相手のクリーチャーが2体います。
1体は呪禁を持つ《護法鱗のクロコダイル》で、
もう1体は《始原のワーム》です。
この《始原のワーム》はあなたが使った《魔法の眠り》をエンチャントされているので起きることはありません。
さて、ここであなたが《鏡細工》を唱えました。
《魔法の眠り》のコピーとして戦場に出ることを選び、それをクロコダイルにつける…なんてことはできるのでしょうか?
答え
呪禁はあくまで「対象にとられない」能力なので、
オーラがオーラ・呪文として唱えられずに戦場に出た時に、
呪禁を持ったクリーチャーに付けることを「選ぶ」ことができます。
これで巨大なワームだけでなく凶悪なワニも無力化できました!
オーラのコピーとして出るカードは呪禁を持つ相手にもつけることができるんです!
では似たようなパターンです。
呪禁の代わりにプロテクションはどうでしょうか?
さっきの例で、「呪禁」を持つクロコダイルの代わりに「プロテクション(青)」を持つ恐竜さんが相手の場合はどうなるでしょうか?
プロテクションは確かに対象に取られない能力を持っていて、
その点では呪禁と共通です。
しかし、プロテクションはそれとは別に「エンチャントされない」という能力を含んでいます。
なので、オーラのコピーとして出るカードは対応するプロテクションを持つカードにつけようとしても、すぐにひきはがされてしまいます。
(そしてつけられていない状態のオーラは墓地に置かれる)
そうそう《鏡細工》はオーラ・エンチャントだけでなく、装備品・アーティファクトもコピーできます。
こちらの場合はどうでしょうか?
《馬上槍》を装備した《帝国の先導》がいる。
《鏡細工》を《馬上槍》のコピーとして出したら、どうなるだろうか?
実はこの記事の中で既にヒントは出ているんです。
それはこの部分
『既に場に出ているカードが取った対象まではコピーしません。』
というわけで、つけられた装備品のコピーとして場に出しても、《鏡細工》はつけられた状態にはなりません。
ただし《輝く鎧》のように、戦場に出る時に何かにつけられるという誘発能力がある装備品は、《鏡細工》がそれのコピーとして「戦場に出る」ので、無事に誘発します。
今回のまとめ
・オーラはコピーできる。
・オーラのコピーは何につけるかを選びなおせる。
・選びなおすのは対象を取らない行為なので呪禁を無視できる。
・プロテクションはオーラを剥がすので、上記の方法でつけようとしてもダメ。
・つけられら装備品をコピーしても、それはつけられた状態ではない。
以上、終わり!
それでは…
ああ、細かいところが気になるアゾリウスの人たちの疑問にも答えよう。
一般の方は、ここまで!
また別の記事で会いましょう!
アゾリウス評議会の法魔導士を目指す方々へ
さて、あなたたちは非常に熱心で、総合ルール文書に興味があるようですね。
よろしい。
では、細かな部分を調べていきましょう。
コピーが戦場に出る直前に何になるかを決めるなら、
オーラが戦場に出る直前に何につけるかを選ぶのとタイミングがぶつかってしまうはず…という問題でしたね。
総合ルール706.5には目を通していますか?
まだ、読まれてはいないでしょうか?
大丈夫、すべてのルールを暗唱できる必要はありません。
分からない時に調べられるならそれで充分なんです。
それでは引用しましょう。
総合ルール706.5
他のオブジェクトの「コピーとして/as a copy」戦場に出る、または「これは[他のオブジェクト]のコピーである/that's a copy of [another object]」として戦場に出るオブジェクトは、戦場に出るに際してそのオブジェクトのコピーとなる。
戦場に出てからそのパーマネントのコピーになるわけではない。
コピーが、(「〜状態で戦場に出る/enters the battlefield with」や「[これ]が戦場に出るに際し/as [this] enters the battlefield」などの)戦場に出るイベントを置換する能力を得ていた場合、それらの能力は効果を発揮する。
また、そのコピーが持つあらゆる戦場に出たときの誘発型能力も誘発する機会がある。
つまり、オーラのコピーになることを選んだとき、
総合ルール303.4fで示したように、オーラは「そのオーラが戦場に出るに際してそのオーラのエンチャント先を選ぶ。」ことになります。
これは「戦場に出るに際し」ですから、総合ルール706.5に従って、無事にエンチャントされて場に出ることになります。
なのでタイミング的な問題はありません。
というのが一般的な解釈です。
実際、公式の文書であるリリースノートにもそう書いてあります。
リリースノートの記述は時間が経つと間違った記述になることはありますが、これは最新の記述です。(2019/9/27現在)
なので現在の法解釈では、オーラのコピーとして戦場に出るカードは、解決後、戦場に出る前にオーラに変化しますが、解決は終わっているので、
それはオーラ呪文ではなく、まだ戦場に出ていないためオーラ・パーマネントでもありません。
(これにより状況起因処理で言う『つけられていないオーラを墓地に置く』処理に該当することはありません)
そしてオーラ呪文ではないオーラが戦場に出るに際して、それを戦場の適切な対象につけることになります。
非常に緻密なテキストですね。
何か質問のある方はいらっしゃいますか?
はい、そちらの方です。どうぞ、おっしゃってください」
「総合ルール706.5では『戦場に出るイベントを置換する能力を得ていた場合、それらの能力は効果を発揮する』とあります。」
「ここでは効果を発揮する…とのみあります」
「しかし、オーラを何につけるかを選ぶ過程はルールに従った処理です」
「総合ルール609.1では 効果とは、呪文や能力の結果としてゲーム内で起こる出来事のことである。と定義されています」
「つまり、私が言いたいのは総合ルール706.5はエンチャントを付ける先を決めることを許可していないのでは?ということです」
ふむ、なるほど。
実に興味深い考えですね。
その場合、どのような挙動になると思いますか?
「私の考えでは一旦、オーラは戦場に出ます」
「その後、それは適切な対象を持たずに墓地に置かれるのではないでしょうか?」
ふむ、ではそれに反論できるものは?
…いないのでしょうか?
ああ、そこのあなた。
今、手をあげようとしてためらっていましたね。
何か考えがあればおっしゃってください。
「はい、総合ルール706.5について彼が引用した部分は、あくまで例示にすぎない…と考えます」
なるほど、続けて。
「つまり総合ルール706.5の主要な部分は『戦場に出てからそのパーマネントのコピーになるわけではない』であり、それ以前の文章はどんなものに適用されるかの範囲指定」
「それより後の文章は例示です」
「例示はあくまで一部にすぎないのでルール処理や効果全般に対して言及した後で、効果に限定して例示したとしても、直前の文章が指すものは依然としてルール処理全般にかかるものと思われます」
「素晴らしい! その通りです!」
「あなたの名前はタガン先生に伝えておきましょう」
「では、ルール解釈にかかる諸問題は解決されました」
「オーラのコピーとして戦場に出るパーマネントは、適正な対象につけることができる」
「それを今回は覚えてください」