バーチャルVtuver豆猫さんの与太話

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超次元MTG対戦TYPE/Zeroあいこにっく 第1話「はじめてのドラフト」

TYPE/Zeroりみてっどシリーズ 第1弾

TYPE/Zero あいこにっく

いつも『奇妙なマジック』を見に来てくれてありがとう!
でも今回は『マジックらしいマジック』の回なんだ。
それでも良ければ、読んで欲しい。

ああ、それから1つ付け加えておこう。

「どんなものにでも例外が存在する」


TYPE/Zeroりみてっど
~アイコニック・マスターズ・ドラフト編~ 


主な登場人物

レイちゃん

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マジック:ザ・ギャザリング大好き女子高生。
それがMTGである限りフォーマット(遊び方)は選ばず、どんなゲームにも応じる。
珍しいフォーマットでデッキを組んだら、とりあえずレイちゃんのところに行けばいい。
プレイスタイルは『ジェニー&タミ―』(面白いデッキやコンボなどに創造性を発揮し、特殊なプレイを好む)
あまり色にはこだわらないが強いて言えば白いカードが印象的。
(神の導き、神聖の力戦、シェヘラザード、ハイタッチ、雪被り平地など)


アオイちゃん

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レイちゃんの親友。
『比較的』常識的なマジックプレイヤー。
変なフォーマットが流行るたびにレイちゃんに振り回されがち。
実はかなりの負けず嫌い。
プレイスタイルは『スパイク』(勝利のために技術を磨くプレイヤー)
好きな色は当然、青。


ミドリちゃん

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同じくレイちゃんの友達。
一般的なマジックプレイヤー。
基本的にスタンダード(最近発売されたカードを中心とした定番フォーマット)しか遊ばない。
パワーの高いクリーチャーとかド派手な効果が大好き。
プレイスタイルは『タミ―』(豪快さや興奮を求めるプレイヤー)
好きな色はもちろん緑。

長田クロミ

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タイプ0四天王のひとりであるゴスロリガール。
キャラを作ってロールプレイするプレイヤー。
マジックの背景ストーリーとかが好きで公式ホームページのストーリー記事を何度も読むタイプ。
美学的分類は『ヴォーソス』傾向(フレーバーテキストやイラストを高く評価する)


ミンメイ

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中国系アメリカ人留学生ガール。
「知っているのか、ミンメイ!」でお馴染み、カードショップの歩くMTGwiki
カード知識を集めるタイプのプレイヤー。
美学的分類は『メル』傾向(カードデザインやメカニズムを評価するプレイヤー)
本編でプレイしたことがない彼女の実力は…?

猿渡
久しぶりの登場(予定)。
仲間を仲間と思わない凶悪なプレイヤー…という演技を楽しんでるロールプレイヤーの男の子。
好きなフォーマットは魔王戦。
長田と同じくフレーバーを高く評価する。
マジック・ザ・ギャザリングは魔法使い同士の呪文比べ合戦」というイメージを重視している。




「ドラフト大会…?」

帰り道で不意に話題を振るレイにミドリは聞き返した。

「そう、いつものショップでドラフトの大会があるんだって」

レイはそう言いながらショップに向かうほうの道を曲がる。
ショップに行くこと自体はもはや暗黙の了解だ。

「なんでまた唐突に。公式イベントとかの時期じゃないだろ?」

「うん。 単なる草の根大会みたいな奴だよ」

「ドラフトに草の根ねえ…言葉だけだと、なんだか野球みたいだな」

ミドリはMTGのドラフトというのが「パックを開封してその場でデッキを組む遊び」だとは知っている。
でも実のところ、どんな風に遊ぶルールなのかはあまり知らない。

「ミドリちゃんもドラフトやってみる?」

「私は遠慮しとく。スタンダード以外はあんまり興味ないんだよ」

 

独創的なデッキを組む2人の幼馴染みと違い、ミドリはネットでレシピを探してコピーする。
ドラフトのような「その場でデッキを組む遊び方」はミドリにとってはあまりそそられない。

「まあでも、見るぐらいなら」

「どうせ見るならやろうよー」

「レイには わかんないかもしれないけどさ」

「世の中には自分で下手にプレイするよりも、上手いヤツのプレイを見るほうが楽しいっていう人間もいるんだよ」

そう言う意味ではスポーツ観戦とかに近いかもしれない。
プレイヤーの視点で見るよりも俯瞰で見る楽しさもあるのだ。
最近だとゲーム実況やRTA解説動画なんてのも同じような理由で流行っている。

「まあ無理にとは言わないけど…」

 

 



「それで? どうしてドラフト大会なんだ?」

「あー。うん、ドラフトっていうより使うパックの方が重要でさ」
「店長が『うちの店で変なフォーマットを流行らせた責任を取れ』って言いだしてさー」

「ああ、それはお前らが悪いやつだから、ちゃんと店長にごめんなさいしような」

カードショップの対戦スペースが無料開放なのは、遊ぶプレイヤーがその店でカードを買うためのサービスの一環である。
ミドリのようなスタンダードプレイヤー向けに最新パックを仕入れたのに子供たちが『レイたちの変な遊び』を真似をするようになり、
普通のマジックのカードパックがあまり売れないのは店側としてはあまり良くはないんだろう。

わかるとしか言いようがない。

「それで? 最新のパックでドラフトして遊べって?」

「いや、どうせなら不良在庫買って遊んでくれって」

「売れずに棚に積まれてるやつか」

話しているうちにショップについたので、店の戸を開ける。

「こんにちはー」

「あっ。レイちゃん、ミドリちゃん!」

「おっ、アオイは先にもう来てたか」

「ドラフトの話、聞いた?」

「レイから少し聞いたよ、いつやるんだ?」

「来週末の土曜日だね」

「使うのはどんなパックなんだ?」

「アイコニック・マスターズですわ!」

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「アイコニック・マスターズ…!!」

「知っているのか、ミンメイ!

会話に割り込んできたのはゴスロリ少女の長田と、中華系アメリカ人のミンメイ。

「アイコニック・マスターズはドラフト用の特殊セットアル」
「入っているカードはすべて再録カードで構成されているネ」

「アイコニックは『象徴的な』という意味で、マジックの象徴にふさわしい有名カードがたくさん入っているアル」


「ドラフトで『いかにもMTG』って感じのベーシックなデッキを組んで遊ぶためのパック ネ」

「ベーシックなMTG?」
「聞く限りじゃ、あんまり派手さはなさそうだな」

「実際、あまり売れ行きはよくなかったみたいなんだよね…」

「あー。派手さがなくて売れないから不良在庫なのか…」
「まあでも、変なマジックを流行らせた代わりのイベントには ぴったりか」


「それでもドラフト自体は面白そうなセットだから、安心して」

「なにせ『アイコニック・マスターズ』のキャッチコピーは『達人のようにドラフトせよ!』だからね」



~そしてドラフト大会当日~

「困ったなあ。欠席者がいて人数が足りないよー」

「人数?」

「公式ルールではドラフトは8人で遊ぶのを推奨しているネ」

「でも今日は7人しかいないんだよねー。困ったなあー」

「ドラフトって7人でやったらダメなのか?」

「ダメではないんだけど…やっぱり8人でやるほうが…」

「……。よしっ。私もやるよ」
「それで8人になるだろ?」

「いいの? 今日は見てるだけじゃなかったの?」

「まあ、私は下手くそかもしんねーけどさ。人数合わせくらいならやれるだろ?」
「やったことがないからを理由にして逃げてたら一生やらずに終わっちゃうからな」

「ありがとう、ミドリちゃん!」

「というわけでドラフト初心者のミドリちゃんが参加することになったので説明しながら進めるね」

「頼むよ。」

「まずは8人で円卓を囲みます」

 


「まあ、この店には円卓はないから長方形の机2つ並べるんだけどね」
「実際の形はどうでもいいから、とにかく全員で輪になるんだ」

机についたメンツを眺める。
自称「Type0四天王」の四人にミンメイ。
それからウチら幼馴染3人組…よく知った仲間たちだ。
待てよ、このメンツは…

「おい、レイ。」

「先へ進む前に1つ聞いていいか?」

「うん、ミドリちゃんはドラフト初心者だからね」

「じゃんじゃん質問してくれていいんだよ!」
「何かな? 何かな?」

「欠席した1人って誰だ?」

「……」

「いや、答えろよ」

「ミドリちゃんみたいに勘のいいガキは嫌いだよ」

「レイ! お前、最初から私を8人の頭数にいれてやがったな!!!!」

「おい。どういうことだ、レイ!」


「兄さんたちはお前がドラフト初心者のミドリちゃんにドラフトを教えたいっていうから集まったのに」

「わー! わー!」

 

他のメンバーの声をかき消そうと大声をあげたレイは店長に怒られた。

カードショップでは興奮しすぎて騒がないように注意しようね。


「はあ…。まあ、いいわ」
「別に抜けたりしないから、やろうぜドラフト」

「いいの? ミドリちゃん」

「その代わり今度からはちゃんとした誘い方しろよ」

「はい。ごめんなさい…」


「それじゃあ気を取り直して…『ドラフト草の根大会』あらため『ミドリちゃんにドラフト教えて8人で遊べるようになろうの会』をはじめるよ!」

はじめからそう言えばいいのに。

レイはあいかわらずの、トラブルメイカーで…

まあ、そういうところが楽しい奴で、

そういうところが、別にミドリは嫌いじゃあないのだ。


~~~~


「それじゃあ、みんな席に着いてね」


「着いたらパックを配りまーす」

「1人3パック受け取ってね」
「まだ開封しちゃダメだよ」


「ドラフトではパックを開けてその場で即席の40枚デッキを組んでもらいます」


「ただし、パックを開けて出てきたカードがそのまま、あなたのデッキの材料になるわけでは…」

「ありません!」


「あれ? 違うのか?」
「リミテッド戦はそうやってデッキを組むんじゃないのか?」

「リミテッド戦にも色々種類があるんだよ」


「パックを開けてカード・プールを作って限られたカード資産の中からデッキを作る遊びの総称がリミテッド」


「でも、その『カード資産』の用意の仕方によって違った遊び方になるんだよ」

「ふむふむ」



「今回やる『ドラフト』はリミテッドの中でも特に、自分で狙ったデッキが組みやすい遊び方なんだ」


「とりあえず説明を先へ進めるね」


「ドラフトでは開けたパックの中のカードから、カード1枚を選んで抜くんだ」
「この抜いたカードが『自分のデッキの材料』になります」

「残りのカードはどうなるんだ?」

「残ったカードは伏せて左隣の人に渡すよ」
「そして自分は右隣の人から1枚抜かれた後のパックを受け取るの」

「なるほど」
「そうやってパックをぐるぐる回しながら1枚ずつ抜いていってカード資産を集めるのか」

「その通り!」


「『ただパックを開けただけ』だと中身は完全にランダムだけど、ドラフトでは赤いデッキが組みたいなら赤いカードを優先して取る…みたいに、ある程度偏らせることができるんだよね」


「ただし、自分のところまで回って来れば…ですわね」

「注意しないといけないのは…」

「隣り合う人と同じ色のデッキを組もうとするとカードは手に入りづらくなるってこと」

 

「例えば隣同士で青いデッキを作ろうとしちゃうと…」
「強い青のカードを右の人が抜いた後の『余り』ばかりが回ってきて良いデッキが作れなくなるの」

「つまり隣りあった席の相手とは違う色のデッキを組んだ方がいいんだな」

「被りとか気にせず強いカードを取りまくるってのもひとつのアプローチだけどな」

「それでもいいのか?」

「最初はそれでも全然OK。隣に色の住み分け上手い人がいれば自然と避けてくれたりするしね」

「…あれ? でも実はこれ右の奴とは被りを避けるけど」
「左隣の奴とは被らせた方が強くないか?」

「仮に自分が渡す相手と被らなくても、そいつが流したものは1周するまで自分の手元に来ないんだから…こっちだけ強いデッキを組めるじゃんか」

「うん。1パック目ではね」


「1パック目のカードを全員で分け終わったら、2パック目を開けるんだ」

「これも同じように回すけど、2周目は逆向き。右の人に渡す」
「最後に、3パック目はもう一度反転して1周目と同じ向きに回すよ」

「なるほど。渡す相手が左右、逆回りになるのか」


「もし1周目で左の奴と被ると2周目で今度は自分が『強いのを抜いた残りかす』を渡されることになる…OK、なんとなくわかった

「とはいえ完全に被らないようにするのも難しいから2色デッキを目指すのをおススメするよ」


「青赤デッキを目指せば隣と青が被っても赤いカードが手に入るし」
「それで思ったより青が集まらなくて、青よりも黒の方が手元に多いなら赤黒デッキが組めたりするからね」

「まあ、習うより慣れろだ。やってみるか」

「それじゃあ始めようか」
「1パック目開封!」

「ふむふむ」

(とりあえずこのパックには…緑のレアカードが入ってるな。好きな色だし、ちょっとカッコいいな。最初はこれを取るか…)


「よし」
「こいつに決めた!」

「早っ!」

「で、左に回すんだよな」

「待って待って。全員が何取るか決めてから隣に渡した方が良いよ」

「そうなのか」

「そうしないと選ぶのが遅い人のところにたくさんパックが溜まっちゃうからね」
「それから取るのを決めた後も残りのカードにも目を通しておくといいよ」

「あー。そういうのは記憶力悪いからいいわ」

「まあ初めは気にしなくても遊べるからいっか…」


「さて、みんなとったかな?」

「じゃあ、せーの」
「ドーラーフートッ!」

「???」

「何今の?」

「隣に回すときの掛け声ですわ」

「それいる? 恥ずかしくない?」

「いります!」
「いるの!」

「まあ別に公式大会とかではやらないけど」
「だからこそカジュアルに遊ぶ時は、こういう掛け声は欠かせないんだよ」

「そ、そういうもんなのか」


「じゃあみんな、次のカードを選ぼーう!」

「うーん。」

「おっ。これさっき取ったカードと色は違うけど、一緒に使えばコンボになるな…」

「おっ、早くもわかってきた感じ?」

「ああ。こうやってデッキの材料を集めていくんだな」


~~しばらくして~~



「なんかどのカードも『別にいらない』って感じになってきたな…」

「もう1パック目も終盤だからね」

「こういう時はどうするんだ?」

「まあ適当に1枚とってもいいんだけど」
「私なら『使われたら嫌なカード』を取るかな」

「例えば私が青白の飛行クリーチャーデッキを組んでたとして…例えばだよ?」
「青も白も入ってないパックが回ってきたとするじゃない」
「もしその中に《垂直落下》が入ってたら…」

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「次の人たちに《垂直落下》が行き渡らないように自分で抜いておくかな」

「青白のデッキを組むのに緑の《垂直落下》を取る…そういうこともあるのか…」



~~~1パック目終了~~~

~~~2パック目開封~~~


「今度は取ったら右側に回すんだよな」

「それじゃあ開封してっと…」



(あー。このパック欲しいカードが2枚ある…)

「これ、なんとかして1パックから2枚取ったりできない?」

「ダメです」

「わかる…気持ちはよくわかるよ…」

「ドラフトやってるとみんな一度は経験する奴だね」

「どっちにするか悩むな…」
「よし、こっちに決めた!」

「それじゃあ次に回そうか」


「せーの」
「ドーラーフートッ!」


(おっ、さっき取らなかったカードが回ってきたパックに入ってる!)
(これで両方デッキに入れられるな!)

「これは結構いいデッキができちゃうんじゃねーか?」

「ふふふ。そうなるとこの先もっといいカードが来るかもね?」

「えっ? 運を使い切ったから後は悪くなるんじゃねーのか?」

「そうとも限らないよ。回してれば分かるんじゃない?」

「…?」

~~~3パック目開封~~~

(あー! 凄く強いじゃんこれ!)

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(…でも、これ自分のデッキには入らないな…)

(それよりも1パック目で取ったアレとコンボするこいつを取って…)

「ドーラーフート!」
「ドーラーフート!」
「ドーラーフート!」

「あれ!?」

「どうしたの?」

「いや、なんか凄く強いカードが回ってきて…」

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「このパック。もう3回はカード抜かれてるのになんで誰もレアカードを取らないんだ?」

「おっ、それは1パック目と2パック目の成果だよ」

「例えばミドリちゃんも強いカードを取らずに次の人に渡したことなかった?」

「あったよ、全然色が違うカードだから取っても使えないし…」

「…!!  そういうことか!」

「気づいたみたいだね!」


「最初の2パックで近くの人とデッキ傾向が全然違う状況」
「つまり『住み分け』が上手くいっていると、自分が使いたいレアが他の人には使えないカードになるんだよ」

「強いカードがくるのは『運』だけじゃなくて理由があるのか!」

「もちろん運による振れ幅もあるけれど3パック目ともなると、自分に合った切り札は手に入りやすくなるね…!」

「思ったよりも奥深いな…ドラフト…」

 

 


~~~3パック目終了~~~

 

 


「さあ、ここからは手元に集めたカードでデッキを組んでいこう」


「普通のMTGは土地がないと始まらないから…」
「基本土地カードを好きな枚数追加で入手できるよ」
「今回はショップの方で貸してくれるから、ありがたく使わせてもうね」


「取ったカードから厳選したカードと借りた基本土地を合わせて40枚以上になるようにデッキを組む」


「『いつも』よりだいぶデッキが厚くなるね」

「そこは普通『60枚デッキより少ないんだよね』って言うところじゃねーのか…」


「タイプ0中毒者の思想だ…」
「しかし普段はコピーデッキ使うから、構築の感覚が分からないな…」

「とりあえず初心者は土地が17枚と、取ったカードの中から厳選した23枚っていうのを基準に組むといいよ」

「ふーん、取ったカードの半分くらいはデッキに入れないんだな」

「メインの23枚の座を奪い合う厳しいスタメン争いになるね」


「OK。だいたい分かった」

 


次回、いよいよ対戦開始!

超次元MTG対戦 

TYPE/Zero あいこにっく

第2話 「負けられない戦い!」

 

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新シリーズ『TYPE/Zeroりみてっど』開始に当たって…

新シリーズ『TYPE/Zeroりみてっど』開始に当たって…

*お知らせ*
以前、予告したTYPE/Zero番外編について
パックを開封しその場でデッキを組む遊び方、
特に「ドラフト戦」専用の特殊セット「コンスピラシー」を扱うという予告をしていましたが…

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実際にコンスピラシー編を書こうとして「何が特殊なのか?」が分かりづらいな…と感じました。

つまり「普通のドラフト」を知らずに「特殊なドラフト」についての紹介ストーリーを読んでも
あまりおもしろくないことに気がついたのです。

ありがたいことにTYPE/Zeroシリーズは当初の予想から大きく外れて
マジック:ザ・ギャザリングを良く知らない人」にも大変ウケました。
これは嬉しい驚きです。

一方でそれは作者側の考える「この辺は説明しなくても読者であるMTGプレイヤーは知ってるよね?」という部分と
実際に読んで頂いた「マジックを知らないけどTYPE/Zeroは読むよ」という読者との認識に差が開きつつあるということです。






というわけで予告していた『TYPE/Zeroこんすぴらしー』は延期です。

代わりに今回から『TYPE/Zeroあいこにっく』の連載が始まります。

読者の皆様、大変お待たせいたしました。
特殊ドラフトセットの前に『普通のドラフト』をお楽しみください。

 

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 ↓第1話

第1話はドラフトのチュートリアル回なのでドラフト経験者は2話からでもOK!

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第2話(デッキ構築を終えて対戦開始)はこちらから↓

 

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【布教】壊れてしまった特別なマリコ【百合】

TLに流れるマリコブロークンと言った単語で思い出す漫画がある。

 

それは壊れてしまった特別なマリコをめぐる物語…

 

 

 

SKET DANCE  作:篠原健太

第91話「壊れてしまった特別な…」

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篠原健太 on Twitter: "【クソゲーをやってみたら思いのほかハマった話~ビデオゲーム編~】… "

(文庫版6巻収録)

 

 

 

スケットダンスの「黄老師」が絡むエピソードはどれも面白いのでおススメだ。

ヒュペリオンの名前が未だに忘れられず残っている。ほんと凄いと思う。

 

しかし、今回紹介したいのそっちじゃない。

壊れてしまったマリコの漫画なんだよ。

 

スペシャル・マリコ・ブロークンの方の漫画スケット・ダンスはギャグだけでなく時に重めの話も扱い、「スイッチ・オン」とかは読んでいてかなり心に響いた。

しかし『重さ』でいうならこれから紹介する漫画も負けてはいない。

 

では、紹介しよう。

最初に僕がTLで見た「ブロークン」した「マリコ」の漫画がこちらだ!

マイ・ブロークン・マリコ

 

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comic-walker.com

 

 

さて、マイ・ブロークン・マリコがどんな漫画かというと

かなりヘヴィな百合漫画という紹介になると思う。

ただ、これを百合漫画と呼んでいいかはちょっぴりの疑問が…

「はっ? 僕の中の百合回路はコレを百合判定しているんだが?」

 

ゴホン。

ええ、僕は百合だと思うけどもそうだとは思わない人もいるだろう。

ここでは中立的な立場で百合というフィルターを外して紹介するよう心掛けてみよう。

それでも漏れ出したらごめんなさい。

 

こちらのマイ・ブロークン・マリコは女主人公の親友マリコが死んだことから始まる。

起こった事実だけを書くなら、

マイ・ブロークン・マリコ「死んだ友人の遺灰」と逃避行する話だ。

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マイ・ブロークン・マリコ 第1話「エスケープ」 作:平庫ワカ

 

 

あまりにもパワフルな話だ。

「なんでそんなことをするのか?」

「主人公と親友の関係は?」

そういった疑問を覚えたあなたに私は答えたりはしない。

それは漫画に描いてある。

気になったあなたが読むべきはこの記事の続きでなくリンク先だ。

comic-walker.com

どうだい?

読んでくれたかな。

 

読んでくれたなら既に、この記事は役割は果たしたことになる。

でもまだ君が読んでくれていないのなら、

読んでもらうために僕は「マイ・ブロークン・マリコ」の布教をしよう。

 

この物語は、まとめてしまえば

 「死んだ友人の遺灰」と逃避行する話だと紹介した。

それは…狂人のすることだ。

普通はそんなことはしないし、それができる人はタガが外れている。

だけど。

だけどそんな狂人めいた主人公に共感してしまう。

感情移入を起こせてしまう。

なんでだろう?

思うに、「スピード感」と時折見せる「リアリティ」がその理由なんじゃないだろうか。

 

「遺骨を奪おう」と主人公が決意してから実行に移す流れのスピード感がすごく早くて

畳みかけるように話が進む。

 

そして主人公が時折見せる変なリアリティ

「友人の遺骨を奪って逃避行する話」にはリアリティなんてない。

そんなのは想像しようもないファンタジーだ。

でも、マイ・ブロークン・マリコでは一見「あるあるネタ」のようなものが挟まれる。

タバコを吸う不良学生がヤニの匂いを誤魔化すためにトイレの消臭剤を使うとか

はじめてのバイト代で買って履き古した靴に感じる黴臭さとか、

高速バスで隣に座るゴツいおっちゃんにビビるとか、

そのおっちゃんが見た目に反してノーパソで移動中に仕事する人って言うギャップに驚いたり。

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 マイ・ブロークン・マリコ 第2話「レッツゴーハワイ」作:平庫ワカ

 

なんていうのかな…

地に足がついている描写が挟まれるんだ。

 

狂人の物語なのに読者が主人公に感情移入できてしまうような導線として、

そういう地に足のついた描写が挿入される。

 

想像もつかないような狂人の所業のはずなのに、

どこまでも「リアル」だ。

おかしいよね、漫画のに。

でも読んで高ぶるこの感情は「リアル」以外の何物でもないんだ。

 

友人の遺骨と逃避行する狂人に読者が目線を近づけてリアルな感情が浮かぶ。

そういう体験を僕はこの漫画で得られた。

 

この物語は荒唐無稽で突拍子もない「友人の遺骨を持って逃避行する話」だ。

それはとても非日常で破滅的で何もかもぶち壊すような衝撃にあふれていて…

 

それでもやっぱり人生は続く。

読みあえたあなたの人生も続く。

 

「派手なイベントでエンドマーク」がついたりせずに、人生は続くのだ。

 

これはそういう漫画だった。

 

*1/8追記*

単行本発売につき加筆修正。

↓Amazonの販売ページ

 

 

 

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【宣伝】『三体』のすゝめ【海外SF】

『三体』は「巷で話題」と言うには一押し足りないが、すくなくとも界隈ではもはや「隠れた名作」などということは はばかられるような、「話題の傑作」だ。

既にこのブログでも何度か記事を書いている。

 

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改めて今回紹介する本について。
先ほどから『三体』という言葉を繰り返しているのが、その本のタイトルだ。
あまりにもシンプルな名前なのでTwitterのTLなどで見かけても書籍タイトルだとは気づかなかったという人もいるかもしれない。

 

しかし今、あなたは『三体』を書籍名だと認識できるようになった。

さて、この『三体』という小説は実はその筋では非常に知名度の高い作品だ
世界中で話題…とは言ってもハリーポッターなどのようにお茶の間の話題に上がるタイプではなく、
実際、自分の周りのリアルの友人の間では一度も名前が挙がったことはない。


一方で、TwitterではSF作家関係のアカウントで何度も興奮して語られるタイトルであった。

つまるところ「万人受けしないがコアな層に刺さる作品」に分類される。


ただ読んでいる感想として、三体は若干ながら「コアな層」よりもう少しだけ大衆寄り…
つまりライト層でも楽しめるような作品に「近づいている」と思えた。
(あくまで程度の問題であり巨視的には「万人受けしないがコアな層向け」であることは踏まえてほしい)

 

何故、今『三体』が話題なのか?

 

この作品。驚くことに10年以上前の小説
それが何故2019年の日本で話題になりはじめているのか?

 

つまるところ、言語の壁の問題だ


雑誌掲載時に「コアな層が盛り上がっただけ」である『三体』はその後の単行本化で一躍、中国では話題の作品として盛り上がったそうですが…
当たり前のことながら中国でこの小説が書かれた時の言語は中国語

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中国語の小説が世界で流行るには言語の壁を超える必要があります。
とはいえSF作品の翻訳は非常に大変です。
科学的な言葉はその国で教科書に載るようなちゃんとした言葉っぽく訳したいし、
作中の造語はそれらになじませつつ原文のニュアンスを組んだ言葉として新たに訳す必要もあるとなればなおのことです。

 

結局、5年の歳月を経て、『三体』は英訳されて…


2015年にヒューゴー賞を取り…ああ、こういう堅苦しい説明はいらないだろうし、
興味があればいくらでもネットで調べられる。

 

第一、僕はそれまでヒューゴー賞という賞のことも知らなかったというのに、
それを取ったから『三体』は凄いのだと語ることに何の意味があるだろう?

 

とにかく。とにかくだ。
5年の歳月を経て翻訳された『三体』英語版『 The Three-Body Problem 』は再び脚光を浴びる。

英語圏の人が読めるようになり新たな読者層に届くようになった。

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そしてそれからさらに5年経った今年、ようやく日本にも『三体』は上陸したのだ。

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というわけで「そんな世界的に凄い作品」がなんで10年も日本では見かけなかったのか? という疑問の答えが言葉の壁だとわかってもらえたら、いよいよ本作の魅力に迫ろう。

 

三体』って どんな小説?

 

三体』はシリーズ三部作1作目にあたる。

現在は1冊目である『三体』のみが翻訳されているが、
続く『黒暗森林』も来年には日本語版が発売されるので問題なし。
(三巻に関してはまだアナウンスされてないと思うのでみんな買って応援してネ!)


この巻だけでもそれなりに1つのお話が終わるものの、
全体としてはやはりまだ起承転結の起。


これから壮大な物語・時代のうねりがどう動くかはわからないままに終わる。
…と書いてしまうとなんかまとまりが悪く思えてしまうな。

 


ラストに向けて絶望的な脅威を示し主人公たち科学者の心をへし折るような展開から、
学はないが現場は歴戦の警官が彼らを叱咤し、逆転のきっかけを与え終わるので、
読後感自体は「尻切れ」ではなく「これから逆転開始…!」みたいなあおり文の少年漫画感があって悪くない。

 

ストーリーは?

 

この物語の語り手は2人
言ってみればダブル主人公だ。

 

ただし、バディものというわけではない

2人は同じく中国に住む科学者だが、年齢も離れている。
1人は過去に中国で実際に起きた『文化大革命』の頃の女性研究者、『葉 文潔』(イェ・ウンジェ)
もう1人は現代を生きる、最先端のナノマテリアル技術の開発者の男性、『汪 淼』(ワン・ミャオ)

2人の物語は最初は別々のものではあるが、汪淼(ワン・ミャオ)と年を経た葉文潔(イェ・ウンジェ)が出会い物語が結びつく。

 

ふむ。構造的なことでなく、もう少し物語に寄せて説明しよう。

 

章の順序としては葉文潔(イェ・ウンジェ)が先に出てくるが、ここでは汪淼(ワン・ミャオ)に焦点を当てよう。

 

ある日、ナノマテリアル研究者の汪淼(ワン・ミャオ)のもとを警官と軍人が訪れる。

 

なんでも優秀な科学者の連続変死事件が起きている。

 

事件と言うとこの話がミステリのように思えるかもしれないので先に警告しておくと、これはSF小説だ。


謎解きをしようとするのは自由だけれど、そうやって読んでしまうと「わかるか、こんなの!!」とお門違いな怒りをぶつけることになる。
念を押しておこう。これはミステリじゃない
ノックスの十戒とかそういうのは守る必要も義務もない(別にミステリだって十戒を守る義務はないけど)

 

だいたいノックスの十戒を引き合いに出すなら「中国人をだしてはいけない」とかいうアレに1ページ目からひっかかるしね。

 

とにかく分かってほしいのは三体はSFなので、この自殺はミステリーではないということだ。
なにかトリックがあって自殺に見せかけて死んでいるのではない。
彼ら研究者は本当に死んでいる。

なぜ彼らは自殺していくのか?
ある女博士の遺書には『物理学は存在しない』という言葉が残されていた。


果たして遺書の意味するところは…?

という感じで始まり、主人公のひとり汪淼(ワン・ミャオ)は、この不思議な『事件』に関わっていく。
起こる出来事は「現実にはありえそうにない」ことばかりで、この話の強いSFっぽさはこちらのパートで特に際立つ。

一方、もうひとりの主人公である女博士、葉文潔(イェ・ウンジェ)の話は彼女が若いころ、つまり過去の中国で実際にあった『事件』である文化大革命についてから始まる。

 

こちらは一転して地に足がついた感じで、過去に現実に合った悲劇を描く。
そこから「怪しげな研究をする中国の施設」というこれまた変なリアリティ(フィクションでのあるあるネタみたいな意味)のある部分から
汪淼(ワン・ミャオ)の関わる現代の『事件』へのつながりが生まれていく。

 

三体』はミステリーではない。
ミステリーではないが『事件』を描いたものだ。
壮大な『殺●●事件』だ。

 

なんだって?
いったい何が殺されるっていうんだ?
人か? 動物か? 組織か?

いいや、殺されそうになっているのは…『科学』だ。

 

どういうことなのか?
それは…流石に本編を読むしかないだろう。

 

幸運なことに日本語版では『科学を殺す』と言う部分についての導入無料で読むことができる。


こちらのサイトで日本語版三体』の発売を記念して、4章から一部、発売前に先行公開されている。

きみは現代中国SFの最高峰『三体』をもう手にしたか? :『WIRED』日本版 先行公開(前編)|WIRED.jp


すでに発売した今も、ここでは無料で公開中だ。

4章からと聞くと変に思うかもしれない。

しかし1-3がダブル主人公のひとり、女博士葉文潔(イェ・ウンジェ)の章なので、

4章から読めば現代のナノマテリアル研究者『汪淼(ワン・ミャオ)』のパートの最初から読める。

加えて言えば私が過去記事に書いたように4章から読む方が三体は読みやすい。

詳しくは過去記事参照↓

 

omamesensei2.hatenadiary.jp

 

 

 

4章からの無料公開分を読、み気に入ったら『三体』を買って読んで欲しい。


とはいえ、やはりネタバレに配慮した「おもしろいよ」アピールには限界があるな。

 

なのでこの先はネタバレありです。

 

ネタバレが嫌!ってひとはブラウザバック…いや、ネタバレを気にするってことは読む気になってるってことですよね?
はい、Amazonのリンクを置いておきます。

 

 

 

今のところ買う気がない人ネタバレを気にしない人
この先のネタバレありの、僕の感想つきのあらすじを読んで、
三体すげー!!」と思ったら是非、購入して本文を読むことを検討してほしい。

それじゃあ、
ネタバレ部分が嫌いな人の目に留まらないように少し改行を挟むね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


ネタバレOK?


それじゃあ、ここからはネタバレありで『三体』の話をしていくよ!

 

えっとどこから話そうかな。
言いたいことはいっぱいあるんだけど。
うん、まずはやっぱり『事件』の犯人についてから触れていこう。

 

せっかくネタバレ解禁しているし、この本は推理小説じゃあないので、
犯人について書き始めるほうが分かりやすいからね。
というわけで発表しまーす!

 

犯人は…

 

犯人は…

 


犯人は…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『宇宙人』です。


三体』は宇宙人との「静かに始まる戦争」を描いたSF作品なんです。


さて、ここでタイトルについて説明しよう。


タイトルの三体は数学の「三体問題」から取られています。


お互いに影響しあうような重さを持った3つの点について運動方程式を立てて動きを予想するルールが見つけられない…というのが「三体問題」です。

 

一見シンプルな「3つの物体があるだけ」の状況でも、
それら3つが互いに影響を及ぼしながらどんな動きをするのかはめちゃくちゃ予想しづらいんです。

予想しづらいというか…ぶっちゃけていうと現在の数学の理屈では「三体問題は解けない」というのが定説です。

 

なんていうか「問題を解くのに十分な条件が揃っていない」ことになっているんだ。
パーツの欠けたパズルを完成させることができないように、三体問題も基本的には解けない。

 

で、物理の授業を受けたことがある人は分かると思うんだけど、
「ただし、○○は××とする」っていう条件が問題に加わると解けるようになる。

 

例えば「地球」「月」「太陽」の3つがどんな動きをするか


「ただし、地球と月に比べて太陽は非常に重いものとするみたいに条件付けしてやることで
「足りないピース」が埋まり解けるようになる。

 

これはどちらかと言えばクイズに答えを確定するヒントを加えるようなものかもしれない。

問題 

?にひらがなを一文字入れてできる言葉は何でしょう。

「 あ ? る」

 

この問題の答えが「開ける」なのか「アヒルなのかはわからない。

しかし「ヒント:鳥の名前です」と付け加えると、「アヒル」が答えだと分かる。

 

あくまでたとえ話だが三体問題はこの「ヒント」がない場合のクイズなので
もしかしたら答えは「浴びる」かもしれないし「飽きる」かもしれない。

 

あくまで「鳥の名前」という制限があって初めてこの問題は解ける。

 

条件。それは太陽が地球や月よりずっと重いからだ。
文字通り桁違い…どころではない…6桁くらい違う。

 

じゃあ、もし…十分に重い星が3つあったら…?

 

先ほどの「ただし、地球と月に比べて太陽は非常に重いものとするという条件がなければ…?

それは「解けない三体問題」になってしまう。

 

 

本作の宇宙人「三体星人」たちが済む星がまさにその「解けない三体問題」に苦しめられている。
彼らの世界は「十分に重い星」が3つあるんだ

 

そう、つまり彼らの星には「3つの太陽」が存在する。
太陽Aと太陽Bと太陽Cはそれぞれが互いに十分な重さを持った星だ。

 

故に三体星人たちには「季節がどう移ろうか」なんて予測がさっぱり建てられない。
だって太陽がどんな風に動くかの法則が全然見いだせないんだ。

 

ある時は太陽から離れすぎて世界は極寒の地となり、
ある時は両側から太陽と太陽に挟まれて夜が訪れない高温の世界になってしまう。

 

あまりにも過酷なこの地で三体文明は滅亡と復興を繰り返してきた。

そんな彼らがあるきっかけから地球の存在を知ってしまった。

「は? 太陽が1つだけ? それめっちゃ過ごしやすくない???」

画して三体文明は新天地を求めて地球侵略を決意する。

 

とはいえ互いの星はあまりにも距離がある。
お互いの距離は光の速さでなお8年はかかる。

三体人は惑星規模で移住をしようとしてるので、流石に光の速さでの移動はできない。
地球に彼らが来るまで450年以上はかかる。

 

450年。


それは長く、短く、そして長い。

絶望的な環境の星系から侵略しにこようと思えるほど短いが、とても長い。
地球人類の技術の進歩スピードは最初はゆっくりしたものだったが、
ここ十年での技術の飛躍はとんでもない。

450年も猶予があれば地球の科学が三体星人の超科学力を上回る可能性は十分にある。

 

そのため三体星人は自分たちがたどり着くまでの技術爆発を阻止するべく、地球人のカ科学発展への妨害活動を始める。
それこそが「科学が殺される」ということだったんだ。

 

科学を殺すために三体星人がとった作戦は2つ。
そのうちの1つが「ある特殊な発明」を利用したものである。
そこで三体星人は「ある特殊な発明」を利用して「地球の科学の発展」を押しとどめようという工作活動を始める。

そちらについて本編を読んでいただくとして…
もう1つの作戦についてはこれからネタバレしていこう。

 

さて、自分たちよりはるかに優れた力を持った三体星人と戦うんだから、
地球人類は手を取り合って対宇宙戦争の準備を進めて一致団結…するわけがないんだよな…人類…

人類はおろかなので、内ゲバが始まるんだ。
この愚かさ…内ゲバっていう言葉が本当にしっくりくるんだよな。

内ゲバっていうのは「内部ゲバルト」の略だ。
暴力を意味する「ゲバルト」からの派生語だ。

雑な説明になるけど「革命側が権力側に暴力すること」くらいのニュアンスなのがゲバルト。
で、内ゲバは「同じ革命側なのに考えの違いから味方側に暴力を振るうこと」を指してる。

地球側として協力すべきなのに、科学者を襲って殺してる奴らが地球の中にいるんだ。

うーん。やはり人間は愚か。
いや、愚かなのは実際には「科学者を襲う人たち」ではない。

そもそも「科学者を襲う人たち」は明確に「三体星人側」について地球を敵に回しているので、
そういう意味では勢力が違うので内ゲバではないとも言える。

じゃあなんで内ゲバがしっくりくるのか?

ことの発端は中国の過去の歴史の話になる。
文化革命と呼ばれる事件のせいで多くの知識人が内ゲバの犠牲になり死んでいる。

理性的な知識が爆発的な感情と暴力に屈して多くの科学者の命が失われた。

そこから生まれた「人類への不信」が地球内の「三体星人側勢力」を生み出してしまうまでを描く
「裏のパート」こそが女主人公、葉文潔(イェ・ウンジェ)の話なんだ。

「あっ。人間は愚かだ…、外部からの救いが地球には必要なんだ…宇宙人に侵略してもらおう」みたいに知識人の中から「地球人類の裏切り者」が出てくるプロセスを描くことで
ついそちら側にも感情移入してしまう。

三体』に登場する地球の人間が愚かなのは「仲間割れをするから」でなく、「仲間割れをした過去」に起因している。
そしてその「過去」はフィクションではなく、実際に歴史に刻まれているんだ。

 

こうして「地球側の人類」vs「三体星人派の人類」の戦いに話はシフトし、
地球人類は一旦勝利する。

しかし、それは単に同じ地球人を倒しただけだ。
これから待ち受ける真の敵、三体人たちにして見ればそんなのは虫けらの潰しあいに過ぎない。

「三体人に比べれば地球人など虫けらだ」


その事実を前に男主人公、汪淼(ワン・ミャオ)は打ちひしがれる。
そんな彼に喝をいれるべく冒頭で出てきた警官が彼を田舎に連れていく。
(この警官がまたキャラが立ってていいんだ。最初は不快な奴なのにだんだん頼れる兄貴に見えてくる)
そこにはイナゴに荒らされる農地が見えた。

「イナゴと人間の技術格差と、人間と三体人の技術格差のどちらが大きい?」
「人間は奴らにとって虫けらかもしれないが…人間は未だに虫けらに勝てちゃいないんだ」

こうして反撃の希望をもって『三体三部作の第一部は幕を閉じる。

いやあ、第二部黒暗森林』が楽しみで仕方ない。

 

SF的な小難しさは控えめで読みやすく、エンターテイメントとして地味なのに壮大で面白い…という奇妙なバランスで成立しているのが
三体の魅力のひとつだろう。
壮大さはこの記事からでも断片的に摂取できるが、語りの面白さはやはり本文を読むしかない。

もし興味がわいたなら是非、『三体』を読んで欲しい。
そして一緒に来年発売の『黒暗森林』を待とう。

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【映画感想】ワンピース STAMPEDEはウソップの映画だった

スタンピードを見て海の戦士になれ

さて、現在 劇場公開中のワンピースの映画の話をしよう。

「え? 豆猫さん、そういうの書くの?」っていう人もいるかもしれないけど、
別に僕だって「ワンピースと言えばオマツリ島っていう問題作があってね」しかワンピース映画の話題がない人間ではないのだよ。


(それはそれとして今回の映画、仲間の絆の話だし、祭りの熱狂について熱く語るのでオマツリ島を連想しないでいるのは無理だったよ。)


というわけで「ワンピースのお祭り映画に便乗してオマツリ島のことを語る」みたいな記事ではなくて、
純粋にワンピース映画最新作の話をしていこう。

 

「ワンピース STAMPEDE(スタンピード)」

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 ONE PIECE STAMPEDE



あっ、その前に知っておいてほしいんだけど僕が一番好きな麦わら海賊団のクルーはウソップです。


別に僕は毎年ワンピース映画を追いかけているわけではない。
さきほども述べたようにオマツリ男爵の話とかをする悪いオタクだ。

 



そんな僕がスタンピードを見たくなったのは他の映画の上映開始前のCMである。
天気の子、ジオウOQ、ドラクエYSとかを見てると冒頭の予告で挟まるCM。

驚くことにワンピース映画20周年記念作品らしい。
とりあえず、まあ一緒にCMを見てもらおうか。

m.youtube.com



なかなかワクワクさせてくれるCMで「え!? アイツが!?」みたいなのの連続に、ヤバそうなワードがちらほらと出る。
まさに「お祭り映画」って感じの派手さを感じる作品だ。

この映画が見たい…!という気持ちの半面。
正直なところ気に入らない部分もあった。

まあ前振りしたのでわかると思うけど、ウソップの扱いについてだ。

あのさぁ…

ウソップ像が古い


記念作品ということもあって「今のワンピースは知らないけど昔ワンピースを読んでた大人」とかに対してめちゃくちゃ丁寧に懐古要素とかを混ぜつつも、
「生まれる前からワンピースの連載が始まっていたので昔のワンピースはよく知らない子ども達」楽しめる作りになっている。


それは本当に難しいし素晴らしいことなんだけどね。

だからといってキャラクターをステレオタイプに納め過ぎているんじゃあないか?

確かに…確かにウソップは戦闘能力では他の仲間に比べて一段劣るかもしれない。
ああいや。「かもしれない」っていうのはウソップ好きオタクの妄想だ。

明確に「戦闘力」の面ではウソップはルフィ・ゾロ・サンジより下として扱われている。
昔はその辺をモノづくりとかでカバーして船大工として働くことでバランスを取っていた。

だが現在の麦わら海賊団には正式にな船大工として一味に加わった男、フランキーがいる。

メリー号の船大工、ウソップは
サニー号以降の冒険ではちょっと立場が変わり「砲手」
海だけでなく陸で戦うワンピースの文脈で言えば「狙撃手」として扱われる。

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https://www.onepiece-movie.jp/character/



つまり今のウソップは後方から援護射撃をする支援職の準戦闘員だ。

武装色の覇気」のような最近のワンピースの戦闘員の必須技能の習得でさえ怪しい。(見聞色には目覚めてるっぽいけど明言はなし)

たしかにウソップは弱い。


だからといって…だからといってだよ!!!

改めてCMを見てみよう。

m.youtube.com



あまりにもウソップの扱いがひどくはないだろうか?

 

 


「噛ませのウソップはどうせ戦闘では役に立たないので、今回のボスの紹介ついでにボコられて、ルフィがウソップがやられたことに怒るよ」
「怒ったルフィは強い! 友情パワーで大逆転だ!」
みたいなさあ…

はぁ…

そういうところの扱いが雑なのは本当にやめてほしい。


確かにメインキャラに比べてウソップは弱いかもしれないが、数々の冒険を経てウソップは強くなった。

漫画の方ではそれがしっかりと描かれている。
狙撃手の枠に収まってからのウソップの成長は凄い。

昔のウソップしか知らない方のために説明すると、
一度麦わらの一味がバラバラに散って、修行してから再結成するエピソードがあったんだ。

そのあたりの修業期間でウソップは「不思議な植物がたくさんある島」で2年を過ごした。修行の最中にウソップは「特定条件下で弾けて急成長する怪植物の種」=ポップグリーンを何種類も集めている。

現在のウソップはこれらの何種類ものポップグリーンを使って、

敵を拘束したり露払いや時間稼ぎをする支援役としてのバトルスタイルを確立している。

ウソップはもう十分に強くなっているのだ。

にもかかわらずCMの雑な扱い。

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こういうお祭り映画を原作者ががっつり監修するなら、もっとウソップ像をアップデートしてほしい。


ウソップはあの頃と変わらないようでいて、強くなっている。

そしてウソップらしさはブレていない。
本当はそこをちゃんと扱ってほしい…。

 

そう思いつつも、CM全体は僕の中の子ども心に火が付くやつだったので映画は見にいくことに決めた。


そして面白いところはちゃんと褒めたうえでウソップの扱いについてちょっとネタにしつつ愚痴るか、
「あんな扱いだけどウソップは強くて~」みたいなことをツイッターで呟いて終わり。

 

そのつもりでいた。悪い。悪いオタクだ。



ああ、ウソップファンのみんな。
この記事をここまで読んでスタンピードを見たくなくなってしまっただろうか?

すまない、もう少しこの記事を読んで欲しい。



さて、ここまではCMの話だ。


実際に劇場に足を運んで見てきた結果、感想は大きく異なったものになる。
(そもそも呟いて終わりってさっき書いたみたいにならず勢いで感想長文ブログ書いてる時点でお察しだが)

 


いや、ほんとすごい。


ウソップがカッコいい。

 

ウソップが海の戦士だった。


ウソップの解釈一致!!!



スタンピードは色々と最高な部分があるが、それを脇に追いやるほどに
圧倒的なウソップ映画だった。


あの人が出るの!? みたいな意外なゲストの話とかは劇場で見てもらえばいいからここには書かない。(そういうところもちゃんと面白かったんだよ)


僕の中でウソップ映画だと言えるくらいにはスタンピードはウソップ映画だったんだ。


CM部分では一切出さない「真の海の戦士ウソップ」がそこにはいた。


「仲間の弱い奴がやられる」

「リーダーが怒る。俺の仲間に手を出すな」

「リーダーがひとりで敵に勝つ」

僕はこの流れが少し嫌いだ。
ここでいう「仲間」はどうしても綺麗ごとで色をぬっているだけで、実際にはコマだ。
「ボスの手駒、所有物に手を出したのでボスが怒った」という個人の話なんだ。


一見、仲間の絆があるように見えて、実際には暴力的で強い個人がそこにいるというだけだ。

 

ナミに手を出せばアーロンが怒る。

そこに絆はあるのか?



ああ、もちろん全てのクルーが戦力として強い必要はない。


例えば実際にはサンジは戦闘が強いけれど、仮にサンジが戦闘が苦手なコックさんだとしても、彼は立派に麦わらの一味だ。
戦闘は担当分野じゃなく料理担当だったというだけのことなんだ。


でも実際にはサンジは戦える。


ウソップはどうだろう?

サンジがコックであるように、船を修理する大事な役目があr…

あったのはヤギの船、メリー号の頃の話だ。

現在のライオン顔のサニー号の船大工はフランキーだ。

ウソップではない。

じゃあウソップは?
今のウソップは狙撃手。戦闘員だ。

戦闘員であるウソップが、戦闘でボコられてそれで終わる。
役割をこなせない。
より強い戦闘員である船長のルフィが敵を倒す。

ウソップのいる意味が…問われている。

とくにルフィが「覇王色の覇気」を使いこなしてから、この問題は顕著になる。

*覇王色の覇気
雑に説明するとTRPGとかでPCが戦闘なしでNPCを倒したことにできてしまうアレを世界観設定におとしこんだもの。ルフィなどの一部の強キャラが「覇王色の覇気」を使うと雑魚では立っていることもできず泡を吹いて倒れるので、「数に任せて雑魚がルフィを制圧する」のが難しくなっている。

ウソップはウソップなりに戦える範囲で敵を倒していればそれで充分助けになった時代は既に終わっている。
ウソップが露払いとして相手にできるような雑魚の群れはルフィにとってもはや障害ではない。


「仲間とは助け合うもの」というテーマで「強い主人公が弱い仲間を助ける展開」はよくある。
しかし、本当にそれは「助け合い」なのか?


単に「強い奴が弱い奴を一方的に守り庇護下においてやっているだけ」じゃないのか?


もちろん、そうやって守られる奴が戦闘外で返せるものがあるのならそれはそれでいいんだ。
ナミの航海術とかも立派なクルーとしての助け合いだ。

ウソップは今、麦わら海賊団のクルーになっているか?
設定上、ルフィ傘下であることになっているキャベンディッシュ海賊団とかとそう変わらない位置までCMのウソップは貶められてはいやしないだろうか?

そうじゃないだろう、ウソップとルフィの関係は。


強いとか弱いとかじゃなくて、そもそもなんで2人は一緒の船で冒険してるのか?とか、熱い男同士の友情があるから、ウソップはルフィの仲間なんだろう?



そしてスタンピードのテーマがこの辺りを際立たせる。
スタンピードは「一人で最強vs仲間の絆」みたいな感じで仲間の素晴らしさを伝える映画だ。
にもかかわらず古臭いアップデートされないウソップ観のままの映画ではそこがボケてしまわないかだろう?

単に「強い奴vs強い奴」の結果として、勝者がたまたま仲間想いの奴だったら…
それは「仲間の強さ」が「最強の個人」に勝ったとは言えないだろう。

「最強の個人vs強い奴連合」が勝ったら仲間の絆の勝利か?
それは違う。

単に個人の武力が数の力になっているだけだ。

それでは勝利に貢献しないでただやられたウソップは仲間の絆の強さに関係ないことにならないか?
ウソップは仲間でなくてもよかったのか?

そうじゃあないだろう。
違うだろう。
仲間の絆ってそういうものではないはずだ。

 



少なくともスタンピードのテーマをやり切ろうとするならそんな雑な「仲間」観じゃあダメだろう。


スタンピードが示すウソップ像

さて、アツくなりすぎてるので一回クールダウンして整理しよう。
この記事はスタンピードを褒めたたえる記事だということを思い出していただきたい。

そう、ここまで批判してきたのはCMに滲み出す雑なウソップの扱いと仲間の絆テーマの齟齬の話であり、映画本編の話ではない。


映画本編では逃げることなくそこにぶつかり合っている。


だからこそ今、僕は興奮してブログを書いている。

映画スタンピードは、ギャグパートに混ぜながらウソップの気質を描く。


ウソップは「ほら吹き」で「海の男のロマン」に惹かれるが「臆病」
そして「狙撃手」である。


ウソップが「狙撃手」であることをはっきりと明言し、狙撃手の役割として
「戦闘における支援役」であるという立場を明確に台詞にしていく。

その後、今回の冒険における麦わら海賊団の方針が「海賊王ロジャーの残した宝」であるという目標を示す。
で、物語は進み「海賊王ロジャーの宝」の争奪戦。

その騒ぎの中で一度ウソップは宝箱を保持し、その中身を知って驚愕する。
その直後…!

CMの流れで、ウソップはやられる。宝はボスに奪われる。

一見、ウソップが噛ませになったような展開であるが、驚いたのはその後だ。

 


ルフィが怒って立ち向かうけど歯が立たず、他の歴戦の名有の海賊たちですら敵わない。
それほどに今回の映画の敵バレットは強い。
バレットの「個人の強さ」を徹底的に描く。

そしてバレットの悪魔の実「ガチャガチャの実」の合体人間の特性として、武器や船を取り込んでいく。
(ちょっと話が脱線するけど『最強の能力』として合体っていうセンス、尾田先生の男の子感出てて好き)

この部分、前述の「それは仲間でなく手駒」「自分の所有物を傷つけられて怒った強い個人がいるだけ」と対応しているなと思った。
つまりバレットは「仲間なんかいらない個人の強さのやつ」ではあるが、同時に「仲間を道具として見てる奴」のメタファーでもある。

そして彼はより性能が高い武器をより大量に集めようとする。
そしてウソップのことを「宝1つ守れない弱い仲間に意味はない」と馬鹿にする。

そう。今作のボス=バレットのように仲間を道具として見て、それを性能の高い低いで図り、究極的には自分こそが最強であれば、「共に並び立つ、絆で結ばれた仲間」はいらないという方向であれば…まさにウソップはこの時点で不要だ。


仮にこのあとルフィが勝ったところで、それは「ルフィが仲間の力で勝った」のではなく、単に勝ったルフィの側にウソップがいただけになる。

映画のテーマである「仲間の絆」を描くにはこれでは不十分なのだ。
仲間の絆をここから描かないとバレットの主張へのカウンターにはならない。
暴力で周りをねじ伏せる悪をより強い暴力でねじ伏せる映画に終わってはならない。


立ち上がるウソップ

ウソップは、倒れたまま終わらない。
立ち上がりルフィのために戦う。


「船長が俺のために命を張ってくれている」
「なのに俺が倒れていていいはずがない」

ウソップはポップグリーンを放つが敵の巨体には全く効果がないように見える。
ウソップは弱いままなのか?

それでもウソップはルフィを抱え逃げる。

現在のルフィのメインの戦闘スタイル『バウンドマン』は「短時間めちゃくちゃ強いけど、連続使用できない」技だ。

今、倒れたルフィには再使用までのインターバルが必要なのだ。


もはやウソップではバレットには敵わない。
ウソップは逃げだす。

「狙撃手ウソップ」でなく「臆病に逃げるウソップ」に見えるかもしれない。
でも違う、ウソップは逃げ出す、ルフィを抱えて…!


ルフィが再起動するまでの時間を稼ぐために…!
狙撃ではない。いつもの逃げ出すウソップだ。

でも「戦闘員の支援」という明確な「狙撃手の仕事」をこなしている。


ウソップは自身が「仲間ではなく単なる守られてる奴」「ルフィにとってのキャベンディッシュの部下」とかじゃない、
明確にルフィがウソップを助けるだけでなくウソップもまたルフィを助ける。
仲間同士の助け合いをちゃんとやっている。

「守られるだけの女じゃない」みたいなヒロイン像にある種近い、
ルフィに並び立つ存在としての資格を示そうとする。

特に注目したいのが燃え盛る瓦礫がウソップとルフィに落ちてくるシーン。

正直ここで僕はまだ脚本の人を見誤っていた。

落ちる瓦礫でルフィとウソップがやられるのは作劇上ありえないし、
前のシーンでは2人を助けにチョッパーたちが向かっている。

これはもうギリギリのところで、燃えさかる瓦礫を仲間が止めて助かる流れだ。
そんなのはわかりきっている。

違った。
チョッパーたちは間に合わなかった。
本当に燃える瓦礫は二人を襲う。

そして…
ウソップが身を張って受け止め、ルフィを助ける。

炎に耐えて、瓦礫をどかす。

瓦礫の第二波が来て…ここでやっとチョッパーたちの助けが入る。

ここ好き。
ここ本当に脚本の方を褒めたたえたい。


結果的にやっぱりチョッパーたちが助けるんだから、こんな凄いオールスター映画の尺を確保するためにカットするならここのシーンになるだろう。


瓦礫は2回来るのでなく1回だけにして、最初からチョッパーたちのシーンにつなげばいい。

でも、それは映画のテーマの視点を欠いている。
脚本が、監督が、ここにちゃんと残して、映画で出したように!!!
ここに一度、ウソップが命を張ってルフィを助けるシーンがあることがどれほど大事か!!!

ウソップはルフィの「役に立つ仲間」であることを示す。

少し先の展開のネタバレになるが、ここでどうしても語っておかないといけないのが
宝箱の中身についてだ。

映画スタンピードでは彼らは宝箱のために戦っている。
だがそれがどんな宝なのか、この時点で知っているものは少ない。
しかしウソップは知っている。
それに価値があることを知っている。
その上でウソップは「ルフィはその宝を要らないと言うに違いない」だろうと後のシーンで語る。
つまりこの戦い、ウソップにとっては既に「戦う意味などない」のだ。

今まさに麦わらの一味は「宝のため」に行動している。
その宝自体が「船長ルフィ」は「いらないというであろうもの」だとウソップにはわかっている。

それでも戦う。
もう彼は臆病者ではない。
誇りだとか仲間の絆のためだけにウソップはこの時点で動いている。

「役に立つ仲間」というだけでなく互いを信頼し、相手のために必死になれる。

ここで仲間の絆を強く描いている。
そして、だからこそウソップは悔しがる。
「もし自分にもっと力があれば負けたりなんかしなかった」と…。

ここまでウソップからルフィへの感情を描き続けたことで、ルフィがかける言葉に心打たれることになる。
「ウソップ、お前はまだあいつに負けていない」

ウソップは支援役だ。
とどめをさすのが仕事ではない。
ルフィがウソップの働きを無駄にせず勝てばウソップはちゃんと「勝った」ことになる。

でもこれを単に「強い奴であるルフィ」が言っているんじゃない。
だってルフィはこの直前に負けてるもの。

「もし自分に力があれば負けてない」というのはウソップからルフィへの思いのみならず、
ルフィからウソップへの思いでもあるんだ。

だからこの後のルフィの戦いは「誇り」の戦いだ。
宝のためでなく「ウソップが負けてない」ことを示すためにルフィは勝とうとする。

一方的な強者からの庇護、自分の持ち物を傷つけられて怒っている単一強者でない!!


ルフィはウソップの、ウソップはルフィの、

それぞれの海の戦士としての誇りのために。

双方向性の「思い」がある。

ここまで描いてこそテーマが引き立つ。
この「思い」のために動くからルフィとウソップは勝つ。
それで初めて、「一人で最強vs仲間の絆」を描ける。

なんて完璧なロジックの通し方なんだ。

そしてルフィは他の仲間やあるいは仲間でない者たちの力を借りながら、バレットが纏っていた武装を解体していくのだが
あと一歩のところでルフィは失敗する。

いや、失敗したかに見える。

その時、突然敵の体から植物のツタが生えてくる。
ボスの動きを縛り邪魔をする。


ウソップが撃ち込んだ、あの緑星(ポップグリーン)だ!

緑星は「ある条件下で急成長する植物の種」で、ウソップはそれを調べ上げ採取し使い分けることは説明したね?


今回の種は「強い衝撃」を受けると急成長する性質を持つ種で、ルフィの攻撃でそのきっかけが与えられる。

ここ、予想できてたのに実際に見ると目頭が熱くなる。


ラストでルフィは「これから面白い冒険が待ち受けてるのに、近道なんてつまらない」と語る。

つまらない。おもしろい。
結局ここなのだ。

ともに面白い冒険に乗り込めるものが仲間なんだ。

バレットの合体した道具には絶対にないものだ。

この作品のもうひとつのテーマである「祭り」。

「祭りとは熱狂である」
「存分に楽しめ」
「怒りもまた熱狂」

仲間の絆とは、この熱狂を共にできる人の存在である。

 

ルフィ・ウソップにとっての麦わら海賊団は宴を共に楽しめる、熱狂を共有できる仲間なのだ。

ラストまで徹底してウソップを「仲間」として描き切るからこそ、
この映画は「一人で最強vs仲間の絆」の映画になっているんだ。

とにかく、CMでがっかりした全ウソップファン。

スタンピードを見てほしい。


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【映画感想】ドラゴンクエスト ユア・ストーリーと雷雨

さて、これは僕の物語だ。


なんだか意味深な書き出しで初めて見たわけだけど、
ドラクエの映画を見てきたよ」っていう日記だ。

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本当は昨日、見てすぐ書きたかったけど、

スマホの電源は切れそうだし、家に帰ったら雷雨の影響で停電してた。

なので今日やっと感想記事を書いている。

 

とりあえず今回の記事ではユアストーリーの悪いところとか気にいらなかったところは脇に置いて、それらに怒りを表すことはしない。

 

あれを見たドラクエVのファンが「カレーを食いに行ったらウンコ喰わされたんだけど?」と怒るのは至極当然だけど、僕はもう完全に後乗りしているので事情が違う。

 

例のラストへのネタバレを踏んだ上で怖いものみたさで劇場に行ってきたのだ。
「あの店、ウンコ出すらしいぜ?」って言われて確かめに行っている以上、
ウンコ出されたことに怒るのは筋違いだと思うんだ。

 

そういうわけで今回は単なる日記であり、僕の物語だ。

 

さて、まずなんでドラクエ映画を見に行こうと思ったのかと言うと、
元々最初は見に行く気だったんですよ、ドラクエ映画。

 

他の映画(天気の子やジオウOQ)を見に行った時に冒頭の映画CMで流れるドラクエ映画が本当に良かった。映像美が凄いし、音楽も凄い。
是非ドラクエ映画は見ておきたいと思った。

 

そう思ったのがドラクエ映画公開日の…前日だった。

見たかったし、面白そうだったのにタイミングが悪い。

僕は2日連続で映画館に行くほど映画に入れ込んでいる人間ではないのだ。

 

というわけでニアミスからドラクエ映画は僕の中で「見たかったけどタイミングが合わなかったの後回しにする映画」になった。

この時はまだ、タイミングが合えば見に行こうと思えたんだ。この時は。

 

その後、TwitterのTLでユアストーリーの話題が荒れたのはきっとみんなご存じのとおり。

余りにも荒れたので何が炎上しているのかネタバレを調べて「うわあ…」と思い、

ドラクエ映画は「見に行くことはもうないだろう映画」になった。

 

でもあまりにも荒れが激しくなって来たので、逆に「おっ、これはネタ映画体験として見に行っておいたほうがいいかも」と思うようになった。
最低な観客である。

 

で、昨日。
一昨日は3時に寝て、昨日は6時前に起きてふらふらしたまま会社に行って、
寝ぼけまなこで午前の業務と会議を乗り越えて、心身共に疲れ切ってしまった。


このまま会社にいてもまともに仕事できない体調だったので早退して帰ることにした。
外はひどく蒸し暑かった。

でも家には家族がいる時間なので、会社早退は居心地わるいなあ、と思った。


だからどこかで時間を潰してから帰りたいと判断力が低下するなかで思ったので…

ドラクエの映画、見に行くか」と決めたわけだ。

 

 

さて、実際に映画を見ている最中に思ったのは「映像の出来が本当にいい」ってことだ。

これはお世辞とかでなくマジ。
ピクサーとかの映画とかなら多分「普通」なのかもしれないけど。
「日本映画ってこのレベルの質の高いCGできるんだ!!」とか。
「キャラデザの翻訳が凄く上手いな」とか。

映像は凄く良かったと思う。

 

 

 

で、問題のラストシーンが始まる。
まさかドラクエ映画未視聴でネタバレもまだ知らない人がこの記事を読んでいるとは思わないけど、
もしそういう人がいたらこれから致命的なネタバレがあるよ、と警告しておく。

 

 

警告はしたのでネタバレ部分に触れていくよ。

 


事前に聞いていた通り、ラストの「問題のシーン

 

世界全てが静止した中で、主人公だけが動ける。
ここは「ドラクエVのリメイクVR体感ゲームの世界」だったのだとウイルスから知らされるという驚きの展開が提示される。


音の力、音楽の力って凄いなっていうのをこのシーンで改めて感じる。
ドラクエの馴染み深い音楽が消えた「無音」がこんなにも不安を掻き立てるなんて…!

 

正直なところ、凄く興奮していたと思う。
ネタバレを踏んでから見に行けば不快感はなくなると思ったんだけど、
このシーンは後の展開のために凄く意図的に「不快」に作られているパートだった。

ネタバレを踏んでいてもこんなにも心がざわつくんだ。
「凄いものを見れたな」と思った。

 

そして現れるミルドラース(YS)!

 

ミルドラースのポジションを乗っ取ったウイルスプログラムを名乗る悪役が出てくる。

 

こいつのキャラデザに思ったことは2つ。
ミルドラースを乗っ取ったと言いつつキャラデザが全然ミルドラースじゃないのがすげえな…」っていうのが1つ目。

「最近の鳥山明っぽいデザインだな…」っていうのが2つ目。

 

明らかに「ドラクエには異質」な存在をそれでも世界の中に位置付けるために鳥山明風宇宙人っぽいデザインのキャラを使うって
よく考えたなあ…と感心する。

 

そして始まる「大人になれ説教パート」
正直な話、説教するキャラ自体が「製作者がそういってるから~」みたいなスタンスで話すので他人事感が強いのと
「単なる暇つぶしでこの世界は壊されるのだ」の圧倒的子供っぽさには「大人になれ」がブーメランでぶっ刺さりまくって笑いそうになる。

 

とはいえ。
とはいえだ。
流石にここで終わるほどドラクエ映画はクソではない。
そういう「大人になれ」の説教をするミルドラース(YS)を主人公が倒してその主張を否定して終わる…というところまでもうネタバレで読んである。

 

ただ気になるのはロジックだ。
一体どんなロジックでリュカの中の人はミルドラースに反論するのか?
その辺りのロジックが僕のTLには流れてこなかった。
「大人になれだんていう脚本はクソ!」派も
「大人になれはそのあと主人公が否定するから」派も見たけど
どう否定するかは見かけなかった。

 

「お前にも、お前を作った者にもわからないだろうな!」

来た! 反論パートだ!
その時である…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

画面が暗転し、ぶちっと切れたような音がして無音になった。


何が起きたのか分からなかった。
無音の中で隣の部屋なのか外の音なのかわからないゴゴゴゴっという音が響く。
訳が分からない。
ただ、薄暗い部屋に緑の非常口ランプがついているだけだった。

どれくらいそのまま待っていただろう?
時計もなくスマホは電源を切って鞄の中、正確な時間は全く分からない。
10分くらいな気もするし、実際にはもっと短かったかもしれない。

 

何が起きているのかわからない。
演出でまさかそこまでするのか?
そんなわけがない。
正直言ってパニックだった。
パニックと言う言葉を使うと大騒ぎをイメージするかもしれないが、
頭が混乱して身動きが取れなくなるパニックというものもあるんだ。

劇場内の他の観客(5人)も静かだった。

それから笑いがこみあげてきてニャニヤしてしまった。

 

ああ、凄いな。これは映画で感じた以上のメタだ。
結局、「この世界がゲームなのだ」という展開をネタバレされることで
僕は「突然メタ的な要素でぶち壊しになる」ことを受け入れられた。
しかし、更にその一つ上のレイヤーから「これは映画だぞ」という分かり切っているはずだったことを突き付けられ、

冷や水を浴びさせて現実に戻るような体験をしたことで、
逆に直前まで自分が映画にのめり込んでいたことに気づくことになったんだ。

 

映画館のスタッフが入ってきて『落雷による停電』だと伝えられ、
しばらくそのままお待ちくださいという指示に従う。

待っている間、薄暗闇の劇場で予想外の状況を楽しむ僕がいた。

『「これはゲームだ」という映画』を見ている僕の世界もまた別の何かなんじゃないか?という妄想が頭をよぎる。

 

突然ミルドラースYSが世界の動きを止めたように…
突然スクリーンが暗転し闇が覆ったように…
突然なにかが自分の世界を止めてしまうんじゃないかという漠然とした不安。


薄暗い部屋が静まり返り外から雷鳴が聞こえる中でそんなことを考えていると、
先ほどの係員とは違う別の人が入ってきて明かりをつけ、
謝罪と「止まったところから2分巻き戻して再開します」というアナウンスが入る。

 

明かりが落ちて再開…するのだが、
それは先ほど見た場面でなく少し先…
恐らく係りの人が「止まった」と思ったタイミングと実際に僕らの見てる映像が止まったタイミングがずれていたのだろう、映像は2分前どころか少し先から始まり、


突然スライムが山寺宏一のイケボで「自分は監視プログラムでワクチンを作ったぞ!これで君の冒険をやりとげろー!」みたいなことを言い出し、
剣神ドラゴンクエスト(専用の剣型コントローラーをテレビの前で振って遊ぶドラクエの古いゲームだ)を思わせる剣でトドメの一撃をリュカ…いや主人公のゲーマーが振るいミルドラースYSを倒す。

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剣神ドラゴンクエスト


そしてゲームと認識したままリュカゲーマーはエンディングを迎える。

あれ?
大人になれへのカウンター部分は?
大人になれに対するカウンター部分、よりにもよって落雷でスキップされてない???

 

結局、僕はもやもやしたまま映画館を出ることになる。
(そして、正直に言えば『よっしゃー、ブログに書くのに美味しい体験ができたぜ』と思っていた)


さて、あのミルドラースYSは何だったんだろう?

 

家に帰ってご飯を食べていたら落雷で自宅も停電した。
充電切れ間近の携帯は充電できなくなり、連絡用に残しておく必要が出たし
パソコンも使えない。つまりブログを書くことができない。

 

部屋の明かりも落ち、近隣の家が復旧してもウチは戻らない。
電力会社の方を呼び暗い部屋で待つことになりすることもなく、ただただ真っ暗な部屋にいる。


映画館で見たものを思い返し反芻する。

奴はなんだったんだろう?

そしてひとつの解釈に気づいた。

ミルドラース(YS)とは 「ついかキャラクター 1」なのではないか?

 

さて、改めて状況を整理しよう。
ラストシーンでミルドラースの復活を阻止して終わりにはならず、ゲマがミルドラースを復活させる。
ところが出てきたのはミルドラースでなく、そのポジションを乗っ取ったコンピュータウイルス。


ウイルスであるミルドラースYSは世界を停止させる。

ウイルスは世界のテクスチャを解除し景色は漂白され、重力も適用されなくなり世界法則を壊していく。
それに対して監視プログラムである「スラりん」が作った「『剣神ドラゴンクエスト』を思わせる剣」でズバッとプレイヤーがミルドラースYSに切りかかることで
ミルドラースYSは倒される。


まるでショーみたいだ(映画だからな)

 

主人公がミルドラースYSによって「ゲーム外の記憶」を取り戻し回想する短い現実シーン。

その中で示される「VR体験ゲームであるドラクエV」の機能説明。

スタッフの「このゲームは自動で新しいプログラムを組むんですよ」という説明が入り、
実際に主人公は意図せずに新しいプログラム「じこあんじ」を作成し、
ビアンカ好きの自分がフローラを選ぶように自己暗示をかける。

「は?」って言いたくなるシーンだが、そこをぐっと堪えてこのシーンを読み解いてみよう。

 

ここで説明された「ドラクエVRは勝手に自動で新しいプログラムを組む」ことと直後に挿入される「ついかキャラクター1」という謎の表記。

 

つまりミルドラースYSとは無意識にプレイヤーである彼が「VR体験ドラゴンクエスト」に追加したキャラなのではないか?

 

「大人になれ」と言いつつ下らないウイルステロを暇つぶしに行う天才プログラマーなんて奴は最初からいなくて、
ただただ「周りから、社会から、大人にならずにゲームに心を捕らわれている」と言われるコンプレックスから無意識に彼が生み出した追加キャラこそがミルドラースYSなのではないか?

 

なぜ監視プログラムの「スラりん」が作ったご都合ワクチンプログラムは剣神ドラゴンクエストのような見た目で、スラりんではなく主人公であるサトウタケル(仮名)が振るうのか?

 

そういうシナリオのVRゲームだからだ。

 

「自動で新しいプログラムを無意識に組んでしまう」という謎にハイテクで一見必要のない挙動の紹介は、
単に「じこあんじ」だけにかかる話でなく、ミルドラースYSが「ウイルスだという設定のゲームキャラ」として追加されたことを指しているのではないか?

 

主人公がカタルシスを得るために生成されたストレッサーである追加キャラ。
変な矛盾する言説となんだかぼんやりとした「創造者がそう言うから」みたいな曖昧な話をするのも、「悪意ある創造者」なんていうのがそもそも実在しないからなんじゃないか?

 

主人公はこのバーチャル体験ゲーム以前にもドラクエを遊んできた現実の人間だ。
もしかしたら彼は「剣神ドラゴンクエスト」を遊んだことがあるのかもしれない。

 

「自分」が直接剣を振るい、「大人になれ」と言ってくる存在を倒す。
そういうラストを彼自身が演出したのではないか?

 

そして自分自身が手に持って振るう剣としてイメージするものとして
実際に剣型コントローラを振るう「剣神ドラゴンクエスト」の剣コントローラーはふさわしいものではないだろうか?

これが「ワクチンプログラムの剣」がドラクエVに登場しないロトの剣だったことの理由だと僕は解釈した。


つまり本来の「VR体感ゲーム ドラクエV」はミルドラースは存在せず、
ミルドラースの封印を持って大団円になるのが基本シナリオであり、
それに主人公がオプションとして付け足したのが「あのラスト」なんじゃないだろうか?


ユアストーリーのラストを「素人の作る『ぼくがかんがえた驚愕のラスト』だ」と非難する人がいたりする。

 

しかし、実際にはプロの書いたシナリオである。何か意図が、強い意図があるかもしれない。

もしかしてそれは本当に「素人である主人公くんが付け加えたラスト」としてプロの脚本家が書いたものだったら?


さて、最初に言った通り。
これは僕の物語で、僕が映画を見た日の単なる日記だ。


「これが真実!」「世間のドラクエ批難は間違い!」とかそういう主張はないし、
同じようにあなたたちが映画館に行っても嘘みたいだと思うような停電に巻き込まれることはないだろう。

 

だから、あの薄暗い非常口の緑だけが照らす暗い劇場や、停電した真っ暗な自宅での振り返りもまた僕だけのものだ。

でも、この閃き、解釈は僕の中ではパズルが解けた時のようにすっきりとした感覚をくれた。

監督が「なんだこいつ…そんな話を私は書いてないぞ…キモっ…大人になれよ」と言って僕を肯定してくれなくてもいい。

 

だって、僕が実際に体験した出来事であり、これが「僕自身のドラクエV映画体験」だったからだ。
その事実は誰にも覆すことができない。

 

世界が静止してテクスチャが離れる、その時までは。

あるいはあの映画を見たことで「仮にそんなことが起こったとして、自分の人生は意味のないものだったか?」を問われようなことが起こったとして
「それでもあの世界は現実だった」とこの世界を振り返る時に役に立つかもしれない。


いや、やくそうでもキメてらっしゃる?

 

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【天気の子】陽菜って「龍神系の雨女」のほうじゃないの?

やあ、バーチャルVtuverの豆猫さんだよ。

 

さて、天気の子を見たのでざっくりと与太話を。

ネタバレ気になる人はあとで読んでね。

 

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「天気の子」

 

天野陽菜って「晴れ女」じゃなくて「雨女」だよね? っていう話。


いや空を晴れさせてただろ、いい加減にしろ。って感じだろうけど
順に聞いてほしい。

 

 

なぜ「晴れ女」でなく「雨女」なのか

 

天気を晴れに変える時の描写に注目してほしい。
空から雲がなくなり結果としてその場所は晴れているだろうか?

 

そうではなく「降ってくる雨が方向を変えて重力に逆らい浮遊していく」かのように描写されている。
これは「太陽に連なる稲荷系の晴れ女」の権能でなく、「水に連なる龍神系の雨女」っぽくはないだろうか?

 

さらに警察が帆高を取り押さえた時、無意識に陽菜は「雷を落とす
これも「晴れ女」というよりは「雨女」っぽい嵐にまつわる能力に思える。

 


稲荷系の晴れ女と龍神系の雨女

 

声優が凄い占い師のオバサンによれば、

晴れ女の場合は稲荷系
雨女の場合は龍神であるという。

 

この時点ではうさんくさい話のように提示される要素だ。

でも、あの世界では「凄い現象」は本当に起こるし、そういうものが伝承される世界観だと寺のシーンでも示されている。
占いおばさんの発言もすべてが真実ではないにしろ、一部「せかいの しんじつ」を語っているのだと見なしてみよう。

 

まず、占いおばさんの発言によると龍神水に連なる存在であるらしい。

 

天気の子は「晴れ女」をテーマとする裏返しで、物語には雨がついて回り、
雨には「サカナ」と呼ばれる不思議な生物がいたりする。

 

このサカナが龍神伝承の基になっている存在なんだろう。
仮にこういった存在…つまりあの世界で「一般的に認知されているわけではないが古から繰り返し観測され物語や絵として残る伝奇生物」を「怪獣」と仮称することにしよう。

(モナークか?)

 

これらの「怪獣」は地球という星に太古から存在する先住種族であり、
人間のスケールではそれらは時に災害として観測され記録に残るが公にはなっていない。そして人間はそんな「怪獣」たちとの付き合い方をオカルトチックなものとして確立したりしてきた。


そういった「怪獣対策」の一環として「サカナ=龍神との付き合い方を模索してきた。
その中で「人間」たちに混ざって生きる「龍神系の怪獣」を「雨女」などと呼ぶようになったのではないか?

 

この雨女は本質的には天気を雨や嵐として起こす生態を持つ


天上にいるサカナの親分、龍神とのリンクを持ち、局地的に天候操作を行える。

これら雨女を人間たちが利用して、天候を「人間が生活しやすいように安定させる」という目的のために、「天気の巫女」という「雨を避けるシステム」として使うことにした。

 

本来の「雨を降らせる権能」を間違った使い方をして晴れさせる雨女

そんな雨女に対して龍神側からは「正常な機能」を果たすように同化が行われる
あるいは本来の用途以外に力を使うことで雨女には負担がかかる。

 

これが「天気の巫女」の体に負担がかかり、神隠しにあうメカニズムなのではないか? というのが僕の仮説だ。

 


巫女としての陽菜さん

 

陽菜さんは雨を操る力で雨をどかし、他の場所に送る。

それが「雨女」として龍神の権能を龍神の意に添わぬ形で運用する…

 

つまり人の願いのために利用されている雨女=「天気の巫女」なのではないか?

 

古の天気の巫女たちも、同様に利用されてきた雨女

そして帆高が「晴れ女の仕事」を開業したことで、意図せずに、かつての天気の巫女同様に、雨女を「晴れを生み出すシステム」として活用し始めてしまう…

 

セカイのカタチを変えてしまっているのは帆高(人間)の側なのかも…

 
本来、雨を降らせるのが自然である雨女に無理やり「晴れ」を作らせるからこそ負荷がかかる。

 

つまり「天候操作能力」を使うこと自体が体に悪いのではなく、
その力を「他人の願い」のために使うこと(ガイア側の抑止力がアラヤ側の抑止力としてふるまうこと)が負担になっているのではないか?

 

映画ラストで3年間雨が降りやまないという異常気象を引き起こす。

このような力の使い方は雨女にとって「自然なこと」であり負荷がかからない。

 

瀧くんのおばあちゃんや神主さんの言う通り、

あの大雨こそが世界にとって自然なことであり、

環境を正常化する。(まるでKOMの怪獣のように)

そのために雨女は生まれてくるのだ。

 

占い師の言葉を借りればガイアのホメオスタシスである。

ホメオスタシス(恒常性)…本来の状態を維持しようとする性質

 

 

 

世界はそもそもガイアのホメオスタシスによって大雨の時期に差し掛かっていた

そのために「雨女」が生まれた。

  

しかし、雨女は人の願いのために「間違った行使の仕方」で力を使い続けて空を晴れにする。

本来の役目を果たさないでいると龍神によって同化され消えていく。

 

雨になるのが自然だった天気を、天気の巫女が晴れへと変えつづけてきたので「天の気のバランスが乱れる」事態になってしまった。

 

今代の雨女であった陽菜も、晴れを売る仕事を初めたことで、かつての天気の巫女のような役割をはたし、人の願いを受けて世界を晴れにし続けた。

 

だからこそ龍神に同化させられて(ガイアと一体になって)すけすけの姿へと変わっていく。

 

ホテルのシーンで陽菜は帆高に問いかける。

「この雨が止んだらいいと思う?」

 

「晴れになったら」でなく「雨が止んだら」という言葉は、雨を降らせているのは自分だという無意識の自責があったのかもしれない。

 

そんな陽菜が「雨を止める必要がない、人の願いよりも陽菜にいてほしい…!」という帆高の心を受け入れて世界を無理やり晴れにするのをやめ、雨女本来の力の使い方で東京を水没させることで、彼女の体の負担は消える。

世界は自然な形(=天の気の乱れを直すための雨季)へと変わっていく。

 

「セカイのカタチを変えてしまった」というのは、実は逆で、雨が降るべき世界を晴れにしてしまっていたのでは?

 

 

以上が僕の与太話である。 

 

まあ"歴史と権威ある雑誌″ムーくらいの信ぴょう性で受け止めてほしい。

 

 最後に改めて天気の子の広告を見直してみよう。

 

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タイトル付近にいるのは「稲荷」系の狐でなく『龍神

 

 

 

 

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