バーチャルVtuver豆猫さんの与太話

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【#MTG】なぜMTGのデッキは60枚もあって土地カードなんかがあるのか

いよいよD&DとMTGがコラボした新パック『フォーゴトンレルム探訪』の発売日が迫っている。

 

このパックはMTGプレイヤーをD&Dへと案内する導線になると同時に、

D&Dプレイヤーをマジックの世界へと連れてくるきっかけにもなっている。

 

さて、そんな中で非常に興味深いD&Dからやってきたプレイヤーのツイートを見た。

 

「なんでマジック:ザ・ギャザリングってデッキが60枚もあって、土地なんていうものがあるんだろうか?」

 

この疑問は非常に興味深く、地雷原の上でのタップダンスでもある。

なぜ地雷原の上のタップダンスなのかをD&Dで例えると恐らくこんな感じだ。

 

ただ、この話題の可燃性を一旦脇に置いて、ゲームデザインの観点から考えてみよう。

 

 

分散性と選択性

 

私の考えは「それがプレイヤーにとって分散性選択性の二つの面で良いものであるから」だと考えている。

 

ここで分散性/VARIANCE選択性/CHOICEについて説明しておこう。

この考え方はMTGの首席デザイナーであるMark Rosewaterが提唱しているもので、

以下の記事で紹介されている。

Variance, Part 1 | MAGIC: THE GATHERING(前半)

Variance, Part 2 | MAGIC: THE GATHERING(後半)

 

簡単にまとめるとカードゲームには分散性/VARIANCE選択性/CHOICEの2つの軸があり、それらがゲームを面白くする要素になっている。

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興味深いのはどちらの指標も「高ければ高いほどいい」とか「ないほうがいい」というものではなく「高いことが好まれる場合」と「低いことが好まれる場合」の両方が存在している点だろう。

とても面白い記事なので、少しでも気になるなら僕のまとめでなくマローの記事の方にも目を通してもらったほうがいいだろう。

 

 

さて、ではデッキ枚数が60枚である(=一般的なカードゲームの中では比較的多い)ことはどのような意味があるだろう?

 

デッキの枚数が多いことはゲームの分散性/VARIANCEを高くしている。

 

マローは高分散性ゲームの利点としていくつかの特徴を挙げているがここではそのうち2つに注目しよう。

  1. 新規性/Noveltyがある
  2. 経験の浅いプレイヤーが勝てる可能性が出る

 

1つ目の新規性があるというのは言い換えれば再現性が低いということだ。

「この展開、何度もやっているな…」という状況が増えれば増えるほどプレイヤーは飽きやすくなる。長く愛されるゲームであるために、毎試合が同じような展開でなく異なった展開を見せるほうが良いこともあるのだ。

 

2つ目に経験の浅いプレイヤーが勝てるという点を見ていこう。

高い分散性はゲームに運の要素を加える。初心者の幸運か熟練者の不運によって、番狂わせが起こりやすくなる。

運の要素がゲームの中に大きく組み込まれていることにより配布デッキを握る初心者にも勝利体験を味わう機会が生まれるのはとても良いことだろう。


また「運が悪かった」ことによる敗北は短期的にはストレスだが中〜長期的な視点ではストレスを低減させてくれる。


初心者プレイヤーが土地事故を起こして敗北するゲームは短期的には非常にストレスフルであるが、

もしその試合が土地事故なしでも負ける試合であった場合「自分の実力で負けた」という結果を認識せずに敗北を不運のせいにできるのだ。


では逆に土地事故さえなければ勝てた試合であれば非常に強いストレスを感じるのだろうか?

意外なことに多くのプレイヤーは土地事故さえ起きなければ勝てていた試合に関して「非常に強いストレス」を感じることは少ない。

「ありえたはずの勝利パターン」を脳内に思い描くことによって得られる擬似的な快感が敗北のストレスを軽減してくれためだ。


敗北を自分のせいではなく何か別のもののせいとして転嫁できることで初心者ゆえの敗北の多さを全て自分のせいとして精神的な追い込みをかけられることが減る利点であるとさえ言えるだろう。

 

実は黎明期のMTGは分散性が非常に低いゲームだった。デッキ枚数は40枚で使用可能なカードプールはずっとせまく、その分デッキに同じ名前のカードを何枚でも詰め込めた。

 

それが60枚に変わっていった経緯を一番面白く書いている公式の記事はこれだろう。

 

 最初は、デッキ構築のルールは非常にシンプルなものだった。好きな枚数のカードを集め、それをデッキにする。40枚以上。これで終わりだ。これがルールだったのだ。

 このルールは、完璧に最強のデッキができてしまうということがわかってきた。実際、ウィザーズはプレイするカード枚数に制限を設けないイベントを開催したことがある。そのイベントの様子はこうだった。最初にデッキをジャッジに見せ、分類してもらう。分類先は「第1ターンで勝てるデッキ」と「このイベントで勝てないデッキ」だ。

 開発部は、このルールが問題だと気付き、2つの変更を導入した。1つめが、構築のデッキサイズを40枚ではなく60枚にする。40枚という数字はリミテッドに残された。2つめが、基本土地以外のカードは4枚までしか入れられないようにする。4という数字は、デッキ構築の安定性をある程度確保した上で、毎ゲーム同じカードを引かないようにするように選ばれた。 

引用: https://mtg-jp.com/reading/mm/0004238/

 

 

なぜ60枚なのかについては以上だ。

 

では、土地カードが存在する点はどうだろう?

 

土地カードは選択性/CHOICEにおいて2面性を持っていると私は考えている。

土地カードがあることは対戦中の選択性/CHOICEを減らし、デッキ構築の選択性/CHOICEを高めているのだ。

 

対戦中の低選択性が与える恩恵はいくつかあるがマローの語ったものなかから2つあげよう。

  1. プレイが簡単
  2. プレイヤーが先を読めるようになる

まずプレイが簡単になる。基本土地カードを手札から場に出す。プレイするときに考えるのはそれだけだ。

もちろん慣れてくるとどの順番に手札の土地を置くかとかあえて毎ターン土地を置かないとかの駆け引きの側面は出るだろう。でも一旦、ここは初心者の気持ちで考えてほしい。

 

例えばMTGと同じくウィザーズ社が開発したデュエルマスターズを例にとろう。

このゲームには土地がなく、代わりに基本的に全てのカードを土地のようにプレイすることができる。(言い換えると高い選択性がある)

 

手札の高コストなパワーカードを、プレイできない序盤に「土地」として扱うか、

あるいは「よし、今回は切り札が引けずに困ることはなさそうだ」と手札に抱えたままにするか、プレイヤーは考えることができる。

…いや、考えないといけない。

 

一方で初心者が《森》の土地カードを引いたとき、考えることは何もない。

「これを場に出してマナを出そう」というそれだけだ。

 

土地カードの存在は構築済みのデッキを扱う際の初心者のプレイングを自然にフォローしているのだ。

 

総じて「土地システムをもつ60枚構築済みデッキ」は初心者のゲームプレイ体験を良いものにする効果があるゲームデザインになっている。

 

 

土地システムの選択性は高いか低いか

 

さて、土地システムは選択性を低くして構築済みのデッキを使う初心者を支援する見えない手助けをしていることがわかった。

では土地は選択性を低くするだけのものなのだろうか?

 

実際には私は土地カードは高い選択性をゲームに加える要素でもあると考えている。

 

プレイヤーが構築済みデッキを離れて自身のオリジナルデッキを組もうとする場合、

土地を何枚入れるか・色の配分はどうするか・基本土地を使うか特殊な効果を持つタップイン土地を使うか、幾つもの選択に直面する。

 

土地システムは試合中の選択性を低くする一方で構築時の選択性を高める要素でもあるのだ。

 

では高選択性ゲームでの利点とは何か、マローが語った文を引用しよう。

Rewards skill – There is a high corollary between the number of choices in a game and skillful players doing better. 

引用:Variance, Part 1 | MAGIC: THE GATHERING

 

「技術が評価される」のだ。

選択性が高くなれば当然、技量の高いプレイヤーが有利になる!

 

さて、ここまで読んでもらえれば最初の疑問の答えが見えるはずだ。

Q.「なぜMTGのデッキは60枚もあって土地カードなんかがあるの?」

A.「初心者の参入障壁を下げ熟練者の練習が報われる十分な分散性と選択性の要素を加えるデザインにするため」

 

 

以上が、私のデッキ枚数と土地システムのあり方についての意見を簡単にまとめたものである。

(ああ、これでも簡単にまとめたつもりだ。語りたいことを全部詰めるともっと長く読みづらくなるだろう)

 

僕は現在のMTGの土地システムをとても気に入っている。

だから自信を持ってMTGの土地システムはいいものだと言えるんだ。

デッキの5割以上を土地にしたランドデッキで土地を引かずに3回引き直した時、以外はね。

 

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【#MTG】D&Dコラボセット「おにぎりカード」は「ネフィリム」なんじゃないだろうか?

やあ、バーチャルVtuverの豆猫さんだよ。

今回は「フォーゴトンレルム探訪」の日本限定プロモカードについて書こうと思う。

 

まず前提として知って欲しいのは「フォーゴトンレルム探訪」はマジック:ザ・ギャザリングとD&Dのコラボセットだということだ。

 

このセットではD&Dをモチーフとする様々な特殊デザインのカードが存在する。

 

例えば「フレイバーテキスト基本土地」。

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TRPGの冒険を彷彿とさせるフレイバーテキストが印刷された基本土地は、フレイバーテキストをじっくりと読み込むプレイヤーの心をD&Dのフォーゴトンレルム世界へと誘う。

 

「クラッシックルールブックフレーム」のクリーチャーは、古き良きTRPGの空気感を感じさせるモンスター図鑑のような見た目が印象的だ。

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「クラッシックモジュールフレーム」の特殊地形は、モジュールというサプリメント商品の見た目をオマージュしたデザインとなっている。

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こうしたD&Dへのリスペクト溢れる「フォーゴトンレルム探訪」には日本限定のプロモ版カードが存在する。

 

それがこちら…!

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参照:『フォーゴトン・レルム探訪』おにぎりプロモキャンペーンマジック日本公式

 

???

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なにこれ…?

 

あまりにも意味がわからない。

おにぎりプロモって何???

 

流石に意味がわからなすぎて混乱して情報収拾をする中で面白い知見が得られたので今回はそれを記事の形で書き留めておこうと思う。

 

「自社コラボと他社の権利」

 

そもそもMTGとD&Dのコラボはどのようにして発生したんだろう?

端的に言えば「自社コラボ」である。

MTGを制作販売しているWoC社はD&Dの権利を買い取って保持している。

そのため、米国のプレイヤーの中に熱心に両者のコラボを求める声があった。

 

なのでD&Dとのコラボをやること自体は何ら不自然ではない。

 

しかし、ここで視点を日本限定プロモに移そう。

日本でのMTG関連の権利はどこにあるか?

日本ではウィザーズ傘下のMTG日本公式が窓口となっている。

では日本におけるD&Dの権利はというとホビー・ジャパンがD&Dの日本展開における権利周りを持っている。

 

つまり実質的には「自社コラボ」であるMTGとD&Dの関係は日本ではそうではないというのだ。

 

「日本限定」プロモカードを作る上でこれがネックになった可能性は考えられる。

 

大人の事情という奴があるのだろう。

 

ここからはもう一歩、踏み込んでおにぎりプロモについて考えてみよう。

 

ウィザーズ社では昔、「何かに傾けたセットを作るときに、それが好きではない人のために別のものを用意する」というデザインをしていた。

 

この例として有名なのは「ネフィリム」であろう。

昔のラヴニカのセットに存在した4色クリーチャーがネフィリムである。

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ラヴニカは「2色のギルド」をテーマにした多色セットだった。

2色のギルドを好きになれなかった人のために、ウィザーズは2色ギルドと関係のないレアカードである「4色カードのネフィリム」を作った。

(実際のところはそれは杞憂であり、大多数のプレイヤーはギルドをとても気に入ったので、ラヴニカを舞台にしたカードセットは何度も作られ、そしてネフィリムは登場しなくなった。)

参照:存在しないということ|マジック 日本公式ウェブサイト

 

おにぎりカードに対する反応をTwitterやDiscordのコミュニティで眺めていて、「おにぎりカード」は令和のネフィリムなんじゃないだろうか?と私は考えた。

 

プレビュー期間に少数のTRPGプレイヤーが湧いている一方で、

「今回のモジュール土地のデザインはあんまり好きじゃない」

「クラッシックデザインが好みじゃないから今回は買わなくていいかな」

そういうあまりD&Dコラボでは興奮していないプレイヤーがいたのも事実だ。

日本でのD&D知名度はそれほど高くないということもあるだろう。

 

おにぎりカードに視点を戻そう。

D&Dコラボに湧いていたプレイヤー達はおにぎりプロモに難色を示した。

私もまた憤った。

 

日本限定プロモなら、それこそミスティカル・アーカイブの時のようアジアンテイストのドラゴンの絵柄で描くとかやりようがあっただろ!

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さて、一方でD&Dコラボセットの特典であるという視点を外した上で、

おにぎりカードの評判を調べてみたところ…これが結構高評価なのだ。

 

愛らしいおにぎりのキャラクターのカードを欲しがる人はコミュニティの中でも散見され、D&Dコラボで突然おにぎりをぶち込まれたことに怒る人ですら、おにぎりプロモの絵柄自体は好意的な感想を書いていたりする。

 

つまり私が思うにおにぎりカードはネフィリムなのだ。

D&D本場のアメリカを離れた日本という地でここまで全面にD&Dコラボを推したパックを作った時に「D&Dが好きではない日本人」に対して、ネフィリムのように何か別のものを用意した方がいいとウィザーズ日本支部・マジック日本公式は思ったのかもしれない。

 

私が代案として先ほど書いた「日本画風ドラゴン」についても前回やったばかりなので日本画風もD&Dも苦手な人にとって良くないと考えての配慮かもしれない。

 

そう考えると、心踊るD&Dコラボに突然おにぎりがやってきた混乱と怒りも少しは落ち着くというものだ。

 

それでもなお、最後にこれだけは書いておきたい。

 

だからってなんでおにぎりなんだ?

 

 

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【#MTG】フォーゴトンレルム・ドラフト「青単ゴミ」【#MTGDND】

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やあ、バーチャルVtuverの豆猫さんだよ。

今回はMTGの新パック「フォーゴトン・レルム」のドラフト日記だよ。

今回、私が組んだアーキタイプはこれ!

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青単ゴミ

 

フォーゴトンレルムの基本アーキタイプは2色とされている。

しかし、色基盤となる2色土地は存在していない。

 

そこで敢えて1色に手を絞ってのドラフトに勇気をもって挑戦するのが青単ゴミドラフトである。

 

このデッキを支えてくれたのが《ジンの風予見者》だ。

サンプルレシピでは3枚採用しているね。

 

一体どんなカードなのか見てみよう。

 

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どうだろう?

君の目にこのカードは強く映るだろうか?

それとも大したことはない?

 

僕の目にはとても強く見えた。

 

20面体サイコロのダイスロールによって効果が変動するカードは不安定だ。

20の出目はまず出ないし、上の方の目がでないで「ハズレ」になるときも決して少なくない。

 

しかし、その「ハズレ」を見てもなお僕は強いと思うのだ。

 

ここで1枚のカードを紹介しよう。

《幻影獣》のカードだ。

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このクリーチャーは構築級とはとても呼べないが数多くのリミテッド環境で指針のひとつとされた強力なリミテ向けクリーチャーだった。

 

ウィザーズは長年に渡ってリミテッドで使われるコモンの飛行クリーチャーが《幻影獣》よりも強くならないように気を使ってデザインしてきた。

そうしなければリミテのバランスを崩してしまうようなギリギリの強さのカードだったのだ。

 

 

開発部のデザイン過程を読める記事が公式サイトで公開されているのは知っているかな?

BH: このカードは《幻影獣》よりも強く見える。
MJJ: そうだな。

 《幻影獣》は「このカードは我々がコモンのクリーチャーに求めるものよりも強い」と我々が考える境界線です。

 引用:Mファイル『アモンケット』編・パート1|マジック日本公式ウェブサイト

 

この記事では《幻影獣》より強いカードを弱体化して、《幻影獣》を超えないラインにしようという開発チームの努力を見ることができる。

 

逆に言えば(可能であれば)開発班にとってリミテッドのデザインをするときに「幻影獣を超えていないカード」として《幻影獣》を入れることができればリミテッド戦のバランスを取りやすいということがうかがえる。

 

たびたびこのカードは再録され、リミテッドの航空戦力の要となってきた。

 

なんならリミテのバランス調整のために《幻影獣》の下位互換も作られた。

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さて、改めて弱そうに見えたダイスロールカードをご覧いただこう。

 

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どうだろうか?

こいつは出目がどんなに悪くても《幻影獣》+占術1であり、

ちょっと運が良ければ占術2ができるだけでなく、

クリティカルの可能性まで秘めている。

 

私にはこのカードはとても強力に見えた。

 

実際にドラフトでピックしてみてこのカードはやはり強い部類のカードだと、今なお信じている。

 

このカードは過小評価されがちだと思う。

みんなもっと《ジンの風予見者》をピックするべきだ。

 

 

青単ゴミサンプルレシピ

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【#MTG】カジュアルEDH《無情の碑出告》と相棒オボシュ【#EDH】

さて、今回は前回の無限ダンジョンに続いて、『フォーゴトンレルム探訪』のカードを使うカジュアルEDHのコンボの話をしよう。

今回注目したいコンボはこちら!

 

《無情の碑出告(ひでつぐ)》と相棒指定した《獲物貫き、オボシュ》のコンボだ!

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*オボシュにはエラッタが出ています。( )内の文章は(このカードがあなたの選んだ相棒であるなら、ソーサリーとして(3)を支払うことでゲームの外部からそれをあなたの手札に加えてもよい。)と読み替えてください。

 

例えば対戦相手のライフが40点の場合、《無情の碑出告》はその半分の20点のダメージを与える。そして《獲物貫き、オボシュ》が戦場にいれば「20点のダメージの2倍のダメージ」を与える。

つまり40点のダメージを与えることになる。

 

これは相手のライフが5千兆点あっても変わらない。

「5千兆点の半分の2倍」のダメージが発生する。

 

とはいえ、このダメージは自分も受けることに注意だ。

自分が死んでしまっては元も子もない。そこで《無情の碑出告》のテキストに注目する。

 

ライフの半分のダメージは「切り捨て」である。

例えばライフ41点の場合、切り捨てた半分は20点でその2倍は40点だから…

なんと1点のライフが残る!

 

「自分のライフが奇数で対戦相手のライフが偶数の時」に碑出告オボシュのコンボを成功させれば君の一人勝ちだ!

 

さあ、君も碑出告を統率者に、オボシュを相棒にしてデッキを組もう!

 

…あれ?

フォーゴトンレルム探訪のカードは?

 

 

そう、ここまでフォーゴトンレルム探訪の話題が出ていない。

では先ほどの統率者と相棒のコンボの致命的な欠陥を指摘しよう。

 

統率者戦ではデッキに入れられるカードは統率者の固有色に含まれる色に制限される。

 

《無情の碑出告》の固有色は赤だ。

一方で《獲物貫き、オボシュ》の固有色は赤と黒で2色だ。

 

オボシュの方が色が多いため、碑出告EDHではオボシュをデッキに入れることはできない。

だが、待てよ。相棒はそういえばデッキに入れるカードではなかったな。

統率者で相棒カードを使う場合、それは100枚のデッキに含まれない101枚目のゲーム外のカードとして扱われるんだった。

 

じゃあ、赤黒のオボシュを赤い碑出告の相棒にすることができる?

ああ、相棒にすることはできるとも!

 

統率者戦でも、あなたは相棒を1枚持つことができる。統率者も含めたあなたのデッキは、相棒の条件を満たしていなければならない。あなたの相棒は、あなたのデッキのカード100枚のうちの1枚ではない。 相棒があなたの統率者の固有色と合致していないなら、あなたは相棒を手札に加えることができない

引用:統率者戦 - MTG Wiki

 

ほらね、MTGwikiにも書いてある。

君はオボシュを相棒にしても良いのだ!

ただし、大きな問題点がある。

あなたはオボシュを手札に加えることができないのだ。

 

はい、解散!解散!

 

そんな碑出告EDHの使い手に朗報だ。

こんなカードが『フォーゴトンレルム探訪』で登場する。

《ウィッシュ》の呪文をご覧あれ!

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この《ウィッシュ》は相棒を用意した統率者戦デッキで、相棒を手札に加えることなくゲームの外部から直接唱えることを可能にする!

 

うおお!エラッタ前の相棒の再現だ!

3マナかかってるんだよな

 

しかし先ほどMTGwikiから引用したように相棒とはいえ赤黒のオボシュを赤い碑出告デッキでは手札に加えることはできない。

 

ん?

手札に? もしかして、手札を経由しない《Wish》ならいいのか?

 

おめでとう!これで碑出告オボシュのプレイヤーは報われるね!

 

これについてルールを当たった結果、興味深いテキストを見つけた。

まず、結論から言うと2020年4月10日の総合ルール変更によって「奇数で統一した赤単色の碑出告デッキで赤黒のオボシュを統率者にしても、それを《Wish》で唱えることはできない」と言う総合ルールでの決まりがある。

総合ルール903.11が根拠だ。

 

で、この根拠となる総合ルール903.11について(元)ルールマネージャーのイーライ・シフリンが在任中に興味深い公式記事を書いてくれている。

 

903.11.

 統率者戦のゲームでは、多くのプレイグループは、ゲームの外部からカードを持ち込むことを禁止するルールを定めています。そのため、ゲームの外部からカードを持ってくるというものは何もしないだけです。そのプレイグループがそのルールを使わず、《燃え立つ願い》の類のカードでサイドボード的な何かから探すことができる場合でも、固有色のルールを破ることや、同名のカードをゲーム内に持ち込むことは認められるべきではありません。このルールはそれを単なる提案ではなく明確なルールとして確立させ、また相棒がある場合にもルールで処理できるようにしました。つまり、プレイグループの合意があればこのルールを無視することを決めても構いません。私はルール・マネージャーであって、カード警察ではありません。

引用:https://mtg-jp.com/reading/publicity/0033938/

 

整理しよう。

つまり総合ルールに従う限りでは、あなたは奇数コストの縛りを守りオボシュを脇に置いた碑出告EDHを統率者戦に持ち込むことはできる。

 

ただし、総合ルール903.11によってそれ自身の能力で手札に加えることも、それを《Wish》で唱えることもできない。

 

その上でイーライ・シフリンはカード警察ではないためプレイグループでの合意が得られるなら、「オボシュ自身の効果では手札に加えられないが、《Wish》を使ったターンに唱えることはできる」と言う協定を結んでコミュニティの中で遊ぶのは自由なのだ。

 

ただしオボシュを碑出告の相棒に指定するのはあくまで公式の総合ルールに従う場合の処理である。

統率者戦は限りなく公認に近い「カジュアルルール」であり、本家は公式ではないと言う変わった成り立ちをしていることには留意するべきだ。

Official Commander Websiteでは、

If you’re playing a companion, it must adhere to color identity and singleton rules.

訳:あなたが相棒をプレイするなら、それは固有色と同名1枚ルールを遵守しなければならない。

参考:Commander Rules | Official Commander Website

と明言されている。

あなたのコミュニティがこちらの記述を優先する場合、やはりオボシュを利用できないと見るべきだろう。

 

そうしたコミュニティにあなたが出かける場合、メインデッキの《Wish》を抜いて、代わりに統率者の碑出告をデッキの中に加えて、相棒のオボシュを統率者にすれば、適切な公式ルールのもとで碑出告オボシュのコンボを披露できるかもしれない。

 

ふむ。特に統率者戦の記事を続けて書くつもりはなかったのだけど連続して統率者戦の記事が続くことになった。

もしかするとまた統率者戦の記事で会うかもしれないね。

ではまた、その日まであなたのライフが奇数であらんことを!

 

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【#MTG】カジュアルEDHの決め技に無限ダンジョンを通りたい。

私はEDHで《永遠王、ブレイゴ》のデッキを愛用しています。

このデッキの勝ち筋のひとつとして今までは無限隕石を使っていました。

統率者である《永遠王、ブレイゴ》と《ストリオン共鳴体》のコンボによって最終的に《隕石》を無限に出し入れして無限ダメージを叩き出して勝ちます。

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まあでも、正直なところそんなに成功したことはないです。

ロマン必殺技ですね。

無限にメテオを飛ばすっていうフレイバーが好きで使ってるところある。

 

そんな「戦場のパーマネントを無限に出し入れするカジュアルな青白EDHの勝ち筋」として面白いカードが登場するようです。

 

新たなブレイゴ王の臣下を紹介しましょう。

《無私のパラディン、ナダール》くんです。

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隕石ループとほぼ同様の手順で無限に彼を追放して戦場に戻すことができます。

 

はい、ナダールくんを無限に出し入れしました。

するとどうなりますか?

 

無限にダンジョンを探索できますね。

無限にダンジョンを探索する!

それだけでなんとなく浪漫に溢れたコンボだとは思いませんか?

 

それだけではありません。

このコンボにはもう1点、魅力的なポイントがあります。

 

それはダンジョンの部屋能力は色の役割に囚われていないということです。

 

例えば赤い《ヴィーアシーノの紅蓮術師》を無限に出し入れした場合、すべての対戦相手に無限ダメージを与えることができるため勝利に直結する。

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しかし統率者戦ではデッキの中に入れられるカードは統率者の固有色のカードに絞られる。

たとえ《ヴィーアシーノの紅蓮術師》を無限に出し入れすれば勝てるとしても、青白のブレイゴ・デッキに赤い《ヴィーアシーノの紅蓮術師》を入れることはできない。

 

 

しかし、白い《ありがたい老修道士》を無限に出し入れしてもライフが回復するだけ。

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無限ライフを得て、ダメージレースに強くなるもののそれが勝利に直結しない。

 

このように多くの白のクリーチャーはそれを繰り返し出し入れしてもそれだけで勝利につながるカードは少ないんだ。

 

ああ《審問官の総督》。君のことを忘れたわけではないんだけど、一旦引っ込んでいてくれ。

 

さて、話をダンジョンに戻そう。

《無私のパラディン、ナダール》はダンジョン探索を行う白いカードだ。

 

プレイヤーはダンジョン探索を初めて行う場合、3つのダンジョンから1つを選び、

その「最初の部屋」に入る。

以降、ダンジョン探索を行うたびにすごろくのように部屋を進みイベントを発生させる。

そして出口にたどり着いたら、ダンジョンを踏破したことになる。

 

一部のカードはダンジョンを踏破することでボーナスを得られる。

また、ダンジョンの踏破後にダンジョン探索を行う場合、もう一度ダンジョンを選びなおして部屋を進むことになる。(同じダンジョンに挑んでもいいし、別のダンジョンに入ってもいい)

 

 このダンジョンの能力は色に縛られない。

例えば通常、ライフを失わせる能力は黒のものである。

(ああ。《審問官の総督》、君のことも忘れていないとも。でも今は一般論の話をしているから少し下がっていてくれないか?)

 

しかし、【魂を食らう墓】のダンジョンに挑めば、白い《無私のパラディン、ナダール》でも相手のライフを失わせることができます。

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これを利用して《無私のパラディン、ナダール》をブレイゴとストリオン共鳴体のコンボで無限に出し入れすれば勝利につなげることができます。

 

ダンジョン攻略ルート

 

まず最初のうちは【ファンデルヴァーの失われた鉱山】のダンジョンを周回するのが良いでしょう。

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「鉱山のトンネル」をぬけて「暗黒の泉」へ至れば相手のライフを減らして自分のライフを回復できます。

ただし気を付けて、対戦相手のライフと自分のライブラリーの厚さに気を付けてください。

【ファンデルヴァーの失われた鉱山】を抜けるたびにあなたは必ずカードを1枚引くことになります。

もしあなたの残りデッキ枚数が30枚でライフが最も多い対戦相手が40点のライフを得ていたなら、あなたは単純に【ファンデルヴァーの失われた鉱山】に40回挑んでいてはライブラリー切れで負けてしまいます。

 

ある程度、鉱山周回をした後は【魂を食らう墓】に挑戦し、左のルートを進みます。

 

ポイントとして、【魂を食らう墓】の2週目以降では「落砂の監房」ではアトロバル神を生贄に捧げることです。

(しなくてもよいのですがその場合、次の部屋でアトロバルが2人になりレジェンドルールで片方は死亡してしまいます)

 

さて、ここまですればたいていの場合は相手のライフが先に失われます。

 

しかし、相手のライフが9999点あったとしたら?

(おそらく《ありがたい老修道士》をたくさん出し入れしたのでしょう)

この場合、ダンジョンをただ攻略しつづけるだけでは先にあなたのデッキが尽きてしまいます。

 

《審問官の総督》を素直に使えば良かったと後悔しそうになりますね。

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さて、そのような状況ではどうしたらよいのでしょう?

方法のひとつはデッキに《Timetwister》をいれておくことです。

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そうして【狂える魔導士の迷宮】へと挑み続けるのです。

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注意点は「ルーンストーンの洞窟」へは決して踏み込まないこと。

ソーサリーである《Timetwister》は無限コンボ中に割り込んでプレイすることができません。

必ず「狂える魔導士の住処」経由で唱えること。

 

そうすればもう一度デッキを補充できます。

これだけでは一味足りないので《永劫のこだま》という《Timetwister》のリメイクカードも使う必要がありそうです。

 

ですが、それだけでは十分ではありません。運悪く《Timetwister》で引いた中に《永劫のこだま》があるとやはり9999点ライフを削ることができません。

そのため、これは省略不可能なループ手順ということになってしまいます。

 

どうやら《無私のパラディン、ナダール》よりも《審問官の総督》を無限に出し入れしたほうがよさそうです。

 

…でも多分、私は《無私のパラディン、ナダール》を入れてしまう気がします。

無限メテオと同じで、無限ダンジョンっていうフレイバーにロマンを感じるから。

 

 

うーん、何かダンジョンを活かした面白い勝ち筋はないものでしょうか?

そう考えていて答えにたどり着きました。

【狂える魔導士の迷宮】を周回して十分な数のマナファクトと《石成エンジン》を場に出すのはどうでしょうか?

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しかる後に改めて【ファンデルヴァーの失われた鉱山】へと挑みます。

そして、「暗黒の泉」までダンジョンを探索していきます。

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「暗黒の泉」の部屋能力は誘発型能力なので、この状態で《石成エンジン》の能力で「部屋能力」をコピーして「暗黒の泉」の中をグルグルと周回し続け、通常は進まないといけないダンジョンの部屋をひたすら周回し続けて勝つことができるのです!

(石成エンジンのコピー能力を使うとタップされてしまうので通常は1ターンに1度しか使えませんがブレイゴで出し入れすればアンタップ状態で帰ってくるので1ターンに何度でも使えます!)

 

…これこそまさに真なる無限ダンジョン

 

フォーゴトンレルム探訪の発売が楽しみでしかたないですね。

それではいつか統率者戦の無限ダンジョンの中で会いましょう!

 

 

【追記】

この記事を投稿した後でTwitterの方で興味深い指摘を受けた。

 

…天才あらわる!

 

公式のメカニズム紹介記事を見てみよう。

まれなケースとして、最後の部屋能力に対応してダンジョン探索をする場合があるかもしれません。その場合は、最後の部屋能力がスタックを離れるのを待たずにダンジョンを踏破することになります。そしてあなたは次のダンジョンの探索を始め、そのダンジョンの最初の部屋能力が前のダンジョンの最後の部屋能力より先に解決されます。

引用:『フォーゴトン・レルム探訪』のメカニズム|マジック日本公式サイト

 

確かに!指摘の通りである。

公式のメカニズム記事で注記されている「まれなケース」を意図的に引き起こしてコンボに組み込むことで面倒な処理なしでも無限ダンジョン探索は無限ライフコンボを決めた対戦相手を追い詰めることができる!

 

一応、どのように引き起こすかも書いておこう。

このコンボのミソは「ダンジョン探索をすると部屋能力が発生する」という流れの中に途切れる瞬間があるのを利用する。

記事公開時点で想定したコンボは「ダンジョン探索し、部屋能力を解決する」→「ストリオンを起動」の手順だった。

しかし実際には部屋能力は誘発型能力であるため、ラグが存在する。

「ダンジョン探索し、部屋能力を解決する」は厳密には、

「ダンジョン探索をするETB能力を解決し、部屋を進める」→(優先権発生。割り込みポイント)→「部屋能力を実際に解決する」


割り込みポイントでストリオンの起動を挟めば、スタック上に部屋能力を積んだまま次の部屋のイベントを発生させる「ダンジョンイベントの遅延」を発生させることができる。

(TASとかRTAじみてきたな…)

 

というわけで「ドゥマトーインの寺院」のエンディングイベントを発生させた状態で、追加のダンジョン探索を差し込むことで「洞窟の入り口」のオープニングムービーを発生させてダンジョン踏破イベントを遅延させたままダンジョンを踏破しきることができるのだ。

 

もけもけさん、素敵なアイデアをありがとう!

 

 

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 過去記事

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【#MTG】『1Tixモダン』プレイレポートその2【虚無フォーマット】

やあ、バーチャルVtuberの豆猫さんだよ。

電子版マジックを遊べるゲームMO(マジック・オンライン)では既にモダンホライゾン2の新カードがぞくぞく登場している。

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我々「1Tixモダンの会」は「あと2週間くらいして価格が落ち着いたら、また1ドルモダンで遊ぼうか」などと言っていた掌を変身させて、早くも1Tixモダンの会を開いた。

 

今回はそんな「モダンホライゾン2発売初期環境」での新たな1Tixモダン環境のデッキを見て言ってほしい。

 

既存デッキの強化

 

まずは大きな強化パーツを手に入れた既存のデッキを見ていこう。

モダンホライゾン2で大きく強化されたデッキとして私が真っ先に挙げたいのは【青赤アーティファクトデッキだ。

 

このデッキは青にたまに存在する「アーティファクトをクリーチャー化する呪文」によって「破壊不能アーティファクト土地」を起こし破壊不能のクリーチャーとして戦闘を行わせつつ、赤に存在するアーティファクトと噛み合うカードを組み合わせてライフを詰めるデッキだった。

 

モダンホライゾン2前までは主に《ダークスティールの城塞》を生物化させて戦ってきたデッキだが、いくつかの欠点を抱えていた。

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その欠点とは「コンボパーツの足りなさ・貧弱さ」「面での圧力不足」「色基盤の不安定さ」の3つだ。これらの欠点を克服するために生まれてきたような2枚のカードを紹介しよう。

 

《銀色険の橋》と《いざ動け》だ。

 

《銀色険の橋》の登場により今までデッキに4枚しか存在しなかった破壊不能アーティファクト土地の枚数は2倍になった。

 

また《いざ動け》は3マナの《命の吹き込み》より軽い2マナのコンボパーツだ。

この2枚は欠点その1を見事に解決した。

 

ではふたつ目の欠点である面制圧力はどうだろう?

1枚のカードで複数のアーティファクトをクリーチャー化させる新規カードはあるだろうか?

《いざ動け》の後半のテキストにご注目。

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マナの溜まった終盤にはこのカードはアーティファクトたちを一斉蜂起させる切札となる。

 

最後の欠点は色の安定性だったね。

《銀色険の橋》からは青赤の2色のマナが出るとも。

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このデッキは新カードプール追加時に一時解禁された《ウルザの塔》と《精霊龍、ウギン》を使ったトロンデッキに対して非常に相性が良いのも強みだろう。

赤い土地破壊カードを使い互いの土地を破壊しながら図々しくも破壊不能で自分だけ耐える動きはウルザトロンに対して非常に効果的だ。

 

クリーチャー化したアーティファクト土地は無色の破壊不能であるため《精霊龍、ウギン》の着地を許しても除去されることはない。

 

【青赤アーティファクトはモダンホライゾン2環境でより強くなったアーキタイプだと断言できる。

 

他に強化されたデッキにはどんなものがあるだろうか?

 

興味深いアーキタイプ【黒緑プレインズウォーカー】だろう。

 

このアーキタイプは「カード価格の旬」を逃したプレインズウォーカーに注目する。

マナコストが重ためになる5〜6マナのプレインズウォーカーはモダンでは活躍の場を作りづらく、スタンダード落ちすると価格が一気に落ちる。

そうした安価なプレインズウォーカー・カードを大量に積んで戦うのが【黒緑プレインズウォーカー】だった。

 

このデッキがモダンホライゾン2で得た新戦力が《獅子のカルス》だ。

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この伝説のクリーチャーはプレインズウォーカーを続々と供給する能力を与えられている。

コストも4マナとデッキ内のプレインズウォーカーに比べてやや軽い部類に入る。

プレインズウォーカーの先駆けとして戦場において相手のプレインズウォーカーへの攻撃を止める盾であり、戦線維持のための補給基盤となる強力なカードだ。

 

気になるのは値段だが、その価格驚きの0.007 Tix !

デッキコストを圧迫することなく複数枚投入ができる《獅子のカルス》は【黒緑プレインズウォーカー】を「安くなった強そうなカードの束」から「シナジーを持ったデッキ」に押し上げるまさに革命的な一枚だったと言えるだろう。

 

ここまで紹介したデッキは基本の形を変えずにモダンホライゾン2での恩恵を受けたものだった。

 

生まれ変わったデッキ

 

次はモダンホライゾン2を境に大きく形を変えたデッキを見てみよう。

 

【白黒ゾンビラリー】→【シャンブラー・ボンバードメント】

 

元々は《むら気な召使い》を筆頭とする白黒の多色ゾンビ・デッキだった。

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デッキのメインギミックは《先祖の結集》によるゾンビの大量復活。

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復活時に《むら気な召使い》でダメージを与えつつ、次のアップキープを迎えて追放される前に《屍肉喰らい》に食わせてサイズに変換する…というモダンホライゾン1のゾンビデッキだった。

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(《屍肉喰らい》はモダン範囲外の旧枠カードであったがモダンホライゾンでモダン入りしたのだ。)

 

このデッキのビルダーがモダンホライゾン2の発売後にチューニングして生まれたのが【シャンブラー・ボンバードメント】だ。

 

シャンブラーというデッキ名が示すのはモダンホライゾン2の《巣のシャンブラー》というゾンビだ。

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パワー修正をシャンブラーに与えて《屍肉喰らい》でシャンブラーを生贄に捧げる。

これにより複数のトークンを生み出し、それらも《屍肉喰らい》の生贄とする。

 

さらに赤を加えたことにより生贄ギミックに《屍肉喰らい》だけでなく《ゴブリンの砲撃》を採用しているのが大きな変化である。

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《ゴブリンの砲撃》は《屍肉喰らい》同様にモダン範囲外の旧枠カードであったがモダンホライゾン2で新たな戦力としてモダンに加わった。

 

相手のライフを押し込む今までのコンボデッキとしての攻め方だけでなく、時に盤面のクリーチャーを焼き殺して相手の動きに干渉できる手段を手に入れたことでコントロールよりの動きも可能となった。

 

名前こそ「ゴブリン」だが、これとシャンブラーの2枚は既存のソンビデッキへ変革をもたらす強力なゾンビアーキタイプ向けのカードであった。

《ゴブリンの砲撃》の英語名「ゴブリン・ボンバードメント」から取ってこのデッキを【シャンブラー・ボンバードメント】と名付けよう。

 

新たな部族アーキタイプ

 

さて、ガラリとデッキの中身が変わったとはいえゾンビデッキもいわば既存のデッキ。

モダンホライゾン2の影響力はその程度だろうか?

 

いいや、そんなことはない!

 

モダンホライゾン2はこれまで存在していなかった新しいアーキタイプを連れてきた。

今回はその中から部族デッキを2つ紹介しよう。

 

 

【紙束リス】

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新たなる部族デッキの登場に祝福を!

私はリスの熱心なファンでありモダンホライゾン2で大量にリス・カードが登場したことを嬉しく思っている。

新環境で最初に組み上げたのはこのリスのデッキだった。

 

いや「デッキ」を名乗るのもおこがましいだろう。何せモダンホライゾンシリーズで収録されたリス関連カードなどを雑多に詰め込んだ「電子の紙束」なのだから。

 

これはカジュアルなデッキとして楽しむだけのもの。1ドルモダンの「環境デッキ」はもう少し真面目なデッキで目指そう。

 

そう考えて投入した「紙束」だったが…案外強かったんだな。これが

 

モダンホライゾン2では「リス」はテーマのひとつとして扱われ「リミテッド用」のリスをたくさん手に入れた。

これらを複数枚積んだ【紙束リス】は「めちゃくちゃ強いリミテッド用のデッキ」のようなものであり低価格帯のカードを用いる1Tixモダンでは十分にゲームを行えるデッキパワーを秘めていた。

 

先述のゾンビ部族デッキを考案したビルダーいわく「リスの部族カードは半端なゾンビ部族カードより絶対強い」とのこと。

リスはまだ枚数こそゾンビに遠く及ばないが、質がいい少数精鋭の部族だと言えるそうだ。

今後のデッキ強化にも期待したいところだね。

 

もう1つ部族デッキを紹介しよう。

エスパー・カラーのスリヴァー部族だ。

 

おいおい、スリヴァー部族のビートダウンデッキならモダンホライゾン1の時に既に【ナヤ・スリヴァー】がいただろうと思う人もいるかもしれない。

 

ガラッとデッキの色を変えたとしてもそれは【シャンブラー・ボンバードメント】のように既存デッキの派生とみなすべきなんじゃないか?

そう思うかもしれない。しかしこのデッキはスリヴァー・デッキの派生ではなく独立した系統樹から生まれたデッキなのだ。

【優雅コントロール】改め【スリヴァー・コン】となったデッキの来歴を紹介しよう。

 

まずデッキの核となるのは《永久の優雅》というモダンホライゾン2の新顔だ。

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毎ターン墓地から1マナのクリーチャーを釣り上げるエンチャントと自身を生贄に何か何か凄い事をする1マナのクリーチャーとを組み合わせてアドバンテージを取るデッキを構想したビルダーがいた。

 

彼は様々な「強力な1マナクリーチャー」をデッキに入れようとして1ドルという価格の壁に阻まれた。

 

そんな中で値段の割に強力だったのが《心鞭スリヴァー》だったという。

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このスリヴァーに勝るとも劣らないカードを探したが低価格帯で使えそうな手頃なカードは見つからなかった。

そんな折、デッキビルダーはこれがスリヴァーであることに目をつけた。

こいつはスリヴァーなので他のスリヴァーにも能力を共有できる。

いや、それだけではない。他のスリヴァーから能力を得ることもできる。

 

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《壊死スリヴァー》の「生贄にして万能破壊を行える能力」をコピーした1マナのスリヴァーを毎ターン《永久の優雅》で供給したり《休眠スリヴァー》でドローしてアドバンテージを得たりとやりたい放題できるではないか!

 

こうして「1マナのクリーチャーを使い倒すデッキ」というコンセプトは「1マナのスリヴァーを使い倒す、ビートダウンではなく除去と手札破壊を行う部族系コントロールデッキ」として仕上がったのだ。

 

来たるデッキ、去るデッキ

 

新しいデッキの誕生と共に、消え去りゆくデッキもある。

今回は消えていった哀れなデッキを追悼して記事を締めくくろう。

 

【多相カウンタースペル】

 

《対抗呪文》という強力な呪文がモダンの外には存在する。

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あまりの強さからこれまでモダンへと渡されることはなく、「条件を満たすと対抗呪文になる」という類似品のみがモダンにはやってきていた。

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これらの類似品すべての条件を満たすために「多相」クリーチャーを採用したのが多相カウンタースペルである。

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しかし、時代は変わった。

モダンホライゾン2でついに《対抗呪文》はモダンへとやってきた。

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もう類似品を無理に使う必要はなくなったのだ。

【多相カウンタースペル】今までご苦労様。

 

それではまた次回、虚無フォーマットの深淵で会おう!

 

 

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【#MTG】統率者を最悪ゲームから徹底的に永遠に除去する。【銀枠EDH】

やあ、マイナーフォーマット好きのみんな。久しぶり、元気にしていたかな?

私は今週もマイナーフォーマットを楽しんだよ。今週発売のパック『モダンホライゾン2』はデッキ総額1ドルモダンを大きく変える多種多様なカードが存在する。

MOの価格変動が落ち着けば興味深い新環境が訪れそうだ。

私たち1Tixモダンの民は《精霊龍、ウギン》の一時的な禁止解除も視野に入れている。

 

そんなことはまあ、どうでもいい。

今回、私が話題にしたいマイナーフォーマットはそれではない。

銀枠EDHについての話がしたいのだ。

 

今日の今日まで我々のプレイグループではある一枚の除去のルール上の処理を誤っていた。

それに気づいた《おしゃれな泥棒、アコーネリア》使いのプレイヤーがコミュニティに話題を持ち込んだので彼の許可をもらい記事を書くことにする。

 

似たような間違いをしていたプレイヤーが正しい処理を知って「ギャグカード」が非常にパワフルな除去であることを学んでほしい。

 

我々が処理を間違えていたのは《AWOL》というカードだ。

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カード名の意味は無断欠勤。

牛乳パックの描かれたイラストが目を引くね。

    • アメリカでは行方不明者を探すために、牛乳パックに写真つきで捜索願が印刷されている。そのパロディ。

参考:AWOL - MTG Wiki

 

さて、今まで我々がこのカードをどうプレイしていたか「誤ったルール」を説明しよう。

 

統率者である《ドラゴンの校正者、イキ》が攻撃してきた。

殴られた《騎士フクロウ、ケイディアン卿》のプレイヤーはブロック・クリーチャー指定ステップに《AWOL》を唱えた。もちろん対象はドラゴンだ。

 

さて、ここで《AWOL》のルール文章を確認しよう。

攻撃しているクリーチャー1体を対象とし、それを追放する。その後、それをゲームから取り除く。その後、最悪ゲームから徹底的に永遠に除去領域に置く。

参考:AWOL - MTG Wiki

 

このカードはまず追放し、その後で最悪ゲームから徹底的に永遠に除去する呪文だ。

このカードを処理するときに我々のグループではまず追放し、そしてそれを統率者領域においていた。

 

統率者戦(銀枠ではない方)のプレイヤーには馴染み深いであろう「統率者が追放される場合、それを統率領域への移動に変更できる」というルールの処理によるものだ。

 

これにより、統率者は徹底的に永遠に追放されることはなかった。

 

 

しかし、今日になって我々のプレイグループではこのルールが誤りであった…厳密には「ある時から、誤りになっていた」ということに気づいた。

 

そう、以前の銀枠EDHではこの挙動は誤ったものではなかったはずなのだ。

 

ことの変更は『基本セット2021』に伴う総合ルール更新である。

704.6d

 うーん、この新しい部屋。ペンキの匂いまでしてきます。ここであまりくつろぐつもりはありませんが、次に行く前に統率者戦の新しい状況起因処理があります。あなたの統率者が墓地や追放領域に行くなら、それを統率領域に動かす機会が1回あります。過去の置換効果は死亡や追放されることには適用されなくなり、あなたの統率者は死亡するようになりました。統率者戦の章にある903.9 も、この変更に合わせて更新されています。

参考:『基本セット2021』更新速報|マジック日本公式

 

この時のルール変更によって「統率者を追放領域に置くのは状況起因処理」だということになった。

 

ふむ、そうすると何が問題になるだろう。

改めて考えてみよう。

 

《AWOL》によって追放された統率者は追放領域に置かれる。

これを置換して統率領域へと逃す。

それはもう追放領域にないので最悪ゲームから徹底的に永遠に除去領域という長い名前の領域に置かれることはなかった。

 

ところが基本セット2021以降の銀枠EDHでは異なる。

 

追放された統率者を統率領域へと逃すのは「状況起因処理」ということに再定義されたからだ。

 

状況起因処理?

それが何の問題があるのだろう。

 

状況起因処理は基本的に「いつでもチェックされる」かのようにおもわれている。

しかし実際には少し違う。

状況起因処理は呪文や能力を処理した直後、次の処理に入る前にチェックされる。

言い換えれば「呪文の解決中」は状況起因処理が手を出せない聖域なのである。

 

AWOLの例に戻ろう。

 

《AWOL》によって追放された統率者は追放領域に置かれる。

これを置換して統率領域へと逃す…ことはできない。今はAWOLの解決中だからだ。

それはもう追放領域にないので最悪ゲームから徹底的に永遠に除去領域という長い名前の領域に置かれる。

 

さて、ここまで解決が進んだ後で状況起因処理が遅れてやってくる。

そして状況起因処理くんは追放領域と墓地をチェックしてそのどちらにも統率者がいないことをチェックする。

もう少し先に最悪ゲームから徹底的に永遠に除去領域があって、そこには統率者がいるのに、状況起因処理くんは引き返して他の項目のチェックに移る。

 

どうして!どうして最悪ゲームから徹底的に永遠に除去領域にいる僕のドラゴンを統率領域に戻してはくれないんだ!

 

まあ、当たり前のことなんだけど状況起因処理くんは黒枠世界の律儀なやつなので彼のチェックリストには最悪ゲームから徹底的に永遠に除去領域なんかのことは書いてないのだ。

 

この事実は私たちの銀枠解禁統率者戦プレイグループの中で波紋を呼んだ。

単に統率者を統率領域に戻すだけの除去として《AWOL》を使った時に「黒枠のカードか〜????」などと煽りあっていた楽しい時間は過ぎ去ったのだ。

 

《AWOL》はそのデザイン通りに統率者でさえも最悪ゲームから徹底的に永遠に除去できるカードとしての扱いを受けるようになった。

 

(同時に僕の中で《ドラゴンの校正者、イキ》の評価が落ちた。こいつの能力は攻撃時に誘発するため常に《AWOL》の危険に晒されるからだ。)

 

最後に似たような例として黒枠のEDHでも参考になる例を挙げておこう。

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《屍術淘汰》によって破壊された統率者は墓地に行くことを置換できずに、

それを唱えたプレイヤーの元に馳せ参じる。

 

それは変わらず統率者であり、生前に与えた統率者ダメージと転生先で与えた統率者ダメージは合計されることになる。

 

もし僕ら同様にAWOLを間違えて使っていたコミュニティがこの真実に気づきAWOLの評価を上方修正したなら嬉しいことだ。

 

さあ、私も自分の「軍医将軍統率者」デッキに《AWOL》を入れ直すことにしよう。

来週には銀枠解禁EDH会が待っている。モダンホライゾン2には銀枠EDHを大きく動かしそうなカードも少なくない。来週の銀枠EDH会が楽しみだよ!

 

ではまた次のマイナーフォーマット記事で会おう!

 

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